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【事件名】ゲームソフト「ファイアーエムブレム(FE)」事件(2)
【年月日】平成16年11月24日
 東京高裁 平成14年(ネ)第6311号 不正競争行為差止等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成13年(ワ)第15594号)
 (平成16年7月26日 口頭弁論終結)

判決
控訴人(原告) 任天堂株式会社(以下「控訴人任天堂」という。)
控訴人(原告) 株式会社インテリジェントシステムズ(以下「控訴人イズ」という。)
控訴人ら訴訟代理人弁護士 青柳ヤ子
同 林いづみ
被控訴人(被告) 株式会社エンターブレイン(以下「被控訴人エンターブレイン」という。)
被控訴人(被告) 有限会社ティルナノーグ(以下「被控訴人ティルナノーグ」という。)
被控訴人(被告) A(以下「被控訴人A」という。)
被控訴人ら訴訟代理人弁護士 宇都宮秀樹
同 小野寺良文
同 早川学
同 末吉亙


主文
1 控訴人イズの控訴をいずれも棄却する。
2 控訴人任天堂の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人らは、控訴人任天堂に対し、連帯して7646万7720円及びこれに対する平成13年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人任天堂のその余の請求(当審の追加請求を含む。)をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じ、(1)控訴人イズと被控訴人らとの間においては、控訴人イズに生じた費用の全部及び被控訴人らに生じた各費用の2分の1を控訴人イズの負担とし、(2)控訴人任天堂と被控訴人らとの間においては、控訴人任天堂に生じた費用の3分の1と被控訴人らに生じた上記費用のうち控訴人イズに負担させた部分を除くその余の部分(2分の1)の3分の1とは、被控訴人らの負担とし、控訴人任天堂及び被控訴人らに生じたその余の費用をいずれも控訴人任天堂の負担とする。
4 この判決は、第2項(1)に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 控訴人らの求めた裁判
1 原判決を取り消す。
2(1) 被控訴人エンターブレイン及び被控訴人ティルナノーグは、プレイステーション版ゲームソフト「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」(発売元 被控訴人株式会社エンターブレイン)を製造、販売、頒布してはならない。
(2) 被控訴人らは、控訴人任天堂に対し、連帯して1億2915万円及びこれに対する平成13年8月8日(訴状送達の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被控訴人らは、控訴人イズに対し、連帯して1億2915万円及びこれに対する平成13年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 仮に、控訴人イズが不正競争防止法上の請求主体と認められない場合には、被控訴人らは、控訴人任天堂に対し、連帯して2億5830万円(上記(2)の1億2915万円を含む。)及びこれに対する平成13年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じ、被控訴人らの負担とする。
4 仮執行の宣言。
第2 事案の概要
1 事案の概要
 本件は、控訴人らが、被控訴人らに対し、@被控訴人らが製造、販売等するゲームソフトは、控訴人らが著作権を有するゲームソフトを翻案したものであるか、又は、A被控訴人らによる被控訴人らの上記ゲームソフトの製造、販売等の行為は、控訴人らの周知・著名なゲームシリーズの商品等表示を使用するなどして、他人の商品等と混同を生じさせる不正競争行為である、と主張し、@著作権法に基づき、又は、A不正競争防止法に基づき、損害賠償の支払いを求めるとともに、被控訴人エンターブレイン及び被控訴人ティルナノーグに対し、被控訴人らの上記ゲームソフトの製造、販売、頒布の差止めを求めた事案である。
2 原判決は、@被控訴人らの上記ゲームソフトは控訴人らが著作権を有するゲームソフトの翻案には該当せず、また、A被控訴人らの上記行為は不正競争行為に当たらないとして、控訴人らの請求をいずれも棄却した。そこで、控訴人らは、原判決を不服として、本件控訴を提起した。
3 控訴人らは、当審において、著作権法に基づく請求を主位的請求とし、不正競争防止法に基づく請求を予備的請求とするとともに、控訴人イズが不正競争防止法上の請求主体と認められない場合につき、上記第1の2(4)のとおり、損害賠償請求を追加(増額)した。
 控訴人らの主張は、後記第4のとおりであるが、原審における主張と相違する主要な点は、以下のとおりである。
(1) 著作権法に基づく請求について
(ア) 控訴人らは、当審では、原審において主張していた「外伝」(ゲームの略称については後出のとおり。他のゲームにつき同じ。)の全体マップ部分の著作物の翻案、「聖戦の系譜」及び「紋章の謎」のゲームソフトにおける登場人物等の影像の著作物の翻案の主張を行わないこととした。したがって、「トラキア」のゲームソフトの翻案のみが当審では問題となる。
(イ) 「トラキア」の著作物の翻案の内容について、控訴人らは、当審において、@被控訴人ゲームの全体が「トラキア」全体の翻案となる、又は、A被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」が「トラキア」全体の翻案となる、又は、B被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」が「トラキア」の「戦闘マップをプレイする場面」の翻案となる、との選択的主張を行った。
(ウ) 控訴人らは、当審において、「トラキア」と被控訴人ゲームのゲームソフトに共通する表現形式として、別紙1記載のとおり主張した。
(2) 不正競争防止法に基づく請求について
 控訴人らは、当審において、控訴人ゲーム及び被控訴人ゲームの影像表示を、別紙3のとおり主張した。
4 前提となる事実(争いのない事実)
(1) 当事者
 控訴人任天堂は、家庭用ビデオゲーム機及びゲームソフトなどの開発、製造、販売等並びにキャラクター商品化業務等を業とする会社であり、控訴人イズは、コンピューターソフトウエアの設計、販売等を業とする会社である。
 被控訴人Aは、昭和63年3月31日から平成11年8月15日まで被控訴人イズの従業員(退職時における役職は開発部部長)であった者である。
 被控訴人ティルナノーグは、被控訴人Aが、控訴人イズに在職中の平成11年7月27日に設立したもので、コンピュータソフトウェアの設計、販売等を業とする会社であり、設立以来現在に至るまで、被控訴人Aが代表者を務めている。
 被控訴人エンターブレインは、株式会社アスキーの子会社で、書籍・雑誌の出版、販売、コンピューター関連のソフトウェアの製造販売等を業とする会社である。
(2) 控訴人らによるゲームソフトの制作、製造、販売
 控訴人イズは、以下のアないしオの各ゲームソフト(商品名ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフト。以下、アを「暗黒竜と光の剣」、イを「外伝」、ウを「紋章の謎」、エを「聖戦の系譜」、オを「トラキア」といい、アないしオを総称するときは、「控訴人ゲーム」又は「ファイアーエムブレム・シリーズ」という。)をファミコン又はスーパーファミコン用に制作し、控訴人任天堂は、控訴人イズの使用許諾に基づいて、控訴人ゲームを製造、販売した。
ア ファミリーコンピュータ用ゲームソフト
 タイトル:「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」
 発売年月日:平成2年4月20日
イ ファミリーコンピュータ用ゲームソフト
 タイトル:「ファイアーエムブレム 外伝」
 発売年月日:平成4年3月14日
ウ スーパーファミコン用ゲームソフト
 タイトル:「ファイアーエムブレム 紋章の謎」
 発売年月日:平成6年1月21日
エ スーパーファミコン用ゲームソフト
 タイトル:「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」
 発売年月日:平成8年5月14日
オ スーパーファミコン用ゲームソフト
 タイトル:「ファイアーエムブレム トラキア776」
 発売年月日:平成11年9月1日
(3) 被控訴人らの行為
 被控訴人Aは、被控訴人ティルナノーグ代表者として、プレイステーション用ゲームソフト商品(商品名「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」、発売元は被控訴人エンターブレイン。以下「被控訴人ゲーム」という。)の制作行為に主体的に関与し、その関与の下に、被控訴人ティルナノーグと被控訴人エンターブレインは、被控訴人ゲームを共同して制作した。
 被控訴人ゲームの旧名称は、「エムブレムサーガ」であり、被控訴人らは、ゲーム雑誌等の雑誌、インターネット公式サイト、テレビコマーシャル、販売促進用ビデオ、ポスターの掲示、テレフォンカードキャンペーン、雑誌付録体験版ソフト、体験版ソフトの特典付き予約キャンペーンなどにおいて、この表示を使用した。
 平成13年4月2日ころ、被控訴人らは、被控訴人ゲームの名称を「エムブレムサーガ」から「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」に変更し、同年5月24日以降、被控訴人エンターブレイン及び被控訴人ティルナノーグは、発売元を被控訴人エンターブレインとして被控訴人ゲームを販売している。
 被控訴人ゲームの旧名称である「エムブレムサーガ」との表示は、名称変更後もプレイステーションドットコムのホームページで使用されるなど第三者によって使用が続けられている。
(4) 著作権の持分譲渡
 控訴人イズは、平成13年4月17日、控訴人任天堂に対し、トラキアにかかる著作権の持分2分の1を譲渡する旨合意した。
(5) 被控訴人ゲームの販売実績等
 被控訴人ゲームは、平成13年5月24日の発売開始以来、同年7月8日現在で、34万5430本が販売されており、その希望小売価格は1本当たり6800円であるから、販売総額は、23億4892万4000円である。
第3 本件の争点
1 著作権法に基づく請求(主位的請求)
(1) トラキアの著作権の控訴人イズへの帰属
(2) 被控訴人ゲームは、トラキアの翻案に該当するか
(3) トラキアへの依拠の有無
(4) 被控訴人らの故意又は過失の有無
(5) 損害額
2 不正競争防止法に基づく請求(予備的請求)
(1) 控訴人イズは、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「他人」に該当するか
(2) 控訴人ゲームの商品等表示(「ファイアーエムブレム」との表示、「エムブレム」との表示、影像とその変化の態様)は、商品等表示性を有し、周知又は著名か
(3) 控訴人ゲームの上記各商品等表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」との表示はそれぞれ類似しているか。
(4) 被控訴人らの行為は混同を生じさせる行為に当たるか
(5) 差止請求の要件の充足性
(6) 被控訴人らの故意又は過失の有無
(7) 被控訴人らの行為と損害の因果関係及び損害額
第4 争点についての当事者の主張
第4-1 著作権法に基づく請求(主位的請求)について
(控訴人らの主張)
1 著作権の帰属
 法人たる控訴人イズは、自らの発意に基づき、その業務に従事する者をしてゲームソフトの著作物であるトラキアを職務上作成させ、自己の著作の名義の下に公表した。したがって、控訴人イズは、著作権法15条1項の「職務上作成する著作物の著作者」との要件を充足している。
 被控訴人らは、トラキアは控訴人イズの名義で公表することが予定されていなかったと主張するが、トラキアは控訴人イズの発意に基づき、被控訴人Aを含む控訴人イズの従業員が職務上作成したものであり、将来控訴人イズの名義の下に公表することについて控訴人イズと被控訴人Aを含む従業員との間で了解が存在していたものであるから、「公表」の要件を充足する。
2 被控訴人ゲームはトラキアの翻案に該当するかどうか 
(1) 侵害著作物及び被侵害著作物(選択的主張)
 被控訴人ゲームは、@その全体がトラキア全体を翻案し(選択的主張1)、又は、Aその一部である「戦闘マップをプレイする場面」(範囲については後記(3)(ウ)記載のとおり)がトラキア全体を翻案し(選択的主張2)、又は、Bその一部である「戦闘マップをプレイする場面」がトラキアの一部である「戦闘マップをプレイする場面」を翻案した(選択的主張3)ものである。
(2) 翻案の意義及び判断基準
(ア) 翻案とは「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為」(最一小判平成13年6月28日民集55巻4号837頁、以下「江差追分事件上告審判決」という。)をいう。このように、翻案は、原著作物を利用して創作性を加え、別個の著作物である二次的著作物を創作する行為であるから、二次的著作物と原著作物との間に著作物としての同一性は失われているが、原著作物と二次的著作物の特徴の同一性が維持されている場合に成立する。原著作物の特徴の同一性が失われるに至ったかどうかは、原著作物を知る者が、二次的著作物に接した場合に、原著作物の「表現上の本質的な特徴」を感得できるどうかにより判断される。
(イ) 翻案に該当するかどうかは、まず、原著作物と二次的著作物とを対比し、共通する表現形式と異なる表現形式を把握し、次に、共通する表現形式と異なる表現形式について、それぞれの創作性の存在及び程度を検討し、最後に、両者の相関関係を比較衡量して、全体的・総合的観察を行うことにより判断されるべきである。そして、全体的・総合的観察を行うに当たっては、@異なる表現形式に創作性があっても、共通する表現形式が創作性の高い部分に存在すれば、原著作物の創作的な表現形式の特徴の同一性が肯定されるという点(創作性の質)、A二次的著作物によって利用された表現形式の量が多いほど、原著作物の創作的な表現形式の特徴の同一性が肯定されるという点(創作性の量)、B原著作物の創作的な表現形式やその特徴が、外面的・具体的な表現形式から、より内面的・抽象的な表現形式として把握される部分に認められるに従って、そこから外面に向けて表現する選択の幅をすべて包含し得ることになるから、表現形式の特徴の同一性の範囲が広く認められやすいとの点を考慮すべきである。
(3) トラキアの概要
 翻案の判断は、著作物の性質や内容に基づいて行うことが必要であるところ、トラキアの概要は、以下のとおりである。
(ア) 基本ストーリー
 トラキアは、戦略性の高い戦闘システムと壮大なシナリオを満喫できるシミュレーション・ロールプレイング・ゲーム(以下「SRPG」という。)である。西洋中世をモチーフとして、ペガサスユニット、ドラゴンユニット、魔道士ユニットなども登場するファンタジーな世界を背景とし、架空の大陸における架空の小王国、小公国、小領主国間の戦乱を舞台とする。主人公は、亡国の少年王子である。プレイヤーは、西洋中世風の架空の要塞、山岳地帯、領主館内、峡谷、森林地帯、民家の点在する村、城内、祭壇等を背景とし、章立てで次々と表示されるマップ上で、主人公や自軍ユニットを移動させ、戦闘等を行って仲間を増やし、成長させ、敵側を制圧する。死亡したユニットは原則として生き返らず、主人公の死亡によってゲームオーバーとなる。
(イ) 登場ユニット
 トラキアには、敵国に祖国を追われ王国再興のために立ち上がる亡国の王子である主人公と、主人公を助けて共に敵を制圧する自軍ユニットと、相手方となる敵軍ユニットが登場する。トラキアでユニットとして登場する人物は全95人であるが、これを分類すると、主人公ユニット、ペガサスユニット、ドラゴンユニット、馬ユニット、踊れるユニット、杖ユニット、魔道士ユニット、斧ユニット、弓ユニット、剣ユニット、アーマーユニット、盗賊ユニットの合計12種に分類される。
(ウ) 全体構成
 トラキアにおいては、タイトル画面の後、ゲームの舞台となる架空の大陸全体のマップ(以下「全体マップ」という。)が画面表示される。この全体マップは、セピア色の古地図として表現されており、個々の戦闘マップの所在場所とこれらをつなぐ道等を表現している。全体マップの画面上には、自軍ユニットの移動に関連するストーリーが文字で順次表示され、移動すべきポイントの説明が終わると、画面は戦闘の行われるマップ(以下「戦闘マップ」という。)へと移行する。
 戦闘マップは、西洋中世風の要塞、領主館内、山岳地帯、峡谷、民家の点在する村、城内、祭壇等を背景とする複数のマップであり、それぞれが章立てられてタイトルがつけられている。戦闘マップ画面への移行後、プレイヤーは、そのマップの地形等を出撃前スクロールで確認したり、出撃前の自軍ユニットの編成、ユニットの所持するアイテムの編集をしたりする(以下、この場面を「戦闘前の出撃準備場面」という。)。その上で、メニューコマンドで「進撃」を選択すると、戦闘が開始される前に、戦闘前の会話場面が画面表示される。
 戦闘前の会話場面が終了すると、自軍ユニットと敵軍ユニットが戦闘を行う場面となり、プレイヤーがカーソルを操作して自軍ユニットを行動させる局面(以下「自軍ターン」という。)と、コンピューターが自動的に敵軍ユニットを行動させる局面(以下「敵軍ターン」という。)がマップクリアまで交互に繰り返される(以下、この場面を「戦闘マップをプレイする場面」という。)。自軍ターンにおいてプレイヤーが自軍ユニットに行わせることができる行動は、@待機、A攻撃、Bその他の行動(後記の共通表現(9)ないし(42))であり、プレイヤーが「攻撃」を選択すると、自軍と敵軍のユニットが1対1で戦う場面が、設定により自動的に、アニメーション切替戦闘場面又はオンマップバトル場面の形式で表示される。この自軍ターンと敵軍ターンの繰返しは、プレイヤーが各戦闘マップに設けられたクリア条件を達成するまで続けられ、クリア条件を達成すると、当該戦闘マップをクリアしたことになる。
 1つの戦闘マップをクリアすると、各戦闘マップ用に用意された会話の場面が自動的に影像表示され、次の戦闘マップに直接移行するか、一度全体マップに戻った後に次の戦闘マップに移行する。こうして、プレイヤーは、戦闘マップを順次クリアして、最終の戦闘マップをクリアすると、ゲームクリアとなってエンディング場面に至る。
(4) 被控訴人ゲームの概要
 他方、被控訴人ゲームの概要は、基本ストーリー及び全体構成において、トラキアと同一である。また、登場ユニットについても、その登場人数は異なるものの、トラキアと同一の12種類に分類することができ、亡国の王子である主人公と、主人公を助ける自軍ユニットと、相手方となる敵軍ユニットが登場する点も同一である(以下、被控訴人ゲームについても、「全体マップ」「戦闘マップ」「戦闘前の出撃準備場面」「戦闘マップをプレイする場面」「自軍ターン」「敵軍ターン」等の用語を用いるが、その意味及び範囲は、特に断らない限り、上記(3)と同じである。)。
(5) トラキア及び被控訴人ゲームの著作物としての種類及び性質
 トラキア及び被控訴人ゲームは、@映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されており(表現方法の要件)、A物に固定されており(存在形式の要件)、B著作物であるから(内容の要件)、著作権法2条3項の「映画の著作物」であり、その「戦闘マップをプレイする場面」も「映画の著作物」に該当する(最一小判平成14年4月25日民集56巻4号808頁、以下「中古ゲームソフト事件上告審判決」という。)。
 被控訴人らは、トラキア及び被控訴人ゲームが「映画の著作物」に該当することは争わないものの、通常の映画と異なり、ゲームソフトには表現上の制約があると主張するが、プレイステーション用ゲームソフトである被控訴人ゲームは、容量も豊富であり、ハード機の性能あるいは記録媒体の性能による制約は考えられない。また、控訴人らは、ゲームソフトのインタラクティブ性によりゲームソフトの個々の影像の持つ意味は小さいと主張するが、プレイヤーはあらかじめゲームソフトの制作者によって創作、演出された基本的な場面展開のパターンの範囲内で限られた操作や選択を行うにすぎないのであるから、インタラクティブ性が翻案判断に影響を及ぼすことはない。SRPGのゲームソフトは、機能の実現を目的とするものではなく、無数の表現の選択肢の中から視聴覚的表現を創作していくものであるから、その表現の選択肢の豊富さにおいて古典的な著作物である小説等と何ら変わりがないのである。
(6) トラキアにおける表現上の本質的な特徴
 著作物の表現上の本質的な特徴がどこに示されるかは、各著作物の内容や性質により異なるため、著作物の性質に即した判断が必要であるところ、映画の著作物であるトラキアにおいて、表現上の本質的な特徴が現れているのは、「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の視聴覚的表現である。
 そもそも、ゲームソフトは、プレイヤーの操作に応じて視聴覚的に表現される影像により楽しむものである。ゲームシステムは、プレイヤーを遊ばせるためのゲーム全体の仕組みであり、ゲームソフトに特有のインタラクティブなコントローラ操作によって影像を進行させ、切替え、又は変化を与えるものであるから、ゲームソフトにおいてはインタラクティブなゲームシステムの創作が最も重要である。すなわち、ゲームソフトの根幹はゲームシステムにあるといってよい。
 トラキアにおいて、プレイヤーがインタラクティブなコントローラ操作により戦闘をプレイして楽しむ唯一の場面は、「戦闘マップをプレイする場面」である。この場面は、繰り返して映写され、場面の展開、場面の切替え、視点の切替え、照明演出等にも工夫が凝らされ、複雑かつ統一された進行内容の連続影像表現からなっている。したがって、「戦闘マップをプレイする場面」は、著作者の創作、個性が結集している場面であり、それゆえに、この場面における連続影像表現は最も特徴的かつ個性的なものとなっている。
 被控訴人らは、ストーリーがトラキアの本質的な場面であると主張するが、ゲームシステムの創作上の重要性に比すると、被控訴人らのいうストーリーの重要性は低い。特に、会話のセリフは、ゲームシステムが制作され、キャラクターが制作されてからゲームシステムやキャラクターの特徴に応じて創作されるものであり、ゲームシステムを変えることなく多種多様なセリフに差し替えることも可能である。このように、ストーリーの重要性は低いため、トラキア及び被控訴人ゲームのプレイヤーは、全体マップ上の文字画面、戦闘前会話の画面の会話場面等をキャンセル機能によりとばしてプレイすることができるが、本質的な部分である「戦闘マップをプレイする場面」にはキャンセル機能は付されていないので、とばすことはできない。
 以上のとおり、「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の視聴覚的表現こそが、トラキアの著作物としての本質的な特徴部分となるものであり、この点は、被控訴人ゲームについても同様である。
(7) トラキアと被控訴人ゲームの共通する表現形式
 トラキア及び被控訴人ゲームは、「人物や背景等が動画として視聴覚的に表現され、その影像に音声、効果音や背景音楽を連動させて視聴覚的効果を生じさせ、視点や場面の切替え、照明演出等が行われ」(前記中古ゲームソフト事件上告審判決)て視聴覚的に表現されるゲームソフトの著作物であるから、トラキアと被控訴人ゲームに共通する表現形式も当然のことながら動画として視聴覚的に表現されたものであり、いずれの表現も一つのまとまりをもった連続影像による視聴覚的表現の総体である。このことを前提として、両ゲームに共通する表現形式を言語をもって説明すると、別紙1「控訴人らの主張する共通表現」記載のとおりである(以下、別紙1記載の(1)ないし(42)を総称するときは「本件共通表現」といい、個別に指すときは「共通表現(1)」のようにいう。)。
(8) 本件共通表現の創作性
 原著作物と二次的著作物との間に共通する表現が存在したとしても、それが「思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件等表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分」である場合は、翻案権侵害には当たらないが(前記江差追分事件上告審判決参照)、以下のとおり、本件共通表現の創作性は肯定される。
(ア) 創作性の定義については、著作権法上に規定がないが、著作権法における創作性が認められるためには、審美的な価値、独創性、新規性、進歩性等を有する高度な創作性は必要ないと解すべきである。そして、「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的や、過度の独占による弊害回避という観点を考慮すれば、あらゆる種類の著作物にあてはまる基準として、表現する上で他の選択肢がないかあるいは極めて選択肢が限られる場合には創作性は認められないものの、同じ思想、事実等を表現する上で他の選択肢が残されている場合には創作性は認められる、と解すべきである(中山信弘「創作性についての基本的考え方」著作権研究28号2頁等)。
(イ) 創作性の判断においては、共通する表現形式を一つのまとまりとして評価すべきであり、まとまりとして創作性を有する部分を創作性のない部分に細分化して、その表現がアイデアであるとか、創作性がないとすべきではない。本件共通表現は、影像の動的変化と音を一つのまとまりとして連続影像で表現したものであるから、動的に変化する影像やこれに加えられた視点や場面の切替えなどの視聴覚的表現方法を総合して、創作性が評価されなければならない。とりわけ、共通表現(6)ないし(42)は、基本的には「戦闘マップをプレイする場面」上におけるユニットの1回の行動の表現として創作されており、ユニットに当該行動を行わせると、必ず同一の配置と順序構成によって内容表現がなされる。したがって、カーソルを合わせてユニットを選択すれば、あとは創作がなされた配置と順序構成によって、一連の連続影像が場面展開や場面切替えなどを伴って表現され、その行動を終了してはじめて、再びカーソル操作の場面に戻る。このように、本件共通表現は、まとまりのある連続影像表現として、その創作性が評価されるべきである。
(ウ) 前記のとおり、トラキアは映画の著作物であり、その視聴覚的表現は、視点や場面の切替えや照明演出に工夫することにより影像の動的変化や音として表現される。このように影像が動的に変化をしていく各種場面における具体的な表現形式には無数の選択肢があり、またこれらの場面の表現をどのように連続影像としてつなぎ合わせていくかなどについても多様な創作が可能であるから、全体的な表現としての選択の幅は極めて広くなるといってよい。本件共通表現は、かかる影像の動的変化と音による表現にほかならないのであるから、創作性を有するというべきである。そのように解しても、後発者による表現の選択の幅は多様に残されているのであるから、後発者はトラキアの本件共通表現と同一の表現を選択する必然性はなく、後発者によるSRPGの正当な創作を何ら妨げるものではない。
(9) トラキアと被控訴人ゲームの相違する表現形式の存否と評価
 トラキアと被控訴人ゲームの相違する表現に関し、被控訴人らは、被控訴人ゲームにおいて新たな制作行為を行ったのであるから、この点を翻案の判断において考慮すべきであると主張する。しかしながら、そもそも、翻案権とは、原著作物を利用して創作性を加え、別個の著作物を創作する権利であるから、単に新たな表現が付加されたからといって翻案該当性が否定されるわけではない。新たな表現が付加されても、原著作物の表現の特徴との同一性が維持されている限り、翻案は成立する。以上を前提として、被控訴人らの主張する両ゲームの相違部分について反論する。
(ア) 被控訴人らは、トラキアと被控訴人ゲームとではストーリーが全く異なると主張する。
 しかしながら、トラキアと被控訴人ゲームが、対戦場所(背景となる地形等)、対戦相手(敵軍ユニット)、前置き(キャンセル可能な会話場面のセリフ文字)という外面的表現形式において相違しているとしても、プレイヤーの操作によって繰り広げられるゲームソフトとしての本質的な遊戯内容の視聴覚的表現は全く同一であるから、内面的・抽象的な表現形式としては同一であるということができ、異なる表現形式とは把握されない。
 また、被控訴人らはセリフ文字の違いも主張するが、セリフ文字を異にしても、プレイヤーの操作によって繰り広げられるゲームソフトとしての本質的な遊戯内容の視聴覚的表現は全く同一であるから、内面的・抽象的な表現形式としては同一であるということができ、異なる表現形式とは把握されない。しかも、セリフ文字は、キャンセル機能によってキャンセルすれば、画面上に表示自体がなされない上、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」におけるセリフは全体の21.5%を占めるにすぎず、残りのセリフは選択的主張2及び3に関しては、相違点にもならない。
(イ) 被控訴人らは、武器や兵種の名称のつけ方、マップの名前のつけ方、登場人物の具体的な髪型、ウィンドウの細かい装飾、移動及び攻撃範囲の色合いなどが相違すると主張する。しかし、これらの点についての相違はごくわずかであり、創作的な価値はないものであるから、創作性を比較衡量する上で考慮するに足る表現形式ということはできない。
(ウ) 被控訴人らは、被控訴人ゲームは、マップ数や遭遇戦を設けている点においてトラキアと相違すると主張する。しかしながら、両ゲームソフトの視聴覚的表現の翻案が審理対象であるから、視聴覚著作物の創作性を比較衡量するための異なる表現形式として把握されるのは、創作的な視聴覚著作物でなければならない。しかしながら、被控訴人らが主張する上記相違点は視聴覚著作物としての表現形式の相違ではないから、異なる表現形式としては把握されない。また、被控訴人らはコマンドも相違すると主張するが、被控訴人らの指摘するのは、コマンドの名称やコマンドの内容に関するアイデアの相違にすぎず、ゲームソフトにおける創作的な視聴覚的表現の相違ではない。したがって、この点も、視聴覚的表現の創作性の比較衡量をなすべき異なる表現形式ということはできない。
(エ) 被控訴人らは、トップビューの戦闘マップの背景や、サイドビューの切替戦闘の背景が相違すると主張する。しかしながら、トラキアの「戦闘マップをプレイする場面」の戦闘マップは、西洋中世風の民家の点在する村、海岸の村、山岳地帯、森林地帯、地下の祭壇等を背景とするものであり、サイドビューの切替戦闘の背景は遠景の風景であるところ、本件共通表現は、かかる複数の背景の外面的表現形式をすべて包含する、内面的・抽象的な表現形式としてその創作性が認められるものである。したがって、被控訴人ゲームが戦闘マップの背景等の外面的表現形式を変更したとしても、本件共通表現の同一性の範囲内である。また、SRPGのゲームソフトは静的な背景画ではなく、背景画をバックにしてその前で繰り広げられる場面や視点等の切替えを伴う動的な影像変化にその本質がある視聴覚著作物であるから、静的なバックの風景画の書替えにより創作性が加えられたとはいえない。
(オ) 被控訴人らは、両ゲームは全体マップにおいて相違すると主張する。しかしながら、被控訴人らは、被控訴人ゲームの全体マップにおいて自軍の移動先を選択したり、両軍の編成をすることができると指摘するのみで、創作性ある視聴覚的表現の存在を主張立証しないのであるから、ゲームソフトとしての視聴覚的表現に創作性を加えたとは評価できない。仮に、創作性を有する異なる表現形式と認められたとしても、全体マップは「戦闘マップをプレイする場面」への単なる橋渡しであって、両ゲームの本質的な部分ではないから、翻案の成否に影響を及ぼし得るものではない。また、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」を侵害物件とする選択的主張2及び3に関しては、「全体マップ」における表現の相違は考慮する必要はない。
(カ) その他、被控訴人らの主張する相違点は、そもそも事実に反し、あるいは創作性のない部分にかかる些末なものであり、創作性があるとしてもその程度は低く、翻案の成否の判断に影響を及ぼし得るものではない。
(10) 全体的・総合的観察
 トラキアと被控訴人ゲームに共通する表現形式と異なる表現形式とを比較衡量し、全体的・総合的に評価をすれば、以下のとおりである。
(ア) 本件共通表現の創作性の質
 本件共通表現は、トラキアの本質的部分である「戦闘マップをプレイする場面」に係る表現であり、被控訴人ゲーム以外のいかなる公知ゲームにも見られないトラキア独自の視聴覚的表現であるから、創作性が極めて高い特徴的な部分である。
(a) トラキアに登場する全12種の登場ユニット(共通表現(1))は、その重要な構成要素であり、他の公知ゲームに見ることができない創作性の高い特徴的な表現形式である。中でも、ペガサスユニット、ドラゴンユニットは、極めて特徴的な登場ユニットであり、これらのユニットが行動する場面は、すべてにおいて創作性の高い視聴覚的表現となっている。また、トラキアの主人公ユニット、踊れるユニットなどについても、特徴的で創作性が高い。被控訴人ゲームは、これらのユニットの特徴的な視聴覚的表現をすべて共通にして使用している。したがって、「戦闘マップをプレイする場面」における登場ユニットの同一性は、トラキアとしての創作的な表現形式の特徴の同一性を強く感得させる。
(b) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の表現(共通表現(4))及び「戦闘マップをプレイする場面」の各場面展開によって表現される本質的ストーリー(共通表現(5))は、他の公知ゲームには見られないトラキア独自の創作性の高い特徴的な影像表現である。
 すなわち、トラキアの最も本質的で重要な部分は「戦闘マップをプレイする場面」であるところ、そのインタラクティブなゲームシステムを影像の動的変化として創作し、場面の展開、場面の切替え、視点の切替え、照明演出等の手法を加えて影像として表現しているのが、「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の表現(共通表現(4))である。したがって、共通表現(4)は、公知ゲームには見られないトラキア独自の創作性の高い特徴的な影像表現である。また、「戦闘マップをプレイする場面」の各場面展開によって表現される本質的ストーリー(共通表現(5))も、プレイヤーに強い感情移入をさせる極めて本質的な特徴部分である。被控訴人ゲームは、共通表現(4)及び(5)の視聴覚的表現を同一とすることにより、トラキアの特徴ある創作的表現をすべて同一にしているのであるから、トラキアの創作的な表現形式の特徴の同一性を強く感得させるものといえる。
(c) 「戦闘マップをプレイする場面」における各場面の表現(共通表現(6)ないし(42))も、他の公知ゲームには見られない創作性の高いものである。
 トラキアの自軍の待機及び攻撃、敵軍ターンという共通表現(6)ないし(8)は、「戦闘マップをプレイする場面」に頻回にわたり使用され、その全体構成に沿ってゲームプレイを進行させていく根幹的表現であって、特徴的で創作性が高い。また、トラキアでは、「戦闘マップをプレイする場面」において、登場ユニットが共通表現(9)ないし(42)記載の多彩な行動等を繰り広げるが、これも他の公知ゲームには全く見られないトラキア独自の創作性の高い特徴的な部分である。被控訴人ゲームは、共通表現(6)ないし(42)をそっくりそのまま使用しているのであるから、トラキアの本質的な表現形式の特徴の同一性を強く感得させるものといえる。
(d) トラキアの全体の構成(共通表現(2))及びトラキア独自の基本ストーリー(共通表現(3))も他の公知ゲームには見られない創作性の高い表現であり、被控訴人ゲームがこれらの表現をそっくりそのまま使用していることは、トラキアの創作的な表現形式の特徴の同一性を強く感得させるものといえる。
(e) 以上のとおり、本件共通表現は、いずれも他の公知ゲームには見られないトラキア独自の創作性の高いものである。これに対し、被控訴人らは、本件共通表現はアイデアにすぎない、あるいはありふれているなどと主張するが、これは、本件共通表現のすべてが記憶媒体に固定されているゲーム影像であり、ゲーム影像の動的変化と音によって具体的に表現されていることを正解せず、本件共通表現を説明した言語を拾い出してつなぎ合わせることによって創作性を否定しようとするものであり、審理対象のすりかえにすぎない。
(イ) 被控訴人ゲームが使用した創作性の量
 被控訴人ゲームは、トラキアと共通する表現形式を大量に使用しており、利用されたトラキアの創作性の量は膨大である。
 被控訴人ゲームによる共通表現(4)の使用は、両ゲームソフトの本質部分である「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の表現そのものの使用である。したがって、被控訴人ゲームが「戦闘マップをプレイする場面」全体をそっくりそのまま使用した結果、共通表現(1)ないし(42)という大量の表現が被控訴人ゲームに使用されているのである。また、被控訴人ゲームが使用する共通表現(6)ないし(8)は、「戦闘マップをプレイする場面」で、頻回にわたり大量に使用される表現である。このように、被控訴人ゲームは、本件共通表現を大量に使用したものであり、被控訴人ゲームに接した者はトラキアの創作的な表現形式の特徴の同一性を強く感得するといえる。
(ウ) 相違部分の存在と評価
 トラキアと被控訴人ゲームにおける異なる表現形式は、前記のとおり、存在せず、仮に存在してもゲームソフトの視聴覚的表現形式としての創作的価値は低い。
(エ) 全体的・総合的評価
 以上のとおり、両ゲームソフトの本質的特徴部分である「戦闘マップをプレイする場面」における共通表現(1)ないし(42)は、ゲームソフト全体における視聴覚的表現としての創作的な価値が極めて高い。また,被控訴人ゲームは、共通表現(1)ないし(42)を大量に使用することにより、トラキアの創作性を大量に使用している。他方、被控訴人ゲームには異なる表現形式と把握できるだけの創作的な視聴覚的表現は存在せず、存在しても被控訴人ゲーム全体における視聴覚的表現としての創作的価値は極めて低い。
 したがって、両ゲームソフトを全体的・総合的に評価すれば、両ゲームソフトの本質的特徴部分である「戦闘マップをプレイする場面」における、創作性が質的にも量的にも圧倒的かつ本質的に高い共通表現(1)ないし(42)の存在によって、被控訴人ゲームにはトラキアの創作的な表現上の本質的な特徴の同一性が肯定される。
(オ) 表現を類似させる必然性  
 さらに、正当な知的財産権保護の見地に照らし、被控訴人ゲームの表現をトラキアに酷似させる必然性があったのかという点を考慮しても、翻案該当性は肯定される。前記のとおり、被控訴人らによる被控訴人ゲームの制作に当たっては、表現の選択肢が無数に存在したにもかかわらず、被控訴人ゲームとトラキアとは、ゲームソフトとしての全体の構成、基本ストーリー、全12種の登場ユニット、「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成及びその各場面の表現(その配置及び順序構成を含む。)がそっくりそのまま同一であり、酷似しているといってよい。両ゲームの表現をこれほど類似させる必然性は何ら存在しなかったのであって、このような被控訴人らの明白な模倣行為を翻案権侵害と認定したとしても、後発者によるSRPGのゲーム制作を一切阻害しないのである。
 なお、被控訴人らは、トラキアと被控訴人ゲームは、いずれも被控訴人Aによって創作されたものであるから、その作風が共通することは当然であるなどと主張するが、被控訴人Aは、影像表現については控訴人イズのファイアーエムブレム・シリーズの制作スタッフに丸投げしていたのであるから、そもそもファイアーエムブレム・シリーズの影像表現には被控訴人Aの作風が現れる余地がない。被控訴人ゲームがトラキアに酷似するのは、トラキアの本質的な特徴部分である「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の影像表現(共通表現(4))を、被控訴人らがそっくりそのまますべて模倣しているからであり、被控訴人Aの作風とは関係がない。
(11) 翻案該当性(結論)
 以上のとおり、被控訴人ゲームをプレイした者は、トラキアの表現上の本質的な特徴を感得するというべきであり、被控訴人ゲームはトラキアを翻案したものである。
3 トラキアへの依拠の有無
 被控訴人ゲームは、被控訴人Aが控訴人イズに在職していた平成11年から企画制作が開始され、被控訴人Aが企画監督を行い、被控訴人ティルナノーグ及び被控訴人エンターブレイン(被控訴人ゲーム制作の当初は分社化前の株式会社アスキー)によって共同制作された。被控訴人Aは、被控訴人ゲームの制作の直前に発売されたトラキアの開発の長たる立場にいたものであり、トラキアの内容を熟知していた。したがって、被控訴人A及び同人が代表取締役となっている被控訴人ティルナノーグは依拠の要件を充足する。
 また、被控訴人エンターブレインは、トラキアのゲーム内容を紹介した雑誌「週刊ファミ通」及び「ファミ通+64」などの発行者であり、トラキアの攻略本の発行者であり、かつ被控訴人エンターブレインの代表者であるB(以下「B」という。)は「週刊ファミ通」「ファミ通+64」及びトラキア攻略本の発行人兼編集人である。したがって、Bはトラキアの内容を熟知していたものであり、被控訴人エンターブレインも依拠の要件を充足する。
 被控訴人らは、被控訴人Aの依拠は、いわゆる「無意識の依拠」であって、依拠の要件を充足しないと主張するが、「無意識の依拠」とは、「かつて見聞し、創作者の意識の中に沈殿していた既存の著作物が、創作活動の過程で無意識のうちに湧出した結果、既存の著作物と実質的に同一の表現の作品が作成された場合、もはや既存の著作物を知って作成されたとはいえない」(西田美昭「複製権の侵害の基本的考え方」裁判実務大系27・知的財産関係訴訟法130頁)という問題である。被控訴人Aは、トラキアの制作と同時並行的に被控訴人ゲームを制作したのであるから、トラキアを知って被控訴人ゲームを作成したことは明らかであり、「無意識の依拠」というよりむしろ意図的な依拠である。
