裁判
週刊誌の中吊り広告による名誉毀損事件
週刊誌における誇張・誤解を招く見出し表現が、記事本文を併せ読むことで名誉毀損に該当しないこととなっても、そのような見出し表現を用いた中吊り広告は名誉毀損となりうると認めた事例。
原審(東京地裁 平成18年1月18日判決)は、誇張や誤解を与える見出しでも記事本文を読むことによって別の意味に到達しうるから、それと同一の表現を用いた中吊り広告の表現についても同様に考えうるとした。控訴審は、中吊り広告における、いわば「見出し表現の一人歩き」を直視し、原判決を逆転した。
(東京高裁 平成18年10月18日判決 平成18年(ネ)第1055号)
オペラ合唱団員の地位確認請求事件
毎年の厳正なオーディションを経た合格者と劇場との間で締結される契約が雇用契約ではなく、オペラ合唱団員の地位が、当該契約の形式、実情のいずれから見ても、労基法上の労働者にはあたらないと認めた事例。
(平成18年3月31日 東京地裁民事11部)
労働判例No.918(2006年10月1日号)55頁から64頁に解説および判旨
ダウンロード販売した小説の無断CD-ROM複製告訴事件
インターネットでユーザーのパソコンへダウンロード販売される、いわゆる「ネット小説」を無断でCD-ROMに複製し、ネットオークションに出品し売ったとして警視庁は9日、宇都宮市下川俣町、会社員(56)を著作権法違反(複製権侵害・譲渡権侵害行為)の疑いで逮捕した。同人は「昨年1月頃から始め、約200万円儲けた」と供述しているという。警視庁によると、ネット小説をめぐって同法で立件するのは初めて。
(平成17年5月9日)
共有著作物の代表の地位にないことの確認事件
原告と被告とは、あるシンガーソングライターの著作物を共有し、被告を共有著作権者の代表者とすることに合意していた(著作権法65条、64条参照)。
ところが、被告はJASRACから分配された印税の再分配義務を怠った。そこで、原告は代表者とする旨の合意を解約し、被告がもはやその地位にないことの確認を求めるべく訴えに及んだ。音楽著作物の共有関係は珍しいことではないが、その不払いを理由として、代表者を指定する合意を解約し、裁判でその効力を確認したケースとしては、最初の判例であろう。
第一審(平成13年(ワ)第14173号 代表出版社の地位不存在確認請求)は、即日結審し、その日のうちに調書判決を行った。第二審(平成13年(ネ)第25209号 代表出版社の地位不存在確認請求控訴)も同様に一回で結審し、上告審(平成14年(オ)第661号 代表出版社の地位不存在確認請求上告)も極めて早期に判断を示し、原告の訴えを認めた。
『空クレジット』保証契約の錯誤無効事件
クレジット契約の基礎となっている売買契約が架空のものであった場合(いわゆる「空クレジット」)、真実売買があったものと信じて保証した者は、保証行為に錯誤があったことを抗弁として、保証契約の無効を主張できるとした事例
最高裁判所(第一小法廷)平成14年7月11日判決。一審(東京地裁 平成10年3月23日判決 )、原審(東京高裁 平成11年2月9日判決)は、いずれも、クレジット契約が金融であることを理由に、売買が架空であっても錯誤の抗弁は成立しないとしていた。
下級審の判決は、これまで錯誤を認めるか否かで分かれていた。
本件最高裁判決は空クレジットの保証人となって泣かされてきた多くの人々にとっては福音といえる。また同種事案としていわゆる「空リース」の問題があるので、本判決がここに及ぶものとすると、金融実務に与える影響は極めて大きい。なお、本件における当事務所の役割は応援部隊にすぎず、主たる働きは岡本敬一郎弁護士(東京都豊島区東池袋1-20-2 ホワイトハウスビル503号 池袋サンシャイン法律事務所)の献身にある。
(最高裁判所第一小法廷 平成14年7月11日判決 平成11年(受)602号)
キング・クリムゾン事件
パブリシティー権と表現の自由の関係を詳細に論じた事例
一審(東京地裁平成8年(ワ)第11327号損害賠償等請求事件)は、請求棄却。東京高裁判決(平成11年2月24日、平成10年(ネ)第673号損害賠償等請求事件)は、これを逆転。上告されたが(平成11年(第805号事件)、最高裁(第1小法廷)は、平成12年11月9日上告棄却を決定。
別冊ジュリスト「著作権判例百選(第三版)」P196以下
ユベントス商標事件