4 被控訴人らの故意又は過失
 上記のとおり、被控訴人ティルナノーグの代表者でもある被控訴人A及び被控訴人エンターブレインの代表者であるBは、トラキアの内容を熟知した上で、これに依拠して被控訴人ゲームを翻案したものであるから、被控訴人らには、翻案について故意又は過失がある。
5 損害
(1) 使用料相当額損害 2億3489万円
 被控訴人ゲームは、平成13年5月24日に発売が開始されて以来、同年7月8日時点で34万5430本が販売されており、同ゲームの希望小売価格は1本当たり6800円である。被控訴人らの著作権法違反及び不正競争防止法違反行為に対して控訴人らが受け取るべき使用料相当額は、売上高の10%を下回らないので、使用料相当額の合計は、被控訴人ゲームの販売本数である34万5430本に販売単価の6800円を乗じた売上高(23億4892万4000円)に、使用料率である10%を乗じた2億3489万円(1万円未満切捨て。各控訴人につきその2分の1の1億1744万5000円)となる。
(2) 弁護士費用相当損害 2341万円
 控訴人らは、被控訴人らの行為によって本訴の提起を余儀なくされた。本訴の性質、内容等に照らせば、本訴の提起、追行のために控訴人らが要した弁護士費用のうち相当因果関係のある損害額は、2341万円(各控訴人につきその2分の1の1170万5000円)を下回らない。
6 まとめ
 よって、被控訴人らの行為は、控訴人らが著作権を有するトラキアの翻案に該当するので、控訴人任天堂及び控訴人イズは、被控訴人エンターブレイン及び被控訴人ティルナノーグに対し、被控訴人ゲームの製造、販売、頒布の差止めを求めるとともに、被控訴人らに対して、著作権侵害による損害賠償として、控訴人らのそれぞれに対し上記損害1億2915万円(1億1744万5000円と1170万5000円の合計)及びこれに対する平成13年8月8日(訴状送達の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求める。
(被控訴人らの主張)
1 著作権の帰属
 トラキアは、控訴人イズの業務に従事していた被控訴人Aが作成した著作物であるが、控訴人イズが自己の著作の名義の下に公表したものではない。したがって、控訴人イズはトラキアの著作権者ではない。
 控訴人イズは、ゲームの開発会社であって、ゲームの販売会社ではなく、控訴人任天堂の工場内に本社のある、いわば控訴人任天堂の専属的な下請会社にすぎない。このような控訴人イズの開発会社(非販売会社)としての性格及び控訴人任天堂との明確な力関係の下では、関係当事者は、開発当初から、トラキアを控訴人任天堂名義で公表する旨合意していたと認めるのが自然であり、控訴人イズの名義で公表することが合意されていたことを裏付ける証拠は全く存在しない。実際上、ファイアーエムブレム・シリーズ第1作から第4作までは控訴人任天堂の名義下に公表されたのである。ある著作物が、会社(控訴人イズ)でも従業員(被控訴人A)でもない第三者(控訴人任天堂)の名義で公表することが予定されていた場合、その著作権は従業員に帰属し、会社に帰属しないのであるから、トラキアの著作権は控訴人イズには帰属しない。
2 被控訴人ゲームはトラキアの翻案に該当するかどうか
(1) 翻案の意義及び判断基準
 翻案の意義は、江差追分事件上告審判決の判示するとおりであるところ、翻案該当性の判断手法としては、最初に、同一性を有する部分と同一性を有しない部分を識別した上で、同一性を有する部分について、思想、感情若しくはアイデア、事実もしくは事件等表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないか否かを検討し、最後に、全体的、総合的な観察を含めて、表現上の本質的な特徴を直接感得できるか否かを判断すべきである。
(2) トラキアの著作物としての種類及び性質
 翻案の意義を上記のとおり解すると、具体的に何をもって表現上の本質的な特徴ととらえるかが重要となり、この点については、著作物の種類や特性に応じて、事案ごとに、著作物としての創作性や表現の特徴を判断することになる。控訴人らは、トラキア及び被控訴人ゲームが映画の著作物に該当することを争うものではないが、SRPGには、以下のとおり、通常の映画や小説等の著作物には見られない際立った特徴があり、翻案該当性の判断においてはこれらの特徴を考慮すべきである。
(ア) ゲームソフトの構成要素
 SRPGとは、シミュレーション・ゲーム(以下「SLG」という。)とロールプレイング・ゲーム(以下「RPG」という。)とを融合させたジャンルのゲームソフトである。このうち、SLGとは、戦争、経営、恋愛、育成等の分野において、現実に存在するものや空想上の対象物をゲームのルールに従って操作して、事件等をゲーム上で再現するタイプのゲームソフトであり、RPGとは、ストーリー性があり、キャラクターを成長させながらプレイヤーが物語に参加してゲームの結末を目指すタイプのゲームソフトである。SRPGは、他のゲームソフトと同様、@ストーリー(前提となる世界観や舞台設定を含むシナリオ)、Aゲームシステム、Bゲームの場面(各場面の影像表現を含む。)、Cキャラクター、D音楽、を主たる要素とする複合的な著作物である。SRPGのゲームソフトの翻案該当性の判断においては、SRPGのゲームソフトを構成する個々の構成要素それぞれについて、その著作権法上の保護の必要性や重要性を考慮しつつ、比較を行うことが必要かつ適切であるが、後記のとおり、各構成要素の中でもストーリーこそがSRPGの翻案該当性において最も重視されるべき要素である。
(イ) インタラクティブ性
 ゲームソフトは、言語の著作物や映画著作物と異なり、プレイヤーが影像を見てプレイをし、それによりゲームの展開が変化するというインタラクティブ性を有する。このため、ゲームソフトの影像表現は、プレイヤーのプレイ(操作)内容により、ある程度変化する。SRPGにおいて、プレイヤーが、個々の操作を行う回数は数えられない程多く、このプレイヤーの操作に応じて影像表現も数限りなく変化するので、SRPGのゲームソフト全体をプレイする時間からすれば、個々の影像表現が画面上に表示される時間は極めて短い。また、あるプレイをすれば出現する個々の影像表現であっても、別のプレイをすれば、この影像に接することができないという事態は、いくらでも生じ得る。このように、SRPGにおいては、個々の影像の持つ意味は小さく、個々の影像がSRPGのゲームソフト全体の表現上の本質的な特徴とはいえない。
(ウ) 他の公知ゲームへの依拠
 一般に、ゲームソフトの制作に当たっては、ボードゲーム時代から存在したゲームのルールやコマンドについてのアイデア、既存の同種あるいは類似のゲームソフトにおけるゲームシステムや影像の表現手法等のアイデアが参考にされることが多い。とりわけ、SRPGは、SLG(ボードゲームとしてのSLGとコンピューターゲームとしてのSLG)とRPG(ボードゲームとしてのRPGとコンピューターゲームとしてのRPG)が融合して成立したゲームであって、その起源となっているゲームの種類が多いから、制作に当たって参考とされ得るゲームの範囲も広い。SRPGのゲームソフトの翻案該当性の判断においては、このようなSRPGのゲームソフトの成立ちやこれに起因するSRPGのゲームソフトの一般的な制作手法を考慮すべきである。具体的には、侵害著作物とされるSRPGと被侵害物件とされるSRPGにおいて共通する部分が表現といえるものであったとしても、それが他のボードゲームやSRPGを含む他のゲームソフトで採用されてきたゲームシステムや表現手法等のアイデアに基づく表現である場合には、そのアイデアの創作性が低く、保護されるべき範囲は狭くなる。
(エ) 表現上の制約
(a) SRPGのゲームソフトは、前記のとおり、プレイヤーにプレイさせることを目的として制作されるから、その影像表現にはユーザーインターフェースとしての機能が必要となる。とりわけ戦闘マップと全体マップのゲームソフトの影像表現は、プレイヤーの便宜(具体的には、@プレイヤーによる操作の容易性の確保、A一覧表示等によるプレイヤーの見た目のわかりやすさの確保、Bプレイヤーの使い慣れた操作方法の踏襲等)を、最優先に考えることが通常である。したがって、SRPGの画面は、必然的にある特定の表現手法や具体的な表現を採用せざるを得ず、あるいは、わずかな選択肢の中から表現手法や具体的な表現を選択せざるを得ない場合が多い。
(b) ゲームソフトには、機械性能や制作コスト上の制約も存在する。すなわち、ゲームソフトは、ハード機と、カートリッジやCDーROMなどの記録媒体の記憶容量、色数、ドット数等の機械性能に制限がある。また、ハード機や記録媒体の機械性能の向上によって、機械性能上の制約がなくなり、あるいは小さくなった場合でも、制作コストを抑えるために制作費用や制作期間のさほどかからない単純、簡易な表現手法を採用せざるを得ないことも多い。
(c) このような、ユーザーインターフェース機能の必要性や、機械性能上の制約等により、SRPGのゲームソフトの表現は、必然的に繰返しの表現手法や流用の制作手法が多用されざるを得ない。実際のところ、多くのSRPGでは、全体マップと戦闘マップの繰返し、自軍ターンと敵軍ターンの繰返し、ユニットを動かす際の同じ操作の繰返し、敵を倒してはさらに強い敵を倒すことの繰返し、音楽の繰返し、切替戦闘アニメーション場面のクラスチェンジ場面への流用、店舗システムの闘技場システムへの流用等、全編にわたって、繰返しや流用の手法が多用されている。したがって、共通して登場する表現があるとしても、その出現回数の多さや出現頻度の高さは、SRPGの表現上の本質的な特徴を把握する上で重視すべき事項とはいえない。
(オ) ゲームバランス
 それぞれのゲームソフトには、各ゲームソフトに固有のものとして、ゲーム性あるいはゲームバランスと呼ばれるものが最終的に備わることとなる。ゲームバランスはゲームソフトに固有の概念であり、ゲームバランスの良いゲームソフトが、面白いゲームソフトであり、ゲームバランスの悪いゲームソフトが、面白くないゲームソフトである。ゲームデザイナーは、各ゲームソフトにふさわしいゲーム性と絶妙のゲームバランスの実現を目指して、ゲーム制作の最終段階においてバランス調整に精魂を込めるのであって、このバランス調整の作業こそ、ゲームデザイナーの個性が最も発揮される重要な作業の一つである。したがって、SRPGのゲームソフトの翻案該当性の判断においては、ゲームバランスについても十分に考慮する必要がある。
(3) トラキアにおける表現上の本質的な特徴
 トラキアにおける前記(2)(ア)@ないしDの各構成要素の持つ意味及び重要性について検討すると、以下のとおりである。
(ア) ストーリー
 SRPGを構成する各要素の中で最も重要なのは、以下の理由から、ストーリーであるというべきである。
 第1に、そもそも、SRPGのゲームソフトを映画の著作物と理解する以上、通常の映画の著作物と同様に、ストーリーが最も重視されるべき要素となることは自明である。とりわけ、SRPGはSLGとRPGを融合させたジャンルのゲームソフトであることは前記のとおりであるところ、RPGは、まさにプレイヤーがストーリーを楽しむタイプのゲームであり、ストーリーが中核的な要素となるゲームである。とすれば、SRPGにおいてストーリーが重要な要素となることは当然である。
 第2に、ゲームのストーリーは、SRPGの各場面における個々の影像表現と異なり、画面上に表示されるセリフやナレーションという形式で、ゲーム全体にわたり明確に表現され続ける。このことは、トラキアのストーリーが表現されているナレーションとセリフは、合計14万3700文字(単行本約1冊分)にも達することからも明らかである。
 第3に、ゲームの登場人物、音楽、場面設定等は、ストーリーに合わせて採用され、各戦闘マップごとに設定されているクリア条件も、ストーリーと関連して設定される。すなわち、ゲームのストーリーは、ゲームソフトの他の構成要素を内容面において規律し、ゲーム全体の特徴を基礎付けているのである。
 第4に、ゲームのストーリーは、SRPGのゲームソフトの各場面における影像表現と異なり、ハード機の機能上の制約や制作コスト面での制約を受けることなく、ゲームデザイナーが自由にその思想や感情を表現できる幅が広く、ゲームデザイナーの個性を直截に反映することが可能である。
 第5に、以上の当然の帰結として、SRPGのプレイヤーは、実際にゲームのストーリーを重視し、これを楽しんでいる。かかる現実を承知しているからこそ、SRPGの販売に際してストーリーに重点を置いた宣伝広告活動が実施され、ゲームソフトの取扱説明書等においてもプレイヤーに対してストーリーを十分に説明しているのである。
 以上によれば、ゲームソフトの構成要素のうち、ストーリーこそが最も重要であり、ストーリーが相違するのであれば、映画の著作物としてのSRPGの翻案該当性は否定されるべきである。
 これに対して、控訴人らは、トラキア及び被控訴人ゲームのセリフやナレーション部分はキャンセル可能なので、ストーリーは本質的な特徴とはなり得ないと主張する。しかしながら、セリフ部分やナレーション部分をキャンセルできる機能は、同一ゲームを複数回プレイするプレイヤーの便宜のために設定された機能にすぎず、SRPGのゲームを初めてプレイする通常のプレイヤーが、セリフ部分とナレーション部分をすべてキャンセルしながらプレイするとは考えがたい。SRPGのゲームソフトの翻案該当性を判断するに際しては、通常のプレイヤーが通常のプレイをした場合を前提として検討する必要があり、セリフ部分とナレーション部分をキャンセルしたことを前提として検討することは、およそ無意味かつ不当である。
(イ) ゲームシステム
 ゲームシステムについては、一義的に確定した定義が存するわけではないが、SRPGについていえば、概ね、基本システム、ユニット、パラメータ、アイテム、コマンド、戦闘マップなどが、その具体的な内容をなすものである。ゲームシステムがゲームソフトの構成要素であることは、SRPGに限らず、あらゆるジャンルのゲームソフトの取扱説明書や攻略本等においてゲームシステムに関する記載がされていることからして明らかである。ゲームシステムは、ゲームソフトを構成する要素ではあるが、その大半がゲームのルールというべきものであり、ゲームソフト制作に際してのアイデアにすぎない。もとより、あるゲームシステムに基づき画面上に具体的に表現されたゲーム影像、音声、音楽等は、著作権法上の保護の対象となるが、この場合も、単なるルールにすぎないかどうかを慎重に検討すべきであり、具体的な表現方法について選択肢がほとんどないような場合には創作性が否定されるべきである。
 ただし、SRPGのゲームソフトの翻案該当性を判断するに際して、異なるゲームシステムが採用されていることをもって、翻案該当性を否定する一つの事情として取り扱うことは許されるというべきである。ゲームシステムは、著作権法の保護対象である表現そのものではないが、SRPGのゲームソフトの構成要素であることは間違いなく、SRPGのゲームソフトのプレイヤーがSRPGをプレイすれば、そのプレイを通じて、ゲームシステムの内容を認識することになる。ゲームシステムやゲームバランスなどの相違による影響も含め、プレイ終了後にプレイヤーが2つのSRPGのゲームソフトに抱いた印象がそれぞれ異なれば、一方のSRPGのゲームソフトが他方のゲームソフトの翻案に当たることはあり得ない。
(ウ) ゲームの場面(各場面における影像表現を含む。)
 ゲームの場面と各場面における影像表現(デザイン)もSRPGのゲームソフトを構成する要素の1つである。SRPGにおける場面の種類としては、例えば、@オープニングの場面(タイトル表示の画面を含む。)、A全体マップの場面、B戦闘マップの場面、C切替戦闘アニメーションの場面、D会話、イベントなどの場面(クラスチェンジの場面を含む。、Eエンディングの場面等が存在する。
 SRPGのゲームソフトにおいて、これらの場面の中から、どのような種類の場面を採用し(例えば、全体マップの場面を採用するのか否か)、どのような順序で各場面を展開させるかは、ストーリーやゲームシステムと密接不可分に関連する事項であり、ゲーム制作上のアイデアというべきものである。
 これに対して、SRPGのゲームソフトの各場面の画面上において、動画又は静止画をもって表示される具体的な影像表現(デザイン)は、著作権法上の保護の対象となる表現である。しかしながら、SRPGの各場面における影像表現は、通常の映画の著作物と比較すると、ゲームソフトに内在する多くの制約のために、作成者の思想や感情が創作的に表現される範囲が限定される。とりわけ、トラキアは、デザインに定評のある他のゲームソフト(例えば、スクエア社の「ファイナルファンタジー」)と異なり、デザインにはさほど重点が置かれておらず、プレイヤーの間においても、そのデザインに対する評価は低い。したがって、トラキアの表現上の本質的な特徴が、デザインに現れることはないというべきである。
(エ) キャラクター
 キャラクターもSRPGのゲームソフトの構成要素の1つである。SRPGは、キャラクターに感情移入をしつつ、そのキャラクターを成長させることが、プレイする楽しみの源泉であるから、登場するキャラクターが異なることは、SRPGのゲームソフトの翻案該当性の判断において重視されるべき事項である。ただし、翻案該当性の判断に当たっては、第1に、キャラクターの容姿、容貌、髪型、服装、装飾品等の外形的部分のみならず、その人物設定の相違も考慮すべきであり、第2に、キャラクターの外形的部分の背後にある表現手法やアイデアの創作性、キャラクター自体の創作性の高低についても考慮する必要がある。キャラクターの外形的部分の背後にある表現手法やアイデア、キャラクター自体の創作性が低い場合には、キャラクターの外形的部分に係る表現の保護範囲も狭くなる。
(オ) 音楽
 ゲームにおける音楽は、プレイヤーがプレイをしている最中、同じ旋律が繰り返し奏でられることが多いため、通常の映画音楽と比較しても、プレイヤーの耳に残りやすく、各ゲームソフト固有の印象を与える重要な要素となっている。しかも、ゲームにおける音楽は、画面表示によって伝えられる各種の情報や状況を聴覚に訴える方法で補充する効果も有しているから、ゲームバランスに影響を与える一要素でもある。
(4) 「戦闘マップをプレイする場面」がトラキアの本質的部分であるとの控訴人らの主張に対して
 控訴人らは、「戦闘マップをプレイする場面」の視聴覚表現がトラキア及び被控訴人ゲームの本質をなす部分であると主張する。
(ア) しかしながら、「戦闘マップをプレイする場面」においても、上記各要素はすべて存在するのであるから、同場面が他の場面と比較して特に特徴的であるとはいえない。ストーリーについても、「戦闘マップをプレイする場面」においてセリフなどによって表現され、戦闘マップをクリアすることがストーリーを進めることになるのであるから、ストーリーと「戦闘マップをプレイする場面」は密接不可分な関係にあるといってよい。また、SRPGのゲームソフト一般においては、「戦闘マップをプレイする場面」以外の場面でもプレイすることが可能であり、被控訴人ゲームにおいても、全体マップにおけるプレイが重要な役割を担っているのであるから、この点においても「戦闘マップをプレイする場面」が特徴的であるとはいえない。
 以上のとおり、「戦闘マップをプレイする場面」がトラキアのゲームソフトの本質的な部分ということはできない。
(イ) また、控訴人らは被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」のみを侵害物件とする旨の選択的主張を行い、その場合には全体マップをプレイする場面を考慮することが許されないと主張するが、翻案該当性の判断は被控訴人ゲームに接した者がトラキア全体あるいはトラキアの「戦闘マップをプレイする場面」の表現上の本質的な特徴を直接感得できるか否かによって判断されるのであるから、被控訴人ゲームの戦闘マップ以外の場面の存在及びその内容が考慮されることは当然であり、控訴人らの主張は失当である。
(5) トラキアと被控訴人ゲームとの共通する表現
(ア) 控訴人らは、12種類のユニットが登場する点において、トラキアと被控訴人ゲームは共通する旨主張する。しかしながら、トラキアの攻略本、雑誌記事等には、トラキアに登場するユニットが12種類に分類されるとの記載はなく、この分類は、控訴人らが独自に編み出したものである。任天堂公式ガイドブックにおけるユニットの分類は、控訴人らの主張とは全く異なっており、その職業(兵種)という唯一の基準にきちんと着目して、@騎士系、A戦士系、B魔道師系、Cシーフ系、D踊り子系と分類されている。したがって、12種類のユニットなるものは、そもそもトラキアと被控訴人ゲームに共通するものではなく、まして、トラキアの表現上の本質的な特徴を構成しているものではない。
(イ) 控訴人らは、「本質的ストーリー」「基本ストーリー」なる用語を使用しているが、「ストーリー」とは、一般的には、「物語。小説・脚本等の筋。」(岩波国語辞典第5版)を意味する言葉であり、控訴人らの「本質的ストーリー」「基本ストーリー」との用語は、「ストーリー」という言葉の通常の意味とは異なる、独自の定義である。
(6) 本件共通表現の創作性
(ア) 控訴人らは、創造性の有無を判断するに当たり、まとまりのある表現を細分化して判断すべきではないと主張する。被控訴人らとしても、例えば、言語の著作物について、単語レベルまで細分化して翻案該当性を判断すべきではないということに異論はない。なぜなら、言語の著作物である小説に通常の接し方で接する場合は、通常は、最低でも1つの文章あるいは1つの段落程度のまとまりを一気に読み通すことが通常の読み方であるからである。
 しかしながら、SRPGの場合、画面上に表示される影像表現は、プレイヤーの一つ一つのプレイによって変化するから、本件共通表現に記載されたとおりの順序で画面上に表示されることはまれである。しかも、プレイヤーが一度選択したプレイをキャンセルする場合もあるから、その影像表現は、常に順序よく変化していくとは限らず、しばしば逆転する。したがって、本件共通表現が連続的な表現の最小単位というのは誤りであり、ゲームソフトの影像表現を分析的に検討する場合における有意な最小単位は、プレイヤーの1回のプレイに応じて変化する一つ一つの影像表現であると理解するのが相当である。
(イ) 本件共通表現に関する創作性の有無及び程度についての詳細は別紙2「トラキアと被控訴人ゲームの構成要素ごとの相違部分及び共通部分に関する被控訴人らの主張」記載のとおりであるが、「戦闘マップをプレイする場面」の表現については、SRPG、RPG、SLGなどの同種ゲームに通常見受けられるありふれた表現が多く採用されている結果、通常の映画の著作物と比較すれば、アイデアと考えられる範囲が広く、創作者の個性が創作的に表現される範囲は著作物の表層に現れた部分に限定される。したがって、本件共通表現は、いずれもアイデアなど表現それ自体ではないか、表現上の創作性を有しないものであり、仮に、創作性の要件を緩やかに解釈して創作性を認めるとしても、その創作性の低さに照らせば、著作物としての保護範囲は狭いというべきである。
(7) トラキアと被控訴人ゲームの相違する表現形式の存否と評価
 著作物の「本質的な特徴」の感得性の存否を判断するに際しては、侵害されたと主張されている著作物には存在せず、侵害したと主張されている著作物のみに存在する付加的要素の有無や、両者の質的、量的な相違に着目する必要がある。
 トラキアと被控訴人ゲームの相違部分の詳細は、別紙2記載のとおりであるが、例えば、被控訴人ゲームでは、トラキアと共通するエピソードは一切存在しないことはもとより、テーマとストーリーが新たに創作され、@リュナンとホームズの2人の主人公がそれぞれの部隊を率いる2部隊制となり、Aそれに伴ってプレイヤーが大がかりな編成(ユニットやアイテムの入替えなど)をすることが可能になっている。また、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」に関しても、戦闘マップ、戦闘背景画面、イベント背景画面、キャラクター、ゲーム音楽をすべて新たに制作し、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」全体の分量も極めて多くなっている。この結果、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」にはトラキアの「戦闘マップをプレイする場面」には全く存在しない多種多様な表現が大幅に付加されている。
 したがって、トラキアと被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」を、全体的・総合的に観察すれば、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」に接した者が、トラキアの「戦闘マップをプレイする場面」の表現上の本質的特徴を直接感得することは不可能である。
(8) 全体的・総合的観察
(ア) 控訴人らは、ゲームソフト全体とゲームソフト全体、あるいは「戦闘マップをプレイする場面」と「戦闘マップをプレイする場面」との類否判断をするに際して、個別的観察を行うことなく、全体的観察のみを行うべきである旨主張するが、SRPGのゲームソフト全体あるいは「戦闘マップをプレイする場面」は、複合的著作物であるから、@ストーリー、Aゲームシステム、Bゲームの場面、Cキャラクター、D音楽という主たる構成要素に着目し、各構成要素同士を比較することが必要不可欠である。このような構成要素毎の比較をすることなく、直ちに全体的観察のみを行うことなどおよそ不可能であり、全体的観察のみではゲームソフト全体の類否判断としては不十分である。
 そこで、ゲームソフトの各構成要素ごとに、トラキアと被控訴人ゲームの共通する部分及び相違する部分を取り上げ、その創作性の有無、程度を比較すると、別紙2記載のとおりである。
 前記のとおり、被控訴人ゲームとトラキアのゲームソフトを構成する各構成要素のうち、ストーリーこそがトラキアの最も特徴的な要素というべきであるから、SRPGのゲームソフトの翻案該当性の判断に際し、両ゲームソフトのストーリーが全く異なっていることは最大限重視されなければならない。また、その他の構成要素についても、別紙2記載のとおり、トラキアと被控訴人ゲームには、具体的表現における大きな相違点が多数存在する。
 他方、トラキアと被控訴人ゲームに共通する部分は、その大半が、ゲームシステム、ルール、表現手法等の表現それ自体ではないアイデアにすぎず、アイデアとしてもありふれている。また、両ゲームに共通する表現といえる部分についても、他のゲームソフトにおいても採用されているありふれた表現ばかりであって、到底、トラキアを特徴付けるような表現ではない。
 さらに、トラキアと被控訴人ゲームのゲームバランスに着目すれば、両ゲームには、それぞれ固有かつ独自のゲームバランスが形成されており、各種ゲーム雑誌における被控訴人ゲームに対するプレイヤーの評価や感想を見ても、被控訴人ゲームのプレイヤーが、被控訴人ゲーム固有のゲームバランスを感得していることが窺われる。被控訴人Aは、トラキアと被控訴人ゲームの各ゲームソフトの制作に際し、多大なエネルギーを投入して、長時間にわたりバランス調整を自ら行ったのであって、その結果完成した各ゲームソフトが、それぞれ固有のゲームバランスを備えているのは当然である。したがって、被控訴人ゲームをプレイしたプレイヤーが、被控訴人ゲームとは異なる独自のゲームバランスを備えたトラキアの表現上の本質的な特徴を直接感得することもあり得ない。
(イ) なお、控訴人らは、トラキアと被控訴人ゲームに共通する部分について「質」と「量」の両面から評価をすることによって、翻案該当性を判断すべきであると主張するところ、被控訴人らとしても、創作性の「質」及び「量」の両面を考慮することについては異論がない。しかし、本件共通表現は、他のSRPGなどのゲームソフトにしばしば見受けられる表現手法や表現であって、何らトラキアに特徴的なものではなく、創作性が高いものではない。また、控訴人らは、被控訴人ゲームにおいて本件共通表現が大量に使用されていると主張するが、SRPGやSLGのゲームソフトにおいては、プレイヤーの操作上の便宜や制作コストの観点から、同じゲームシステムに基づく類似した場面が頻繁に繰返し登場することは当然であり、大戦略型のSLGシステムを採用したことに起因する本件共通表現が登場する回数の多さをもって、翻案該当性を肯定するのは誤りである。
(ウ) また、控訴人らは、翻案該当性の判断として「表現をそこまで類似させる必然性があるのか」との点も考慮すべきであると主張する。しかしながら、本件においては、トラキアと被控訴人ゲームのゲームデザイナーが同一人物である以上、ゲームソフトの表現にある程度似通った印象を与える部分が生じることは当然というべきである。むしろ、翻案該当性が問題になっている著作物の制作者が同一人物である場合には、作風、世界観その他の共通性が存在することは必然であり、このような事情は翻案該当性を緩和する方向に考慮すべきである。ゲームシステムのオリジナルな発案者でもない控訴人らが、著作権法に基づき、その独占を求めることは、わが国のコンピューターゲーム文化の発展を阻害し、その未来を閉ざすに至るものである。
(9) 翻案該当性(結論)
 以上のとおり、被控訴人ゲームをプレイした者が、トラキアの表現上の本質的な特徴を直接感得することはあり得ず、被控訴人ゲームはトラキアの翻案に当たらない。
3 トラキアへの依拠の有無
 著作物の創作行為は、創作者の思想又は感情を、その個々の著作物の創作時において具象化して創作的な表現形式として結実させるものであり、また、各著作物は、創作者の精神的活動による創作者人格の発露としてそれ自体が創作者固有の個性を備えるに至るものであるから、同一創作者による複数の著作物の創作行為は、それぞれが相互に独立した新たな著作物を創造するものである。すなわち、ある著作物と別の著作物の制作者が同一である場合には、制作者は、制作時ごとに、独自に個々の制作行為を行うのであって、自己のものとはいえ既存の著作物に依拠して制作するわけではない。制作者が同一である場合には、同一制作者の著作物の創作行為について、当該制作者の創作した従前の著作物に対する依拠が観念できるとしても、その場合の依拠は、無意識の依拠にすぎない。したがって、本件のように制作者が同一人物である場合には、当該人物の創作行為は、当該人物が従前創作した著作物に対する依拠が否定され、著作権侵害を構成しない。
4 被控訴人の故意又は過失
 被控訴人らの故意又は過失についての控訴人らの主張は争う。
5 損害
 損害額に関し、被控訴人らは、使用料相当額が売上高の10%を下回らないと主張するが、これは何ら証拠に基づかない不当な請求というほかない。
6 まとめ
 以上によれば、被控訴人らの行為はトラキアの著作物の翻案には該当しないのであるから、控訴人らの差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。
第4-2 不正競争防止法に基づく請求(予備的請求)について
(控訴人ら)
1 商品等表示
 本件において、控訴人らが控訴人ゲームの商品等表示として主張するのは、@控訴人ゲームのゲームタイトルである「ファイアーエムブレム」との表示、A控訴人ゲームの略称ないし愛称である「エムブレム」との表示、B別紙3「控訴人らの主張する商品等表示としての影像及びその変化の態様」中の「本件影像商品表示目録」に記載された影像表示及びその変化の態様である(以下、これらの商品等表示を総称するときは「控訴人商品等表示」という。)。(なお、以下、別紙3中の上記目録を「控訴人ゲーム影像表示目録」、同目録に記載された影像表示及びその変化の態様を総称して「控訴人ゲーム影像表示」といい、同目録1ないし3に記載された影像表示を個別に指す場合には、それぞれ「控訴人ゲーム戦闘場面影像表示」「控訴人ゲーム主人公影像表示」「控訴人ペガサスナイト影像表示」という。)
 本件において、控訴人らが、被控訴人ゲームの商品等表示として主張するのは、@「エムブレムサーガ」との表示、A上記別紙3中の「イ号物件影像表示目録」に記載された影像である。(以下、被控訴人ゲームについても控訴人ゲームにならって略称する。)。
2 控訴人イズの「他人」該当性
 控訴人イズは、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「他人」に該当するから、不正競争防止法に基づく請求主体として認められるべきである。
(1) 不正競争防止法2条1項1号、2号が、商品主体又は営業主体の混同を生じさせる行為を不正競争行為と規定した趣旨は、他人の商品又は営業との誤認混同を生ぜしめる行為を防止することにある。したがって、このような行為によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者が、この不正競争行為から保護されるべき「他人」、すなわち商品主体又は営業主体であると解すべきである。
 これに対し、被控訴人らは、不正競争防止法2条1項1号、2号の請求主体を当該製品の製造、販売等の業務に主体的に関与する事業主体に限られると主張するが、同各号にいう「他人」には、製造販売業者に限らず、使用許諾を受けて主体的に関与する者も含まれる(最三小判昭和59年5月29日民集38巻7号920頁(以下「アメリカンプロフットボール事件上告審判決」という。)参照)。控訴人イズのように、商品の製造販売実施権を第三者に独占的に付与した者にとって、当該商品の製造販売を自ら行わないことは、契約上、むしろ当然というべきであるから、被控訴人らの主張する基準は不正競争防止法上の請求主体の範囲を不当に限定するものである。
(2) 控訴人イズが、被控訴人らの不正競争行為によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者に該当することは、以下の事実から明らかである。
(ア) 控訴人イズは、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの開発を、昭和63年10月ころから開始し、それ以来、現在に至るまで継続している。
(イ) 控訴人イズは、控訴人ゲームの製造販売権を控訴人任天堂に独占的に使用許諾し、もって、控訴人ゲームの売上げの中から控訴人ゲームの開発に要する控訴人イズの経費及び利益を製造販売許諾の対価(ロイヤルティ)として取得している。
(ウ) 控訴人イズは、「ファイアーエムブレム」(商標登録第3174176号)及びその略称の「エムブレム」(商標登録第4510013号)について単独で商標登録を取得し維持管理している。
(エ) 控訴人イズは、控訴人ゲームに対する需要者の信頼を維持するべく、ゲームソフトの品質を保証している。
(オ) 控訴人イズは、控訴人ゲームに関する商品化事業の窓口業務を控訴人任天堂に委託し、控訴人ゲームの商品化許諾契約により得た許諾料を控訴人任天堂と分配して取得している。また、控訴人イズは、控訴人ゲームの商品化権の使用許諾契約を通じ、あるいは商品化業務の遂行により、その品質管理・監修を行っている。
(カ) 控訴人イズは、業として、控訴人ゲームの制作及び使用許諾を通じた製造、販売、商品化事業の展開を10年以上もの長期にわたって継続し、控訴人ゲーム表示の出所表示機能、品質保証機能、顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的の下に、控訴人任天堂と共に緊密な営業活動を行ってきた。
(3) 被控訴人らは、不正競争防止法に基づく請求主体となるためには、需要者・取引者から見て、当該商品の製造者若しくは販売元又は当該営業の主宰者として認識されることが必要であるなどと主張する。しかしながら、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「他人性」の認定で問題となるのは、冒用者の冒用の認識であって、需要者の認識ではない。本件においては、被控訴人らの冒用の認識は十分に認められる。 
 さらに、「他人性」を特定のための要件と理解した場合でも、特定性の問題はあくまで需要者からみて、ある特定の商品や営業をその他の者の商品や営業から識別するものとして当該商品等表示が知られているかどうかの問題である。したがって、特定性を充足するためには、それ以上に識別された商品や営業の主体の名称までもが周知である必要はない。本件についていえば、控訴人ゲームの商品等表示が控訴人ゲームをその他のゲームソフト商品から識別するものとして知られていればそれだけで特定性を充足するものであり、それ以上に、控訴人ゲームの主体として控訴人任天堂と控訴人イズが含まれていることまで知られている必要はない。
(4) 以上のとおり、控訴人イズも不正競争防止法に基づく請求主体と解すべきであるが、仮に、控訴人イズが請求主体と認められない場合には、控訴人任天堂は、上記第1の2(4)のとおり、追加(増額)請求を行う。
3 周知又は著名な商品等表示
3-1  「ファイアーエムブレム」との表示の周知性又は著名性
 控訴人ゲームのゲームタイトルである「ファイアーエムブレム」との表示は、需要者の間で周知又は著名である。
(1) 「ファイアーエムブレム」表示のうち、火を意味する「ファイア」又は「FIRE」も、紋章を意味する「エムブレム」又は「EMBLEM」も、商品としてのゲームソフトとは何ら関連性のない文字表示であるから、これらを組み合わせてカタカナ表記した「ファイアーエムブレム」との表示は、控訴人ゲームについて自他商品識別力を有する。
(2) 控訴人ゲームの周知性又は著名性の判断の基礎となる需要者の範囲は、SRPGの需要者と解すべきである。この点、被控訴人らは、本件における需要者の範囲は、家庭用テレビゲーム機向けゲームソフトのユーザー全体か、あるいはSLG、RPG、SRPGの3つのジャンルのゲームソフトを合計した層ととらえるべきであると主張する。しかしながら、不正競争防止法における「需要者」の意義は、類似表示使用者の商品又は営業の需要者のことであると解されるところ、被控訴人らは、被控訴人ゲームをSRPG分野に属するゲームソフトと表示し、広告宣伝及び販売をしたものであるから、本件における需要者はSRPGのユーザーにほかならない。
(3) 「ファイアーエムブレム」表示がSRPGの需要者の間で周知又は著名であることは、以下の(ア)ないし(エ)から明らかである。
(ア) ファイアーエムブレム・シリーズについては、ゲーム雑誌による宣伝広告、ゲーム内容の紹介記事の掲載、テレビコマーシャルによる宣伝広告活動が多数なされた。これらの宣伝広告等を掲載したゲーム雑誌の発行部数は、それぞれ1回当たり数十万部にのぼる。また、テレビコマーシャルについては、その放映地域は全国にわたっており、東京地区、大阪地区だけでも、30秒コマーシャルの延べ放映本数は、1070本に及ぶ。控訴人ゲームに関するこうした雑誌、テレビにおける宣伝広告活動のため、控訴人任天堂は、平成8年5月末現在で、総額14億1339万円を支出した。
(イ) ファイアーエムブレム・シリーズの販売本数をみると、暗黒竜と光の剣が32万9087本、外伝が32万4699本、紋章の謎が77万6338本、聖戦の系譜が49万8216本、トラキアが10万6108本、合計203万4448本という売れ行きを示している。ファイアーエムブレム・シリーズは、SRPG分野に属し、その需要者は、RPGのユーザーの10分の1である。こうした点に鑑みると、控訴人ゲームの販売本数は周知性又は著名性を獲得するのに十分な数の販売本数というべきである。
(ウ) ファイアーエムブレム・シリーズは、ゲーム雑誌において、売上げランキング又は読者人気ランキングなどで上位にランクされた。例えば、暗黒竜と光の剣は、「ファミコン必勝本」平成2年5月18日号において発売前の読者の期待ランキングが第2位となっており、また、外伝は、「ファミリーコンピュータMagazine」平成4年4月17日号、「ファミコン通信」平成4年4月10日号及び「マル勝スーパーファミコン」平成4年4月24日号において、売上げランキングが第1位となっている。紋章の謎、聖戦の系譜、トラキアについても、同様に、ゲーム雑誌における売上げランキングが第1位にランクされている。さらに、ファイアーエムブレム・シリーズ第1作である暗黒竜と光の剣は、ファミコン発売開始の20年後の平成15年の時点においても、すべてのファミコンソフトの中で、元祖SRPGとして又はSLGとして第1位と評価されている。
(エ) ファイアーエムブレム・シリーズについては、攻略本、コミック、小説、ゲームブック、4コマ漫画、イラスト集、楽譜、CD、LD、オリジナルビデオ、トレーディングカードなど多種類にわたる商品化事業が行われている。
(4) 以上のとおり、「ファイアーエムブレム」との表示は、需要者の間で周知又は著名である。
3-2 「エムブレム」との表示の周知性又は著名性
 「ファイアーエムブレム」の愛称ないし略称である「エムブレム」との表示は、需要者の間で周知又は著名な商品等表示である。
(1) 「エムブレム」表示は、需要者間で自然発生的に周知となった愛称ないし略称である。このように、需要者の間で、愛称、略称等として広く認識されるに至った表示についても商品等表示性は認められ、商品等表示主体・営業表示主体自らが当該愛称ないし略称を使用していない場合であっても、周知性は肯定されている(最一小判平成5年12月16日判時1480号146頁(アメックス事件))。
(2) 「エムブレム」は、周知又は著名なファイアーエムブレム・シリーズにおいて、ゲームタイトルの一部としてのみならず、シリーズを象徴するモチーフとして、第1作から第5作まで10年余りにわたって継続的に使用されている。これにより、「エムブレム」表示はファイアーエムブレム・シリーズを象徴し、他との識別力を有する称呼、観念、外観を獲得した。
 また、英語の「EMBLEM」のカタカナ表記は「エンブレム」であり、「エムブレム」との表記は、旧仮名遣い表記を用いる点で現代においては特徴的な表示である。さらに、現在に至るまで、「ン」ではなく「ム」を用いる「エムブレム」をゲームタイトルに含むゲームソフトは、被控訴人ゲーム以外には控訴人ゲームしか存在しない。このような事実からも、「エムブレム」が自他商品識別力を有することは明らかである。 
(3) 「エムブレム」との表示は、以下のとおり、ファイアーエムブレム・シリーズを示すものとしてSRPGの需要者の間で頻繁かつ広汎に使用され、周知又は著名となっている。 
(ア) ファイアーエムブレム・シリーズは、多数のゲーム雑誌、攻略本等において「エムブレム」と略称して掲載又は紹介され、また、数え切れないほどのインターネットサイトで「エムブレム」と略称されて取り上げられている。
(イ) 控訴人ゲームのファンは、「エムブレマー」と呼ばれ、控訴人イズのホームページにあったファイアーエムブレム・シリーズのファン用のページの名称は「EMBLER'S ROOM(エムブラーズルーム)」であった。
(ウ) 控訴人ゲームを指すものとしての「エムブレム」のカタカナの使用例においては必ず「ム」を用いる「エムブレム」の表記がなされており、需要者が、単なる「エンブレム」と区別して「エムブレム」を控訴人ゲームを意味する特殊な名称として記載していたことを示している。 
(4) 被控訴人らは、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトには、「エムブレム」だけではなく、「FE」という略称も存在したから、「エムブレム」表示は商品等表示性、周知・著名性ともに得ていないと主張する。しかしながら、SRPGの需要者にとっては、略称「エムブレム」又は略称「FE」のいずれに接しても、正式名称「ファイアーエムブレム」を想起し得るものであるから、「エムブレム」の他に「FE]という略称が併存したとしても、「エムブレム」の周知性又は著名性を否定する理由にはならない。
 また、被控訴人らは、「エムブレム」表示が単独で使用される回数を問題にする。しかしながら、「エムブレム」のように需要者の間で自然発生的に使用されるに至った愛称ないし略称の周知性は、需要者による使用例において判断するべきである。被控訴人らが正式名称と併記されていると主張する例はもっぱらゲーム雑誌の表紙の記載であるが、雑誌の表紙における「エムブレム」の単独使用の回数の多寡にかかわらず、インターネットなどにおいて需要者は「エムブレム」を単独で広く多用している事実が認められるのであるから、単独使用の多寡は周知性又は著名性の判断に影響を与えるものではない。
(5) したがって、「エムブレム」との表示も、周知又は著名な控訴人ゲームの商品表示である。
3-3 控訴人ゲーム影像表示の周知性又は著名性
 控訴人ゲーム影像表示目録記載のゲーム影像及びその変化の態様は、需要者の間で周知又は著名な商品等表示である。
(1) 「他人の商品等表示」にかかる不正競争防止法2条1項1号かっこ書きは条文の文言上も限定列挙ではないから、商品ないし営業を示すものとして需要者の間に広く認識されているものは同号にいう「商品等表示」に該当する。したがって、ゲームの各種影像とゲームの進行に応じたその変化の態様も、自他商品識別機能を備えるに至った場合には、商品等表示性が認められ不正競争防止法による保護の対象となる(東京地判昭和57年9月27日無体集14巻3号593頁(「スペースインベーダーゲーム事件判決」という。)、京都地決昭和57年7月5日(甲219、ドンキーコング事件仮処分決定)参照)。被控訴人らは、上記スペースインベーダー事件判決に言及して、ゲーム影像及びその変化の態様は、本来的には商品等表示ではないから、これが商品等表示となり得るのは極めて例外的な場合のみであると主張する。しかしながら、上記のとおり、商品等表示の種類には限定はないのであるから、ゲーム影像表示について被控訴人らが主張するような厳格な立証が必要であると解すべき根拠はない。
(2) 大多数の需要者は、ゲームソフト購入前に、ゲーム雑誌、テレビコマーシャル、チラシ、販売店の店頭の販売促進ビデオ、ポスター、ゲームショーでの展示、体験版、ゲームソフトパッケージなどで、ゲームソフトの特徴的なゲーム影像を見た上で、購入の意思決定を行う。特に、シリーズ作品の場合、需要者は上記のような宣伝媒体のゲーム影像を見て、従前のシリーズ作品と特徴が変わらないことや新たに追加された点を確認して購入の意思決定をなす。このように、宣伝媒体に表示されたゲーム影像及びその変化の態様は需要者に対する商品等表示そのものであるということができる。
(3) このように商品等表示性を有する控訴人ゲーム影像表示は、トラキア発売時である平成11年9月時点において、又は、遅くとも被控訴人ゲームの発売のための広告宣伝当時には、SRPGの需要者の間で、周知又は著名であった。
(ア) ファイアーエムブレム・シリーズの第1作である暗黒竜と光の剣は元祖SRPGとしてその独創性が高く評価され、ファミコン発売開始の20年後の平成15年時点においても、ファミコンソフトの中でSLGの第1位と評価されている。また、控訴人ゲームの販売数量はシリーズ第5作までで全体で約200万本を超えるものであり、控訴人ゲームは、名実ともにSRPGの元祖、筆頭たるべき周知性又は著名性を有する。
(イ) 控訴人ゲームは、平成2年に第1作を発売して以来、控訴人ゲーム影像表示目録記載の西洋中世の世界観のもと、各ゲームソフトの全編にわたって同主人公影像表示で表示された少年王子を中心とする個性あるユニットが、控訴人ゲーム戦闘場面影像表示で表示された戦闘場面を繰り返すことにより、マップをクリアしてゲームクリアを目指すという基本的な形態を保持し、同ペガサスナイト影像表示はその特徴的なゲーム影像であった。そして、このような控訴人ゲーム影像表示は、平成2年以来、今日まで、チラシ広告、テレビコマーシャル、ゲーム雑誌等の広告宣伝活動や商品パッケージ自体に広く用いられてきた。
(ウ) 控訴人ゲーム影像表示は、原判決及び被控訴人らが引用した公知ゲームのいずれとも明らかに異なる独自の独創性を有するものであり、控訴人ゲーム戦闘場面影像表示、同主人公影像表示、同ペガサスナイト影像表示を併せて使用するゲームソフトは、被控訴人ゲーム以外には存在しない。
(4) 被控訴人らは、控訴人ゲームに関するゲーム雑誌の記事には、控訴人らが控訴人ゲーム影像表示目録において特定した影像表示とは異なるゲーム影像の方が多く掲載されていると主張する。しかしながら、ゲーム雑誌においては、需要者に新作ゲームの情報提供を行うことにより宣伝広告をするものであるから、前号の雑誌においてすでに掲載した同じゲーム影像や同じ情報を次号において繰り返し再度掲載することはまずない。控訴人ゲーム影像表示目録で特定したゲーム影像の掲載回数が控訴人ゲームに関する記事の掲載回数より少ないのは、このようなゲーム雑誌による情報提供の特性に基づくものであるから、控訴人ゲーム影像表示の周知性に影響を与えるものではない。 
(5) 以上のとおり、控訴人ゲーム影像表示目録記載のゲーム影像及びその変化の態様は、需要者の間で周知又は著名な商品等表示である。
4 控訴人ゲームと被控訴人ゲームの商品等表示の類似性
4-1 控訴人ゲームの「ファイアーエムブレム」表示及び「エムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」表示との類似性
 控訴人ゲームの「ファイアーエムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」表示、控訴人ゲームの「エムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」表示は、いずれも類似している。
(1) 「ファイアーエムブレム」表示のうち、自他商品識別力の中心となる要部は「エムブレム」である。すなわち、「エムブレム」は、ファイアーエムブレム・シリーズを指すものとしてSRPG分野の需要者間に広く呼び慣わされてきた略称であり、「ファイアーエムブレム」を「ファイアー」と略称することはない。また、「エムブレム」は、「エンブレム」ではなく「エムブレム」という旧仮名遣い表記による、現代においては造語的印象をもつ特徴的表記であり、「エムブレム」の語を含むゲームタイトルは、ファイアーエムブレム・シリーズ以外には被控訴人ゲームしか存在しないのに対し、「ファイアー」をタイトルに含むゲームは、「ファイアーボール」「スーパーファイアープロレスリング」など多数存在する。したがって、「エムブレム」との部分が他のゲームソフトとの識別力を有する要部であることは明らかである。この点、被控訴人らは、「エムブレム」は一般に周知の外来語であるから要部とはなりがたいと主張するが、かかる被控訴人らの論理は、国語辞典に掲載された用語は一般に周知であるから要部になり得ないと主張しているにすぎず、失当である。
 他方、被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」との表示のうち、「サーガ」は、通常、「伝説」や「物語」を意味するものとして、ゲームや小説の末尾部分に付されるものであって、ゲームの名称の一部としてはありふれており、「サーガ」のつくゲームは「リグロードサーガ」「ファーランドサーガ」「ラスタンサーガU」など多数存在する。また、「サーガ」は、「エムブレム」と異なり、造語的な印象を与えない。これに対し、「エムブレム」をゲームタイトルに含むゲームは、被控訴人ゲーム以外では、ファイアーエムブレム・シリーズしか存在せず、「エムブレム」が造語的印象をもつ特徴的表記であることは上記のとおりである。したがって、「エムブレムサーガ」表示においても、「エムブレム」の部分が自他商品識別力を有する要部である。この点、被控訴人らは「サーガ」は英語に堪能な者でなければ何の観念も生じないなどと主張しているが、「サーガ」は広辞苑等の最も普及している国語辞典において掲載されており、需要者も「サーガ」を「物語」を意味する一般用語と理解しているのであって、被控訴人らの主張は失当である。
 そうすると、「ファイアーエムブレム」又は「エムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示の要部は、いずれも「エムブレム」ということになり、その外観、称呼、観念において同一である。
(2) また、商品等表示及び営業表示の類似性については、現実の使用状況を斟酌して、商品の出所又は営業主体につき混同を惹起するおそれがあるか否かによって判断される(最二小判昭和58年10年7日民集37巻8号1082頁(以下「ウーマンパワー事件判決」という。))。本件では、「エムブレム」表示は、ファイアーエムブレム・シリーズのタイトルに使用されているのみならず、その意味するところの紋章はファイアーエムブレム・シリーズを象徴する重要なモチーフとして第1作から第5作に至るまで継続的に使用されてきた。このような状況の下、被控訴人は、「エムブレム」を含むタイトルを付し、しかも、控訴人ゲーム同様、紋章を重要なモチーフとして使用するSRPGである被控訴人ゲームを制作し、その販売のための広告宣伝を開始したものである。かかる取引の実情に照らすと、被控訴人ゲームに接した需要者は、被控訴人ゲームを「ファイアーエムブレム」と同一又は関連する出所からのシリーズ作品と誤認・混同するおそれがある。
(3) 以上のとおりであるから、「ファイアーエムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示、「エムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示は、いずれも類似しているということができる。
4-2 控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示との類似性
 控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示は、類似している。
(1) 控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示は、控訴人ゲーム影像表示目録及び被控訴人ゲーム影像表示目録に文章で詳細に記載した特徴点のすべてにわたって一致している。すなわち、控訴人ゲーム影像表示及び被控訴人ゲーム影像表示の戦闘場面影像表示、主人公影像表示、ペガサスナイト影像表示は、単に「トップビューから1対1のサイドビューに切りかわる」「髪の色が青い」「ペガサスに乗ることのできる三姉妹が登場する」という、大まかなレベルの点だけが共通するのではなく、それ以外にも、同各目録本文に文章で詳細に列挙した具体的な特徴点のすべてにわたって一致している。これは、同各目録に添付された「別紙3@対比」ないし「別紙3B対比」から一見して明らかである。
(2) 需要者は、購入前にゲーム影像を見て内容を知ってから購入するものであり、販売者は、発売前に、あらかじめ、取引者又は需要者の注意を引きつけるゲーム影像を、雑誌広告やテレビコマーシャル、販売促進ビデオなどで表示することにより、購買意欲を喚起する。したがって、控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示との共通する特徴点は、取引者又は需要者の注意を引きつける要部に他ならない。
(3) 類似性判断は、その商品・役務にかかわる、ある特定の商品等表示だけで判断すべきではなく、当該商品にかかわるすべての商品等表示を全体として観察して判断するべきものである。本件における前記のとおりの取引の実情に照らすと、遅くとも、被控訴人ゲーム発売のための広告宣伝を開始した当時、「エムブレムサーガ」との名称に接したSRPG需要者は、ファイアーエムブレム・シリーズを想起し得る状態にあったということができる。そうしたところ、被控訴人らは、控訴人ゲームの周知性にただ乗りすべく、被控訴人ゲームの宣伝広告において、被控訴人ゲーム影像表示を控訴人ゲーム影像表示と同様の態様で使用し、需要者に対してもこのような態様で使用していることを積極的に宣伝広告してきたものである。したがって、需要者としては、控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示を全体として類似していると受け取るおそれが極めて高かったということができる。
5 混同を生じさせる行為
 被控訴人らの行為は不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に該当する。
(1) 上記のとおり、被控訴人らは、需要者の間で周知な控訴人ゲームの商品等表示に酷似する商品等表示を被控訴人ゲームにおいて使用している。このように酷似している商品等表示を使用すれば、特段の事情がない限り、少なくともSRPGの需要者は、被控訴人ゲームの出所が控訴人らであるかのように、あるいは被控訴人ゲームを制作・販売する者が控訴人らから正当な許諾を受けているなどの特別な法律関係があるかのように誤認・混同するおそれがあることは当然である。したがって、本件において、混同のおそれが否定されるためには、混同の懸念を払拭するに足りる市場の状況や、混同を具体的に抑止する打消し行為等が必要である。しかるに、被控訴人らは一切、かかる打消し行為等を行っていない。したがって、被控訴人らの行為が「混同を生じさせる行為」に該当することは明らかである。
(2) 加えて、本件においては被控訴人らによる積極的な混同惹起行為が認められる。
 すなわち、被控訴人らは、控訴人ゲームの商品等表示に類似する商品等表示を被控訴人ゲームにおいて使用し、ファイアーエムブレム・シリーズとの関連性を強調する宣伝広告をゲーム雑誌、ポスター、ホームページ、テレビコマーシャル、体験版等の各種宣伝媒体において共同して実行した。例えば、「週刊ファミ通」平成12年1月21日号(甲20、被控訴人エンターブレインの前身である株式会社アスキーが発行したもので、同雑誌の当時の編集長は被控訴人エンターブレインの代表者であるBである。)の被控訴人ゲームの紹介宣伝記事においては、被控訴人ゲームとファイアーエムブレム・シリーズの制作者が同一であることが強調されるとともに、被控訴人A自らが、被控訴人ゲームはファイアーエムブレム・シリーズ5作品と世界観を共通にし、同シリーズに続く4つ目の大陸を舞台とするゲームであることや、同シリーズに登場した人気キャラクターが被控訴人ゲームでも登場することなどをアピールしている。
 また、被控訴人らは、平成13年3月8日の被控訴人ゲーム発売予約開始の前に、ファイアーエムブレム・シリーズ第1作から第3作までに登場した人気キャラクターであるペガサス三姉妹が被控訴人ゲームに登場することを告知し、その他にも被控訴人ゲームの宣伝広告において、ファイアーエムブレム・シリーズの人気キャラクターと酷似するキャラクターを繰り返し用いて需要者の購買意欲を喚起している。
 このような被控訴人らの積極的な混同惹起行為により、需要者における混同のおそれは一層強まったものである。
(3) さらに、本件では、被控訴人らの積極的な混同惹起行為の結果、需要者の間で混同が現実に生じている。例えば、インターネットのホームページ上の記載、ゲーム雑誌上への投稿、雑誌記事等に見られるように、一般需要者の間には、被控訴人ゲームがファイアーエムブレム・シリーズに連なるゲームソフトであるとの混同が生じ、一般需要者以上に知識を有するはずの販売店や被控訴人ゲームの評論記事においても同様の混同が見られる。
(4) これに対し、被控訴人らは、需要者は、被控訴人ゲームを「新作」「オリジナル作品」「事実上の続編」などであると認識していたのであるから、ファイアーエムブレム・シリーズの続編とは認識していなかったと主張する。しかしながら、仮にそのような認識があったとしても、需要者における混同発生事実を否定する根拠とはならない。
 また、被控訴人らは、被控訴人Aの移籍によって需要者の間に事実上の混乱が生じたとしても、それは有名な服飾デザイナーが移籍する場合と同様であって「混同」と評価すべきではないと主張する。しかしながら、被控訴人Aは需要者の一部に知られていたにすぎず、むしろ被控訴人ゲームの知名度を上げるために、被控訴人らは、ファイアーエムブレム・シリーズと被控訴人Aの関係を関連付ける宣伝広告活動を行ったものであり、服飾における有名デザイナーの移籍とは事案を全く異にする。
 むしろ、被控訴人Aは、控訴人イズを退職する際、控訴人イズが開発した未完成作である「トゥルーエムブレム」の開発データを持ち出して被控訴人ゲームで使用するとともに、トラキアの開発資料も持ち出したものであり、被控訴人Aが不正競争の意図を有していたことは明らかである。
(5) 以上のとおり、被控訴人らの行為は不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に該当する。被控訴人らは、前記のとおり、平成13年4月2日ころ、被控訴人ゲームの発売直前にそのタイトルのみを「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」と変更したが、その後も現在に至るまで被控訴人ゲームの販売を継続し、被控訴人らの不正競争行為によって需要者間に生じた混同のおそれを具体的に抑止する打消し行為は何ら行っていないのであるから、需要者による混同のおそれは現在も引き続き存在する。
6 被控訴人らの故意又は過失
 被控訴人らは、控訴人ゲームの商品等表示と類似する商品等表示を使用して被控訴人ゲームを制作、販売したものであり、このような不正競争行為について、故意又は過失が認められる。
 すなわち、被控訴人エンターブレイン及び被控訴人ティルナノーグは、被控訴人ゲームを制作、販売した。被控訴人Aは、被控訴人ティルナノーグの代表者としてこれを遂行するとともに、個人としても被控訴人ゲームの制作に主体的に関与した。被控訴人Aは、周知の控訴人ゲームの商品等表示に類似する被控訴人ゲーム商品等表示を使用することにより、需要者の間に控訴人ゲームとの混同が生じるおそれがあることを熟知していた。
 また、被控訴人エンターブレイン(分社化前は株式会社アスキー)は、控訴人ゲームのゲーム内容を紹介した雑誌(「週刊ファミ通」及び「ファミ通+64」)やトラキアの攻略本の発行者であり、控訴人らから「トラキアデラックスパック」の商品化使用許諾を受けていた。被控訴人エンターブレインの代表者であるBは上記雑誌及び書籍の発行人兼編集人であり、控訴人ゲームのファンとして知られているのであるから、Bもまた、控訴人ゲームの商品等表示に類似する被控訴人ゲームの商品等表示を使用することにより、需要者の間に控訴人ゲームとの混同が生じるおそれがあることを熟知していたというべきである。
 さらに、被控訴人らは、控訴人ゲームの商品等表示に類似する被控訴人ゲームの商品等表示を用いて盛んに広告宣伝活動を行い、控訴人らから不正競争防止法違反の警告を受けても予約販売の受注を継続し、予約受注締切後に初めて一般消費者に被控訴人ゲームのタイトルの変更を告知するなどの行為に及んだ。このような被控訴人らの不正競争行為は悪質というほかなく、被控訴人らには故意又は過失があるというべきである。
7 損害
 上記第4-1の5記載のとおり。
8 まとめ
 以上のとおり、被控訴人らの行為は、不正競争防止法2条1項1号、2号所定の各要件を充足するので、控訴人らは、被控訴人エンターブレイン及び被控訴人ティルナノーグに対し、同法3条に基づいて被控訴人ゲームの製造、販売、頒布の差止めを求めるとともに、不正競争行為による損害賠償として、被控訴人らが控訴人らのそれぞれに対し上記損害1億2915万円(1億1744万5000円と1170万5000円の合計)及びこれに対する平成13年8月8日(訴状送達の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求め、仮に、控訴人イズが不正競争防止法上の請求主体と認められない場合には、被控訴人らが控訴人任天堂に対し2億5830万円(上記の1億2915万円を含む。)及びこれに対する平成13年8月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求める。
(被控訴人ら)
1 商品等表示
 控訴人らが本件における商品等表示として前記のとおり主張していることは争わない。
2 控訴人イズの「他人」該当性 
 控訴人イズは、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「他人」には該当しないから、同法に基づく請求主体ということはできない。
(1) 不正競争防止法2条1項1号、2号の規定は、商品等表示についていえば、他人の商品との混同を生じさせる行為等を防止することによって、商品等表示に化体された商品主体の信用の冒用、毀損を防止し、もって、公正な競業秩序の維持、形成を図ろうとするものである。したがって、これらの規定によって保護されるべき者は、商品に関する信用の保持者たる主体、すなわち当該商品の製造、販売等の業務に主体的に関与する事業主体に限られると解すべきである。これを具体的にいえば、原則として、当該表示を付した商品について、その品質等を管理し、販売価格や販売数量を自ら決定する者が、これに該当するものと解すべきである。
(2) 本件では、控訴人イズは、控訴人任天堂に対し、控訴人ゲームの著作権及び商標権に関する使用許諾をしたほかは、全く何もしていない。すなわち、控訴人ゲームを製造、販売するとともに、その販売価格及び製造・販売数量の決定をしているのは、控訴人任天堂であって、控訴人イズではない。また、在庫リスク(売れ残りリスク)及び債権回収リスク(貸倒れリスク)の負担をしているのも控訴人任天堂であり、控訴人イズはこれらのリスクを一切負っていないばかりか、控訴人任天堂からロイヤリティとして最低保証を得ている。さらに、控訴人ゲームが仕様に合致しているか否かを判断し決定する者も、控訴人任天堂であり、控訴人ゲームに関する商品化事業についても、主体的に関与してきた事業主体は、控訴人任天堂であって、控訴人イズではない。控訴人イズは、商品化事業に関して実際の作業を行ったことを示す証拠として、わずか数点の証拠(甲389ないし392)しか提出できていないが、これでは不正競争防止法上の請求主体であると認めるには足りない。
(3) 控訴人イズが不正競争防止法2条1項1号、2号の「他人」に当たらないことは、控訴人ゲームの需要者・取引者の認識からも基礎付けることができる。すなわち、同規定の趣旨は、商品等表示についてその顧客吸引力を利用するただ乗りを防止するとともに、その出所表示機能及び品質表示機能が稀釈化により害されることを防止するところにある。したがって、これらの規定によって保護されるべき者は、商品等表示に化体された信用・名声を自らの信用・名声とする者、すなわち、商品等表示により、需要者・取引者から見て、当該商品の製造者若しくは販売元又は当該営業の主宰者として認識される者、あるいは、当該商品等表示に関して形成されているグループに属すると認識される者に限られると解すべきである。
 本件では、控訴人イズの名称は、控訴人ゲームの流通段階において、需要者・取引者の目にほとんど触れていない。すなわち、ファイアーエムブレム・シリーズ第1作から第4作については、商品のパッケージ、雑誌等における宣伝広告、雑誌等の記事いずれにも、控訴人任天堂の名称のみが記載され、控訴人イズの名称は記載されていない。また、ファイアーエムブレム・シリーズ第5作のトラキアについても、雑誌記事やパッケージなどにおいて、控訴人イズの名称は著作権表示として控訴人任天堂と並んで小さく記載されているにすぎず、逆に控訴人任天堂の名称は、著作権表示とは別に、単独で、大書されている。さらに、控訴人ゲームの商品化事業についても、控訴人イズの名称が何らかの形で表示されている証拠は、控訴人イズと控訴人任天堂との間の契約書関係の証拠を除けば、わずか数点(甲389ないし392)にすぎない。
 これらの事実によれば、控訴人ゲームのゲームソフトの需要者・取引者は、控訴人ゲームの商品等表示を控訴人任天堂の表示であると認識し、控訴人イズの商品等表示とは認識していなかったことは明らかで、同商品等表示に関して、控訴人イズも関係する何らかのグループが形成されていると認識していたとも考えられない。
(4) 以上のとおり、控訴人イズは、不正競争防止法に基づく請求の主体たる「他人」には該当しない。
3 周知又は著名な商品等表示
3-1 「ファイアーエムブレム」との表示の周知性又は著名性
 「ファイアーエムブレム」との表示は、需要者の間で周知又は著名とはいえない。
(1) 本件における「需要者」とは、家庭用ゲーム機向けゲームソフトのユーザー全体と解すべきである。控訴人らは、SRPGというジャンルのゲームソフトのユーザー層に限定すべきであると主張するが、ゲームソフトのジャンル区分そのものが、相対的かつ主観的な、曖昧なものにすぎない。また、ゲームソフトの卸売業者も小売業者も、すべてのジャンルのゲームソフトを取り扱っており、SRPGのジャンルのゲームソフトだけを取り扱い、SRPG以外のジャンルのゲームソフトを取り扱わないなどという卸売業者も小売業者は一切存在しない。さらに、家庭用ゲーム機向けゲームソフトのユーザーも、複数のジャンルのゲームソフトを購入しており、SRPGのゲームソフトだけを購入し、SRPG以外のジャンルのゲームソフトを一切購入しないというユーザーも存在しない。したがって、控訴人ゲームの需要者をSRPGのユーザー層に限定するのは相当でない。
 仮に、ゲームソフトのジャンルごとに需要者を区分して考えたとしても、控訴人ゲームの内容は、SLG的要素とRPG的要素を含むものであり、ゲーム雑誌やゲーム関連の文献等においても、控訴人ゲームは、RPG、SLG、SRPGの少なくとも3つのジャンルに分類されたことがある。また、控訴人任天堂も、ファイアーエムブレム第5作であるトラキアの取扱説明書の冒頭で、ファイアーエムブレムがSLGであることを認めている。さらに、SLG、RPG、SRPGの3つのジャンルのゲームソフトのユーザーの合計数は、家庭用ゲーム機のユーザー全体の中で大きな比率を占める。こうした事情を考慮すれば、少なくとも、控訴人ゲームの需要者は、SLG、RPG、SRPGの3つのジャンルのゲームソフトを合計した層と解すべきである。したがって、需要者をゲームソフトのジャンルによって区分したとしても、控訴人ゲームの需要者は幅広く、その人数も極めて多いということになる。
(2) 控訴人ゲームの需要者の範囲を以上のとおり理解した上で、「ファイアーエムブレム」表示が需要者に周知又は著名かどうかを検討すると、以下の理由からその周知性又は著名性は否定すべきである。
(ア) ゲームソフトの商品等表示の周知性又は著名性の判断において、最も重視されるべき事実は、販売本数(すなわち、現実の需要者をどれだけ確保したのかという事実)というべきである。そもそも、ゲームソフト業界は、ヒット作が毎年のように多数出現するという極めて競争の激しい業界であるから、ゲームソフトのタイトル名が、商品等表示として周知性又は著名性を獲得するに至ることは相当困難な状況にあるが、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの販売本数は、他のゲームソフトの販売本数と比べて多いとはいえない。
 すなわち、ゲームソフトのシリーズ全体の合計販売本数が1000万本を超えるゲームソフトだけでも複数存在する。例えば、「2001 CESAゲーム白書」(乙3)に登場するものだけ見ても、平成12年12月31日(控訴人任天堂に限って平成13年3月31日)時点において、既に、「スーパーマリオ」シリーズ(約3400万本)、「ポケットモンスター」シリーズ(約2200万本)、「ドラゴンクエスト」シリーズ(約2500万本)、「ファイナルファンタジー」シリーズ(第3作から第9作で約1700万本)などが、シリーズ全体で1000万本の発行本数を実現している。また、1つのタイトルの販売本数が100万本以上のゲームソフトだけでも、平成12年12月31日時点(控訴人任天堂については平成13年3月31日時点)で、既に123タイトルも存在した。
 しかるに、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの販売本数は、シリーズ5作の合計販売本数でも203万本、1タイトルの販売本数では、最大でも約77万本(第3作の紋章の謎)、最低では約10万本(第5作のトラキア)の販売本数にとどまっている。しかも、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの中では最も販売本数の多い第3作の紋章の謎は平成6年に販売されたものであるから、その販売開始から現在に至るまで、既に10年もの長期間が経過している。
(イ) ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトに関する商品化事業は、控訴人ら提出に係る全証拠を見ても、ファイアーエムブレム・シリーズの需要者を対象にしたものにとどまっており、しかも、その事業展開の規模は極めて小さい。ゲームソフトの攻略本については、ゲームソフトのユーザーのみが購入することが明らかであるから、商品化事業の名にすら値せず、攻略本以外の小説、コミック、楽譜等の販売数量は、ほとんどのものがせいぜい数万部にとどまっている。
(ウ) 控訴人らは、控訴人任天堂が、暗黒竜と光の剣、外伝、紋章の謎、聖戦の系譜について総額14億1339万円に及ぶ宣伝広告費を支出したと主張するが、宣伝広告に関する事実の持つ意味は、販売本数の持つ意味と比べれば、はるかに小さい。ゲームソフト業界では、平成9年の1年間だけでも年間約352億円という巨額の宣伝広告費が投入されているのであるから、宣伝広告の分量も、ゲームソフト業界におけるものとしては大量とはいいがたく、そのほとんどの宣伝広告が、ゲームソフトが販売される都度、一時的かつ断続的に行われているにすぎない。テレビコマーシャルについても、控訴人ゲームについて行われたテレビコマーシャルのGRP(Gross Rating Point;延べ視聴率)の値は、他のゲームのGRPと比べて決して高い値ではない。したがって、上記の程度の宣伝広告では周知性又は著名性を獲得したというには不十分である。
(エ) 控訴人らは、控訴人ゲームの各ゲームソフトが、売上げランキング又は人気ランキングなどで上位を獲得したと主張する。しかし、雑誌等においてファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトに対して高く評価された事実が存したとしても、当該事実は、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの「質」に関するものであって、周知性又は著名性という「量」の問題とは無関係である。
 以上の次第であるから、控訴人ら提出に係る全証拠をもってしても、ファイアーエムブレム表示が、商品等表示として周知又は著名であるとは認めがたいというべきである。
3-2 「エムブレム」との表示の周知性又は著名性
 「エムブレム」という表示は、そもそも商品等表示性すら獲得しておらず、ましてや、周知性又は著名性を有していたとはいえない。
(1) 一般に、販売元によって名付けられた正式の商品名に比べると、それ以外の名称が商品等表示性を獲得するに至ることは、例外的な珍しい事態である。本件においては、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトのタイトルは、第1作から第5作まで一貫して「ファイアーエムブレム」であり、「エムブレム」ではない。このとおり、「エムブレム」は、ゲームソフトという商品の正式名称ではないから、「エムブレム」との表示が商品等表示性を獲得するに至るのは例外的な事態である。
(2) ある商品について、正式名称以外に使われる略称が複数ある場合、当然のことながら、略称が1つの場合に比べて、それぞれの略称が商品等表示性及び周知・著名性を獲得することが難しくなることも、経験則上明らかである。ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトは、英文表記の「Fire Emblem」の頭文字をとって、「FE」と略称されることも多い。したがって、エムブレムとの表示は、「FE」という略称が別途存在することからしても、商品等表示としての周知性又は著名性を獲得することが難しい。
(3) 仮に、ある商品について、正式名称とは別に、商品等表示として周知性又は著名性を獲得するに至っている略称があるのであれば、その略称は、正式名称とは別に、単独で使用されるはずである。ところが、控訴人ら提出に係る全証拠を見てみても、「エムブレム」表示は、正式名称である「ファイアーエムブレム」表示と併用されているものが大半であり、「エムブレム」表示が、「ファイアーエムブレム」表示とは別に、単独で使用されている例は、ほとんど見当たらない。ゲーム雑誌の記事の中で、「エムブレム」表示が使用されている場合のほとんどすべては当該記事の中の別の場所で「ファイアーエムブレム」という正式名称が使用されている。また、ゲーム雑誌の表紙の中で、「エムブレム」表示が単独で使用された例は、1件も見当たらず、「エムブレム」表示が「ファイアーエムブレム」表示と併用された例も、わずか数件だけである。これに対し、「ドラクエ」「FF」など、周知性又は著名性を獲得しているゲームソフトの略称は、ゲーム雑誌の表紙に単独でも多用されている。
 「エムブレム」表示が単独で使用されている証拠は、その大半が、インターネット上のファイアーエムブレム・シリーズに関するサイトでの書込みである。インターネットサイト上の書込みは、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの購入者が、そのゲームソフトの内容についてやりとりするために行われるものであって、需要者のごく一部の者が見るにすぎないサイトである。このような需要者よりも遙かに範囲の限定された購入者が見るにすぎないサイトにおいて「エムブレム」表示が単独で使用されている例が存するからといって、「エムブレム」表示が商品等表示として需要者の間で周知性又は著名性であったということはできない。
(4) 「エムブレム」表示は、英語の「emblem」のカタカナ表記であるところ、これを、「エムブレム」とするか、「エンブレム」とするかは、単なる表記の問題であり、この種のカタカナ表記ではいずれも採用される可能性があり、「エムブレム」は、顕著性を有するほどに特徴的なカタカナ表記とはいえない。
3-3 控訴人ゲーム影像表示の周知性又は著名性
 控訴人ゲーム影像表示目録記載の影像表示とその変化の態様である控訴人ゲーム影像表示は、控訴人ゲームの「商品等表示」とはいえず、仮にそういえるとしても周知又は著名ではない。
(1) そもそも、本来的なゲームソフトの商品等表示はゲームのタイトルであり、ゲームソフトをプレイしたときに画面に表示される影像とその変化の態様は、本来的なゲームソフトの商品等表示ではない。したがって、ゲーム影像が、ゲームソフトの商品等表示性を獲得するのは、ゲーム影像が、他に例を見ない独創的な特徴を有する構成であり、しかも、そのような特徴を備えた表示画面の構成が特定のゲームソフトに特有のものとして、需要者の間に広く認識されるに至った場合に限られるというべきである。
(2) 裁判例を見ても、スペースインベーダーゲーム事件判決は、ゲーム影像が特殊性と新規性を有していること、当該ゲームそのものが大流行したことなどの事実関係を認定した上で、ゲーム影像の商品等表示性を肯定しているにすぎない。ビデオゲーム自体が目新しかったスペースインベーダーゲームの時代であればともかく、ゲームソフトが飽和状態にある現在にあっては、よほどの独創的な特徴を有していない限り、ゲーム影像が商品等表示性を備えることはないというべきである。
(3) 控訴人ゲーム影像表示は、他に例を見ない独創的な特徴を有するものとはいいがたく、同種ゲームソフトとしてはありふれたゲーム影像である。また、控訴人ゲームの影像に対する市場の評価は低く、そのような控訴人ゲーム影像表示が、家庭用ゲーム機向けゲームソフトのユーザーの間で広く認識されているとは考えられない。
(4) 控訴人ら提出に係る全証拠を見ても、控訴人ゲーム影像表示目録で特定されたゲーム影像が掲載されている雑誌記事は少なく、これと異なる影像写真が掲載されている雑誌記事の方が圧倒的に多い。控訴人ゲーム影像表示に類似する影像が掲載されている記事においてすら、画面表示の写真の大きさは、雑誌等に掲載するに際して実際の画面よりも大幅に縮小されている上、控訴人らが主張する影像と全く異なる影像の写真の方が、点数としては、むしろ多く掲載されている。しかも、ゲーム雑誌の記事の中では、ゲームの内容が、ゲームのジャンルやストーリー、ゲームシステムなどにわたって広範に紹介されており、ゲーム影像だけが掲載されている記事など存在しない。ゲーム影像が掲載されている場合も、その大半は、ゲーム影像そのものを紹介する目的ではなく、ゲームシステムやキャラクター、ストーリーなどを紹介することを目的として、その補助的手段として、ゲーム影像が掲載されているにすぎない。したがって、ゲーム雑誌の記事に掲載されている控訴人ゲーム影像表示が読者に対し与える訴求力は非常に小さい。
4 控訴人ゲームと被控訴人ゲームの商品等表示の類似性
4-1 控訴人ゲームの「ファイアーエムブレム」又は「エムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」表示との類似性
 控訴人ゲームの「ファイアーエムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」表示、控訴人ゲームの「エムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」表示は、いずれも類似していない。
 「要部」とは、商品等表示のうち「特に注目すべき印象的な部分」「取引者・需要者に対して働きかける力の強い部分」等といわれる部分であるから、一般に周知の外来語は要部となりがたい。「ファイアーエムブレム」表示のうち、火や炎を意味する「ファイアー」も、紋章を意味する「エムブレム」も、わが国の英語の普及度に照らせば、一般に周知の外来語にすぎないから、それぞれ単独では要部となりがたく、「ファイアーエムブレム」表示は、その全体が要部になるというべきである。控訴人らは、「エムブレム」が造語的印象を持つ特徴的な表記であるというが、「エムブレム」が「Emblem」のカタカナ表記であって、「エンブレム」と同義であることは明らかである。また、ファイアーエムブレム・シリーズの一部の熱心なファンであっても、「エンブレム」と表記する例も少なくない。
 他方、「エムブレムサーガ」表示についていえば、物語を意味する「サーガ」は、わが国の英語の普及度に照らして一般に周知の外来語とは到底いえず、他方、紋章を意味する「エムブレム」は、一般に周知の外来語である。また、家庭用ゲーム機向けゲームソフトの需要者の間では、「サ・ガ」「サーガ」「Saga」の語は、スクエア社の周知著名な特定のシリーズのゲームソフトを意味する語として広く知られていた。すなわち、「ロマンシング サ・ガ3」は130万本、「ロマンシング サ・ガ2」は117万本、「魔界塔士Sa・Ga」は109万本のミリオンセラーであり、「サ・ガ」「サーガ」「Saga」が商品名に使用されたゲームソフトは他にも存在するが、スクエア社のシリーズ以外のものの発行本数は極めて少ないから、これらのゲームソフトによって、スクエア社のシリーズ名称の有する顕著性が失われるものではない。したがって、「エムブレムサーガ」表示は、「エムブレムサーガ」の全体あるいは「サーガ」が要部になるというべきである。
 このように、「ファイアーエムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示は、外観と称呼のいずれにおいても、要部を異にしている。しかも、「ファイアーエムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示は、前者が「炎の紋章」を、後者が「紋章の物語」をそれぞれ意味するから、観念においても、全く異なっている(後者は、英語力の堪能でない者には、何の観念も生じない。)。
 また、「エムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示の類否についても、「エムブレム」表示が商品等表示性と周知・著名性を備えるに至ったか否かにかかわらず、「エムブレムサーガ」表示の要部は「サーガ」又は「エムブレムサーガ」であることや、上記のとおり、「サーガ」が特定のゲームソフトシリーズに属するゲームソフトを意味するものとして、家庭用ゲーム機向けゲームソフトの需要者の間で広く知られていたことなどに照らすと、「エムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示も類似していないというべきである。