「ユベントス」なる国内商標をもって、ユベントスチームのオフィシャルグッズの輸入を差止めんとする行為が国際的商標秩序に反する権利濫用であるとされ退けられた事例
(東京地裁平成12年3月23日判決、平成8年(ワ)5748号)
商業用レコードの二次使用料許諾請求事件
原告は、「レコードの製作を業とする者の相当数を構成する団体」(著作権法第97条第3項参照)であり、被告は有線放送事業者である。
商業用レコードの二次使用料請求権については、隣接権者たる実演家(同95条)、レコード製作者(同97条)と本件被告を含む放送事業者との間に、二次使用料をいかにして算定するかの争いがかねてよりあった。
本件は、著作権法95条10項、同11項に定める協議又は裁定方式との関係上との争いを、訴訟によって決着をつけることが可能か否か、について判断をしたもの。判決(平成11年11月30日)は、被告の主張を認め、まず協議によって決定する努力をし、(95条10項)、その協議が整わないときは専ら裁定(同11項)によるべきとした。原告は控訴したが、結局控訴審において、一審判決の考えに基づき和解が成立した。
これに先立って、上記有線放送事業者と実演家団体との間の同種事件では、一審で早々に専門部調停での協議が始まり、協議によって合理的算定方式(過去・現在の使用料の解決と、将来自動的に算出しうる算式)を合意し、専門部調停設定後の第1号事件として決着していた。本件控訴審の和解内容も、これに準拠したものである。
(東京地裁平成8年(ワ)第23932号、東京高裁平成12年(ネ)第123号)
写真コーヒーの花使用料事件
契約書のない取引における「通常受けるべき損害」につき、同一当事者間の先行取引の使用料を根拠とし、かつ多数使用における使用料の低減化を認めた事例
(東京地裁平成10年11月26日判決、平成10年(ワ)7420号損害賠償請求事件)
別冊ジュリスト「著作権判例百選(第三版)」P204以下
不倫殺人高裁破棄自判事件
自首の要件たる「官に発覚せざる前」の機械的・形式的解釈を退けたうえ、原審の懲役6年を懲役4年6月に変更した事例
被疑事実が捜査機関に発覚したのは、被疑者の自首の申告が官に到達するよりも前ではあったが、被疑者の申告行為への着手は官に発覚するよりも前であった場合において、自首を認めなかった原判決を破棄し、平成7年12月4日東京高裁刑事部は、自首を認めた。今では、司法試験択一問題のポピュラーな事案となっている。
(東京高裁平成7年12月4日判決、平成7年(う)1228号殺人被告事件)
判例時報1556号 P148以下/判例評論455号 P223以下
『究極の選択』事件
『究極の選択』という遊びが流行したことがある。この名称をラジオ番組のコーナー名として使用していた放送局が、この名称を用いて書籍を発行した三つの出版社に対して、各社の題号によって各社と放送との出所の誤認混同を生ずるとして、出版禁止等の仮処分を求めた事件。
裁判所は、『究極の選択』という名称が普通名称であることを理由として不正競争防止法違反の請求を退けた(一審で確定)。
(東京地裁平成2年2月28日判決、平成元(ヨ)2530号、2538号 不正競争仮処分申請事件)
執筆
書籍「Q&A 引用・転載の実務と著作権法」(監修 北村行夫、雪丸真吾)
中央経済社 2005年2月20日発行
書籍「新版 判例から学ぶ著作権」(北村行夫)
太田出版 2004年8月20日発行
研究報告書「映像コンテンツに係る著作権の帰属に関する研究会報告書」(同研究会一員として 北村行夫)
平成15年度経産省委託研究調査事業
書籍「機械可読的に提供・提示される著作物における改変と改変ツールの提供者の責任」(北村行夫)
「著作権法と民法の現代的課題 半田先生古稀記念論集」 法学書院 2003年3月1日発行
書籍「人の肖像と物の肖像」(北村行夫)
「写真著作権」 監修 (社)日本写真家協会 編集 日本写真家ユニオン 2003年2月5日発行
書籍「第一線で活躍するプロデューサーのための対クライアント著作権契約ハンドブック」(監修 北村行夫、大井法子)
(社)映像制作者連盟 業務委員会 著作権部会編
書籍「教えて先生! ペットのトラブル 法律Q&A」(吉田朋 ほか1名)
税務経理協会 平成13年9月1日発行
書籍「借金の新しい整理方法を教えます -個人民事再生のすすめ」(吉田朋 ほか1名)
税務経理協会 平成13年4月1日発行
書籍「IT 2001 それが問題だ」(北村行夫ほか分担執筆)
岩波書店 2001年