 したがって、「ファイアーエムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示、「エムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示は、いずれも、需要者がその外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想などからして、全体的に類似のものと受け取るおそれあるとは認められず、商品等表示として何ら類似するものではない。
4-2 控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示との類似性
 控訴人ゲーム影像表示が商品等表示性と周知性又は著名性の要件を充足しているかどうかにかかわらず、控訴人ゲーム影像表示は被控訴人ゲーム影像表示と類似していない。
 控訴人らの主張する控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示との類似性を判断するに当たっては、これらの商品と同種の商品に通常見受けられる画面表示に当たる部分を除外して判断することが必要である。控訴人ゲーム影像表示目録の記載内容は、その大半が、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトと同種に属するSRPG、SLG、RPGに通常見受けられる画面表示の説明にすぎない。控訴人らは、控訴人及び被控訴人ゲーム影像表示目録に記載された内容が、ファイアーエムブレム・シリーズのゲーム影像の特徴ある点であると主張するが、これらの部分は創作性の高さや独創性の高さが発揮された部分ではなく、要部でない。被控訴人ゲーム影像表示も、ゲームデザイナーである被控訴人Aがデザインを殊更に重視するタイプではないため、独創的なものではない。したがって、これらの部分において控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示に共通点があったとしても、需要者において、両ゲーム影像を類似と受けとめることはあり得ず、これらのありふれた部分を除外した細部においては、控訴人ゲーム影像表示と被控訴人ゲーム影像表示は類似していない。
5 混同を生じさせる行為
 被控訴人らの行為は不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に該当しない。
(1) ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトは、ハード機メーカーでもある控訴人任天堂の発売するゲームソフトである。他方、被控訴人ゲームは、ソニーコンピュータエンタテインメントのハード機(プレイステーション)向けのゲームソフトであり、このことは広く宣伝告知されていた。このような取引の実情に照らせば、「エムブレムサーガ」表示の付されたゲームソフトが、「ファイアーエムブレム」表示の付されたゲームソフトと、何らかの意味でも関連があると混同する需要者・取引者は存在しないというべきである。
(2) 被控訴人ゲームの宣伝広告活動においても、ファイアーエムブレム・シリーズと関連付ける意図をもった宣伝広告活動は一切行われなかった。確かに、被控訴人ゲームと控訴人ゲームのゲームデザイナーがいずれも被控訴人Aで共通していたことから、被控訴人ゲームが対外的に公表された初期の段階においては、両ゲームソフトを関連付けようとする傾向が出版社側にあったことは否定できない。しかしながら、控訴人ゲームと被控訴人ゲームを関連付けようとする傾向を排除しようとする被控訴人エンターブレインの適切な努力の結果、出版社側の理解も進み、両ゲームを関連付けるような記事は見当たらなくなった。
(3) 控訴人らは、ゲーム雑誌の記事(例えば、前記「週刊ファミ通」平成12年1月21日号、甲20)を問題にするが、これらの記事は、宣伝広告と異なり、出版社及び編集者、記者の意向が反映されるため、被控訴人ゲームの販売関連を担当していた被控訴人エンターブレインにおいて、その内容を完全にコントロールできるものではなく、もとより、被控訴人Aがインタビューを受けたとしても、その発言が忠実に再現されるものでもない。上記「週刊ファミ通」の記事には、被控訴人ゲームが「新作」「オリジナル作品」であると明記されている上、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズのゲームデザイナーであるとの記載も客観的な事実にすぎず、被控訴人ゲームがファイアーエムブレム・シリーズの続編であるなどの虚偽の記載がされているわけでもないのであるから、問題視されるような内容は含まれていない。被控訴人エンターブレインは、その販売活動に際し、何ら混同惹起行為など行っていないのである。
(4) 控訴人らは、インターネットのホームページやゲーム雑誌等における記載についてそれらが混同を生じた例であると指摘するが、ゲーム雑誌に投稿し、あるいはインターネットサイトへの書込みを行うような需要者は、家庭用ゲーム機向けゲームソフトの需要者全体においては、極めて限定された特殊な層の需要者である。誤認混同のおそれの有無は、家庭用ゲーム機向けゲームソフトの平均的な需要者を基準として判定するべきであり、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトに過大な思い入れを有するファンや、粗忽な需要者を基準とするべきではない。このような観点からするとき、控訴人らの提出する全証拠は、平均的な需要者以外の者が作成したものが大半であって、その証拠価値はないに等しい。 
(5) ゲーム影像(デザイン)は、ゲームデザイナーの個性が色濃く反映される性質のものである。そして、控訴人ゲームも、被控訴人ゲームも、共に被控訴人Aがゲームデザイナーとして制作したゲームソフトであるため、控訴人ゲーム影像と被控訴人ゲーム影像には、被控訴人Aの好みに起因する部分において共通する雰囲気が感じられるところがある。このため、被控訴人Aが控訴人イズから独立して被控訴人ゲームを開発制作するに際し、家庭用ゲーム機向けゲームソフトのユーザーの一部の者の間において、控訴人ゲームと被控訴人ゲームの関係が話題になるなどして、多少の混乱が生じたことは否定できない。しかしながら、このような多少の混乱をもって、不正競争防止法2条1項1号にいう「混同」と評価するべきではない。このような事態は、ゲームデザイナーや服飾デザイナーなど、クリエイター個人の個性や感性に多くを依存する業界においては起こり得ることであり、このような多少の混乱を「混同」と評価すると、デザイナーの移籍独立が不正競争防止法によって過大な制約を受けることになりかねない。
(6) 控訴人イズがファイアーエムブレム第4作である聖戦の系譜の制作完了後に開発しようとした「トゥルーエムブレム」の開発データを被控訴人Aが流用したとの事実はない。控訴人らの主張の中で、そのデータ流用の事実を推認させる可能性のある唯一の具体的な根拠は、「トゥルーエムブレム」の全体マップ案で地名として使用されていた6つの単語が、被控訴人ゲームでも使用されていたという事実であるが、これらの用語は、いずれも、スペイン語の一般名詞にすぎない。また、被控訴人らが証拠として提出したトラキアのセリフ集(乙100の1)は、控訴人らが証拠として提出したDVD(甲383)に収録されているナレーション及びセリフに加えて、あるインターネット上のホームページ中に掲載されていたトラキアのナレーション及びセリフを書き取って作成したものにすぎず、被控訴人Aがトラキア開発中のデータも持ち出したとの事実は存在しない。
(7) 控訴人らの主張するとおり、需要者に現実の混同が生じたのであれば、控訴人ら又は被控訴人らに対し、混同した需要者からのクレームを受けてしかるべきであるが、被控訴人らはそのようなクレームを一切受けていない。また、被控訴人ゲームの販売状況に着目しても、被控訴人ゲームはそのタイトル名の変更にかかわらず、順調にその販売実績を伸ばし続けたのであり、本件においてゲームソフトのタイトルは、その販売に何ら影響を与えなかった。
6 被控訴人らの故意又は過失
 控訴人らは、被控訴人らには故意又は過失があったと主張するが、争う。被控訴人Aは、控訴人イズ在職中にトラキアの制作に全力を尽くして、これを完成し、控訴人イズを退職する際も誠実に行動したのであって、不正競争の意図は全く有していなかった。
7 損害
 上記第4-1(被控訴人らの主張)5記載のとおり。
8 まとめ
 以上によれば、被控訴人らは不正競争防止法2条1項1号、2号に該当する不正競争行為を何ら行っていないのであるから、控訴人らの差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がない。
第5 当裁判所の判断
 (以下において掲記する証拠は、特に必要な場合には枝番又は頁数を記載するが、そうでない限り、その記載を省略する。)
第5-1 著作権法に基づく請求について(主位的請求)
1 著作権の帰属
 著作権法15条1項は、法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする旨を規定する。本件においては、トラキアが控訴人イズの発意に基づき作成されたこと、被控訴人Aを含む控訴人イズの従業員がトラキアを職務上作成したことは、当事者間に争いがない。
 被控訴人らは、トラキアは、控訴人イズが自己の著作名義の下に公表したものではないと主張する。しかしながら、著作権法15条1項は「公表したもの」ではなく、「公表するもの」と規定しているのであるから、当該著作物の作成時において、法人等の名義で公表することを予定しているものであれば、職務著作としてその法人等が著作者となるものと解するのが相当である。
 しかるところ、トラキアは、控訴人イズの発意に基づいてその従業員が職務上作成した著作物であり、その著作権の帰属に関して控訴人イズと従業員又は第三者との間に合意が存在したとは証拠上認められず、さらにトラキアの商品パッケージなどには控訴人イズの名前が、控訴人任天堂の名前とともに、「コ」表示されていることが認められる(甲321ないし323)。したがって、トラキアは控訴人イズの著作名義の下に公表することが予定されていたものというべきであり、その著作者は控訴人イズであると認めるのが相当である。
2 被控訴人ゲームはトラキアの翻案に該当するかどうか 
 控訴人らは、@被控訴人ゲームの全体がトラキア全体の翻案に当たり(選択的主張1)、又は、A被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」がトラキア全体の翻案に当たり(選択的主張2)、又は、B被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」がトラキアの「戦闘マップをプレイする場面」の翻案に当たる(選択的主張3)、と主張する。
 以下、まず、選択的主張1につき、判断する。
(1) 翻案の意義及び判断基準
 翻案とは、既存の著作物に依拠しながら、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる場合において、その新たな著作物を創作する行為をいうものであるが、新たな著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎないときは、翻案には当たらないものというべきである(江差追分事件上告審判決参照)。
(2) ゲームソフトとしてのトラキアの内容
 トラキアにおける表現上の本質的な特徴の現れた部分がどこかを判断するに当たり、ゲームソフトとしてのトラキアの内容について検討する。証拠(甲35、309、313、373、383、385、388、419、421、423、424、425、426、427、497、498、乙4の2、66の1、85、87の1、99、100の1、102の4、163)及び弁論の全趣旨によれば、トラキアの内容は、以下のとおりであると認めることができる(以下、「ストーリー」という用語は、原則としてゲームソフトの文章表示やセリフによって語られる物語若しくはシナリオをいうが、これを基礎にして影像展開などによる表現を加えたものから把握される物語をいうこともある。また、「ユニット」は「キャラクター」と同義で登場人物をいう。)。
(ア) 概要 トラキアは、西洋中世をモチーフとし、戦略性の高い戦闘システムと壮大なシナリオを満喫できるSRPGである。トラキアの基本的なストーリーは、敵国に祖国を追われた少年王子である主人公が、王国間との戦乱が絶えない架空の大陸において、祖国奪還のために立ち上がり、仲間とともに、ペガサス、ドラゴン、魔道士なども登場する空想上の世界を背景として、敵軍との間に戦闘を繰り広げていく、というものである。プレイヤーは、山岳、海岸、峡谷、森林、民家の点在する村、城内、都市等を背景とし、章立てで次々と表示される戦闘マップにおいて、主人公や自軍ユニットを移動させ、仲間を増やしたり、自軍ユニットを成長させながら、次々と現れる敵軍と戦闘等を行い、戦闘マップを1枚1枚クリアしていく。ゲームは、最後の戦闘マップをクリアするか、主人公の死亡によって終了する。
(イ) 全体の構成
 トラキアの全体構成は、大別して、冒頭の場面(タイトル表示を含む全体マップの場面の開始までをいう。)、全体マップの場面(全体マップが表示されている場面をいう。)、戦闘マップの場面(全体マップの場面の終了から戦闘マップクリア後の会話場面の終了までをいう。)、エンディングの場面(最終章の戦闘マップクリア後の会話場面終了後をいう。)からなる。
 冒頭の場面は、ゲームをプレイする前提となるストーリーの表示や、ゲームのタイトルの表示等を含む。その後、全体マップに移行し、最初の全体マップの場面においては、主人公が祖国を追われてからのストーリーが文字で表示され、その逃避行の様子が全体マップ上の地点の移動で示されるとともに、主人公の現在地が表示される。この全体マップの場面が終わると、タイトルが付され、章立てで構成される個別の戦闘マップの場面に切り替わり、第1章が開始される。戦闘マップの場面は、プレイヤーが部隊の編成や戦闘マップの確認をする場面(この場面が「戦闘前の出撃準備場面」である。)、戦闘前のユニット間の会話の場面、自軍ユニットと敵軍ユニットが交互に行動してマップクリアに至るまで戦闘等を繰り広げる場面(この場面が「戦闘マップをプレイする場面」である。)を経て、マップクリア後にはユニット間の会話場面が表現される。こうして一つの戦闘マップの場面が終了すると、画面は再び全体マップの場面に切り替わり、表示された大陸の上を自軍が前章の位置から次章の位置に移動した様子が表現されるとともに、次章を開始するに当たってのストーリーが文字で表示される。プレイヤーは、こうして全体マップと各戦闘マップとを交互に繰り返し、最終章の戦闘マップをクリアすると、その後の会話の場面を経て、エンディングの場面を迎えることになる。
(ウ) ストーリー
 ゲームをプレイする前提となるストーリーは、上記のとおり、冒頭の場面及び最初の全体マップ場面において、文字で表示される。これを要約すると、敵国に滅ぼされた小国レンスターの王子リーフは、騎士フィンらとともに、北トラキアの支配権を手に入れたグランベル帝国などの追手をかわしながら、トラキア地方東部のフィアナという小さな村の女城主エーヴェルの庇護のもとで成長していた、というものである。
 その後のストーリーの展開は、順次戦闘マップをプレイする中で、全体マップの場面での文字表示や各戦闘マップにおける登場ユニットの会話等を通じて、表現される。主人公リーフは、「第1章 フィアナの戦士」において、15歳にして祖国奪還のために立ち上がる意思を表明し、その後、主人公とその仲間は、主人公が捕虜になったり、上記エーヴェルが石化されたり、信頼する軍師が戦死するなどの出来事を乗り越えて、レンスター城の奪還を果たし、最終章では、敵軍の居城において敵将を倒して、北トラキアを敵軍から解放することになる。
(エ) ユニット
 トラキアには、主人公と、主人公を助けて共に敵を制圧する自軍ユニットと、相手方となる敵軍ユニットが登場する。トラキアでユニットとして登場する人物は90名を超え、とりわけ自軍ユニットは、それぞれ名前、容姿、服装が異なり、使用する武器や戦闘能力も異なる上、ユニット相互間には主従関係、親族関係など様々な人間関係が設定されている。プレイヤーは、会話場面やステータス画面等における上半身の静止影像から各ユニットの名前、容姿、服装等を認識し、会話の内容等からその性格や人間関係等を感じ取ることができる。
 トラキアの各ユニットは、細かいクラスに分けられ、クラスによって所与の戦闘能力が設定されている。各ユニットが使う武器には、斧、弓、剣、槍、杖、魔力等があるが、ユニットの中には、ペガサス、ドラゴン、馬に乗ったり、重い鎧をつけて高い防御力を持つ者(アーマーユニット)も存在し、さらには「踊る」「盗む」等の特殊な技を持ったり、杖を使って味方のHP(体力)を回復させることのできるユニットなどもいる。また、トラキアの各ユニットは武器以外のアイテムを使用することもできる。このようなアイテムには、「宝箱の鍵」「跳ね橋の鍵」「傷薬」「毒消し」「たいまつ」などがある。
 各ユニットは戦闘を行うことなどにより経験値を獲得できるが、経験値が100を超えるごとにレベルアップして、戦闘能力値が上昇する。また、ほとんどのユニットは一定の条件のもとで、上級クラスにクラスチェンジをすることができ、これによってさらに戦闘能力が高まることになる。こうして、プレイヤーは気に入ったユニットを成長させて楽しむことができる。ユニット間の親疎の関係は、特定のユニットが一定距離内にいると命中率や回避率が上がるという支援効果として数値化され、地形の属性によって回避率が一定程度上がることもある。
(オ) 戦闘マップにおける戦闘及びその他のイベント
 戦闘マップにおいて、自軍・敵軍ユニットの会話場面等が終わると、画面には自軍の攻撃の順番(自軍ターン)であることを示す表示がなされ、プレイヤーが自軍ユニットを移動させて行動する場面となる。プレイヤーは、トップビューで表現される戦闘マップの地形、自軍・敵軍の配置、各ユニットの戦闘能力、各ユニットの移動又は攻撃可能範囲等を把握し、作戦を立てて、戦闘マップ上にあらかじめ配置されている自軍ユニットを移動可能な範囲内に移動させる。移動可能範囲内であれば、どのユニットをどこに移動するかは基本的にプレイヤーの自由であり、ペガサス、ドラゴン、馬等に乗れるユニットの場合には、これらの乗り物を利用して移動することもできる。当該ユニットを移動させると、プレイヤーは、そのユニットをその場で待機させるか、攻撃可能範囲内の敵兵を攻撃するか、その他の行動をするかを選択することになる。
 移動した自軍ユニットを使って敵兵を攻撃する場合には、自軍と敵軍のユニットが1対1で戦うシーンが、設定により自動的に、アニメーション切替戦闘場面又はオンマップバトル場面の形式で表示される。オンマップバトルは、画面が切り替わることなく戦闘マップ上で戦闘シーンが表現されるものであり、アニメーション切換戦闘場面は、サイドビューの画面に切り替わった上で画面全体に戦闘場面が表示されるものである。戦闘場面は、あらかじめ設定されたプログラムに基づいて影像表示されるため、プレイヤーは操作できない。相手の攻撃によってダメージを受けたユニットはHPが減少し、HPがゼロになった場合に死亡するが、戦闘によって必ず一方が死亡するわけではない。死亡したユニットは生き返らず、主人公の死亡などゲーム終了条件が満たされるとゲームオーバーとなる。
 戦闘マップにおいて、戦闘以外の行動(イベント)も起こすことができる。例えば、特定の敵軍ユニットに自軍ユニットが「話す」ことにより敵軍ユニットを寝返らせて味方としたり、敵軍を「捕える」ことや「解放」することもできる。また、踊る技を持ったユニットが「踊る」と自軍ユニット一人を再移動させることができ、杖を使えるユニットが特定の杖を「使う」と自軍ユニットのHPを回復することなどができる。さらに、「跳ね橋の鍵」を使って跳ね橋を下ろし、「たいまつ」を使って周囲を明るくするなどして、アイテムを使用する場面もある。アイテムは、民家を「訪ねる」ことや「宝箱」を開けることによって得ることもでき、盗む技を持った自軍ユニットが敵から「ぬすむ」こともある。戦闘マップによっては、アイテムの購入資金を一対一の決闘により稼ぐことのできる「闘技場」、アイテムを販売している「道具屋」や「秘密の店」、武器を購入できる「武器屋」等が配置されている。
 こうして、プレイヤーが自軍ユニットの行動を終了すると、今度は敵軍が攻撃する順番(敵軍ターン)となる。敵軍の攻撃は、すべてあらかじめ設定されたプログラムによって自動的に行われる。戦闘場面等の表現は、自軍ターンのときと変わらないが、敵軍が自軍に攻撃を仕掛けてこないこともある。敵軍ターンが終了すると、その旨が表示され、自軍ターンとなる。
 こうして、戦闘マップをクリアするための勝利条件を満たしてマップクリアするか、途中でゲームオーバーになるまで、自軍ターンと敵軍ターンが交互に繰り返される。
(カ) 背景画面
 戦闘マップは、各章ごとに異なっており、その舞台も山岳、森林、海岸、都市、村、城内など様々であり、マップ上には、民家、城壁、教会、門、闘技場、道具屋、武器屋等の建物が置かれていることもある。また、アニメーション切替戦闘場面の背景には、切替前の戦闘マップとは異なる地形や風景が背景画面として表示される。
(キ) 音楽
 トラキアでは、その全編を通じて、背景音楽が流れており、敵軍ターンになったり、アニメーション切替戦闘場面に切り替わった際には、音楽が変わる。
(3) トラキアにおける表現上の本質的な特徴の現れた部分
 ゲームソフトとしてのトラキアの表現上の本質的な特徴の現れた部分について、控訴人らは、戦闘マップの場面の一部である「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の視聴覚的表現であると主張する。これに対し、被控訴人らは、トラキアは、ストーリー、ゲームシステム、各場面の影像表示、ユニット、音楽を主たる要素とする複合的な著作物であり、中でも最も重要な要素はストーリーであると主張する。そこで、以下、判断する。
(ア) 上記(2)で認定のとおりのゲームソフトとしてのトラキアの内容によれば、トラキアは、著作権法2条3項に規定する「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され・・・ている著作物」であるということができる(この点は当事者間に争いがない。)。また、上記認定によれば、トラキアの全体構成のうち、量的にも大部分を占め、影像が視聴覚的効果を与えつつ変化し、プレイヤーが多大な時間を費やしてプレイして楽しむ部分は、章立てで展開する戦闘マップの場面であり、中でも自軍ターンと敵軍ターンが交互に展開する「戦闘マップをプレイする場面」は、まさに、プレイヤーが自軍ユニットを操作し、敵軍と戦闘をして、ゲームの勝敗を決する場面であるから、トラキアのゲームソフトの中核をなす部分であると認めることができる。
(イ) 次に、この「戦闘マップをプレイする場面」がどのような要素から構成されているかを検討する。上記(2)で認定したトラキアのゲーム内容によれば、トラキアの「戦闘マップをプレイする場面」においては、@背景画面一面に様々な地形や建物を描いた戦闘マップが表示され、Aそこに、自軍及び敵軍の様々なユニットが登場し、Bこのようなユニットが、ゲームシステムに基づいて、多彩な行動を繰り広げることによって、視覚的な効果をもたらす一連の影像が連続的に変化し、C全体としてのストーリーを踏まえ、当該戦闘マップで戦闘が行われることにより、ストーリが展開し、D場面を通して奏でられている背景音楽が聴覚的な効果をもたらしているということができる。したがって、「戦闘マップをプレイする場面」は、以上の5つの要素が同期的に複合して形成されていると認めるのが相当である。なお、被控訴人らは、ゲームバランスもゲームの重要な要素であると主張するが、ゲームバランスはその概念があいまいであり(その具体的な意義・内容については的確な主張立証がない。)、テレビゲームの客観的な考察分析上の概念として採用するに堪えるものではない。
(ウ) そこで、以下、各要素の重要性につき検討する。
(a) ゲームシステムに基づき連続的に変化する一連の影像
 ゲームソフトであるトラキアは、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され・・・ている著作物」であり、またトラキアのプレイヤーは、自軍ユニットを操作して行動させ、敵と戦闘を行わせることにより、ゲームを楽しむものであるから、「戦闘マップをプレイする場面」においてゲームシステムに基づき視覚的に表現される一連の影像及びその全体構成が、トラキアの表現の本質をなす重要な構成要素であることは当然であり、この点は被控訴人らも争っていない。
(b) ストーリー
 当事者間に争いがあるのは、ストーリーが「戦闘マップをプレイする場面」を構成する要素として最も重要であるかどうかである。以下の理由により、ストーリーは、「戦闘マップをプレイする場面」を構成する重要な要素の一つであると認めることができる。
 まず、トラキアがSRPGの分野に属することは当事者間に争いがない。証拠(乙63、81、93、113、131、134、137)によれば、SRPGはRPG(架空世界の物語をプレイヤーが主人公などになって疑似体験するゲーム)とSLG(戦争、恋愛等を題材に実際の状況を設定し、その場の判断で展開させていくゲーム)の要素を併せ持つものであると認められるところ、トラキアにRPGとしての要素が含まれると理解されているのは、プレイヤーが、トラキアをプレイすることにより、主人公やその仲間と心理的に同化し、自らも物語に参加して、敵軍と戦いながら祖国の奪還を目指す気持ちになることができるからであると考えられる。したがって、トラキアは、プレイヤーによってその受け取り方にある程度の違いがあることは想像されるものの、ストーリーを重視するタイプのゲームソフトであるということができる。
 その上で、トラキアにおけるストーリーを具体的にみると、前記(2)で認定のとおり、トラキアは、祖国を追われた少年王子である主人公が、王国間との戦乱が絶えない架空の大陸において、祖国奪還のために立ち上がるとの想定のもと、ゲームが展開するものであり、プレイヤーは、様々な出来事の起こる戦闘マップをクリアしつつ自らストーリーを展開し、最後の戦闘マップをクリアすることにより、主人公らの悲願を達成することができる構成となっている。このように、トラキアのストーリーは、戦闘マップでプレイすることにより展開していくのであるから、ストーリーと「戦闘マップをプレイする場面」における影像変化とは密接不可分の関係にあり、いずれも重要であるということができる。
 さらに、ストーリーは「戦闘マップをプレイする場面」を通じて展開するばかりではなく、戦闘マップの勝利条件やプレイヤーの戦略も規定し、戦闘マップ自体のデザインもストーリーに合わせて作成されているということができる。例えば、トラキアの「第3章 ケルベスの門」は、敵軍の子供狩りにより砦内に捕らえられた子供を救い出して民家に返すともに、砦の敵軍を制圧するというストーリー展開となっているが(甲383、乙85)、かかる状況設定となっているために、プレイヤーは、戦闘マップの全体を見ながら、動けない子供の救出方法を考え、敵軍の制圧を目指すことになる(こうした作戦は会話場面を通じてプレイヤーに示唆される。)。このように、ストーリーの内容は「戦闘マップをプレイする場面」における勝利条件や戦略とも密接に関係し、戦闘マップも設定された状況に沿ってデザインされているということができる。
 これに対し、控訴人らは、トラキアのセリフ場面はキャンセル機能によりとばすことができるから、ストーリーは重要ではないと主張する。しかしながら、キャンセル機能は何回も同じマップをプレイしてその内容を暗記するに至ったプレイヤーのために設けられているものであり、上記のとおり、プレイヤーにとって、ストーリーは、ゲームの中の世界を疑似体験する上でも、また戦闘マップをクリアするためにも重要であることを考えれば、プレイヤーが当初の段階からセリフをキャンセルしてゲームをプレイするとは考えにくい。したがって、キャンセル機能があることは、ストーリーが重要な要素であることを否定する根拠とはならない。控訴人らは、ゲームシステムの制作段階の終盤においてもセリフを差し替えることは容易であるなどとも主張するが、仮にそのとおりであったとしても、そのことはトラキアにおけるストーリーの重要性を左右するものではない。
 以上によれば、ストーリーは「戦闘マップをプレイする場面」を構成する本質的な要素と認めることができる。
(c) ユニット
 前記認定のとおり、トラキアでは90人以上のユニットが登場するが、中でも自軍ユニットは、それぞれ異なる名前、容姿、服装をし、戦闘能力や使う武器も異なるので、それぞれが個性的な存在であるということができる。そして、プレイヤーは、戦闘マップ上の戦闘において、好きなユニットを頻繁に使用して戦闘させることが可能なので、自軍ユニットの中で育てるユニットを決め、その成長を楽しむことができる。このように、プレイヤーが登場するユニットに強い思い入れを抱くことも少なくないことに照らすと、トラキアの登場ユニットは、その影像表示が小さく、静止画が多いことから、ゲームシステムに基づき視覚的に表現される一連の影像及びその全体構成やストーリーほどの重要性はないとしても、「戦闘マップをプレイする場面」における主要な要素の一つであるということができる。
(d) 戦闘マップ
 戦闘マップの場面の背景として画面一面に表示される地形や建物のデザインは、画面の全体的な印象をプレイヤーに与える点で軽視できないが、それ自体が変化する影像ではなく、戦闘場面の背景をなすにすぎないことも考慮すると、ゲームシステムに基づき視覚的に表現される一連の影像及びその全体構成やストーリーに比較すると、その重要性はかなり低いものといわざるを得ない。
(e) 音楽、効果音
 背景音楽、効果音は、ゲームを通じて流されるものであり、戦闘の臨場感を高めてゲームに聴覚的な効果をもたらすものではあるが、これまたあくまで背景的なものであり、特に音楽性に優れた特徴的なリズム・旋律等であったり、従来なかったような特殊な効果音であったりすれば格別、トラキアのように単調な音楽や効果音の繰返しである場合には、プレイヤーに与える印象は、他の諸要素に比較すると、かなり後退したものであると考えられる。
(エ) 以上のとおり、「戦闘マップをプレイする場面」はトラキアの中核をなす部分であり、その構成要素として重要なのは、ゲームシステムに基づいて変化する影像及びその全体構成とストーリーであるということができる。
(4) 本件共通表現の検討に当たっての前提となる基本的な考え方
 トラキアの本質的な特徴が現れる部分についての上記認定を踏まえ、控訴人らが主張する本件共通表現について検討することとするが、その前提となる基本的な考え方は以下のとおりである。
(ア) 創作性の判断
 前述したように、本件共通表現が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通するにすぎない場合には、翻案は成立しないと解すべきである。
 著作権法上の著作物の要件である「創作性」については、著作権法に定義規定がないが、独創性を備えることまで必要であると解すると、著作権による保護の範囲を不当に限定することになりかねないことや、創作性の有無を画する客観的な判定基準を求めることは難しいことなどを考慮すると、表現者の個性が何らかの形で発揮されていれば、創作性自体は認めることができるものと解すべきである。
 ただし、創作性の程度には自ずと幅があるのは当然であるから、当該著作物の著作権を新たな著作物が侵害したといえるかどうかを判断するに当たっては、当該著作物の保護の限度を画する要素として、その創作性の程度を考慮することは当然必要になるものと解される。すなわち、創作性の高い著作物については、その保護の範囲は拡大し、著作者の個性は現れているものの極めてわずかな創作性しかない著作物については、保護の範囲は極めて狭小なものに限定されると解するのが相当である。
(イ) 本件共通表現の判断対象
 控訴人らは、本件共通表現は、影像の動的変化と音を一つのまとまりとして連続影像で表現したものであるから、創作性の判断においては、一つのまとまりとして判断すべきであり、創作性を有する部分を創作性のない部分まで細分化して、その著作物性を否定すべきではないと主張する。
 確かに、一つのまとまりのある著作物を細分化し、その各部分がアイデアないしありふれた表現にすぎないとして、全体としての創作性を否定することは誤りである。しかしながら、一つのまとまりのある著作物の創作性を判断するに当たり、その構成部分まで分解し、それぞれの構成部分を逐一考察して、創作性の有無程度を検討することは正当な分析方法である。控訴人らの主張は、まとまりのある一連の影像を構成する各影像の組合せに創作性を認める余地があるという意味では相当であるが、一つのまとまりのある著作物の個々の構成部分を考察すべきでないとの趣旨であれば失当というほかない(なお、控訴人らは、例えば小説や文章を単語のレベルまで細分化することの不当性をいうが、文章を構成するいくつかの単語が新規性と表現性に富んだ新造語であるため、全体の作品が創作性と表現性に富むこともあり、また、個々の単語に創作性がないとしても、例えば単語と単語という最小の組合せに特異性があれば(例えば「幸せのかたち」「小さい秋」などが初めて使われたとき等)、創作性や表現性を十分に充足することになろう。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という小説中の一節も、使う単語を厳選して、無数の表現の中からできるかぎり簡明な表現を選択し、その余を読者の類似体験や豊かな感性に託すことにより、高い創作性や表現性を備えるに至ったものであると理解でき、個々の構成部分を考慮することが不要ないし不当とは到底いえないのである。)。
(ウ) 展開する影像の組合せと配列の著作物性
 控訴人らが主張する本件共通表現は、いずれも一つのまとまりをもった連続影像による視聴覚的表現の総体であるが、後に検討するように、各共通表現は、いずれも、一連のまとまった表現として把握される複数の影像が、プレイヤーの操作・選択により、又はあらかじめ設定されたプログラムに基づいて、連続的に展開することにより形成されているということができる。例えば、共通表現(6)は、後記(5-6)のとおり、自軍ユニットの待機ポーズの影像、プレイヤーの操作によりカーソルが移動する影像、カーソルを自軍ユニットに合わせると吹出しが表示される影像、移動コマンドの選択により自軍ユニットがその場動きをする影像、移動・攻撃可能範囲の影像、当該ユニットが移動先に移動する影像、当該ユニットが移動を終えて待機ポーズに切り替わる影像が,連続的に展開することにより形成されている。このように、一つの大きなまとまりとしての表現が、その構成部分として把握することができる複数の影像の展開により形成されている場合には、これを構成する各影像自体の創作性及び表現性のみならず、その組合せ・配列により表現される影像の変化も、著作権法による保護の対象となり得るものであることは、上述のとおり、当然である。したがって、この点についても検討することが必要かつ相当である。
(エ) ルールの表現性
 通常の映画の著作物と異なり、トラキアはゲームソフトであるから、当然のことながら、ルールが決められ、プレイヤーはルールに基づいてプレイする。例えば、トラキアでは死亡したユニットは生き返らないというルールがあり、それに基づいて、一度死亡したユニットはその後画面上に表示されないが、このようなゲームのルールはアイデアそのものであり、著作物ということはできず、ルールが具体的に表現したものがある場合に、はじめてその創作性等が問題となると解すべきである。
(オ) ユーザーインターフェース
 ゲームソフトは、通常の映画と異なり、プレイヤーが参加して楽しむというインタラクティブ性を有しているため、プレイヤーが必要とする情報を表示し、又はプレイヤーの選択肢を表示するための画面(以下ではかかる意味で「ユーザーインターフェース」という言葉を用いる。)を表示する必要がある。このようなプレイヤーの便宜のための画面は、プレイヤーの操作の容易性や一覧性等の機能的な面を重視せざるを得ないため、作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ず、特に特徴的あるいは独自性があると認められない限り、創作性は認められないというべきである。トラキアについていえば、ステータス表示、ユニットの一覧表示、縮小画面、会話を表示するための吹出し表示、名前等の情報を提供するための吹出し表示、コマンド選択のためのメニュー画面、武器メニューに関する画面、戦闘パラメータ表示、HPの数値の変化の表示、経験値の獲得の表示、クラスチェンジに伴う戦闘パラメータの変化の場面、アイテム交換の際のアイテムの表示画面等は、いずれもプレイヤーの判断に必要な情報を表示し、又はプレイヤーの選択肢を表示するものであるから、ユーザーインターフェースとしての性格を有しているというべきである。
(カ) 作風の同一性
 本件では、トラキアの実際の制作に被控訴人Aがどの程度関与したかについては当事者間に争いがあるが、証拠(乙70の1、72の5、123の1、被控訴人A本人)によれば、被控訴人Aはトラキアについても実質的な責任者として関与し、トラキアも被控訴人ゲームも、被控訴人Aの個性が色濃く反映した作品であると認めることができる。被控訴人らは、トラキアと被控訴人ゲームの類似性は作風の同一性にすぎず、制作者が同一人物であることは翻案該当性を否定する方向で斟酌すべきであると主張するところ、確かに、著作権法上の保護は、このような作品の作風や傾向といった抽象的な部分にまでは及ばないと解されるので、1人のゲームクリエイターが関与した2つの作品を比較して翻案該当性を判断する際には、その作風の類似性を翻案該当性の基礎としないように留意する必要がある。
 しかしながら、ゲームクリエイターがゲームソフトを制作するに当たっては、自らが以前に制作して現在は他の者に著作権が帰属する作品の翻案を行うべきでないことは当然であり、かつ、それは可能であると考えられる。したがって、原著作物と二次的著作物の実質的な著作者が同一であることは、翻案の判断基準に基本的な変更を迫るものではないと解される。
(キ) 相違点の考慮
 翻案権とは、原著作物を利用して創作性を加え、別個の著作物を創作する権利であるから、二次的な著作物に新たな表現が付加されたからといって、直ちに翻案該当性が否定されるわけではない。しかしながら、新たな表現が付加されることにより、二次的な著作物が原著作物との同一性を失い、これに接する者が著作物全体から受ける印象を異にすると認められるときは、二次的な著作物から原著作物の創作的特徴を直接感得することはできないから、その二次的著作物はもはや原著作物の複製ないし翻案ということはできないと解すべきである。
(5) 本件共通表現についての検討 
 上記のとおりの基本的な考え方に基づき、以下では、控訴人らの主張する個々の本件共通表現に即して、トラキアと被控訴人ゲーム(以下、「両ゲーム」とはトラキアと被控訴人ゲームをいう。)との共通表現の認定、その表現性、創作性の存否及び程度、相違点について検討する(なお、本項において、証拠番号の後の括弧内に表記した数字は、頁数又は枝番号である。)
(5-1) 登場ユニット
(ア) ユニットの分類の共通性
 控訴人らは、両ゲームのすべての登場ユニットは12の同一の種類に分類できる点で共通すると主張する。証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)及び弁論の全趣旨によれば、両ゲームには、@敵国に祖国を追われ王国再興のために立ち上がる亡国の王子である主人公と、主人公を助けて敵と戦う自軍ユニットと、相手方となる敵軍ユニットが登場すること、Aペガサス、ドラゴン、馬に騎乗するユニット、踊ることにより自軍ユニットを再行動させることができるユニット、全身を頑強な鎧で固めている特異な形状のユニット、敵からアイテムを盗むことのできるユニット、魔法を武器とするユニット、杖、斧、剣、弓等を使うユニットが登場すること、において共通すると認めることができる。
 しかしながら、証拠を総合しても、両ゲームに登場するユニットを控訴人らの主張する12種類によってすべて合理的に分類することができるとは認めることができない。控訴人らの分類方法は、統一的でかつ合理的な基準(例えば、使用する武器による分類)によるものではなく、一人のユニットが複数の武器を使うことも可能な上、両ゲームの攻略本や取扱説明書にも控訴人らの主張を裏付けるに足る記載は存在しない。
 また、控訴人らの指摘する特徴を有するユニット(@主人公、Aペガサスに乗るユニット、Bドラゴンに乗るユニット、C馬に乗るユニット、D踊れるユニット、Eアーマーユニット、F盗賊ユニット、G魔道士ユニット、H杖を使うユニット、I斧を使うユニット、J剣を使うユニット、K弓を使うユニット)をゲームに登場させること自体はアイデアにすぎず、証拠(甲377(2)、乙12(2)、乙19(2)、乙31(37)、乙39(5)、乙94(87、89、90、92ないし97)、乙95(14、21、26、29、41、46、59、61、68、70、72、76、85、89、115、127、182)及び弁論の全趣旨によれば、これらのユニットは他のゲームでも登場している一般的なものであるとの事実を認めることができる。なお、控訴人らは、特許権のように厳密に被控訴人ゲームの制作時点を基準にして当該他のゲームが公知であったかどうかを問題とすべきであると主張するが、テレビゲームの著作物としての特性などを考えると、被控訴人ゲームの創作性の有無や程度を判断する上で、被控訴人ゲームの制作後相当期間内のゲームも考慮に入れることは、特段の事情がない限り、許されるというべきである。
(イ) 登場ユニットに共通する容姿、服装、動き等
 両ゲームの登場ユニットの戦闘マップにおける容姿、服装、動き等に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)及び弁論の全趣旨によれば、両ゲームの登場ユニットは、@いずれも戦闘マップにおいてトップビューの視点で表現され、西洋中世風の衣装をつけ、全身は移動範囲及び攻撃範囲のほぼ一桝目大であって人間に近い頭身比の人物として表現されていること、A登場ユニットが、戦闘マップ上で待機する姿態は、基本的には斜め前向きで武器等を絶えず動かしていること、B戦闘マップ上で行動を終了した場合には、基本的に斜め前向きで武器等を絶えず動かしている待機の容姿・姿態が透けてみえる暗系色の待機ポーズに変わること、において共通していると認めることができる。
 しかしながら、戦闘マップにおける登場ユニットは、碁盤目状に小さく区切られた戦闘マップの一桝に小さく表示されているのであって、詳細な描写ができないためその容貌や服装から個体識別をすることはかなり困難であり、精々、敵味方の区別、主人公かどうか、一定の兵種、男女の別などが識別できる程度である(それゆえ吹出しで名前等が表示される。)。このような制約のもとにおいては、当該ユニットが格別な特徴を備えない限り、ありふれた表現にならざるを得ないところ、両ゲームの上記共通点(西洋中世風の衣装をつけていること、全身は一桝目大であること、人間に近い頭身比の人物として表現されていること)は、いずれもごく一般的なものというほかなく、創作性のある表現と認めることはできない。
 また、戦闘マップをトップビューの視点から表現することは、アイデアにすぎない上、ゲームソフトでは、通常の映画と異なり、ハード面での制約等から、取り入れることのできる視点には限りがあるというべきである。さらに、ユニットの移動前及び移動後の待機ポーズについても、当該ユニットがこれから移動することが可能かどうかをプレイヤーにわかりやすく表示するという機能的な目的が主であって、プレイヤーの大多数がその影像及び動きを一見して待機ポーズの状態にあると感得するものでなければならない以上、本来的にありふれたものであって、その表現自体に創作性がないのは当然である。
(ウ) 各登場ユニット人物設定、容姿、動き等の表現 
 各登場ユニットの人物設定、容姿、動き等に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(1)@ないしK記載の点において共通すると認めることができる。
 これを前提に、各ユニットについて、検討する。
(a) 主人公ユニット
 上記認定のとおり、トラキアの主人公であるリーフと被控訴人ゲームの主人公であるリュナンは、@亡国の少年王子で、祖国のため立ち上がること、A兵種が主人公専用のもので、イベントにより変化すること、B襟を立てた肩当てのある衣装をつけ、裏地が赤となっている丈の長いマントを翻すこと、C武器として主人公専用の長い剣を持つこと、D移動はタッタッタッとの効果音とともに駆け足で行うこと、において共通している。
 しかしながら、敵国に祖国を追われた主人公が祖国のために立ち上がるという筋立ては、歴史物語等において繰返し展開されてきた普通に見られたものであり、武器としての長剣や衣装についても、その中に登場するありふれた表現である。また、移動の態様や効果音も、他の徒歩のユニットと同様、主人公として特徴のあるものではなく、兵種を主人公専用のものとしたり、イベントにより変化させることはごく普通に想到されるアイデアにすぎない。
 また、控訴人らは、両ゲームの主人公の死にセリフの場面、敵軍拠点の制圧の場面、マップクリア後のクラスチェンジする場面の表現が共通することや、登場する場面が同一であることなども指摘するが、これらは主人公の容姿、服装、性格その他の人物像を特徴付けるものではないので、後の該当箇所において検討する。
 以上のとおり、両ゲームの主人公は、その服装、人物設定、武器、動作等において共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデアにすぎないか、ありふれていて創作性の認められない表現にすぎない。
 他方、証拠(甲383、384、乙100、126)によれば、両ゲームの主人公は、トラキアでは王子であるリーフ一人であるのに対し、被控訴人ゲームでは公子であるリュナンと海賊の長であるホームズの二人であると認めることができる。控訴人らは、被控訴人ゲームの主人公はリュナン一人であると主張するが、被控訴人ゲームにおいて、リュナンとホームズはそれぞれ別の部隊を率いて戦闘マップ上で戦闘し、ホームズ隊が戦う戦闘マップにおいてはホームズの死亡がゲームオーバーの条件となっていることによれば、ホームズも被控訴人ゲームの主人公であるというべきである。ホームズがリーフと大きく異なることは明らかであり、トラキアにはホームズに匹敵するユニットは存在しないことも、当事者間には積極的な争いはない。主人公としてのホームズの存在ゆえに、被控訴人ゲームはストーリーが複線化し、トラキアにはない特徴が与えられているということができる。 
(b) ペガサスユニット
 上記認定のとおり、両ゲームのペガサスに乗るユニットは、@女性騎士ユニットであること、A白い胸当て及び白い肩当てのある衣装をつけ、武器としてはペガサス騎乗時には槍を、ペガサスから降りた状態では剣を持っていること、Bペガサスの翼を広げてバサバサと風を切る移動の効果音とともに空中を飛翔し、地上の地形を無視して移動することができるが、弓による攻撃に弱いこと、C攻撃するときは空中から地面に降下して相手を攻撃し、相手の攻撃を避けるときは後ろに軽く飛翔して避け、再攻撃するときは垂直に飛翔してから再び相手に向かって降下して攻撃するという飛翔戦闘シーンを展開すること、において共通している。
 しかしながら、そもそも、ペガサスは架空の冒険物語等にしばしば登場する天翔ける馬(「天馬」と邦訳される。)であって、これに乗るユニットを登場させること自体は誰しも想到し得るアイデアにすぎないし、他のゲームにも登場している(乙19(2)、31(37)、39(4)、94(88))。また、飛翔した状態から攻撃するユニットに対し弓の攻撃が有効であることは、常識そのものであり、飛翔して移動するペガサスが地上の地形を無視して移動できることも、また至極当然である。
 次に、ペガサスに乗ったユニットの具体的な表現を見ても、両ゲームのペガサスは、背中に大きな翼を有する白馬というオーソドックスな姿態であり、何ら特徴があるものではなく、創作性はないに等しい。ペガサスユニットの移動態様(翼を広げてバサバサという効果音とともに空中を飛翔して移動する。)や、戦闘態様(空中から地面に降下して相手を攻撃し、相手の攻撃を避けるときは後ろに軽く飛翔して避け、再攻撃する時は垂直に飛翔してから再び相手に向かって降下して攻撃する。)に関する表現も、その飛翔の仕方や効果音、攻撃のための降下の仕方、退避の仕方等は、いずれも翼を持った飛翔能力のあるユニットとしては一般的なものといわざるを得ず、創作性がないとはいえないが、その創作性の程度は低いといわざるを得ない。
 ペガサスに騎乗する女性騎士については、控訴人らは具体的なユニット名を挙げてその共通点を主張しておらず、上記認定のような共通点(女性騎士であること。白い胸当て及び白い肩当てのある衣装をつけていること。ペガサス騎乗時には槍を、ペガサスから降りた状態では剣を持っていること。)だけでは、両ゲームのペガサスに騎乗する騎士が、創作性のある表現において共通又は類似しているということはできない。
 以上のとおり、両ゲームのペガサスユニットには共通点はあるが、その共通する部分は、アイデアにすぎないか、表現であっても控訴人らが主張するような創作性の高いものとは到底いえず、むしろ創作性の程度は低いというべきである。
(c) ドラゴンユニット
 上記認定のとおり、両ゲームのドラゴンに乗るユニットは、@騎士ユニットであり、武器としては主に槍を持つこと、Aドラゴンの翼を広げてバサバサと風を切る移動の効果音とともに空中を飛翔し、地上の地形を無視して移動すること、B弓による攻撃に弱いが、ドラゴンに守られているため高い防御力を持つこと、C騎士を乗せて大きな翼を曲げるようにして飛翔し、頂点の高さに達した位置から斜め下方の地上に降下して相手を攻撃し、再攻撃する時は垂直に飛翔してから再び相手に向かって降下して攻撃するという戦闘シーンを展開すること、において共通している。
 しかしながら、そもそもドラゴンも西洋の伝説・神話等によく登場する動物であって、ドラゴンに乗るユニットを登場させること自体は簡単に想到し得るアイデアにすぎないし、他のゲームにも登場している(乙19(2)、39(5)、94(89)95(115))。また、飛翔するドラゴンユニットに対し弓の攻撃が有効であることや、ドラゴンが高い防御力を有することは、翼と鋭い爪を有するドラゴンの特性からすれば、普通に想到し得るものであり、飛翔して移動するドラゴンが地上の地形を無視して移動できることも、同様である。
 次に、ドラゴンに乗ったユニットの具体的な表現をみると、両ゲームのドラゴンは、単純で、かつ、普通の姿態であり、取り立てて特徴があるものでは決してない。ドラゴンユニットの移動態様(翼を広げてバサバサと風を切る効果音と共に空中を飛翔して移動する。)や、戦闘態様(騎士を乗せて大きな翼を曲げるようにして飛翔し、頂点の高さに達した位置から斜め下方の地上に降下して相手を攻撃し、再攻撃する時は垂直に飛翔してから再び相手に向かって降下して攻撃する。)も、創作性がないとはいえないが、翼を持った飛翔能力のあるユニットの移動及び攻撃態様としては自然に想到し得る普通の表現であって(ペガサスユニットもほぼ同様の移動及び攻撃態様である。)、控訴人らが主張するように独創的で創作性の高い表現であるとは、到底いうことができない。
 ドラゴンに騎乗する騎士については、控訴人らは具体的な人物名を挙げてその共通点を主張するものではなく、武器が共通であることを指摘するのみであって、両ゲームの騎士が共通又は類似していることを積極的に裏付ける具体的な主張立証はなく、むしろ、証拠(甲383、384、乙85、126)によれば、両ゲームとも、ドラゴンに乗ることができるユニットは複数おり、その容姿、服装、性格等において共通性又は類似性はないものと認められる。
 以上のとおり、両ゲームのドラゴンユニットには一部共通点はあるが、その共通する部分は、アイデアにすぎないか、表現であっても控訴人らが主張するような創作性の高いものとは到底いえず、むしろ創作性の程度は低いというべきである。
(d) 馬ユニット
 上記認定のとおり、両ゲームの馬に乗るユニットは、@兵種に応じて槍、剣等の各種の武器を持つこと、A馬に乗っている状態では、高い移動力を持ち、馬を走らせて地を蹴る移動の効果音とともに移動すること、において共通している。
 しかしながら、馬に乗る騎士は、他のゲームにも登場するありふれたユニットにすぎず(乙94(90)、95(21、29))、馬に乗る騎士が兵種に応じて槍、剣等の各種の武器を持つこともごく当然である。両ゲームに登場する馬ユニットの移動の表現は、創作性の全くない表現とはいえないが、格別、特徴的であるとは認められない。
 また、両ゲームにおける馬に乗る騎士については、控訴人らは特に言及していないが、両ゲームとも多数のユニットが馬に乗ることができ、馬ユニット相互の間に共通点又は類似点を認めることはできない。したがって、両ゲームの馬ユニットには共通する点もないではないが、その共通する部分は、アイデアか、創作性の乏しい表現にすぎないというべきである。
(e) 踊れるユニット
 上記認定事実及び後記(5-9)における認定事実によれば、両ゲームの踊れるユニットは、@いずれも女性で、茶色の長い髪をポニーテールに結ったプロポーション良い姿をしており、上下に分かれた衣服から腹部の一部が露出しているとともに、両腕があらわになり、スカートのスリットは脚の付け根にまで及んでいること、A長いひも状のリボンを両手に持って回転して踊り、最後には、左腕を真っ直ぐに高く上げ、左足は真っ直ぐに伸ばして重心を置き、脚の付け根まで露わにした右脚を出し、真っ直ぐに横に伸ばした腕には長いひも状のリボンを持ち、これを地面に垂らす決めポーズで静止すること、B踊ることによって、自軍ユニットを再行動させることができること、において共通している。
 そもそも、踊ることにより自軍ユニットに一定の利益をもたらすユニットを登場させること自体はアイデアにすぎず、他のゲームにおいても登場する(乙94(91)、95(26、41、59、127、182))。したがって、踊れるユニットを登場させて、その踊る様子を一般的な形で影像表現しただけでは、創作性があるということはできない。
 そこで、両ゲームにおける踊れるユニットに関する具体的な表現を検討するに、証拠(甲383、384、乙85、126)によれば、トラキアの踊れるユニットとは具体的にはラーラであり、被控訴人ゲームの踊れるユニットはプラムであると認められるところ、確かに、両者が踊る場面の表現は、上記のとおり、容姿、服装、踊り方、最後のポーズ、踊る効果等において一部共通しているが、踊る場面以外の両者の容姿、服装、性格は、顕著な相違を呈している上、踊る場面についても、服装の変化(プラムは変身するかのように服が変わる。)、服の色(プラムは場面により服の色が違う。)、ポニーテールに結った髪の長さ(プラムの方がかなり長い。)、動作(プラムは飛び跳ねるようにして踊り、ラーラは一度しゃがむような姿勢になる。)、リボンの持ち方(プラムは両手で持っている。)などの特徴的ないくつかの点において明らかに相違していると認めることができる。そうすると、全体としては、踊れるユニットに関する表現の相違点は、共通点又は類似点を大きく凌いでいるというべきであり、結局、両ゲームはアイデアを共通にするにすぎず、具体的な表現において類似しているということはできない。
(f) 杖ユニット
 上記認定のとおり、両ゲームの杖を使うユニットは、@戦場であるにもかかわらず非常に軽装で、長いローブを身につけて杖を持ち、タッタッタッとの移動の効果音とともに戦闘マップ上を移動すること、A杖を用いて自軍ユニットを別の場所にワープさせたり、自軍ユニットのHPを回復させたりすることができること、Bトラキアのサラと被控訴人ゲームのネイファとは、兵種(シスター)、容姿の一部、において共通しているということができる。
 しかしながら、このような杖を使うユニットをゲームに登場させること自体は他のゲームでも取り入れられており(乙94(92)、95(61、85))、自軍ユニットを杖でワープさせたり、そのHPを回復させることもアイデアにすぎない。また、このようなユニットは、特殊な力を持つ杖が武器であるから、軽装で徒歩であるのはごく自然なことで、その移動の態様も他の徒歩のユニットの移動と変わるところがない。
 証拠(乙85、126)によれば、杖は、両ゲームともに多種類あり、その効果もHP回復やワープに限らず多種多様である上、杖を使うユニットも少なくなく、杖を使う場面の具体的な表現も様々である。控訴人らは、トラキアのサラと被控訴人ゲームのネイファを取り上げ、兵種、顔立ち、髪型、髪色、額飾りなどが酷似すると主張するが、証拠(乙69(1)、85、100、126)によれば、サラは、石化を解除する特殊な杖を使い、魔道士としての能力も併せ持つ戦闘能力の高いユニットであるのに対し、ネイファは、竜に変身できる巫女で、戦闘する場面がないのであるから、両者はその印象を明らかに異にするというべきである。さらに、杖を使って自軍ユニットをワープさせる場面と、杖を使って自軍ユニットのHPを回復させる場面の具体的表現は、両ゲームにおいて異なることは後記のとおりである。
 以上によれば、両ゲームの杖ユニットには共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデアにすぎないか、創作性の乏しい表現にすぎず、他方、杖を使う場面や杖ユニットの具体的な表現においては両ゲームは相違しているということができる。
(g) 魔道士ユニット
 上記認定によれば、両ゲームに登場する魔道士は、@戦場であるにもかかわらず非常に軽装で、長いマントを身につけて、戦闘マップ上をタッタッタッとの移動の効果音とともに移動すること、A武器である魔道書を用いて、魔法攻撃を行うことができること、B被控訴人ゲームの魔道士ユニットであるマルジュは、トラキアの魔道士ユニットであるアスベルと人物設定(風魔法を得意とする少年で、自身専用の風魔法を持ち、登場時の兵種は魔道書で攻撃魔法を専用に使う下位の兵種である。)、容姿(少女のような風貌で、ショートヘアから耳を出している。)、において共通するということができる。
 しかしながら、魔法を使う登場人物は冒険物語等ではよく見られ、このような魔法を使うユニットを登場させること自体は他のゲームでも採用されているありふれたアイデアにすぎない(乙94(93)、95(14、55、63、86))。このような魔道士ユニットはその性質からいって(魔法以外の武器等を使用する必要があまりない。)軽装であるのは自然なことであり、移動方法も徒歩か特殊な移動用具又は動物に乗るぐらいしか考えられないのであるから、そのうち徒歩等が選択されたとしてもその選択自体に独自性はない。また、魔法使いが長いマントを身につけているのも典型的な姿の一つであり、戦闘マップ上の移動の態様も他の徒歩のユニットと変わるところがない。
 さらに、証拠(乙85、126)によれば、魔法は、トラキアで約20種類、被控訴人ゲームで約30種類もあり、その魔力も多種多様である上、魔力を使うユニットの数は少なくなく、魔力を使用する場面の具体的な表現も様々である。控訴人らは、トラキアのアスベルと被控訴人ゲームのマルジュが酷似すると主張するところ、確かに、両者は、魔法の種類(風魔法を得意とし、専用の風魔法を持つ。)や容姿(少女のような風貌で、耳を出している。)などの点で共通するところがあるが、証拠(甲383、384、乙69(1)、85、126)によれば、その表情(アスベルは目元・口元が柔らかく優しい印象であるのに対し、マルジュは目元・口元がきつく勝気な印象)、髪の色(アスベルは緑なのに対しマルジュは金色)が異なる上、風魔法による攻撃の場面についても、アスベルが、片手を上げ、画面が青く光るとともに魔法の風を相手に投げつけるのに対し、マルジュは、画面が暗くなるとともに、両手を上げて体の回りに竜巻のような風を起こし、魔法の風を両手で押し出すようにして相手に浴びせるのであって、その具体的な表現において明らかな差異を呈している。したがって、アスベルとマルジュは、共通しているとか、特に類似している等ということはできない。
 以上によれば、両ゲームの魔道士ユニットには共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデアにすぎないか、創作性の乏しい表現にすぎず、他方、魔法を使う場面や魔道士ユニットの具体的な表現においては両ゲームは相違しているということができる。
(h) 斧ユニット
 上記認定によれば、両ゲームの斧ユニットは、@比較的軽装で、武器として斧を持ち、強力な破壊力を特徴とするユニットであること、A乗り物に乗れないので、タッタッタッとの移動の効果音とともに移動すること、において共通するということができる。
 しかしながら、斧を武器とするユニットはありふれたものであり、他のゲームにも登場しているところ(乙94(94)、95(72、85、89))、上記共通点(服装、攻撃力、移動の態様)にも格別特徴ある点を見出すことはできない。控訴人らは、具体的に共通又は類似するユニットを挙げていないが、例えば、トラキアにおける斧を使用するユニットであるダグダや、被控訴人ゲームにおいて斧を使用するガロに類似するユニットは見出しがたい。
 以上によれば、両ゲームの斧ユニットには共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデアか、ありふれていて創作性の認められない表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自性・創作性があるということはできない。
(i) 弓ユニット
 上記認定によれば、両ゲームの弓ユニットは、@比較的軽装で、武器として弓を使うこと、A戦闘マップにおいて、弓を用いて2桝目以上離れた敵を攻撃することができること、Bタッタッタッとの移動の効果音とともに移動すること、C弓による攻撃は、飛翔するユニットであるペガサスユニット及びドラゴンユニットに対して強力な攻撃力を発揮すること、において共通している。
 しかしながら、弓を武器とするユニットはありふれたものであり、他のゲームにも登場しているところ(乙94(95)、95(61))、弓を用いた場合に距離の離れた敵を攻撃することができるようにするのは当たり前のことであり、飛翔して攻撃してくるユニットに弓が強いこともごく当然なことであって、その他の共通点(服装、移動の態様)もありふれたものである。証拠(甲383、384、乙85、126)によれば、両ゲームにおける弓を使うユニットは少なくなく、具体的なユニット一人一人は容姿、服装、性格等も異なるのであって、両ゲームの弓ユニットに共通点又は類似点を見出すのは困難である。
 以上によれば、両ゲームの弓ユニットに共通する点はわずかであり、しかも、その共通する表現には、独自性も創作性も認められない。
(j) 剣ユニット
 上記認定のとおり、両ゲームの剣ユニットは、剣を操る技に優れた剣士であり、軽装で、武器として剣を持ち、タッタッタッとの移動の効果音とともに移動するユニットであることにおいて共通し、またトラキアの特徴的な剣ユニットであるシヴァと、被控訴人ゲームの代表的な剣ユニットであるヴェガは、その容姿(鋭い目つきで、黒髪の前髪をばさりと垂らし、鎧を付けずに着流し的な服装)、人物設定(当初は敵として登場し、自軍の女性ユニットとの会話が行われると寝返って自軍ユニットになる。)、スキル(攻撃直前に音と共に全身から光が放たれ、剣で敵に与えたダメージ分自らのHPが回復する。)が共通であるということができる。
 まず、剣を使うユニットに共通する表現からみるに、剣を使うユニット自体はゲームでも登場しているごくありふれたものであり(乙94(96))、両ゲームにおける剣ユニットに共通する表現(服装、移動態様)にも特徴があるとはいえない。したがって、これらの共通する表現に創作性を認めることはできない。
 次に、被控訴人らは、トラキアのシヴァと被控訴人ゲームのヴェガが酷似すると主張する。確かに、両者は、その容姿、使用する剣の特殊な効果、味方になる経過において一部共通する点があるが、証拠(甲383、384、乙85、126)によれば、髪型、顔の輪郭、服装等については異なっており、類似しているとまでは認められない。
 そもそも、重要なユニットも含め、両ゲームに剣を使うユニットは数多く、それぞれが名前、服装、性格を異にしているといってよく(例えば、剣を使うユニットであるトラキアのエーヴェルに類似するユニットは、被控訴人ゲームにはいない。)、仮にシヴァとヴェガが類似しているところがあったとしても、全体としては、両ゲームの剣ユニットが特に類似しているというわけではない。
(k) アーマーユニット
 上記認定のとおり、両ゲームのアーマーユニットは、@全身を頑強な鎧で固めているという極めて独自の特異な形状のユニットであること、A全身を頑強な鎧で固めているという重量から、機動力には乏しいものの、高い防御力を誇るユニットであること、において共通しているということができる。
 全身を頑強な鎧で固めているアーマーユニットをユニットとして登場させること自体はアイデアにすぎず、アーマーユニットは他のゲームでも登場しているユニットである(乙95(61、68、115))。アーマーユニットが機動力には乏しいが防御力が高いことは、頑強な鎧で全身を覆っている以上、当然であり、両ゲームにおけるアーマーユニットに関する共通表現が、控訴人らが主張するような独自性・創作性があるものということはできない。
(l) 盗賊ユニット
 上記認定のとおり、両ゲームの盗賊ユニットは、@比較的軽装で、武器として剣を持ち、タッタッタッとの移動の効果音とともに素早く動く動きを特徴とすること、A宝箱や扉を開けることができたり、跳ね橋を降ろしたりすることを特徴とするユニットであること、において共通している。
 しかしながら、敵からアイテムを盗み出す盗賊ユニットを登場させること自体はよく使われるアイデアにすぎず、他のゲームにも同様なものが登場している(乙94(97)、95(14、76))。また、両ゲームの盗賊ユニットに関する共通点(服装、武器、移動の態様)はごくありふれたものであり、盗賊ユニットが鍵を使って宝箱の扉を開けたり、跳ね橋を降ろす設定もアイデアにすぎず、その影像表現も普通にイメージし得るようなものであって、両ゲームの具体的な盗賊ユニットにも共通又は類似する点を認めることはできない。したがって、盗賊ユニットに関する共通表現が、控訴人らが主張するような独自性・創作性があるものとは認められない。
(m) まとめ
 以上のとおり、控訴人らが主張するところのユニットに関する共通部分は、いずれもその共通する部分がアイデアにすぎないか、有意な創作性を有するとは認められないものであり、両ゲームのユニットが全体として同一性、類似性があるとは認めがたい。むしろ、両ゲームに登場する具体的なユニットは、それぞれが異なる名前、容姿、服装、性格、武器、戦闘能力等を有する存在であり、異なるユニットとして認識することが相当なものである。
(5-2) ゲームの全体構成とその各場面の表現
 証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、ゲームの全体構成とその各場面に関し、両ゲームは、共通表現(2)記載の共通部分を有するということができる。
 上記認定のとおり、両ゲームの全体構成は、基本的には全体マップ部分と個別の戦闘マップを繰り返し、最終の戦闘マップにおける「戦闘マップをプレイする場面」をクリアしたときにゲームクリアとなる、という点において共通する。これを各場面について敷衍すると、両ゲームは、@全体マップ部分は、架空の大陸を表現したセピア色の古地図であり、個々の戦闘マップの所在場所とこれらをつなぐ道等が表示されている、A戦闘マップは、トップビューの視点で描かれた西洋中世風の要塞、領主館内、山岳地帯、峡谷、民家の点在する村、城内、祭壇等を背景としており、マップタイトル(章タイトル)が付されている、B「戦闘前の出撃準備場面」は、地形等を出撃前スクロールなどで確認したり、自軍ユニットの編成やアイテムの編集をしたりする場面である、Cその後、戦闘前会話場面を経て「戦闘マップをプレイする場面」になり、自軍ユニットを行動させる自軍ターンと、コンピューターが自動的に敵軍ユニットを行動させる敵軍ターンが繰り返される、D当該マップのクリア条件を達成したときにマップクリアとなり、会話の場面が自動的に影像表示される、E次いで全体マップに戻る場合には、全体マップが表示され、全体マップに戻らず戦闘マップに移行する場合には戦闘マップのマップタイトルが表示される、F最終マップをクリアしたときにゲームクリアとなる、という点において共通しているいうことができる。
 まず、ゲームの全体構成に関し、全体マップ部分と個別の戦闘マップを交互に往復し、最後の戦闘マップをクリアしたときにゲームクリアとなるという全体構造をとること自体は、他のゲームでも採用されている最も典型的な構成の一つであるといわざるを得ない(甲377(1)、乙9、10、38(5ないし7)及び弁論の全趣旨)。また、戦闘マップの場面について、控訴人らは、これを「戦闘前の出撃準備場面」「戦闘前会話場面」「戦闘マップをプレイする場面」「マップクリア後の会話の場面」に分けるが、かかる場面構成は、マップクリアに向けて戦闘を行うゲームとしては、時系列に沿った自然な場面構成であり、格別な独自性を有するということはできない。
 全体マップに関し、両ゲームはセピア色の古地図として描いている点で共通しているが、ゲームの舞台となる架空の大陸の全体地図を表示すること自体はアイデアにすぎず、他のゲームでも採用されている(乙9(8)、10(10)、11(11)、94(6))。全体マップは、プレイヤーに対して戦闘マップの所在と経路を表示するための表示画面としての性質も持っており、セピア色の古地図として表現された両ゲームの全体マップは、古地図を表示する色彩としてセピア色を選択したことに何ら独自性又は創作性を有するとはいえず、そのほか全体マップに特徴的な表現を看取することは困難である。
 また、戦闘マップに関し、両ゲームは、トップビューの視点から描かれた西洋中世風の要塞、領主館内、山岳地帯、峡谷、民家の点在する村、城内、祭壇等を背景としている点で共通しているが、このような視点を採用することも、またよく使われるアイデアにすぎず、他のゲーム(乙10(10)、12(14)、94(7))でも採用されているものである。次に、個々の戦闘マップのデザインは、ゲーム機のハード面からの制約が存在するために使用できる色彩等の制約があると考えられるが、被控訴人ゲームにはかなり創作的な表現が多く用いられており、両ゲームの各戦闘マップの具体的表現は異なっているということができる(控訴人らも各戦闘マップの具体的なデザインの類似性は主張していない。)。したがって、両ゲームは戦闘マップについては創作性のある表現において相違しているということができる。
(5-3) 基本ストーリー
 証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、87(1、2)、99、100、126、163)によれば、両ゲームのゲーム概要は、共通表現(3)記載の内容において共通しているということができる。すなわち、両ゲームは、「亡国の少年王子が、ペガサスユニット、ドラゴンユニット、魔道士ユニット等も登場するファンタジーな世界を背景とし、架空の大陸における架空の小王国、小公国、小領主国間の戦乱を舞台として、戦闘等を行って仲間を増やし、成長させ、敵側を制圧する。」という概要において共通している。
 しかしながら、上記概要は、抽象的な粗筋の域を超えるものではなく、具体的なストーリーについてみれば、トラキアのストーリーは前記認定のとおりであり、被控訴人ゲームのストーリーは、「主人公リュナンはかつてリーベリア大陸に存在した4王国の一つであるリーヴェ王国のラゼリア公国の公子であるが、敵であるカナン王国と邪神ガーゼル教団が連合してできたゾーア帝国に祖国を奪われ、親友であり海賊の長であるもう一人の主人公ホームズとともに、祖国奪還の兵をあげる。リュナンとホームズは、それぞれの部隊を率いて行動し、リュナン隊は、祖国奪還を目指して帝国軍と戦い、ラゼリア公国を奪還し、リーヴェ王国を制圧した後、カナン王国との和平を実現する。ホームズ隊は、魔物、海賊、蛮族、魔竜等と戦いながら、リュナンを側面援助する。リュナン隊とホームズ隊は、何度か合流し、部隊編成等を行い、最後には、ガーゼル教国の神殿最深部の祭壇で再会し、復活した邪神ガーゼルを打倒する。」というものである。
 このように、両ゲームは、ストーリーを抽象化した粗筋としては共通するが、この粗筋は著作物として保護するには抽象的すぎるというべきであり、著作物としての創作性を有する具体的なストーリーにおいては両ゲームは異なることは明らかである。また、証拠(甲383、384、乙85、100、126)によれば、両ゲームは、各章ごとのストーリー展開という点においても、類似していないことが認められる。
 ストーリーは、著作者が創作性を発揮し得る幅が大きいものであり、両ゲームのストーリーの創作性も高いと認められるところ、両ゲームはかかる創作性の高いストーリーにおいて相違しているということができる。
(5-4) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の表現
 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成及び各場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)及び弁論の全趣旨によれば、両ゲームは共通表現(4)記載の共通部分を有すると認められる。
 上記認定によれば、「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成に関し、両ゲームは、@基本的には、プレイヤーがカーソルを操作して自軍ユニットを行動させる自軍ターンと、コンピューターが自動的に敵軍ユニットを行動させる敵軍ターンとを繰り返すことから構成される、A自軍ターンは、コンピューターにより戦闘マップ上に自軍ユニットと敵軍ユニットが自動的に配置され、自軍ターンであることを示す英文文字が画面上に表示されることにより開始する、B自軍ターンの基本構成は、自軍ユニットを、プレイヤーがカーソルを操作してユニット1人につきそれぞれ1回だけ行動させることからなっており、その行動としては、待機、攻撃、その他の行動の三種類がある、C自軍ターンにおける自軍ユニットの行動を終えたとプレイヤーが判断して、メインメニューから「終了」コマンドを選択すると、自軍ターンは終了する、D敵軍ターンは、敵軍ターンであることを示す英文文字が表示されて開始し、敵軍ユニットが、プログラムに従って自動的に動き、移動して待機したり、自軍ユニットに対して攻撃を仕掛けてくる、E敵軍ターンはプログラムによって自動的に終了し、自軍ターンが開始する、F自軍ターンと敵軍ターンは、各戦闘マップに設けられたクリア条件をクリアするまで繰り返され、クリア条件をクリアすることにより、当該戦闘マップがマップクリアとなる、という点で共通している。
 このように、「戦闘マップをプレイする場面」を、プレイヤーが自軍ユニットを操作して行動させる自軍ターンと、コンピューターが自動的に敵軍ユニットを動かす敵軍ターンから構成し、両ターンが戦闘マップをクリアするまで交互に繰り返されること自体は、戦闘場面を中心とするゲームにおいてはごくありふれた構成にすぎず、自軍ターン又は敵軍ターンの表示自体も特に特徴的なものとはいえない。
 また、自軍ターンにおいて、プレイヤーがカーソルを操作して自軍ユニット1人につきそれぞれ1回だけ行動させることができることは、よくあるゲームのルールにすぎず、その行動の種類が大別して、待機、攻撃、その他の行動の三種類であることも、戦闘場面を中心とするゲームとしては、一般的であるということができる。
 なお、両ゲームは、戦闘マップ上の地形の属性に応じて地形効果が設定されてあり、「戦闘マップをプレイする場面」において、カーソルがある場所の地形効果が、小さな長方形状の枠として、カーソルが位置する場所とは左右反対の画面上方隅に表示され、その枠内には「平地」等の地形の属性と地形効果の数値が表示されている点で共通する。しかしながら、戦闘マップ上の地形の属性に応じて地形効果を設定すること自体は容易に想到し得るアイデアにすぎず、かかる効果を設定している他のゲーム(乙39(10)、94(10)、96)も存在する。また、画面上での地形効果の表示は、プレイヤーに対する情報提供であり、ユーザーインターフェースとしての性質を有するもので、アイデア及びその表現方法とも、特に特徴的なものとはいえないので、創作性があるとはいえない。
 以上によれば、「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の表現に関し、両ゲームには共通する点もあるが、その全体構成はありふれたものであり、上記で検討した各場面の表現にも格別な創作性を認めることはできない。なお、「戦闘マップをプレイする場面」における待機、攻撃、その他の行動に関する共通部分については、(5ー6)以下で検討する。
(5-5) 控訴人らの主張する「本質的ストーリー」
 控訴人らは、両ゲームは「本質的ストーリー」において共通すると主張する。控訴人らは、「本質的ストーリー」とは、プレイヤーが「戦闘マップをプレイする場面」をプレイした際に、ディスプレイ上に現れるプレイの遊戯内容を通じて感得されるものであり、プレイヤーに非常に強い感情移入を起こさせるものであると主張する。しかしながら、控訴人らが主張する「本質的ストーリー」は抽象的かつあいまいなものであり、甲442や494(いずれも控訴人イズの開発部担当者作成の陳述書)を精査しても、具体的な影像表現、ユニット、ストーリーなどとは別に「本質的ストーリー」の意義内容を具体的かつ一義的に把握することはできない。もとより、ゲームソフトは一定の需要者集団を想定して、難易度が設定されているが、ゲーム全体の難易度のバランス自体を、著作権法上保護されるべき表現と認めるのは困難であり、当該ゲームソフトをプレイした結果、プレイヤーが当該ゲームソフトに強く感情移入するかどうかは、プレイヤー側の当該ゲームへの嗜好や熟練度にもよるのであり、当該ゲームに没頭する場合も、その理由はプレイヤーにより様々であると考えられる。したがって、プレイヤーに感得され、強い感情移入を起こさせるものとして「本質的ストーリー」なるものを、裁判規範を充填する明確かつ具体的なものとして把握することは困難であり、このように漠然とした「本質的ストーリー」なるものに表現性を認めることは躊躇せざるを得ない。
(5-6) 自軍ターンにおいて待機する場面の表現
 前記判示のとおり、両ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」における行動は、待機、攻撃、その他の行動からなるところ、自軍ユニットを移動させ、移動先で待機させることは、「戦闘マップをプレイする場面」の基本的な行動の一つであると認められる。証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)及び弁論の全趣旨によれば、この場面に関し、両ゲームは、共通表現(6)記載の共通部分を有すると認められる。これによれば、待機の場面は、基本的に、@待機していた自軍ユニットの中から移動させるユニットを選択する、A選択されたユニットはその場動きを開始する、B移動可能範囲内から移動先を選択する、C当該ユニットが移動する様子が表現される、D移動完了後、表示された移動後のメニューから「待機」コマンドを選択すると、当該ユニットは移動先で待機ポーズに切り替わる、という各影像表現の組合せ・配列により構成されているものということができる。
(ァ) 上記で認定した共通部分の中には、プレイヤーが自軍ユニットを移動・待機させるために必要な情報及び選択肢の表示にすぎないと認められるものが含まれている。例えば、カーソル、吹出し表示、移動及び攻撃可能範囲の表示、移動後のメニュー表示は、いずれも、プレイヤーの便宜のためのユーザーインターフェースとしての性質を有する表示であって、効果音も含め、その具体的な表現方法が特に特徴的とも認められないのであって、これらの表現が創作性が有するということはできない。また、これらの表現は、プレイヤーの選択に付随するものであるから、その表示のタイミングは、多少前後することはあっても、自ずと定まったものにならざるを得ないのであって(例えば、移動後のメニュー表示が移動完了の直後になるのは当然である。)、この点においても、独自性のあるようなものを見出すことはできない。
(ィ) さらに、コンピューターがプログラムに基づいて自動的に表現する、ユニットが移動する様子の表現については、前記判示のとおりであり、ペガサス、ドラゴン、馬に乗ったユニットや徒歩のユニットの移動表現(移動の際のユニットの向きや効果音も含む。)は、創作性が全くないとはいえないが、その創作性の程度は低いというべきである。また、移動前の待機ポーズ、選択されたユニットのその場動きの表現、移動後の待機ポーズ、をそれぞれ異なる色合いや動作等で表現することも、どちらかといえば、プレイヤーにその自軍ユニットが移動可能かどうかをわかりやすく知らせることに眼目があり、その表現上の選択肢には限界がある上、個々の待機ポーズや動きについて格別な特徴があるともいえない。
(ゥ) また、上記のような@ないしDの影像表現の組合せ・配列については、プレイヤーの選択により各自軍ユニットを移動して待機させる場面を表現しようとすれば、自ずと最も落ち着きやすいありふれた組合せ・配列の一つであって、創作性はないものというべきである。
(エ) 以上によれば、両ゲームの待機の場面を構成する各影像表現の組合せ・配列には上記認定のような共通点があるが、これは、ごくありふれた場面展開を構成する表現の組合せ・配列に、プレイヤーへの情報及び選択肢表示のための影像を組み合わせたものにすぎず、全体としての組合せ・配列についても、創作性があると認めることはできない。また、移動の場面等の具体的表現について創作性がないか、あっても決して高いものといえないことは、既に判断したとおりである。したがって、両ゲームの待機の場面に関する共通部分については、創作性がない表現あるいは創作性の程度が低い表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自で創作性が高い表現であるということはできない。
(5-7) 自軍ターンにおいて攻撃する場面の表現
 前記判示のとおり、両ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」における行動は、待機、攻撃、その他の行動からなり、自軍ユニットを移動し攻撃させることは、「戦闘マップをプレイする場面」における基本的な行動の一つであると認められるところであり、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)及び弁論の全趣旨によれば、両ゲームは、共通表現(7)記載の共通部分を有すると認められる(なお、待機の場面と重複する表現の創作性等については、(5-6)で判示したとおりであり、自軍ユニット及び主人公の死亡の場面の表現については、(5-12)、(5-13)でそれぞれ検討する。)。
(ァ) 上記認定によれば、両ゲームに共通する攻撃の場面は、@移動後のメインメニューから「攻撃」を選択し、戦闘を行う敵軍ユニットを決定する、A自軍ユニットの武器を選択する、B自軍ユニットと敵軍ユニットの戦闘場面が影像表現される、Cダメージを受けた方のHPが減少し、HPが0になれば死亡する、D戦闘した自軍ユニットの経験値が付与され、場合によってはクラスチェンジができる、E行動終了後の待機のポーズに切り替わる、という組合せ・配列を反映した影像表現により構成されるものということができる。