書籍「クリエーター・編集者のための引用ハンドブック」(北村行夫ほか分担執筆)
太田出版 1998年12月8日発行
書籍「判例から学ぶ著作権」(北村行夫)
太田出版 1996年6月22日
書籍「報道被害対策マニュアル」(北村行夫ほか分担執筆)
東京弁護士会人権擁護委員会編 1996年1月発行
講演録 平成13年度「市民のための著作権講座 -『マルチメディア』・インターネットの時代と著作権」(北村行夫)
(社)著作権情報センター
講演録 平成12年度「市民のための著作権講座 -ネット社会で躓かないために」(北村行夫)
(社)著作権情報センター
講演録 平成11年度「市民のための著作権講座 -著作物の利用と著作権制度」(北村行夫)
(社)著作権情報センター
講演録 平成10年度「市民のための著作権講座 -転ばぬ先の著作権」(北村行夫)
(社)著作権情報センター
判例解説「高校総体ホームページCD-ROM化事件」(北村行夫)
別冊NBL NO.79「サイバー法解説」所収 P12~
判例解説「スイートホーム事件」(北村行夫)
別冊ジュリスト 著作権判例百選第3版 P188~
判例紹介「絵画の著作物について、複製権、翻案権の侵害が否定されたケース」(中島龍生)
著作権情報センター「コピライト」2001年5月号
判例紹介「建築エスキースの広告使用と死後の人格的利益」(大江修子)
著作権情報センター「コピライト」2001年3月号
判例紹介「共同著作物に関して共同著作者からの発行同意請求を拒む正当な理由があるとされた事件」(大井法子)
著作権情報センター「コピライト」2001年1月号
論文 Q&Aで学ぶ著作権「出所不明の引用は違法か」(北村行夫)
JUCC通信71号 2000年9月
巷談 インターネット基礎の基礎「ウエブサイト作りと権利」(北京亭八宝菜)
JUCC通信71号 2000年9月
論文 著作権トピックス「ナップスター事件の根本 -著作権後進国を露呈したベンチャー先進国アメリカ」(北村行夫)
JUCC通信70号 2000年8月
判例紹介 著作権判例より「ロゴマークAsahi事件 -東京高裁平成8年1月25日判決」(北村行夫)
JUCC通信69号 2000年7月
論文 Q&Aで学ぶ著作権「生徒の作文を企業が使いたい」(北村行夫)
JUCC通信69号 2000年7月
講師
講演「e-LEARNINGと著作権」
平成17年1月7日 長岡技術科学大学(東京・青山)
講演「市民のための著作権講座(メディア技術と著作権)」
平成16年10月29日 (社)著作権情報センター(新潟)
講演「NPO(特定非営利活動法人)日本パテントワーク協会(大井法子)」
平成15年11月~ パテントワークスクール著作権法講師
講演「新ネットワーク時代のコンテンツ運用」(北村行夫)
平成15年10月24日 シュヴァン コピライト研究会(東京・民放連会議室)
講演 東京地裁判決「超時空要塞マクロス」(大井法子)
平成15年7月14日 著作権法学会主催 著作権判例研究会報告
講演「デジタル技術・メディア・著作権」(北村行夫)
平成15年5月28日 (社)著作権情報センター(愛知)
講演「デジタル社会において出版社が有する資産を活用するために」(大江修子)
平成15年4月25日 デジタルパブリッシングフェア(東京・有明)
講演「顧客吸引力理論の破綻とパブリシティ権論の再構築」(北村行夫)
平成15年2月19日 (社)著作権情報センター
講演「広告制作実務と著作権」(北村行夫)
平成14年11月22日 (社)日本広告制作協会(東京・日本青年館)
講演「デジタル化に伴なう著作権契約の要点」(北村行夫)
平成14年4月19日 デジタルパブリッシングフェア(東京・有明)
講演「出版のデジタル化と著作権契約の課題」(北村行夫)
平成13年4月19日 国際ブックフェア(東京・有明)
講演「インターネットと著作権」(北村行夫)
平成13年3月9日 科学技術振興事業団・情報管理実務研修会(大阪)
講演「最近の著作権判例について」(北村行夫)
- 中古ゲームソフト東京地裁判決
- 同 大阪地裁判決
- 三島由紀夫手紙無断複製事件
- 「脱ゴーマニズム宣言」事件
- 「キャンディキャンディ」事件
平成11年11月10日 (社)日本著作権協議会 専門学委員会講演(東京)
講演「情報化社会と著作権」(北村行夫)
平成11年1月26日 著作権情報センター(東京)
講演録 著作権情報センター「コピライト」1999年3月号
【オンライン販売】 定価500円