(ィ) 上記で認定した共通部分の中には、敵軍ユニットを攻撃するために必要な情報及び選択肢の表示と認められるものが含まれている。例えば、武器選択メニュー表示、戦闘前パラメータ表示、自軍ユニットの名前、武器の名称、攻撃能力等の表示、HP及びその数値の変化の表示、戦闘後の経験値の変化の表示、レベルアップに伴う戦闘能力パラメータの数値の変化の表示は、いずれもプレイヤーに情報を与え、またプレイヤーが選択するためのユーザーインターフェースとしての性質を有する。こうした表示画面を設けること自体はアイデアであり、その具体的な表現方法あるいは表示の内容(各種パラメータの項目の内容も含む。)に特徴があるともいえないのであるから、これらの表示に創作性があるとは到底認められない。なお、これらの表示は、上記(ァ)記載の各表現に付随してなされるものであるから、その表示のタイミングは、多少前後することはあっても、自ずと定まったものにならざるを得ないのであって(例えば、武器選択メニューの表示が武器選択の直前に行われるのは当然である。)、上記(ァ)を構成する各影像表現との組合せ・配列も、独自性のある特徴的なものと認めることはできない。
(ゥ) 次に、自軍及び敵軍ユニットの攻撃回数が基本的に1回ずつであり、攻撃速度差が所定値以上の差がある場合に限り、攻撃速度の値の大きい方が再度攻撃できること、一回の攻撃では確率によりダメージを与えたり与えられなかったりすること、一回の攻撃によるダメージ値は「攻撃力ー守備力」で一定値となっていること、攻撃を受けたユニットがダメージを受けるとそのHPが減少すること、HPが0になると死亡すること、戦闘後に経験値を付与すること、経験値が100を超えたらレベルアップすること、戦闘を終えると行動が終了になることは、いずれもゲームのルールないしアイデアにすぎず、それ自体に創作性は認められない。
(ェ) また、戦闘場面に関し、オンマップバトルに加え、戦闘場面の迫真性を増すため、サイドビューのアニメーション切替戦闘への切替えを可能にすることは、他のゲームでも採用されている一般的な手法であり(甲377(1ないし4)、乙96、105、106(8、17、31))、アイデアにすぎない。また、攻撃する場合に武器等の軌跡が白く表現されること、攻撃を受けたユニットがダメージを受けた場合にそのままのポーズで白く光ること、HPがゼロになった敵軍ユニットはその場で徐々に半透明になって消滅すること、攻撃が当たらなかった場合に避ける動きをすることは、いずれも他のゲームにも例のあるありふれた表現にすぎず(乙94(38、39)、95(73、110、122、138、139、185、189)、96)、効果音も特に特徴的なものではない。したがって、これらの表現は、創作性があるとしてもその程度は低いというほかない。
(ォ) 攻撃の場面においてプレイヤーの関心を最も引きつけるのは自軍ユニットと敵軍ユニットとの間の戦闘場面であり、この場面はコンピューターのプログラムに基づいて自動的に表示されるため、プレイヤーが操作することができず、画面はアニメーション映画のように展開する。戦闘場面に登場する自軍・敵軍ユニットの組合せの数、使用される武器の数、戦闘する際の具体的な動きなどを考慮すれば、戦闘場面では創作性を有する表現が可能であると考えられるところ、証拠(甲383、384)によれば、両ゲームの戦闘場面は、登場するユニット及びその組合せ、使用される武器の種類及びその使用態様、戦闘の際の自軍・敵軍ユニットの動きの表現、背景画面のデザイン、画面の明るさや色の変化等の具体的な表現において相違しているということができる。
(カ) また、上記(ァ)@ないしEのような各影像表現の組合せ・配列は、プレイヤーが自軍ユニットにより敵軍ユニットを攻撃する場面を表現しようとすれば、ごく一般的に採用されるありふれたものであって、経験値を付与することやクラスチェンジすることも他のゲームで採用されているアイデアにすぎない。したがって、上記の組合せ・配列に創作性を認めることはできない。
(キ) 以上によれば、両ゲームの攻撃の場面に関する共通部分については、アイデア、ルール、創作性がない表現、創作性の程度が低い表現にすぎず、各影像表現の組合せ・配列についても、両ゲームに共通する点は見られるものの、全体として、創作性があると認めることはできない。
(5-8) 敵軍ターンの場面の表現
 両ゲームの敵軍ターンの場面について、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(8)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 敵軍ターンの場面における敵軍ユニットの移動、待機、攻撃の表現は、コンピューターのプログラムによって自動的に敵軍ユニットが行動するため、プレイヤーのためのユーザーインターフェース画面が表示されないなどの違いはあるが、基本的には自軍ターンの場合と同様である。なお、両ゲームともに、敵軍ターンの場面に切り替わった直後に、暗系色の待機ポーズをとっていた各自軍ユニットが元の色に戻り、敵軍ターンが終了すると暗系色のポーズをとっていた各敵軍ユニットが元の色に戻るが、これはプレイヤーに対するターン交替の表示としての機能を果たすものであり、このような表現に創作性があるとは認められない。敵軍ターンの場面のその他の共通部分に関しては、上記(5-6)及び(5-7)で判示したとおり、その創作性等を認めることができない。
(5-9) 踊る場面の表現
 前記判示のとおり、両ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」における行動は、待機、攻撃、その他の行動からなるところ、本項以下の各項は、その他の行動に係る共通部分である。本項以下の各項記載の場面が、待機、攻撃、敵軍ターンの場面と重複する共通部分を含む場合、その部分についての判断は、上記(5-6)ないし(5-8)のとおりである。
 これを前提に、踊る場面について検討する。
 「戦闘マップをプレイする場面」において、自軍の踊れるユニットが踊ると、自軍ユニットを再行動させることができる。この踊る場面の表現に関して、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(9)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する踊る場面の展開は、待機及び攻撃の場面と比較して、@移動先が再移動させる自軍ユニットの隣であること、A選択するコマンドが「踊る」であること、B一対一の戦闘場面の代わりに踊る様子が表示されること、C踊れるユニットが踊り終わると移動できるようになった自軍ユニットが通常の色彩に戻ること、において異なるが、これは踊ることにより自軍ユニットが再移動できるという効果が設定されていることに伴う当然の組合せ・配列の変化にすぎず、前記(5-6)、(5-7)で判示したのと同様の理由から、その影像表現の組合せ・配列に創作性を認めることはできない。
 踊る場面の具体的な表現の創作性については、上記(5-1)で判示したとおりであり、両ゲームの踊れるユニットの踊る場面の表現は、その相違点が共通点を凌駕し、全体として類似しているとは認められない。
 したがって、踊る場面に関する共通部分について、控訴人らの主張するような独自性・創作性は認められない。
(5-10) ユニット間のアイテム交換の場面の表現
 ユニット間のアイテム交換の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(10)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するユニット間のアイテム交換の場面は、プレイヤーが、自軍ユニットを、アイテム交換の相手先となる自軍ユニットの隣に移動し、移動後のメニューの中からアイテム交換を意味するコマンドを選択すると、アイテム交換用の画面が表示され、その画面上でアイテム交換を行った後、ボタン操作により移動後のメニューに戻る、との一連の流れで展開するものと認めることができる。
 自軍ユニット間におけるアイテム交換の場面は、他のゲームにも採用されているありふれたアイデアにすぎないところ(甲377(4)、乙13(11)、14(11)、94(62)、95(167))、上記のような場面展開も、アイテムを交換する場面としては、ごく自然でありふれたものであり、同場面を展開する各影像表現の組合せ・配列には、創作性は認められない。
 次に、アイテム交換を行う場面の具体的な表現について検討する。上記認定のとおり、両ゲームに共通するアイテム交換を行う場面の表現は、@アイテム交換画面は、画面を縦に二分して、左にアイテム交換を求める自軍ユニットを、右に交換相手となる自軍ユニットを影像表現したものであり、画面左側には、上段に、横長の長方形状の枠が表示され、その枠内に、アイテム交換を求めるユニットの斜め前向きの顔影像が表示されるとともに、その横に、名前、兵種、HP値等が表示され、下段には、縦長の長方形状の枠が表示され、その枠内に、当該自軍ユニットの現在所持している所持アイテムに関する情報が影像表示され、画面右側には、アイテム交換の相手となるユニットについて、同様の表示がなされている、A画面上に表示された指カーソルを操作して相手の所持アイテムの中から交換したいアイテムを選択してボタンを押すと、その指カーソルは動きを止め、新たな指カーソルがアイテム交換を実行したユニットの所持アイテム欄の空欄となっている個所を指すので、そこでボタンを押す、Bすると、交換相手の所持アイテム欄に表示されていたアイテムが、交換を求めるユニットの所持アイテム欄に移動し、空欄になった当該相手方の所持アイテム欄には、その下方にあるアイテム名が繰り上がってきて、次のアイテムを交換することができる状態となる、Cアイテム交換を終了する場合にはボタン操作により、当該ユニットの移動後のメインメニューの場面に戻ることができる、というものであると認めることができる。
 上記のうち、アイテム交換を行う各当事者の顔、名前、アイテムなどを左右対照に表示した画面は、プレイヤーが必要とする情報を一覧し、交換するアイテムを容易に選択できるようにするための表示であり、ユーザーインターフェースとしての性格を持つものであって、その表示方法及び内容に特徴があるものでもないので、創作性を有するとは認められない。また、カーソル操作により画面上でのアイテムの移動を可能にすることも、プレイヤーの選択を容易にするための機能的な観点からのアイデアであり、その具体的な表示に創作性が認められるものでもない。アイテム交換が行われる画面における表現は、全体としても、創作性を有するとは認められない。
 以上のとおり、アイテム交換の場面に関する共通部分は、アイデアにすぎないか、創作性の認められない表現にすぎないというべきである。
(5-11) ステータス画面の場面の表現
 ステータス画面の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(11)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 ステータス画面は、トップビューの戦闘マップ上において、カーソルをユニットに合わせて操作ボタンを押すことにより、画面全体に表示されるものであり、プレイヤーに、自軍ユニットや敵軍ユニットの能力、状態、アイテムなどの情報を提供する機能を有するものである。したがって、ステータス画面は、ユーザーインターフェースとしての性質を有するものであり、その具体的な表示形式や含まれる情報の内容に特に特徴があるものでもないので、創作性があると認めることができない。
(5-12) 死亡判断と死にセリフの場面の表現
 ユニットの死亡判断と死にセリフの場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(12)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する死亡判断と死にセリフの場面は、戦闘により自軍ユニットのHPが0になり、そのユニットが死亡したものと判断されると、自動的に開始されるものであり、具体的には、画面上に死にセリフが表示されてから、そのユニットの全身影像が消えていき、完全に消滅すると、当初のオンマップの場面に切り替わる、というものであると認めることができる。
 このように、自軍ユニットが死亡する際に、そのユニットのセリフを表示することは、他のゲームでも採用されているアイデアであり(乙39(35)、94(65))、ユニットのHPが0になるとそのユニットは死亡すること、死亡したユニットは二度と生き返らないことは、いずれもゲームのルールにすぎない。また、死亡した自軍ユニットの全身影像が半透明となって徐々に消え、最後には消滅の効果音とともに消滅するという表現も、ありふれているというほかない。さらに、死にセリフの表示方法は、会話等を表示する際の普通の手法にすぎず、創作性は認められない。
 以上のとおり、両ゲームの死亡判断と死にセリフの場面に関する共通部分は、アイデア又は創作性のない表現にすぎないというべきである。
(5-13) 主人公の死亡によるゲームオーバーの場面の表現
 主人公の死亡によるゲームオーバーの場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(13)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、主人公の死亡によるゲームオーバーの場面が、上記(5-12)の場面と異なる主な点は、主人公の死にセリフが表示され、その全身影像が消滅した後に、画面がトップビューによる戦闘マップの場面に切り替わり、その下方一杯に長方形状の吹出しが表示され、その吹出しの上方かつ画面の右側に、主人公に最も親しい自軍ユニットの顔が主人公の顔のあった左側を向いて表示され、その吹出し内に主人公の死を無念に思う当該自軍ユニットの言葉が文字表示される、という点にあると認めることができる。
 このように、主人公の死亡の場合に、主人公自身の死にセリフに続いて、その死を無念に思う自軍ユニットの言葉を表示することは、アイデアにすぎない。セリフの表示方法に創作性が認められないことは、前記のとおりであり、その他の表現(主人公の死にセリフの表示とその全身影像の消滅する表現)の創作性については、上記(5-12)で判示したとおりである。
 以上によれば、主人公の死亡によるゲームオーバーの場面に関する共通部分は、アイデアないし創作性のない表現にすぎないというべきである。
(5-14) クラスチェンジの場面の表現
 クラスチェンジの場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(14)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームは、クラスチェンジの場面に関し、@クラスチェンジを可能にするアイテムを所持した自軍ユニットが、移動を完了すると、移動後のメニューが表示されるので、その中から、アイテムを意味するコマンド、続いて「使う」とのコマンドを選択する、Aすると、戦闘画面の設定がオンマップであってもトップビューのマップ画面から自動的にサイドビューのクラスチェンジの場面に切り替わり、クラスチェンジの様子が影像表現される、Bクラスチェンジが完了すると、長方形状の枠が表示され、枠内の左端に当該自軍ユニットの右斜め前向きの上半身の影像を、その横には当該ユニットのクラスチェンジ後の戦闘能力パラメータが影像表示され、パラメータがアップする場合には、パラメータの数値の上昇が、数値の変化や上昇マークとともに表現される、Cクラスチェンジの場面が終了すると、当該ユニットの自軍ターンでの行動は終了となり、トップビューのマップ場面に再び切り替わり、当該ユニットは待機ポーズとなる、という点で共通すると認められる。
 上記のうち、自軍ユニットが一定の条件のもとでクラスチェンジすること自体は、他のゲームでも取り入れられているありふれたアイデアにすぎず(乙39(28)、94(67)、95(101、150)、96)、クラスチェンジの場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、アイテムを使ってクラスチェンジする場面としては、容易に考えられる自然なものであって、創作性があると認めることができない。また、クラスチェンジ後の戦闘パラメーターの表示はユーザーインターフェースとしての性質を持つ表示であり、その表示方法や内容において特徴的であるとも認められないので、創作性があるとはいえない。
 次に、両ゲームのクラスチェンジの具体的表現は、上記認定のとおり、まず、画面中央に、クラスチェンジするユニットが、現在の兵種での服装(及び乗り物)で、左向きの影像で表現され、黒背景の画面下段の右半分には、当該ユニットの名前等が青色系の枠内に影像表示され、続いて、当該ユニットは強い光に照らされるように明るくなり、その光が徐々に弱くなると、クラスチェンジしたユニットが、クラスチェンジ後の兵種での服装(及び乗り物)で、右向きの影像として表現される、という点で共通すると認められる。しかしながら、証拠(甲383、384)によれば、トラキアでは、クラスチェンジする前のユニットを強い光が白い円柱状に包んで、その中の当該ユニットが黒い影のように映り、光が消えると、中からクラスチェンジした後のユニットが現れるという表現方法をとっているのに対し、被控訴人ゲームでは、クラスチェンジする前のユニットがぼやけるようにして一度消え、その後徐々にクラスチェンジ後の姿が現れるという表現方法をとっていると認められ、その具体的な表現方法は両ゲームで異なるといわざるを得ない。
 以上のとおり、そもそも自軍ユニットが一定の条件の下、クラスチェンジすること自体はアイデアにすぎず、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も特徴的とはいえず創作性は認められない一方、両ゲームの具体的なクラスチェンジの表現は異なるというべきである。
(5-15) マップクリア後に主人公がクラスチェンジする場面の表現
 マップクリア後に主人公がクラスチェンジする場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(15)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するマップクリア後に主人公がクラスチェンジする場面は、クラスチェンジする主体が主人公であり、その時期がマップクリア後であることを除き、上記(5-14)の場面と変わらないものと認められる。マップクリア後に主人公が一定の場合にクラスチェンジすること自体は、他のゲームにも取り入れられているアイデアにすぎず(乙95(56))、その他の表現(主人公がクラスチェンジする様子の表現も含む。)の創作性については、上記(5-14)で判示したとおりである。
 以上によれば、主人公のマップクリア後のクラスチェンジの場面の共通部分は、アイデア又は創作性のない表現にすぎず、両ゲームは具体的な表現において相違しているということができる。
(5-16) 闘技場の場面の表現
 闘技場は、プレイヤーが、武器やアイテムなどを購入する資金を取得するために、一定の賭金をかけて相手と決闘するために設けられた施設である。闘技場の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(16)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する闘技場の場面は、戦闘マップ上に古代ローマの闘技場のように表現された闘技場が配置されている場合、自軍ユニットをその闘技場の上に移動させ、移動後のメニューから闘技場コマンドを選択すると、闘技場における場面が影像表現され、闘技場の場面が終了すると、戦闘マップの場面に戻り、当該ユニットは待機ポーズに切り替わる、という一連の流れで構成されると認められる。
 そもそも、一定の金額を賭金として相手と決闘する場所として闘技場を設けることは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙39(31)、94(68)、95(28、108、160))、闘技場に入ると、その主人が登場し、プレイヤーに話しかけるような形で、ルールや選択肢を説明するという手法も、単なるアイデアにすぎない。
 また、対戦したユニットのいずれかが死亡するか、プレイヤーがキャンセルのためのボタンを操作するまで戦闘が続けられることは、ゲームのルールにすぎず、対戦相手のデータや賞金額の表示、セリフの表示方法等は、プレイヤーに対する情報及び選択肢の提供を主たる目的とする表示であって、創作性があるとは認められない。
 さらに、闘技場の外観や、闘技場の場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、容易に考えられるありふれたもので、いずれにも、創作性を認めることはできない。両ゲームの闘技場における「おやじ」のセリフも、一般的なルールや選択肢の説明にすぎず、特に創作性があるとは認められない。
 他方、証拠(甲383、384)によれば、両ゲームの闘技場の場面の具体的な表現、例えば「おやじ」の容姿、闘技場の外観及び内部の様子等は、異なっていると認められ、ユニット間の戦闘場面の具体的な表現が両ゲームで異なることは、他の戦闘場面と同様である。
 以上によれば、両ゲームの闘技場の場面には共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデアにすぎないか、創作性に乏しい表現にすぎず、具体的な表現においては、両ゲームは相違するということができる。
(5-17) 秘密の店の場面の表現
 秘密の店とは、特殊な条件として設定したアイテムを持った自軍ユニットのみが入って珍しいアイテムを購入できる店であり、一見して店だとはわからないようになっている。秘密の店の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(17)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する秘密の店の場面の展開は、移動先が秘密の店であるほかは、闘技場の場面(5-16)と同様であると認めることができる。
 そもそも、マップ上に表示されない秘密の店を設けるということは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙39(34)、94(69)、95(97))、秘密の店に入ると、その主人が登場し、プレイヤーに話しかけるような形で、アイテムの売買が行われることも、単なるアイデアにすぎない。さらに、秘密の店の店内の場面における、所持金、アイテムとその価格のリスト表及び残金額の表示、選択のための文字表示等は、プレイヤーに対する情報及び選択肢の提供を主たる目的とする表示であって、創作性があるとは認められない。秘密の店の主人のセリフも、プレイヤーに対する情報の提供及び選択肢の表示としてなされものであって、特に創作性があるとは認められない。
 他方、証拠(甲383、384)によれば、秘密の店に関する具体的な表現、例えば、店の主人の容姿(トラキアでは武器屋、道具屋、秘密の店の主人は同じ容姿であるのに対し、被控訴人ゲームの各主人の容姿はそれぞれ異なる。)、店の背景画面等は、両ゲームで異なっていると認められる。
 以上によれば、秘密の店の場面には共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデア又は創作性に乏しい表現にすぎず、具体的な表現においては相違するということができる。
(5-18) 「制圧」コマンドによるマップクリアの場面の表現
 制圧によるマップクリアの場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(18)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する制圧によるマップクリアの場面は、主人公による制圧コマンドの選択がクリア条件となっているマップにおいて、戦闘によって敵軍ボスが死亡した後、制圧できる所定の場所に主人公を移動させ、制圧コマンドを選択すると、マップクリアとなる、というものであると認めることができる。
 敵軍の将を倒し、敵の特定の拠点に主人公が移動することによりマップクリアとなるというのは、きわめてありふれたゲームのルールないしはアイデアにすぎず、同場面に関し、他に創作性ある具体的表現と認めるに足るものはない。したがって、制圧によるマップクリアの場面に関する共通部分は、アイデアにすぎないか、ありふれていて創作性の認められない表現にすぎないというほかない。
(5-19) ペガサスに乗る場面の表現
 徒歩で移動したユニットが移動先でペガサスに乗る場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(19)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するペガサスに乗る場面は、ペガサスに乗れるユニットが徒歩で移動した後に、移動後のメニューから「乗る」コマンドを選択すると、その場で当該ユニットがペガサスに乗る様子が表現され、続いて「待機」コマンドを選択すると、ペガサスが当該ユニットを乗せたまま翼をたたんで斜め前を向いた待機ポーズに影像が切り替わる、という一連の流れで展開するものと認められる。そして、ペガサスに乗る様子の具体的な表現は、「乗る」コマンドを選択することにより、当該ユニットがペガサスに乗った影像に切り替わり、ペガサスが当該ユニットを乗せて空中で翼を羽ばたかせている状態がトップビューのアニメーション手法によって影像表現され、地上には、空中で羽ばたくペガサスの黒い影が表現される、というものであると認められる。
 上記のうち、ペガサスに乗ることのできるユニットがペガサスを乗る場面を設けることは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙95(3)、96)、ペガサスの乗る場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、特に特徴的であるとは認められない。また、ペガサスに乗る場面の具体的な表現も、当該ユニットを乗せたペガサスが空中で翼を羽ばたかせ、その影がマップ上に黒く映るというものであり、創作性がないとはいえないが、空中にとどまって飛翔する姿としてはそれほど特徴があるとはいえず、戦闘マップの桝目上での表現であることも考慮すると、その創作性の程度は低いというべきである。ペガサスの移動後の待機ポーズについても同様である。したがって、ペガサスに乗る場面に関する共通部分は、アイデア、創作性のない表現又は創作性の程度の低い表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自で創作性の高い表現とは認めることができない。
(5-20) ペガサスから降りる場面の表現
 ペガサスに乗って移動したユニットが移動先でペガサスから降りる場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(20)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するペガサスから降りる場面は、@ペガサスに乗った自軍ユニットが待機ポーズをとっている場合、当該ユニットにカーソルを合わせて選択すると、ペガサスが当該ユニットを乗せたままその場に飛翔し、大きく羽ばたきをし始める、A移動先を決定すると、ペガサスが当該ユニットを乗せて、翼を大きく羽ばたかせて空中を飛翔し、移動先に移動する、Bペガサスが当該ユニットを乗せたままで移動先に到達すると、「おりる」コマンドを含む移動後のメニューが表示されるので、このコマンドを選択すると、ペガサスの影像は消え、当該ユニットがその場で駆けている姿が影像表現される、C移動後のメニューから「待機」コマンドを選択すると、当該ユニットは待機ポーズに切り替わる、という一連の流れで展開するものと認められる。
 上記のうち、ペガサスに乗ったユニットがペガサスから降りる場面を設けることは、他のゲームでも採用されている単なるアイデアにすぎず(乙95(3)、96)、ペガサスに乗ったユニットが移動を開始してから、移動先でペガサスから降りるまでの各影像表現の組合せ・配列も、普通に考えられるものである。また、ペガサスが当該ユニットを乗せて飛翔する表現、ペガサスが当該ユニットを乗せたまま空中を飛翔して移動する表現、当該ユニットがペガサスから降りる表現、当該ユニットがその場で駆ける動作の表現は、いずれも、創作性がないとはいえないが、特に特徴的であるとも認められないものであり、その創作性は低いというべきである。したがって、ペガサスから降りる場面に関する共通部分は、アイデア、創作性のない表現又は創作性の程度の低い表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自で創作性の高い表現とは認めることができない。
(5-21) ドラゴンに乗る場面の表現
徒歩で移動したユニットが移動先でドラゴンに乗る場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(21)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するドラゴンに乗る場面の展開は、乗り物がドラゴンである以外は、上記(5-19)と同様であると認められる。ペガサスと同様、ドラゴンに乗ることのできるユニットがドラゴンを乗る場面を設けることは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙95(40、78、127)、96)、ドラゴンに乗る場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、特に特徴的であるとは認められない。また、ドラゴンに乗る場面の具体的な表現も、当該ユニットを乗せたドラゴンが空中で翼をはばたかせ、その影がマップ上に黒く映るというものであり、創作性がないとはいえないが、空中にとどまって飛翔する姿としてはそれほど特徴があるとはいえず、戦闘マップの桝目上での表現であることも考慮すると、その創作性の程度は低いというべきである。ドラゴンの移動後の待機ポーズについても同様である。したがって、ドラゴンに乗る場面に関する共通部分は、アイデア、創作性のない表現又は創作性の程度の低い表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自で創作性の高い表現とは認めることができない。
(5-22) ドラゴンから降りる場面の表現
 ドラゴンに乗って移動したユニットが移動先でドラゴンから降りる場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(22)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するドラゴンから降りる場面の展開は、乗り物がドラゴンである以外は、上記(5-20)と同様であると認められる。ペガサスと同様、ドラゴンに乗ったユニットがドラゴンから降りる場面を設けることは、他のゲームでも採用されている単なるアイデアにすぎず(乙95(40、127)、96)、ドラゴンに乗ったユニットが移動を開始してから、移動先でドラゴンから降りるまでの各影像表現の組合せ・配列も、普通に考えられるものである。また、ドラゴンが当該ユニットを乗せて飛翔する表現、ドラゴンが当該ユニットを乗せて移動する表現、当該ユニットがドラゴンから降りる表現、当該ユニットがその場で駆ける動作の表現は、いずれも、創作性がないとはいえないが、特に特徴的であるとも認められないものであり、その創作性は低いというべきである。したがって、ドラゴンから降りる場面に関する共通部分は、アイデア、創作性のない表現又は創作性の程度の低い表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自で創作性の高い表現とは認めることができない。
(5-23) 馬に乗る場面の表現
 徒歩で移動したユニットが移動先で馬に乗る場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(23)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 両ゲームにおける馬に乗る場面の展開は、乗り物が馬である以外は上記(5-19)、(5-21)と同様であると認めることができる。ペガサス及びドラゴン同様、馬に乗ることのできるユニットが馬に乗る表現を設けることは、他のゲームでも採用されている単なるアイデアにすぎず(乙95(7、83)、馬に乗る場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、特に特徴的であるとは認められない。また、馬に乗る場面の具体的な表現も、馬に乗れるユニットが馬に乗ってその場でギャロップをするというもので、創作性がないとはいえないが、マップの桝目上での表現であり、特に特徴的な表現であるとは認められない。馬の移動後の待機ポーズについても同様である。したがって、馬に乗る場面に関する共通部分は、アイデア、創作性のない表現又は創作性の程度の低い表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自で創作性の高い表現とは認めることができない。
(5-24) 馬から降りる場面の表現
 馬に乗って移動したユニットが移動先で馬から降りる場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(24)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する馬から降りる場面の展開は、乗り物が馬である以外は、上記(5-20)、(5-22)と同様であると認められる。ペガサス及びドラゴンと同様、馬に乗ったユニットが馬から降りる場面を設けることは、他のゲームでも採用されている単なるアイデアにすぎず(乙95(83)、96)、馬に乗ったユニットが移動を開始してから、移動先で馬から降りるまでの各影像表現の組合せ・配列も、普通に考えられるものである。また、馬が当該ユニットを乗せてギャロップする表現、馬が当該ユニットを乗せて移動する表現、当該ユニットが馬から降りる表現、当該ユニットがその場で駆ける動作の表現は、いずれも、創作性がないとはいえないが、特に特徴的であるとも認められないものであり、その創作性は低いというべきである。したがって、馬から降りる場面に関する共通部分は、アイデア、創作性のない表現又は創作性の程度が低い表現にすぎず、控訴人らが主張するような独自で創作性の高い表現とは認めることができない。
(5-25) ユニット間の会話で寝返る場面の表現
 自軍ユニットが敵軍ユニットに話しかけて会話することにより、敵軍ユニットが自軍に寝返る場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(25)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するユニット間の会話で寝返る場面は、自軍ユニットが、話しかけて仲間にできる(寝返る)敵軍ユニットの隣りに移動し、「話す」コマンドを選択すると、トップビューのマップ場面から会話場面に切り替わり、会話場面が終了すると、それ以降は寝返った敵軍ユニットが自軍ユニットとして表示され、行動を終了した自軍ユニットは待機ポーズに切り替わる、というものであると認めることができる。また、両者の会話場面では、両者の上半身の影像が、画面の左右に表示され、横に長い長方形状の吹出し内に会話内容が文字表示される。
 そもそも、自軍ユニットが特定の敵軍ユニットに話しかけることにより、当該敵軍ユニットが寝返るという設定は、他のゲームでも採用されている単なるアイデアにすぎず(乙94(49、66、134、151、153)、96)、同場面の展開も容易に考えられるありふれたものであるから、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列に創作性があると認めることはできない。また、寝返った敵軍ユニットの吹出し表示の色が、寝返った後に自軍の色になるのは当然であり、自軍ユニットと敵軍ユニットの会話の表示方法も一般的なものである。むしろ、プレイヤーは、吹出しの中に表示される自軍ユニットと寝返る敵軍ユニットの会話内容に関心を持つものであり、こうした会話の内容は、制作者が自由に創作できる余地が大きいと考えられるところ、証拠(甲383、乙100)によれば、この点については、両ゲームは相違していると認められる。
 以上のとおり、自軍ユニットが話しかけることにより敵軍ユニットが寝返る場面に関する共通部分は、アイデア又は創作性のない表現にすぎず、会話場面で表示される会話内容については両ゲームは異なるということができる。
(5-26) ユニット間の会話で仲間になる場面の表現
 自軍ユニットが中立ユニットに話しかけることにより仲間になる場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(26)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通するユニット間の会話で仲間になる場面は、自軍ユニットが話をする相手が中立のユニットであるほかは、上記(5-25)と同様であると認められる。上記(5-25)と同様、自軍ユニットが中立ユニットに話しかけて味方にすることができるという設定は、他のゲームでも採用されているありふれたアイデアにすぎず(乙9(12)、39(29)、95(58、80、95)、96)、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列に創作性があるとも認められない。また、味方になった中立ユニットの吹出し表示の色が、味方になった以降に自軍の色になるのは当然であり、自軍ユニットと中立ユニットの会話の表示方法も一般的なものにすぎない。両ゲームが、吹出しの中に表示される自軍ユニットと中立ユニットの会話内容において相違していると認められることも、上記(5-25)と同様である。
 したがって、自軍ユニットが話しかけることにより中立ユニットが味方になる場面に関する共通部分は、アイデア又は創作性のない表現にすぎず、会話場面で表示される会話内容については両ゲームは異なるということができる。
(5-27) 武器屋の場面の表現
 武器を売買する武器屋の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(27)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する武器屋の場面の展開は、移動先が武器屋(民家とは異なって、四角く中央がへこみ、周りが少し高い壁となっており、壁は西洋中世の城のように四角いでこぼこが並んだ屋根をもった四角い建物)であるほかは、闘技場の場面(5-16)と同様であると認めることができる。
 そもそも、武器を売買する場所として武器屋を設けるということは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙39(32)、94(71)、95(23))、武器屋の店内に入ると、主人が現れ、プレイヤーに話しかけるような形で、売買が行われるという手法も、単なるアイデアにすぎない。また、武器屋の外観や、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、容易に考えられるありふれたものであって、いずれにも、創作性を認めることはできない。
 さらに、武器屋の店内の場面における、所持金、武器とその価格のリスト表及び残金額の表示、選択のための文字表示等は、プレイヤーに対する情報及び選択肢の提供を主たる目的とする表示であって、創作性があるとは認められない。武器屋の主人のセリフも、プレイヤーに対する情報の提供及び選択肢の表示としてなされるものであって、特に創作性があるとは認められない。
 他方、証拠(甲383、384)によれば、武器屋に関する具体的な表現、例えば、店の主人の容姿(トラキアでは武器屋、道具屋、秘密の店の主人は同じ容姿であるのに対し、被控訴人ゲームの各主人の容姿はそれぞれ異なる。)、店の背景画面等は、両ゲームで異なっていると認められる。
 以上によれば、武器屋の場面には共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデア又は創作性に乏しい表現にすぎず、具体的な表現においては相違する点があるということができる。
(5-28) 道具屋の場面の表現
 アイテムを売買する道具屋の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(28)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する道具屋の場面の展開は、移動先が道具屋(民家とは異なって、民家とは異なった白い四角の枠がはまった屋根の建物)であるほかは、闘技場の場面(5-16)と同様であると認めることができる。
 そもそも、アイテムを売買する場所として道具屋を設けるということは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙39(33)、94(72)、95(23))、道具屋の店内に入ると、主人が現れ、プレイヤーに話しかけるような形で、売買が行われるという手法も、単なるアイデアにすぎない。また、道具屋の外観や、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、容易に考えられるありふれたものであって、いずれにも、創作性を認めることはできない。
 さらに、道具屋店内の場面における、所持金、アイテムとその価格のリスト表及び残金額の表示、選択のための文字表示は、プレイヤーに対する情報及び選択肢の提供を主たる目的とする表示であって、創作性があるとは認められない。主人のセリフも、プレイヤーに対する情報の提供又は選択肢の表示としてなされるものであって、特に創作性があるとは認められない。
 他方、証拠(甲383、384)によれば、道具屋に関する具体的な表現、たとえば、両ゲームの道具屋に関する具体的な表現、例えば、店の主人の容姿(トラキアでは武器屋、道具屋、秘密の店の主人は同じ容姿であるのに対し、被控訴人ゲームの各主人の容姿はそれぞれ異なる。)、店の背景画面等は、異なっていると認められる。
 以上によれば、道具屋の場面には共通する点もあるが、その共通する部分は、アイデア又は創作性に乏しい表現にすぎず、具体的な表現においては相違するということができる。
(5-29) 縮小マップの場面の表現
 縮小マップの場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(29)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定のとおり、縮小マップは、トップビューの戦闘マップ上において、戦闘マップの一面が画面サイズより大きく、一画面だけでは戦闘マップの状況を把握できないときに、プレイヤーが操作ボタンを押すと、マップ画面上に重なって表示される縮小された戦闘マップである。縮小マップ上に表示されるカーソルは、画面上で背景として表現されている戦闘マップが、縮小マップ上のどこに位置するかを表示しており、このカーソルを上下左右に移動させると、背景の戦闘マップが、カーソルの動きに合わせて画面上でスクロールする。プレイヤーが操作ボタンを押すと、縮小マップの影像表現は一瞬にして消滅し、元のトップビューの戦闘マップ影像が表現される。
 ゲームソフトにおいて、縮小マップを設けることは他のゲームでも採用されているアイデアにすぎない(乙39、94(73))。縮小マップは、プレイヤーが戦闘マップ全体の地形や自軍及び敵軍ユニットの配置を確認するためのものであり、単に戦闘マップを縮小したにすぎないのであるから、創作性がある表現とは認められない。
(5-30) ユニット一覧の場面の表現
 ユニット一覧の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(30)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定のとおり、ユニット一覧の場面の表示は、トップビューの戦闘マップ上において、カーソルの位置にユニットが存在していない状態で操作ボタンを押してメインメニューを表示させた上、その中からユニットを意味するコマンドを選択すると表示されるものである。ユニット一覧は、ユニット名は固定して表示したままで、操作ボタンを押すことにより、画面上の横方向の項目を順次切り換えて表現するものとなっており、方向キーの上下でユニットを選択して、操作ボタンを押すと、一瞬にしてユニット一覧表は消え、戦闘マップ画面に切り替わり、場合によっては、戦闘マップがスクロールすることにより、ユニット一覧表で選択されたユニットにカーソルが合わされ、吹出しが影像表示される。このようなユニット一覧画面は、プレイヤーが各自軍ユニットの経験値、HP、装備武器等を一覧できるようにするためのものであり、ユーザーインターフェースとしての性質を有するものであって、その具体的な表示形式や含まれる情報の内容に特徴があるものでもない。したがって、創作性のある表現とは認められない。
(5-31) 杖を使って相手をワープさせる場面の表現
 杖ユニットが杖を使って自軍ユニットを別の場所にワープさせる場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(31)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する杖を使って相手をワープさせる場面は、@相手をワープさせることのできる杖を所持している杖ユニットを、ワープさせる自軍ユニットの隣に移動させて、移動後のメニューから杖コマンド、続いて該当する杖を選択し、ワープさせる自軍ユニットを選択する、Aワープさせる場所を、指が四角い枠を下げ持っている形状の特別な指カーソルで指定する、Bワープ先を指定して、杖ユニットが杖を使うと、ワープさせる相手が立っている場所が光り、ワープさせる相手はその場から消え、ワープ先に指定した場所にワープさせた相手が現れる、Cこの杖を使った杖ユニットに経験値が付与され、経験値が100を超えた場合にはレベルアップの場面へ移行する、D杖ユニットの行動は終了し、待機ポーズに切り替わる、という一連の流れで展開するものと認められる。
 そもそも、杖を使って自軍ユニットをワープさせる場面を設けること自体は他のゲームでも採用されているアイデアであり(乙94(75)、95(101))、また、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列は、杖で相手をワープさせる場面としては容易に考えられる組合せ・配列にすぎないというべきである。また、カーソルについては、特徴的な形をしていることは確かであるが、その目的は移動先の選択をさせることにあるのであるから、機能的な表示にすぎず、創作性は認められない。さらに、証拠(甲383、384)によれば、両ゲームにおける、杖ユニットが自軍ユニットをワープさせる具体的表現は、杖が光を発する様子や、ワープする自軍ユニットの光り方、当該ユニットの移動先での現れ方などにおいて相違していると認められる。
 以上のとおり、杖を使って自軍ユニットをワープさせる場面を設けること自体はアイデアにすぎず、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列にも創作性を認めることができない上、両ゲームの杖を使う場面の具体的表現は異なるのであって、同場面の共通部分が控訴人らが主張するように独自で創作性の高い表現であるとは認めることができない。
(5-32) 杖を使って相手を回復させる場面の表現
 杖ユニットが杖を使ってHPの減少した自軍ユニットを回復させる場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(32)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する杖を使って相手を回復させる場面は、@HPを回復させる杖を所持する杖ユニットを、HPが減少している自軍ユニットの隣に移動させて、移動後のメニューから、「杖」コマンド、続いて該当する杖を選択し、HPを回復する自軍ユニットを選択する、Aすると、杖ユニットが杖を使い、杖ユニットから光る輪が外へ広がり、HPを回復させる自軍ユニットに光の輪がすぼまってゆく、B効果音とともに、HPを表す数値が上がり、棒グラフが伸びる影像により、当該ユニットのHPが回復して増加する様子が示される、Cこの杖ユニットに、経験値が付与される場面に自動的に切り替わり、経験値が100を超えるとレベルアップの場面へ移行する、D杖ユニットの行動は終了し、待機ポーズに切り替わる、という一連の流れで展開するものと認められる。
 そもそも、杖を使って自軍ユニットのHPを回復させること自体は他のゲームでも採用されているアイデアであり(甲377(1)、乙94(76)、乙95(54、58、63))、また、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列は、杖で相手をワープさせる場面としては自然に想到し得るありふれたものにすぎないというべきである。また、証拠(甲383、384)によれば、両ゲームにおける、杖ユニットが杖を使って自軍ユニットのHPを回復させる具体的表現は、光の発せられ方、光の色、光の収束の様子などにおいて異なっているものと認められる。
 以上のとおり、杖を使って相手を回復させる場面に関する共通部分は、アイデアにすぎないか、ありふれていて創作性の認められない表現にすぎず、創作性のある表現においては、両ゲームは相違するというべきである。
(5-33) 敵軍ボスの口上の場面の表現
 自軍ターンにおける攻撃時に、敵軍のボスユニットが初めて自軍ユニットと戦闘を行う場合には、敵軍ボス口上の場面が表現される。この場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(33)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する敵軍ボスの口上の場面は、戦闘する相手が敵軍ボスである場合に限り、戦闘場面が開始される直前に表示されるものであり、具体的には、画面下段に、横長の長方形状の吹出しが表示されるとともに当該敵軍のボスユニットの斜め前方を向いた顔の影像が表示され、その吹出しの中に戦闘を初めて行うに当たっての当該ボスユニットの口上が文字で表示される、というものであると認めることができる。
 このように、戦闘場面の開始前に敵軍ボスが口上を述べる場面を設けることは他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙94(77))、その口上の表示方法や吹出しに特に特徴があるものでもない。むしろ、敵軍ボスが口上を述べる場面において、プレイヤーが関心を寄せるのは、当該敵軍ボスの口上の内容そのものであり、この点については制作者が自由に創作する余地が大きいと認められるところ、両ゲームの敵軍ボスの口上の内容が共通又は類似していると認めるに足る証拠はない。
 したがって、敵軍ボスの口上の場面に関する共通部分は、アイデア又はありふれていて創作性の認められない表現にすぎないというべきである。
(5-34) 敵軍ボスの死にセリフの場面の表現
 敵軍ボスの死にセリフの場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(34)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する敵軍ボスの死にセリフの場面は、戦闘によって敵軍のボスユニットが死亡した場合に自動的に開始されるものであり、具体的には、斜め前方を向いた当該ボスユニットの顔の影像が表現されるとともに、横長の長方形状の吹出しが影像表現され、その吹出しの中に当該ボスユニットの死にセリフの言葉が文字で影像表示された後、当該ボスユニットの全身影像は、徐々に半透明となって消えるように影像表現され、最後には消滅の効果音とともに消えてしまう、というものであると認めることができる。
 上記のうち、敵軍ボスが死亡した場合に死にセリフを述べる場面を設定することは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙94(79))、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も特徴的であるとは認められない。また、敵軍のボスユニットの全身影像が消滅していく表現もありふれていて、創作性は認められない。むしろ、敵軍ボスの死にセリフの場面において、プレイヤーが関心を寄せるのは、当該敵軍ボスの死にセリフの内容そのものであり、この点については、両ゲームの敵軍ボスの死にセリフの内容が共通又は類似していると認めるに足る証拠はない。
 したがって、敵軍ボスの死にセリフの場面に関する共通部分は、アイデア又はありふれていて創作性の認められない表現にすぎないというべきである。
(5-35) 民家を訪ねて仲間を増やす場面の表現
 民家を訪ねて仲間を増やす場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(35)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する民家を訪ねて仲間を増やす場面は、@自軍ユニットが、ドアが開いておりかつ仲間にできるユニットが中にいる民家に移動し、移動後のメニューから「訪ねる」コマンドを選択すると、トップビューのマップ場面から、民家内での会話の場面に切り替わり、人物影像の下に設けられた横に長い長方形状の吹出し内に、仲間になる旨の会話内容が文字で表示される、A会話場面が終了すると、戦闘マップ画面に戻り、新たに仲間になった自軍ユニットが民家の外に出て所定の待機ポーズをし、以降、当該ユニットにカーソルを合わせると自軍の色(青色系)の吹出しが出る、B当該民家は、以降は、ドアが閉じた状態に変わって影像表現され、行動を終了した自軍ユニットは待機ポーズに切り替わる、という一連の流れで展開するものと認めることができる。
 そもそも、民家を訪ねて仲間を得るという設定自体は、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎない(乙95(58、62、92))。また、仲間になったユニットの吹出しの色の変化の表現、民家のドアの開閉の変化の表現については、プレイヤーへの表示を目的とするものであり、創作性があるとは認められない。民家における自軍ユニットと仲間にできるユニットとの間の会話内容については、両ゲームでその内容が共通又は類似していると認めるに足る証拠はない。
 以上によれば、民家を訪ねて仲間を増やす場面に関する共通部分は、アイデアか、創作性の認められない表現にすぎないというべきである。
(5-36) 民家を訪ねてアイテムを得る場面の表現
 民家を訪ねてアイテムを得る場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(36)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する民家を訪ねてアイテムを得る場面は、民家を訪れてその中にいる人物からアイテムを受け取る点で上記(5-35)と異なり、その具体的な表現は、民家の中の人物との会話の場面が終了すると、アイテム獲得場面となり、画面中央に横に長い長方形のウィンドウが表現され、そのウィンドウ中に、獲得したアイテムのアイコン及びアイテム名称並びに当該アイテムを手に入れたという文字が影像表現され、音階が上がる短いファンファーレが鳴るというものであると認めることができる。
 そもそも、民家を訪ねてアイテムを得るという設定自体は他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙94(81)、95(92))、前記判示のとおり、アイテムの表示画面も、プレイヤーへの情報提供を主たる目的とするものであり、創作性があるとは認められない。その他の表現の創作性等については、上記(5-35)で判示したとおりである。したがって、民家を訪ねてアイテムを得る場面に関する共通部分は、アイデアか、創作性の認められない表現にすぎないというべきである。
(5-37) 宝箱を開ける場面の表現
 戦闘マップ上に宝箱が存在するとき、盗賊ユニットは宝箱を開けることにより、アイテムを入手させることができる。この場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(37)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する宝箱を開ける場面は、宝箱を開けることのできる盗賊ユニットを宝箱まで移動させ、宝箱を開けることを意味するコマンドを選択すると、自動的に宝箱が開けられた影像がなされ、画面中央に表示される横に長い長方形のウィンドウ中に、獲得したアイテムのアイコン及びアイテム名称並びに当該アイテムを手に入れたという文字が表示されるとともに、音階が上がる短いファンファーレが鳴り、その画面が自動的に消えると当該ユニットは待機ポーズに切り替わる、という流れで展開すると認めることができる。
 宝箱の中にアイテムがあり、それを自軍の特定のユニットが開けることにより、アイテムを獲得するという設定は、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙94(82)、96)、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列にも特徴があるとは認められない。また、両ゲームの戦闘マップ上に表現された宝箱及びそれが開く表現は、ごくありふれたもので創作性があるとは認められず、取得したアイテムの名称等の表示は、プレイヤーに対するユーザーインターフェースとしての性質を持つもので、これについても創作性を認めることはできない。
 したがって、宝箱を開ける場面に関する共通部分は、アイデアか、ありふれていて創作性の認められない表現にすぎないというべきである。
(5-38) 扉を開く場面の表現
 閉まっている扉を開く場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(38)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する扉を開く場面は、扉を開ける鍵又は技を持った特定の自軍ユニットが、戦闘マップ上の閉まっている扉の隣に移動し、扉を開けることを意味するコマンドを選択すると、扉が軋むように開く効果音とともに、扉が開き、扉を開けた当該ユニットは移動を終了し、待機ポーズに切り替わる、という一連の流れで展開すると認めることができる。
 このように特定の自軍ユニットが鍵を使って扉を開くことができるという設定は、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙94(83)、95(39、51、109)、96)、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、容易に考えられるありふれたもので、特に特徴があるとは認められない。また、両ゲームの扉を開く場面の表現を具体的に見ても、その効果音、扉の表現などもありふれており、扉が開くと、それ以降、戦闘マップ上でその扉が開き続け、ユニットが自由に出入りできるようになることは当然である。したがって、扉を開く場面に関する共通部分は、アイデアか、ありふれていて創作性の認められない表現にすぎないというべきである。
(5-39) 跳ね橋を降ろす場面の表現
 川や堀等に設置され自軍の通行を阻んでいる跳ね橋を降ろす場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(39)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する跳ね橋を降ろす場面は、戦闘マップ上において、横棒を並べたような形状で中央から跳ね上がるように開いている跳ね橋が存在する場合において、この跳ね橋を渡れるようにするための鍵を所持している特定の自軍ユニットが、跳ね橋と隣接する位置に移動し、「跳ね橋」コマンドを選択すると、効果音とともに跳ね橋が降り、跳ね橋を降ろした当該ユニットの行動は終了し、待機ポーズに切り替わる、という一連の流れで展開すると認めることができる。
 地形上に川や堀等がある場合に跳ね橋を設け、鍵を持った特定の自軍ユニットのみがこれを降ろすことができるようにすることは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙94(84)、95(51、147)、96)、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列も、容易に考えられるありふれたもので、特に特徴的であるとは認められない。また、跳ね橋自体や跳ね橋が降りる場面の具体的表現も、ありふれたものであって、創作性があるとは認められず、跳ね橋が一度降りると、それ以降、そのままの状態となり、各ユニットが自由に橋を渡ることができるようになることは当然である。したがって、両ゲームは、跳ね橋を降ろす場面に関し、アイデア又は創作性を有しない表現において共通するにすぎないというべきである。 
(5-40) 風魔法の場面の表現
 自軍ユニットの特定のユニットが使える風魔法(魔法の風を相手に飛ばして倒す技)の場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(40)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する風魔法の場面は、待機及び攻撃の場面の表現と比較して、登場するのが魔道士ユニットであること、使用する武器が風魔法であること、戦闘場面において風魔法を使う場面が表現されることが相違するのみであると認めることができる。
 そもそも、風魔法を使って敵を攻撃できる魔道士を設定することは、他のゲームでも採用されているアイデアにすぎない(乙94(85)、95(37、44、85))。また、風魔法を使える特定のユニットであるトラキアのアスベルと被控訴人ゲームのマルジュが風魔法を使う場面の具体的な表現は、手を敵軍ユニットに向かって真っ直ぐに伸ばして白っぽい三日月形の鎌のような強力な風を敵軍ユニットに向かって飛ばす点では共通しているものの、全体としては異なる表現であると認められることは、前記判示のとおりである。風魔法の場面のその他の共通部分(待機、攻撃と重複する部分)の創作性については、上記(5-6)及び(5-7)で判示したとおりである。
 したがって、両ゲームは、風魔法の場面に関し、アイデア又は創作性に乏しい表現において共通するにすぎず、創作性ある具体的な表現においては相違しているということができる。 
(5-41) ロングアーチ/クインクエインの場面の表現
 ロングアーチ/クインクエイン(以下「機械式弓兵器」という。)は、遠距離にいる相手を攻撃できる機械式の巨大な弓兵器であり、敵軍が使用する。この場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(41)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定によれば、両ゲームに共通する機械式弓兵器の場面は、まず、敵の攻撃を受ける自軍ユニットがカーソルで表示された上、アニメーション戦闘場面に切り替わり、画面の上段中央に機械式弓兵器がこれを操作する兵士とともに表示され、同兵器から弓が発射されると、画面が切り替わり、攻撃を受ける自軍ユニットが画面上段の中央に立っている場面となり、左上から自軍ユニットに対して機械式弓兵器から放たれた巨大な矢が飛んでくる影像が表示される、という一連の流れで展開し、攻撃を受けた自軍ユニットがダメージを受け、あるいは受けなかった場合の影像は、上記攻撃の場面(5-7)と同様であると認めることができる。
 このように、遠方の敵を攻撃できるような射程距離を持つ弓兵器等を武器として設定することは他のゲームでも採用されているアイデアにすぎず(乙94(86)、95(65、137、186))、他のゲームで採用することが妨げられるものではない。また、このような兵器の性質に照らせば、あらかじめ攻撃を受ける自軍ユニットが表示され、戦闘場面が開始された後、機械式弓兵器から弓が発射される様子が表現され、続いて、攻撃を受ける自軍ユニットに画面が切り替わるというのは、普通に考えられる展開であり、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列に創作性があるとは認められない。
 両ゲームは、敵軍ユニットが装備する機械式弓兵器とこれを兵士が操作して発射する場面の表現に関し、上記認定のとおりの共通点を有するが、他方、証拠(甲383、384)によれば、両ゲームは、機械式弓兵器の機械の色、重量感、画面における表示の大きさ(迫力)、土台の形状、弓の装填状況、設置されている場所、背景画面、兵士の動作等の表現において異なり、両ゲームにおける機械式弓兵器の具体的表現が類似しているとは認められない。
 以上によれば、そもそも機械式弓兵器が登場して自軍ユニットを攻撃する場面を設けることはアイデアにすぎず、同場面を構成する各影像表現の組合せ・配列にも創作性を認めることはできない上、その具体的表現において両ゲームは相違していると認められる。 
(5-42) 再移動の場面の表現
 自軍ターンにおいて、乗り物に乗った状態のペガサスユニット、ドラゴンユニット又は馬ユニットが敵を攻撃した後、残りの移動力で移動できる状態であった場合には、自動的に当該ユニットが再移動できる場面となる。この場面に関し、証拠(甲35、39、288、309、313、359、360、373、383ないし388、419ないし427、495ないし498、乙37、66、85、99、100、126、163)によれば、両ゲームは、共通表現(42)記載の共通部分を有すると認めることができる。
 上記認定のとおり、両ゲームは、再移動の場面に切り替わると、残りの移動力で移動できる状態のユニットが、自動的にその場動きを開始し、移動可能な範囲が、背景とは異なる色の半透明な桝目で表現される点で共通する。その後の移動の表現は、通常の移動の場合と同じである。
 特定のユニットを攻撃後に再移動させるというのは、ゲームのルールないしアイデアにすぎない。再移動の態様については、最初の移動と異なる点はないのであるから、その創作性等については、前記待機の場面(5-6)で判示したとおりで、付加すべき点はない。
(6) 全体的・総合的観察
 以上、詳細に判示したとおりであるが、重要判示部分を要約すると、以下のとおりである。 
 前記(3)で判示したとおり、ゲームシステムに基づいて変化する影像及びその全体構成とストーリーは、「戦闘マップをプレイする場面」の重要な構成要素であるということができる。
 ゲームシステムに基づいて変化する影像及びその全体構成に関し、控訴人らは、両ゲームの、ゲームソフト全体の構成(共通表現(2))、「戦闘マップをプレイする場面」の構成(共通表現(4))、「戦闘マップをプレイする場面」における待機、攻撃、その他の行動の場面の表現(共通表現(6)ないし(42))は、いずれも独自で特徴的であると主張する。しかしながら、上記(5)で判示したとおり、ゲームソフト全体の構成及び「戦闘マップをプレイする場面」の構成には、確かに共通する部分が存在するものの、これらの共通部分は、他のゲームでも採用されている極めて典型的なものであり、創作性があると認めることはできない。また、両ゲームは、待機、攻撃、その他の各行動の場面についても、共通する部分を有すると認められるが、これらの部分は、いずれも、各場面を構成する影像表現の組合せ・配列も含め、アイデアにすぎないか、創作性が認められない表現にすぎず、創作性が認められる表現についても、その程度は低いというべきである。加えて、上記各場面については、創作性ある表現において両ゲームが相違するものも存在するのであるから、被控訴人ゲームに接した者が、トラキアの本質的な特徴を感得することは困難であるといわざるを得ない。
 他方、ストーリー(共通表現(3))については、(5-3)で判示したとおり、両ゲームで共通しているのは、抽象的な筋立てにとどまり、具体的なストーリーとしては、全体的なストーリー、各戦闘マップで展開するストーリー、ユニット間の会話のいずれにおいても相違していると認められる。また、控訴人らが主張する「本質的ストーリー」(共通表現(5))は抽象的かつあいまいなものであって、表現性を認めることはできない。したがって、両ゲームは創作性のあるストーリーにおいて、相違しているということができる。
 さらに、「戦闘マップをプレイする場面」を構成する他の要素のうち、ユニット(共通表現(1))については、上記(5-1)で検討したとおり、両ゲームのユニットには共通する部分も認められるが、いずれもその共通する部分は、アイデアにすぎないか、有意な創作性を有するとは認められないものであり、両ゲームのユニットが全体として同一性、類似性があるとは認めがたい。むしろ、両ゲームに登場する具体的なユニットは、それぞれが異なるユニットとして認識することが相当なものである。そして、両ゲームの戦闘マップや音楽が相違していることも、翻案該当性を否定する一事情ということができる。
 以上判示したとおりであって、帰するところ、両ゲームは、アイデアなどの表現それ自体でない部分又は創作性の乏しい表現において共通するにすぎないのであるから、被控訴人ゲームに接する者がトラキアの表現上の本質的な特徴を感得することは困難であるというべきであり、被控訴人ゲームがトラキアの翻案に当たると認めることはできない。
(7) その余の選択的主張について
 控訴人らは、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」がトラキア全体の翻案に当たり(選択的主張2)、又は、被控訴人ゲームの「戦闘マップをプレイする場面」がトラキアの「戦闘マップをプレイする場面」の翻案に当たる(選択的主張3)と主張する。しかしながら、以上の判示に照らせば、選択的主張2及び3も理由がないことは明らかである。
(8) まとめ
 以上によれば、控訴人らの主張する翻案はいずれも認めることができないというべきであるから、その余の点を判断するまでもなく、控訴人らの著作権法に基づく請求は理由がない。
第5-2 不正競争防止法に基づく請求について(予備的請求)
1 控訴人イズの「他人」該当性 
(1) 不正競争防止法2条1項1号は、「他人の商品等表示・・・として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、・・・他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」、同項2号は、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用」する行為について、それぞれ不正競争行為にあたると規定する。
 ここでいう「他人」とは商品等表示の主体を意味するところ、本件では、控訴人ゲームを製造、販売した控訴人任天堂が本件商品の商品等表示の主体に当たることについては、当事者間に争いがない。当事者間に争いがあるのは、控訴人ゲームの製造販売権等を控訴人任天堂に使用許諾した控訴人イズが「他人」に該当するかどうかである。
 この「他人」の意義につき、控訴人らは、不正競争行為によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者をいうと主張する。しかしながら、「他人」とはあくまで商品等の表示主体を指すのであるから、「他人」に該当するかどうかは、商品等表示についていえば、当該商品等表示の内容や態様、当該商品の広告・宣伝の規模や内容、品質保証表示のあり方などに照らし、当該商品等表示が何人のものとして需要者に認識されているかによって定めるのが相当である。
(2) そこで、本件における具体的な事実関係について検討するに、証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア) ファイアーエムブレム・シリーズ第1作ないし第4作の商品パッケージ、テレビコマーシャル、チラシ、ゲーム雑誌における紹介記事や広告には、発売元として控訴人任天堂の名前のみが表示されており、第5作であるトラキアの商品パッケージ、取扱説明書、ゲームカセット、チラシ、ゲーム雑誌における紹介記事や広告には、その最下段ないしそれに近い部分にコマークを付した控訴人イズの名前が控訴人任天堂の名前と並んで小さく表示されているものの、発売元としては控訴人任天堂のみが表示されている(商品パッケージ及びチラシについて、甲321ないし323、372の1の1及び2、372の2、372の3の1及び2、372の4の1及び2、372の5の1及び2、テレビコマーシャルについて、甲243の1ないし5、418、ゲーム雑誌について、例えば、甲11、49、74、92、152、220)。
(イ) 控訴人任天堂と控訴人イズは、控訴人ゲームの複製、利用、商品化に関し、以下のとおり合意した(甲320の1、320の1の2、320の2、320の2の2、320の3、320の3の2、320の4、320の4の2、320の5、320の5の2)。
(a) 控訴人イズは、平成元年12月から平成9年7月にかけ、控訴人任天堂との間において、ファイアーエムブレム・シリーズ各作品について個別に、その複製・利用等に関する使用許諾契約(以下「本件使用許諾契約」と総称する。)を締結した。本件使用許諾契約には、@控訴人イズは控訴人任天堂に対し、控訴人イズが創作したゲームソフトを許諾地域において製造、販売、頒布(トラキアの場合は、書換え又は書込みによる販売、頒布)する独占ライセンスを許諾する、A控訴人任天堂は、控訴人イズに対し、販売1個(トラキアの場合は販売による顧客からの徴収額)につき所定額のロイヤリティを支払う、B控訴人任天堂は、控訴人イズに対し、所定額の最低保証ロイヤリティを支払う等の条項が含まれている。
(b) 控訴人イズは、控訴人任天堂との間において、本件使用許諾契約に基づき、平成2年6月から平成11年11月にかけ、ファイアーエムブレム・シリーズ各作品について個別に、ファイアーエムブレム・シリーズ各作品のタイトル、ストーリー、登場するキャラクターの名称、形状、音声等を各種商品、宣伝、サービス等に使用する権利(商品化権)に関する覚書を交わした(以下「本件覚書」と総称する。)。本件覚書には、@控訴人イズは、第三者との商品化権ライセンス契約の締結に関する一切の権限を独占的かつ包括的に控訴人任天堂に委ねる、A控訴人任天堂は、各作品の商品化窓口業務の遂行に当たり、作品のイメージアップを図り、イメージダウンにつながるような商品を製造、販売する業者には商品化権ライセンスを与えない、B控訴人任天堂は、商品化権ライセンス契約より収受する許諾料の一定割合を控訴人イズに分配する等の条項が含まれている。
(3) 一般に、ゲームソフトの需要者は、店頭にある商品に実際に接し、あるいは広告媒体を通じて、その商品主体を認識すると考えられるところ、上記(2)(ア)の認定事実によれば、ファイアーエムブレム・シリーズ各作品の商品パッケージには発売元として控訴人任天堂の名前のみが表示され、ゲーム雑誌やテレビコマーシャルなどを通じて継続的かつ頻繁になされた同作品の広告においても、発売元として控訴人任天堂の名前のみが表示されていたというのであるから、これらの表示に接した需要者は、控訴人任天堂を控訴人ゲームの商品等表示主体と認識していたと推認するのが相当である。控訴人らは、控訴人イズが商品等表示主体と認められるべき根拠として、トラキアの商品パッケージなどに「コ」マークを付した控訴人イズの名前が表示されていることを指摘するが、これは控訴人イズが著作権者であることを示すにすぎず、それをもって需要者が控訴人イズを商品等表示主体と認識するとは考えられない。また、控訴人らは、控訴人イズが控訴人ゲームの表示主体であることを具体的に表示している例として他のゲーム雑誌(甲77、219)も挙げるが、これらは、控訴人イズを被控訴人Aの所属先(甲77)、ゲームの開発元(甲219)として紹介しているのみで、控訴人イズを控訴人ゲームの商品等表示主体としているものということはできない。
 控訴人ゲームの品質保証表示に関し、控訴人らは、控訴人イズは、本件使用許諾契約及び本件覚書に基づき、控訴人任天堂とともに控訴人ゲームの商品化事業を遂行し、控訴人ゲームの商品主体であることを表示するとともに、その品質を保証してきたと主張する。確かに、上記覚書には、作品のイメージダウンにつながるような商品の製造・販売業者に控訴人任天堂が商品化権ライセンスを与えないとの規定や、商品化権ライセンス契約より控訴人任天堂が収受する許諾料の一定割合の分配を控訴人イズが受ける旨の規定が存在し、控訴人イズが商品化事業に実際に関与していたことを示す証拠(甲148、200、249、368、389ないし392)も存在する。しかしながら、本件覚書には、控訴人イズは第三者との商品化権ライセンス契約締結に関する一切の権限を控訴人任天堂に独占的かつ包括的に委ねる旨の規定があり、控訴人任天堂がこの規定に基づいて第三者に商品化権を使用許諾した例は多数ある(甲247、248)のに対し、控訴人イズが控訴人ゲームの商品化した商品はテレホンカード(甲368)などごくわずかであり、控訴人らが挙げる他の証拠(甲148、200、249、389ないし392)を総合しても、控訴人イズが、控訴人任天堂とともに商品化事業を行い、それを通じて需要者に対し控訴人ゲームの品質保証表示を行ったと認めることはできない。
 ところで、不正競争防止法2条1項1号の「他人」には、「特定の表示に関する商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者、使用権者及び再使用権者のグループのように、同表示の持つ出所識別機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも含まれる」(アメリカンプロフットボール事件上告審判決)と解すべきところ、控訴人らは、控訴人イズが、控訴人ゲーム表示の出所表示機能、品質保証機能、顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的の下に、控訴人任天堂と共に緊密な営業活動を行ってきたと主張する。しかしながら、本件使用許諾契約及びそれに基づく本件覚書の内容、控訴人ゲームの商品パッケージの表示や広告の内容、控訴人ゲームに関する商品化事業に関する上記認定事実を総合しても、控訴人イズと控訴人任天堂が、控訴人ゲームの商品等表示の持つ出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているグループであると評価することはできない。 
 控訴人らは、控訴人イズが「ファイアーエムブレム」や「エムブレム」との登録商標を取得し、維持管理していることや、控訴人イズがファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの開発を長年行っている旨主張するが、いずれもそれ自体が需要者に対する控訴人ゲームの商品等表示となるものではなく、控訴人イズの商品等表示主体性を基礎付けるものということはできない。
(4) 以上によれば、控訴人イズは、不正競争防止法2条1項1号及び2号の「他人」には該当しないというべきである。したがって、控訴人イズの同法に基づく請求は、その余の判断をするまでもなく、棄却を免れない。
2 周知又は著名な商品等表示
 控訴人らは、@控訴人ゲームのゲームタイトルに使われている「ファイアーエムブレム」との表示、Aその略称ないし愛称(以下「略称」に統一する。)である「エムブレム」との表示、B控訴人ゲームの影像及びその変化の態様は、いずれも周知性又は著名性のある商品等表示であると主張するので、以下、これらの商品等表示について、順次、検討する。 
2-1 「ファイアーエムブレム」との表示の周知性又は著名性
(1) まず、本件における「需要者」(不正競争防止法2条1項1号)の範囲について検討する。これは、各商品等表示に共通し、周知性判断の前提となる争点である。
 控訴人らは、控訴人ゲームはSRPGのジャンルに属するゲームソフトであるから、本件の「需要者」の範囲は、SRPGのユーザーととらえるべきであると主張する。しかしながら、(ア)そもそもゲームジャンルの分類は便宜的なものであり、各ジャンルについて厳密な定義があるわけではないが、特に、SRPGは、SLG的な要素とRPG的な要素を併せ持つゲームであり、SRPGとSLG、SRPGとRPGとを明確に区別することは困難であると認められること(甲171、乙63の1、81、82の1)、(イ)SRPGは、RPGやSLGに比較して、独立したジャンルとして取り上げられることは少ないと認められること(甲245、乙81、82、171)、(ウ)控訴人ゲームの属するジャンルについては、SRPGに属するものとして紹介されている例(例えば、甲25、289、290、292、293、301)も多いが、SLGと分類されている例(例えば、甲1、67、86、149、205)も存在することによれば、控訴人ゲームの需要者の範囲をSRPGのユーザーに限定するのは狭きに失するというべきである。
 他方、ゲームジャンルの分類は便宜的で厳密なものではないとしても、ゲームジャンルによってその需要者層は異なるのが通常であり、本件の需要者を家庭用ゲームソフトのユーザー全体にまで拡げるのも相当ではない。SRPGがRPGとSLGの両方の要素を含んでいることに照らせば、本件の「需要者」は、SLG、RPG、SRPGの3つのジャンルのゲームソフトのユーザーを合計した層(以下「本件需要者」という。)と認めるのが相当である。
(2) 需要者の範囲についての上記認定を前提として、「ファイアーエムブレム」との表示が周知又は著名であるかどうかについて検討するに、証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア) 控訴人ゲームの各ゲームソフトの販売本数は、暗黒竜と光の剣が32万9087本、外伝が32万4699本、紋章の謎が77万6338本、聖戦の系譜が49万8216本、トラキアが10万6108本である(甲244)。
(イ) 控訴人ゲームの各ゲームソフトは、その発売前から発売後約2、3か月の時期において、相当多数のゲーム雑誌における売上げランキング、発売前の読者の期待ランキング、発売後の読者の評価ランキングにおいて、上位にランクされており、その一部を具体的に挙げると、次のとおりである(甲4、47、63、71、75、81、82、84、85、89、90、92ないし94、96、101、103ないし107、120、121、131、152、153、158、174、185、213、215、216、乙3)。
@ 「ファミコン必勝本」平成2年5月18日号の「読者がえらんだほしいソフト」のランキング(甲63)では、暗黒竜と光の剣(平成2年4月20日発売)が第2位になっているが、同ランキングにおける第1位は「ファイナルファンタジーV」、第6位は「ドラゴンクエストW」(平成2年2月11日発売)である。
A 「ファミリーコンピュータMagazine」平成4年4月17日号の売上げランキング(甲71)では、3月9日から3月15日までの外伝(平成4年3月14日発売)の売上げが第1位になっているが、同ランキングの第6位は「スーパーマリオブラザーズ3」(昭和63年10月23日発売)である。
B 「ファミコン通信」平成4年4月10日号の売上げランキング(甲75)では、外伝(平成4年3月14日発売)が第1位になっているが、同ランキングにおける第4位は「ドラゴンボールZ 超サイヤ伝説」(平成4年1月25日発売)、第6位は「スーパーマリオワールド」(平成2年11月21日発売)である。
C 「マル勝スーパーファミコン」平成4年4月24日号の売上げランキング(甲82)では、外伝(平成4年3月14日発売)が第1位になっているが、同ランキングの第11位は「ドラゴンクエストW」(平成2年2月発売)、第20位は「信長の野望 武将風雲録」(平成3年12月発売)である。
D 「ファミコン通信」平成5年11月26日号の発売前の期待ランキング(甲92)では、紋章の謎(平成6年1月21日発売)が第2位になっているが、同ランキングにおける第3位は「ドラゴンクエストY」(平成7年9月4日発売)、第4位は「ドラゴンクエストT・U」(ファミリーコンピュータ用。平成5年12月18日発売)である。
E 「ファミコン通信」平成6年2月25日号の売上げランキング(甲4)では、紋章の謎(平成6年1月21日発売)が第1位になっているが、同ランキングにおける第2位は「スーパーマリオランド3 ワリオランド」(平成6年1月21日発売)である。
(ウ) 控訴人任天堂は、控訴人ゲームの各ゲームソフトの販売のため、平成8年までに総額14億1339万円の宣伝広告費を使って、テレビコマーシャル、ゲーム雑誌等による宣伝広告活動を行い、その規模は、30秒テレビコマーシャルの東京、大阪地区での放映延べ本数が1070本である。株式会社電通作成の調査報告書(甲243の1)に記載されたファイアーエムブレム・シリーズの各ゲームソフトのGRP(Gross Rating Point;延べ視聴率)は東京地区で2249.7であって、これは他ゲームのGRPと比較しても決して小さい値ではない。ファイアーエムブレム・シリーズの各ゲームソフトについての記事が掲載されたゲーム雑誌は、発行部数が1号当たり数十万部に及ぶものが少なくない(以上、甲1ないし18、41ないし243、250、314、315、418)。
(エ) 他方、シリーズもののゲームソフトの合計販売本数としては、上位に属するものとして、「スーパーマリオ」シリーズが約3400万本、「ポケットモンスター」シリーズが約2200万本、「ドラゴンクエスト」シリーズが約2500万本、「ファイナルファンタジー」シリーズの第3作目から第9作目までの合計が約1700万本であり(乙3)、これらに比べると、ファイアーエムブレム・シリーズの各ゲームソフトの合計販売本数203万本は、決して多いとはいえない。また、1タイトルでの販売本数をみても、控訴人ゲームの販売本数が上記のとおり、いずれも100万本を超えていないのに対し、国内における昭和58年から平成12年3月31日までに発売されたゲームソフトのうち、1タイトルでの出荷本数が100万本を超えたものは、123タイトル存在し、平成9年の1年間におけるゲームソフト全体の宣伝広告費は、約352億円であった(乙3、59)。
(3) 上記の(ア)ないし(エ)を総合すれば、「ファイアーエムブレム」との表示については、著名な商品等表示とまでは認めることができないものの、遅くとも「トラキア」が発売された平成11年9月までには、控訴人任天堂のゲームソフトであることを示す商品等表示として、本件需要者の間に広く認識されていたものと認めるのが相当である。
 なお、被控訴人らは、周知性又は著名性の判断に際して最も重視されるべきは販売本数であるとした上で、ファイアーエムブレム・シリーズのゲームソフトの販売本数は、他のゲームソフトの販売本数と比べて多いとはいえないと主張するが、周知性又は著名性の判断に当たっては、販売本数、一定期間の売上げランキング、広告の規模等を総合的に考慮すべきであり、特に販売本数に限定して比較すべきとする合理的な理由は見出し得ない。また、被控訴人らは、広告の分量も大量とはいいがたいとも主張するが、上記のとおりの販売本数、売上げランキング、広告の規模等を総合すれば、「ファイアーエムブレム」との表示は本件需要者に周知であると認められるのであって、被控訴人らの上記主張は失当である。
2-2 「エムブレム」との表示の周知性又は著名性
 控訴人らは、「ファイアーエムブレム」の略称である「エムブレム」との表示も、周知性又は著名性を備えた商品等表示に該当すると主張する。
(1) そこで、検討するに、証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア) 「エムブレム」との略称は、ファイアーエムブレム・シリーズ第3作に関する、平成5年11月ころからのゲーム雑誌において使われ始め、次第にゲーム雑誌、攻略本、インターネットサイトなどで使われるようになった(甲3、4ないし6、11、12ないし15、18、91、92、101、104、108、109、116、148、188、189、190、192ないし194、197ないし201、203、206、208、210、233、234ないし241、249の1、270、276、279、282、308、316、373、393ないし411、443、486、乙1)。その中には、ファンによる投稿(甲235、270、279)、インターネットサイトにおける書込み(甲308、316)、被控訴人A自身が使用した例(甲104、148)、控訴人ゲームのファンを意味するものとして「エムブレマー」や「EMBLER」などの言葉を使用した例(甲18、乙1)も含まれる。
(イ) 「エムブレム」という略称が、ゲーム雑誌の表紙で使われた例もあるが(甲188、189)、正式名称である「ファイアーエムブレム」とともに記載されているにすぎず、「エムブレム」がゲーム雑誌の表紙に単独で使用されている例はない。これに対して、「ドラゴンクエスト」の略称である「ドラクエ」「ファイナルファンタジー」の略称である「FF」「ポケットモンスター」の略称である「ポケモン」はゲーム雑誌の表紙において単独で使われた例がある(「ドラクエ」について甲2、「FF」について甲60、「ポケモン」について甲13)。また、平成11年時点のゲーム雑誌の記事には「ファイアーエムブレム」のことを「エムブレム」と略称する旨を注記した上で「エンブレム」との語を使用しているものもある(甲11、201)。
(ウ) 控訴人ゲームの略称としては「FE」という呼称がある。この略称は、「エムブレム」よりも早くから使用され(例えば、甲2、77)、トラキア発売以後も、ゲーム雑誌や需要者の間で「エムブレム」よりも頻繁に使用されている(例えば、甲17の2、219、242、282)。また、控訴人イズ自身、インターネット上に開設しているホームページにおいて、「ファイアーエムブレム」を「FE」と略記し(乙1)、控訴人任天堂も本件訴訟を提起した際のプレスリリースにおいて「ファイアーエムブレム」を「FE」とのみ略称し(乙2)、被控訴人A自身がこの略語を用いている例もある(甲332)。さらに、インターネットサイトへの書込み(甲308、316)においても、「ファイアーエムブレム」を「FE」と略称しているものが数多く存在する。
(2) 以上のとおり、平成5年以降、ゲーム雑誌等において「エムブレム」との略称が継続的かつ頻繁に用いられ、本件需要者もファイアーエムブレムの略称として「エムブレム」との表示を用いていることに照らすと、「エムブレム」との表示についても、著名な商品等表示とまでは認めることができないものの、遅くとも「トラキア」が発売された平成11年9月までには、控訴人ゲームを示す商品等表示として、当該需要者の間に広く認識されていたものと認めるのが相当である。
 これに対し、被控訴人らは、@ゲーム雑誌の表紙において「エムブレム」表示が単独で使用された例はないこと、A「ファイアーエムブレム」の略称として「FE」という表示も頻繁に用いられていること、B控訴人ら自身がインターネットサイトやプレスリリースにおいて「FE」という略称を用いていること、Cインターネットへの投稿者は控訴人ゲームの購入者であり、本件需要者よりも遙かに限定された一部のファンにすぎないことなどを理由として、「エムブレム」表示は周知性も著名性もないと主張する。
 しかしながら、ゲーム雑誌の表紙には、著名なゲームソフトは別にして、正式名称を記載するのが一般的であるから、表紙に「エムブレム」表示が単独で使用されなかったとしても、「エムブレム」が本件需要者に周知であることを否定する理由にはならず、かえって、「ファイアーエムブレム」との併記とはいえ、ゲーム雑誌の表紙において「エムブレム」との略称が記載されていることは、この略称が周知であることを示すものということができる。また、ゲーム雑誌のほとんどは、「エムブレム」が「ファイアーエムブレム」の略称であることを特に注記していない。
 「FE」との略称が併存することについても、「FE」は「Fire」と「Emblem」の各頭文字を結合したもので、「ファイアーエムブレム」の後半を取り出した「エムブレム」とは異なるものであるから、この二つの略称は「ファイアーエムブレム」の略称として併存し得るということができる。控訴人任天堂がプレスリリースにおいて「FE」という略称を使用したことも、「エムブレム」との略称が周知であったことを否定するものではなく、控訴人イズのホームページ(乙1)上では「EMBLER'S ROOM」という記載もなされている。
 さらに、インターネット上の書込みについても、ごく一部の者ではなく、数多くの者が「エムブレム」との略称を用いており、ゲーム雑誌等を通じてこの略称が本件需要者にも広く浸透していたことがうかがわれる。
 以上によれば、「エムブレム」との略称は、控訴人ゲームのもう一つの略称である「FE」ほどの高い周知性を獲得するには至っていないとしても、ゲーム雑誌等の広告媒体を通じて、本件需要者に「ファイアーエムブレム」の略称を示すものとして徐々に認識されるようになり、遅くとも「トラキア」が発売された平成11年9月までには、「FE」と並ぶ略称として本件需要者に広く認識されるようになったと認めるのが相当である。
2-3 控訴人ゲーム影像表示の周知性又は著名性
 控訴人らは、控訴人ゲーム影像表示目録記載のゲーム影像及びその変化の態様も、需要者の間で周知又は著名な商品等表示であると主張する。これに対し、被控訴人らは、上記影像及びその変化の態様は、そもそも商品等表示ということはできず、仮に商品等表示性が認められるとしても周知又は著名とはいえないと主張する。
(1) 不正競争防止法2条1項1号は、「商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。)」と規定する。ゲーム影像とその変化の態様は、「その他の商品又は営業を表示するもの」としてその商品等表示性を認められる場合があるが、それ自体が商品の出所表示を本来の目的とするものではないから、ゲーム影像及びその変化の態様が商品等表示と認められるには、当該ゲーム影像及びその変化の態様が、ゲームタイトルなどの本来の商品等表示と同等の商品等表示機能を備えるに至り、商品等表示として需要者から認識されることが必要であると解するのが相当である。
(2) そこで、控訴人ゲームの影像及びその変化の態様が、控訴人ゲームの商品等表示といえるかどうかについて検討する。
 控訴人らは、控訴人ゲーム影像表示目録記載のゲーム影像及びその変化の態様は、他の公知ゲームには存在しない特徴的で独創的なものであり、平成2年以来、今日まで、チラシ広告、テレビコマーシャル、ゲーム雑誌等の広告宣伝活動や商品パッケージ自体に広く用いられてきたものであるから、商品等表示性を備えるに至っていると主張し、控訴人ゲーム影像表示目録記載の影像が掲載されているゲーム雑誌など多数の証拠(第1作の暗黒竜と光の剣につき甲1、41ないし46、48ないし61、63ないし65、第2作の外伝につき2、67、68、70、74、78ないし85、第3作の紋章の謎につき3ないし6、86ないし89、91ないし120、122、124ないし131、133、134、136ないし142、144ないし146、第4作の聖戦の系譜につき7、149ないし152、155ないし158、162ないし168、171、173、175、176、178ないし183、186、187、189ないし196、第5作のトラキアにつき8ないし15、201ないし223、225ないし232)を提出する。
 しかしながら、一般に、ゲーム雑誌においては、控訴人ゲームに限らず、他のゲームについても、多数のゲーム影像を掲載し、ゲーム内容や攻略方法の紹介・説明等を行うものである。控訴人らが証拠として提出したゲーム雑誌等における控訴人ゲームの影像は、そのほとんどが控訴人ゲームの内容や攻略方法の紹介・説明として掲載されているにすぎず、控訴人ゲームの影像やその変化の態様が、ゲームタイトルに代え、あるいはゲームタイトルと同様に商品を表示するものとして用いられていると認めることはできない。また、これらのゲーム雑誌等に掲載された控訴人ゲームの影像は多種多様で、その中には控訴人ゲーム影像表示目録1ないし3に該当しないキャラクター又は場面の影像も多数掲載され、同目録1ないし3に該当する影像であっても、特定の影像が繰り返し使用されているわけではない。したがって、同目録記載の影像が本件需要者に強い印象を与えたとは到底考えられず、控訴人らの提出する証拠を総合しても、本件需要者が、同目録記載の影像及びその変化の態様を、全体としてあるいは特定の影像において、他に例を見ない独創的な特徴を有するものと認識していたと認めることはできない。
(3) 以上によれば、控訴人ゲーム影像表示目録記載のゲーム影像及びその変化の態様が、「商品等表示」に当たるとは認めることができない。
2-4 まとめ
 上記2-1ないし2-3のとおり、「ファイアーエムブレム」との表示及び「エムブレム」との表示は、不正競争防止法2条1項2号にいう著名な商品等表示とは認められないが、同項1号にいう周知な商品等表示に該当すると認めることができ、控訴人ゲームの影像及びその変化の態様については、周知又は著名な商品等表示であると認めることができない。
3 控訴人ゲームの「ファイアーエムブレム」表示及び「エムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」表示との類似性
 そこで、「ファイアーエムブレム」表示及び「エムブレム」表示と被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」との商品等表示との類似性について判断する。なお、被控訴人ゲームの発売時点でのタイトルは「ティアリングサーガ」であるが、本件で問題とされているようなテレビゲームの販売戦略としては、発売前の宣伝活動が重視されていることは、上記の認定事実及び弁論の全趣旨によって明らかであるところ、被控訴人ゲームの当初のタイトルは「エムブレムサーガ」であり、被控訴人らはこのタイトルを使用して、大量の販売予約を受けたものであるから、「ファイアーエムブレム」及び「エムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示との類否判断を欠かすことはできない。
(1) ある商品等表示が不正競争防止法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似のものに当たるか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である(アメリカンプロフットボール事件上告審判決参照)。
(2) 控訴人ゲームの「ファイアーエムブレム」表示に関し、控訴人らは、その要部は「エムブレム」であると主張するのに対し、被控訴人らは「ファイアーエムブレム」全体が要部であると主張する。
 被控訴人らは、「ファイアーエムブレム」全体を要部とする理由として、@一般に周知の外来語は要部となりがたい、A火や炎を意味する「ファイアー」も、紋章を意味する「エムブレム」も、わが国の英語の普及度に照らせば、一般に周知の外来語にすぎないから、それぞれ単独では要部となりがたい、B控訴人らは、「エムブレム」が造語的印象を持つ特徴的な表記であるというが、「エムブレム」は「Emblem」のカタカナ表記であって、「エンブレム」と同義である、などを指摘する。
 しかしながら、「エムブレム」と「エンブレム」を比較するならば、「ブ」ないし「b」の前に置かれ「ブ」ないし「b」と連続して発音される「ム」ないし「m」の音と、同じく「ブ」ないし「b」の前に置かれ「ブ」ないし「b」と連続して発音される「ン」ないし「n」の音とは、これらを発音する場合でも、これらを聞く場合でも、通常の速度で発音される限り、実際上ほぼ同じにしかならないところ、日本語の「紋章」や「標章」に対応する英語として現在一般的に用いられているのは「エンブレム」であり(甲415ないし417、乙168)、紋章や標章を意味する普通名詞となっている「エンブレム」と異なり、「エムブレム」は造語的印象を受ける特徴的表記であることは否定できない。また、「エムブレム」をタイトルに含むゲームは被控訴人ゲーム以外にはないのに対し、「ファイアー」をタイトルに含むゲームは、「ファイアーボール」「スーパーファイアープロレスリング」など複数存在する(当事者間に争いのない事実)。さらに、前記判示のとおり「エムブレム」は「ファイアーエムブレム」の略称として周知であると認められるのに対し、「ファイアー」が「ファイアーエムブレム」の略称として用いられたと認めるに足りる証拠はない。加えて「エムブレム」の意味する紋章は、ファイアーエムブレム・シリーズの各作品を通じて、ストーリーの展開上重要とまではいえないとしても、象徴として用いられていると認められる(甲45、68、86、151、201)のに対し、「ファイアー」の意味する火や炎は控訴人ゲームにおいてそのような役割を与えられていない、
 以上によれば、「ファイアーエムブレム」との表示のうち、商品の出所を示すものとして自他識別力を有するのは「エムブレム」であり、「ファイアーエムブレム」全体が要部であるということはできない。したがって、「ファイアーエムブレム」との商品等表示のうち「エムブレム」が出所識別表示としての称呼、観念を生ずる部分であるというべきである。
(3) 次に、被控訴人ゲームの「エムブレムサーガ」との表示について見るに、控訴人らはその要部は「エムブレム」であると主張するのに対し、被控訴人らはその要部は「エムブレムサーガ」全体ないしは「サーガ」であると主張する。
 被控訴人らは、「エムブレムサーガ」全体ないしは「サーガ」が要部である理由として、@物語を意味する「サーガ」は、わが国の英語の普及度に照らして一般に周知の外来語とは到底いえないのに対し、紋章を意味する「エムブレム」は、一般に周知の外来語であること、A家庭用ゲーム機向けゲームソフトの需要者の間では、「サ・ガ」「サーガ」「Saga」の語は、スクエア社の周知著名な特定のゲームソフトシリーズのゲームソフトを意味する語として広く知られており、一般的に使用されていたものではないこと、などを指摘する。
 しかしながら、前記のとおり、「エムブレム」をタイトルに含むゲームは、被控訴人ゲーム以外には存在しないのに対し、「サーガ」をタイトルに含むゲームは、被控訴人らの挙げるスクエア社のゲームの他に、「リグロードサーガ」「ファーランドサーガ」「ラスタンサーガU」など複数存在する(当事者間に争いのない事実)。また、「エムブレム」は造語的印象をもつ特徴的表記であるのに対し、「サーガ」は、北欧中世の散文文学の総称で物語や伝説を意味する英単語である「Saga」をカタカナ表記した普通名詞である(甲415ないし417)。「Saga」の意味は一般的にはそれほど知られていないとしても、上記のようにゲームソフトには「サーガ」をタイトルに含むものも少なくないのであるから、本件需要者の間では「Saga」が「物語」や「伝説」を意味することは比較的知られていたと考えられる。このことは、「ティアリングサーガ」の意味について、「ザ・プレイステーション2」平成13年4月27日号(甲27)が「"涙の指輪の伝説"と直訳できる」と紹介していることからもうかがわれる。さらに、被控訴人ゲームにおいても、「エムブレム」の意味する紋章が象徴的に使用されている(甲20、23)。
 したがって、「エムブレムサーガ」のうち、商品識別力を有する要部は「エムブレム」の部分であり、この部分から出所の識別標識としての称呼、観念が生ずるものというべきである。
(4) 以上によれば、控訴人ゲームの商品等表示である「ファイアーエムブレム」及び「エムブレム」の要部は「エムブレム」であり、被控訴人ゲームの商品等表示である「エムブレムサーガ」の要部も「エムブレム」ということになる。「ファイアーエムブレム」表示及び「エムブレム」と「エムブレムサーガ」表示とは、商品識別力のある要部において外観、呼称、観念が同一であるから、取引者、需要者は、「ファイアーエムブレム」及び「エムブレム」と「エムブレムサーガ」を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあると認めることができる。
 なお、仮に、「ファイアーエムブレム」と「エムブレムサーガ」を、それぞれ一気に通して、「ファイアーエムブレム」と「エムブレムサーガ」との称呼をも生じ得るもので、これに伴って、「炎の紋章」と「紋章物語(伝説)」との観念をも生じ得るものであるとしても、上記類否判断の結論を左右しないというべきである。すなわち、前判示のとおり、ゲームソフトとしての「ファイアーエムブレム」と「エムブレムサーガ」とは、同種のタイプ(SRPG)に分類され、需要者も共通するものである上、「エムブレムサーガ」の製造、販売の以前から、ファイアーエムブレム・シリーズが第5作まで発売され、「ファイアーエムブレム」との表示が、控訴人任天堂の商品表示として、著名とまでは認定し得なかったものの、これに近い高度の周知性を有するに至っていたものである。これらの事情に加えて、前記判示のように、「エムブレム」の部分が「ム」という一般的でない表記が用いられた造語的印象を受ける特徴的表現であることにも照らせば、「エムブレムサーガ」との表示に接した本件需要者としては、注意を引く「エムブレム」部分から、同種のゲームソフトで既に高い周知性を有している「ファイアーエムブレム」を想起し、これとの関連性を連想して、両者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるものと推認される(「エムブレムサーガ」との表示に接した本件需要者としては、「ファイアーエムブレム」の周知の略称である「エムブレム」を想起することを介して、「ファイアーエムブレム」を想起し、上記と同様に類似のものと受け取るおそれも考えられる。)。
 よって、「ファイアーエムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示、「エムブレム」表示と「エムブレムサーガ」表示は、いずれも、類似の商品等表示であるというべきである。
4 混同を生じさせる行為
 続いて、不正競争防止法2条1項1号にいう「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」の存否について判断する。
(1) 証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア) 被控訴人ティルナノーグ及び被控訴人エンターブレインは、被控訴人ゲームのタイトルを「エムブレムサーガ」と決定した上で、遅くとも平成11年8月ころには、その制作にとりかかり(乙123の2)、平成11年12月には、「週刊ファミ通」平成11年12月24日号(甲19)誌上において、「エムブレムサーガ」というタイトルのゲームソフトを開発中であることを需要者に告知した。
(イ) 「週刊ファミ通」平成12年1月21日号(甲20)は、「緊急速報」として、被控訴人ゲームを大きく取り上げ、「『ファイアーエムブレム』を手がけたA氏の最新作がプレイステーションに登場!」「タイトルのとおり、この新作は『ファイアーエムブレム』の世界観を承継したオリジナル作品。」などと紹介するとともに、被控訴人Aのインタビュー記事を掲載した。このインタビュー記事には、被控訴人Aの発言として、「過去に私は3つの大陸における物語を5本作ってきました。『エムブレムサーガ』は4つめの大陸"フォーセリア"が舞台となる作品で、根幹となる世界観は同じです。」「今作品は彼らマクムート……、古代竜族と呼ばれる者が、多くの部分で絡んできます。」「(当裁判所注:過去の作品に登場した人物は出るのですかとの問いに対して)某変身系の少年キャラが、謎の吟遊詩人、また賢者として重要な役回りを演じます。今作品は第1作目『暗黒竜と光の剣』と同年代の物語なので、必然性があればほかにも登場させたいのですが。」「マルスのような少年の主人公も登場しますけど……。」「これを増やす方法はいろいろありますが、なかでも"エムブレム"の入手が確実な方法ですね。」と記載されている。
(ウ) 「電撃プレイステーション」平成12年1月28日号(甲460)も、「電撃特報」として被控訴人ゲームを大きく取り上げ、「『ファイアーエムブレム』シリーズの開発者が新作『エムブレムサーガ』をPSでリリース!」「本作は『ファイアーエムブレム(以下、FE)』で好評を博した職業、恋愛システムを受け継ぎつつも、…新要素を満載した内容になっている。」と紹介した上で、被控訴人Aのインタビューを掲載している。このインタビュー記事の中には、被控訴人Aの発言として、「(当裁判所注:ファイアーエムブレム・シリーズの)続編というわけではありませんが、…ボクの一連の作品に共通する、マムクート(古代竜族)がからむ話です。」「マルス(初代『FE』の主人公)の時代と同年代になります。」「恋愛システムは復活させます。」「エムブレムというのは、その地域の領主であることを証明するものです。」との記載がある。
(エ) その後に発刊されたゲーム雑誌にも、被控訴人ゲームとファイアーエムブレム・シリーズを関連付ける記事が掲載されている。例えば、「月刊ゲームウォーカー」平成12年3月号(甲22)には「『ファイアーエムブレム』シリーズがPSに登場。」との記載があり、「電撃プレイステーション」平成12年12月22日号(甲24)には「伝説を受け継ぐ大作S・RPG、ついに本格始動」「週刊ファミ通」平成13年3月9日号(甲26)には「おなじみの闘技場」との記載がある。
(オ) 被控訴人Aは、平成12年1月16日、被控訴人ゲームの制作者であることが明らかにわかる書き方でインターネットサイトに投稿し、被控訴人ゲームについては「外伝タイプのゲームシステムで、・・・N社との関係は今まで通りです。今作はプレイステーションですが、」(甲354)と書き込んでいる。ここにいう「N社」が控訴人任天堂を指すことは明らかである。
(カ) ゲーム雑誌への投稿には、被控訴人ゲームをプレイステーション用に制作されたファイアーエムブレム・シリーズの続編であると誤認しているものが、少なからず存在する(甲235、253、260、270、274、278ないし284)。例えば、「64DREAM」平成12年6月号(甲235)の投稿には、被控訴人ゲームについて、「PS買ってでもFEゲットします!」と記載され、「電撃プレイステーション」平成13年2月9日号(甲260)の投稿には「"伝説を受けつぐ"ってやはりあの大作S・RPG…ですよね?!!」「電撃プレイステーション」平成13年6月22日号(甲279)には、「「エムブレム・サーガ」改め「ティアリング・サーガ」。体験版、プレイいたしました。やはり「エムブレム」シリーズはおもしろいです!」と記載されている。また、インターネットサイトへの投稿にも、「エムブレムの続編として期待している」(甲308の番号24)、「ティアサガってFE外伝の続編って思ってた…」(甲308の番号208)、「てっきり任天からの許可を得ているものと思っていたんだけど」(甲316の番号48)などの書き込みが存在し、同様の誤認・混同が見られる(甲308、316)。
(キ) 被控訴人エンターブレインは、「ザ・プレイステーション」平成13年4月27日号をもって、そのタイトルを「エムブレムサーガ」から「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」に変更する旨、需要者に告知し(甲27)、被控訴人ゲームは、変更後のタイトルを付して同年5月24日に発売された。
(2) 前記3における判示及び上記(1)の認定事実によれば、被控訴人らは、控訴人ゲームの商品等表示である「ファイアーエムブレム」及び「エムブレム」と類似する「エムブレムサーガ」とのタイトルを付したゲームソフトを制作するとともに、その広告を行ったものと認められ、かかる被控訴人らの行為は不正競争防止法2条1項1号にいう「使用」に当たると解される。このように、周知な商品等表示と全体的に類似のものとして受け取るおそれがある商品等表示を使用する行為は、特段の事情がない限り、需要者を「混同させる行為」に当たると認めるのが相当である。
 本件では、上記認定のとおり、被控訴人ゲームが開発中であることが告知された平成11年12月から被控訴人ゲームのタイトルが変更された平成13年4月までの間、ゲーム雑誌等には、被控訴人ゲームがプレイステーション用に制作されたファイアーエムブレム・シリーズの続編であるかのごとき紹介記事がたびたび掲載され、それに対して、被控訴人らが、被控訴人ゲームはファイアーエムブレム・シリーズの続編ではないと需要者に認識させるに十分な措置を講じたとは証拠上認めることができない。むしろ、被控訴人エンターブレインの代表者であるBが発行人を務める「週刊ファミ通」平成12年1月21日号(甲20)には、被控訴人ゲームとファイアーエムブレム・シリーズを関連付けるような紹介記事が掲載され、さらに、被控訴人Aは、同誌に掲載されたインタビュー記事において、被控訴人ゲームとファイアーエムブレム・シリーズの関連性や共通点を積極的に読者に印象付けるような発言を行っている。同様の記事やインタビューは、「電撃プレイステーション」平成12年1月28日号(甲460)にも掲載されているが、これらの紹介記事やインタビュー記事は、その公表時期や内容に照らし、需要者に強い印象を与えたと考えられ、これらの紹介記事等に接した需要者は、被控訴人らが、控訴人任天堂の許諾を得て、ファイアーエムブレム・シリーズの最新作をプレイステーション用に制作したと誤解するおそれがあったというべきである。そして、上記(1)(カ)のとおり、現実に、本件需要者の間には、被控訴人ゲームがプレイステーション用のファイアーエムブレム・シリーズ最新作であるとの誤認混同が生じていたと認められるのである。したがって、本件では、混同のおそれの存在を否定すべき特段の事情は認められない。
(3) これに対し、被控訴人らは、@控訴人任天堂とソニーコンピュータエンタテインメントではそもそもハード機が違うのであるから、プレイステーション用に制作された被控訴人ゲームが控訴人任天堂と関連があると考える需要者はいない、A被控訴人ゲームの宣伝広告の当初においては、出版社側に被控訴人ゲームをファイアーエムブレム・シリーズと関連付けようとする傾向があったが、被控訴人らの努力によってなくなった、B被控訴人ゲームについてのゲーム雑誌の記事(甲20、460)には「新作」「オリジナル作品」であると記載され、ファイアーエムブレム・シリーズとは異なる作品であることが明記されている、Cゲーム雑誌の記事には、被控訴人Aの発言がそのまま載るものではなく、控訴人らにおいてゲーム雑誌の記事の内容をコントロールすることはできない、Dインターネットサイトへの書き込みについても、ゲームソフトに過大な思い入れを有するファンや、粗忽な需要者の誤解にすぎない、E結局、需要者の側に若干の混乱が生じたとしても、それは服飾デザイナーの移籍に伴って市場に生じる混乱と大差ない、などと主張する。
 しかしながら、周知の商品等表示主体と類似表示の使用者との間に使用許諾関係がある商品であると混同することも、不正競争防止法2条1項1号の「混同」に含まれると解すべきであるところ、仮に、控訴人任天堂とソニーコンピュータエンタテインメントがハード機をめぐり激しい競争をしていたことがよく知られていたとしても、需要者が、ファイアーエムブレム・シリーズの新作がPS用に制作されたという印象を与える広告に接すれば、控訴人任天堂の許諾を得て被控訴人らがファイアーエムブレム・シリーズの続編をプレイステーション用に制作することになったと誤認することも当然あり得るというべきである。
 被控訴人らは、被控訴人ゲームの宣伝広告の当初においては、出版社側に被控訴人ゲームをファイアーエムブレム・シリーズと関連付けようとする傾向があったものの、被控訴人らの努力によってなくなったと主張するが、被控訴人ゲームとファイアーエムブレム・シリーズを関連付けるような広告は、「週刊ファミ通」平成12年1月21日号(甲20)や「電撃プレイステーション」平成12年1月28日号(甲460)をはじめとして、「月刊ゲームウォーカー」平成12年3月号(甲22)、「電撃プレイステーション」平成12年12月22日号(甲24)、「週刊ファミ通」平成13年3月9日号(甲26)にも掲載されているのであるから、控訴人らの努力により被控訴人ゲームをファイアーエムブレム・シリーズと関連付ける傾向がなくなったとはいえない。
 被控訴人らは、被控訴人ゲームの紹介記事に「新作」「オリジナル作品」と記載されていることから、被控訴人ゲームがファイアーエムブレム・シリーズの続編ではないことは明らかにされていると主張する。しかしながら、「新作」「オリジナル作品」という言葉が使用されている上記甲20、460を全体として読めば、需要者が被控訴人ゲームをファイアーエムブレム・シリーズの続編と混同するおそれがあると認められることは、上記(2)で判示したとおりである。なお、上記「電撃プレイステーション」平成12年1月28日号(甲460)のインタビュー記事において、被控訴人Aは、被控訴人ゲームがファイアーエムブレム・シリーズの続編であることを否定する発言をしているが、同じインタビュー記事には、「ボクの一連の作品に共通する、マムクート(古代竜族)がからむ話です。」「マルス(初代『FE』の主人公)の時代と同年代になります。」などファイアーエムブレム・シリーズに登場する固有名詞に言及した部分もあり、全体としては、被控訴人ゲームがファイアーエムブレム・シリーズと関係がないとの印象を需要者に与えるには至っていない。
 被控訴人らは、ゲーム雑誌の記事を完全にコントロールすることはできないと主張する。しかしながら、上記「週刊ファミ通」平成12年1月21日号(甲20)は被控訴人エンターブレインの代表者であるBが発行人であり、同誌に掲載された被控訴人Aのインタビュー記事について、被控訴人Aはゲラに目を通したことを認める供述を行っているのであるから(被控訴人A本人の当審における供述)、少なくともこれらの記事や発言について被控訴人らのコントロールが及んでいたことは明らかである。
 被控訴人らは、インターネットサイトにおける混同事例について、ゲームソフトに過大な思い入れを有するファンや粗忽な需要者の誤解にすぎないと主張する。しかしながら、インターネットサイトにおける書き込み(甲308、316)を見ても、混同が生じているのがそのような一部の特殊な需要者に限定されるとは到底認められず、ファイアーエムブレム・シリーズに詳しいはずのファンの間にも混同が生じていたことは、誤認・混同のおそれがそれだけ大きかったことを示すものにほかならない。
 被控訴人らは、需要者の側に若干の混乱が生じたとしても、それは服飾デザイナーの移籍に伴って生じる混乱と大差ないと結論付けるが、本件における混同は、単にゲームデザイナーが移籍することにより市場に生じたものではなく、被控訴人らが控訴人ゲームと類似する商品等表示を付した被控訴人ゲームを制作し、控訴人ゲームと関連付けて広告したことにより生じたものであるから、服飾デザイナーやゲームデザイナーの移籍により不可避に生ずる市場の混乱と同視することはできない。
(4) 以上によれば、被控訴人らが、控訴人任天堂の商品等表示と類似の商品等表示を使用した行為は、不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」に当たるということができる。
5 被控訴人らの故意又は過失
 上記のとおり、被控訴人エンターブレイン及び控訴人ティルナノーグは、「ファイアーエムブレム」及び「エムブレム」と類似する「エムブレムサーガ」との表示をタイトルとして付した被控訴人ゲームを制作し、被控訴人Aは個人として及び被控訴人ティルナノーグの代表者として、その制作及び広告に主体的に関与することにより、控訴人任天堂の商品等表示と類似する商品等表示を使用したものである。被控訴人エンターブレインの代表者であるBは「週刊ファミ通」の発行人として、また被控訴人Aはファイアーエムブレム・シリーズの開発に携わった者として、ファイアーエムブレムの商品等表示、内容、取引の実情等について熟知しながら、控訴人任天堂の商品等表示と類似するタイトルをつけた被控訴人ゲームを制作し、広告したのであるから、被控訴人らにはその不正競争行為について、少なくとも過失があると認めることができる。
6 差止請求の要件充足性
 控訴人らは、被控訴人ティルナノーグ及び被控訴人エンターブレインに対し、被控訴人ゲームの製造、販売、頒布の差止めを求めるが、差止請求が認められるには、同被控訴人らの不正競争行為が、本訴の口頭弁論終結時において、現存することが必要である。前記判示のとおり、当裁判所は、控訴人任天堂の「ファイアーエムブレム」表示及び「エムブレム」表示と、被控訴人らの「エムブレムサーガ」表示について類似性を認めたものであるが、被控訴人ゲームのタイトルは平成13年4月2日ころに「ティアリングサーガ」に変更され、同年5月24日以降、現在に至るまで、変更後のタイトルで販売されている。したがって、本訴の口頭弁論終結時点においては、控訴人らの商品等表示と類似する商品等表示は使用されておらず、又は類似する表示を付した商品は販売されていないのであるから、控訴人らの差止請求は理由がない。
 これに対し、控訴人らは、現在も第三者のホームページでは「エムブレムサーガ」表示が使用されるなどしており、被控訴人らの行為により生じた混同も消えていないというが、第三者のホームページで「エムブレムサーガ」表示が使用されるなどしていたとしても、それを被控訴人らによる「エムブレムサーガ」表示の使用とみなすことはできず、また、被控訴人らによる類似の商品等表示の使用が行われていない以上、需要者に生じた混同の存続をもって被控訴人らの不正競争行為とみなすこともできない。
7 相当因果関係及び損害
 控訴人任天堂は、被控訴人の不正競争行為により生じた使用料相当額の損害賠償として、平成13年7月8日時点での販売総額(23億4892万4000円)に、使用料10%を乗じた2億3489万円(1万円未満切捨て)及び弁護士費用2341万円を主張する。
(1) 前記のとおり、当裁判所は、「ファイアーエムブレム」表示及び「エムブレム」表示と類似する「エムブレムサーガ」表示の使用を不正競争行為と認めたため、被控訴人ゲームのタイトル変更後の販売分について、被控訴人らの不正競争行為との相当因果関係を認めることができるかをまず検討する。
 証拠(争いのない事実、甲27、492、乙178)によれば、@被控訴人らは、平成13年4月2日ころ、被控訴人ゲームのタイトルを変更することを決め、同月4日に販売店に連絡し、「ザ・プレイステーション」同月27日号(甲27)をもって需要者に告知したこと、A被控訴人ゲームの販売予約本数は、同年3月20日時点で23万0065本であり、発売日である同年5月24日時点で29万9881本であったこと、B被控訴人ゲームは、同年7月8日までの間に、34万5430本が販売されたこと、C被控訴人ゲームの希望小売価格は1本当たり6800円であるから、販売総額は23億4892万4000円になること、との事実を認めることができる。
 被控訴人らは、被控訴人ゲームのタイトル変更は、需要者による同ゲームの販売予約及び販売に影響を与えなかったというが、被控訴人ゲームは平成11年12月から平成13年4月まで、「ファイアーエムブレム」及び「エムブレム」と類似する「エムブレムサーガ」とのタイトルのもと、頻繁かつ継続的に広告されており、同年7月までに被控訴人ゲームを購入した需要者のほとんどがこれらの広告に接し、影響を受けたと推認される。そして、平成13年7月8日までの販売数量約34万5000本のうち約23万本が被控訴人ゲームのタイトル変更までの間に予約されているとの事実は、それまでになされた広告が需要者の購買の意思決定に大きな影響を与えたことを示しているといえる。そうすると、被控訴人らが「エムブレムサーガ」表示を使用して被控訴人ゲームを制作・広告した行為と平成13年7月8日までの被控訴人ゲームの販売については相当因果関係があると認めるのが相当である。
(2) 控訴人らは、控訴人らの商品等表示の使用料相当として10%を請求する。本件では、控訴人らが控訴人ゲームについて過去に使用許諾契約を行い、あるいはゲームソフトの商品等表示につき一般に支払われている使用許諾料率の慣行を認めるに足る証拠はないから、本件に顕れたすべての事情を総合して相当な使用料率を定めるほかない。本件では、@前記判示において摘示したゲーム雑誌における記事や投稿、インターネットサイトにおける書き込みによれば、被控訴人ゲームの制作当時、控訴人ゲームには、熱心で固定的なファン層が存在したと認められ、ファイアーエムブレム・シリーズの続編であれば、一定程度の売上げは見込めたと考えられること、A一般に、ゲームのタイトルは、需要者が購入する上で考慮すべき重要な要素であると考えられるところ、上記記事、投稿、書き込みなどによれば、ファイアーエムブレム・シリーズの場合は、「エムブレム」という表示に愛着を持つファンも少なくなかったと認められること、B他方、控訴人らの商品等表示は著名とまでは認められず、その周知性もゲームソフトの限られたジャンルの中でのことにすぎないこと、Cファイアーエムブレム・シリーズは、被控訴人ゲームの制作までに5作品で200万本以上が販売されているが、この販売総数は他の著名なゲームソフトと比較すると少ないこと、Dファイアエムブレム・シリーズ各作品の販売実績についてみると、第3作で77万本余を売り上げてからは、第4作は50万本弱、第5作は10万本余とその販売本数は減少しており、ファイアーエムブレム・シリーズの続編であることを示すタイトルを付すだけでは、もはや販売実績をあげることができず、その販売実績はゲームソフト発売前の具体的な宣伝活動に左右される面も少なくないと考えられること、などの事情が存在する。これらの事情を総合すれば、控訴人ゲームの商品等表示の使用料率としては3%が相当である。
 したがって、控訴人の不正競争行為により生じた使用料相当額の損害賠償としては、同年7月8日時点での販売総額(23億4892万4000円)に、相当な使用料率3%を乗じた7046万7720円が相当である。
(3) 控訴人らは、被控訴人らの行為と相当因果関係ある弁護士費用として、2341万円を請求する。本訴における事案の性質、審理の対象、審理の経過、認容額等に照らすと、被控訴人らの行為と相当因果関係のある弁護士費用は600万円であると認めるのが相当である。
(4) よって、控訴人任天堂の被控訴人らに対する損害賠償は、7646万7720円の限度で理由があることになる。
8 まとめ
 上記のとおり、不正競争防止法に基づく控訴人イズの請求はいずれも理由がないので棄却を免れず、控訴人任天堂の損害賠償請求は、7646万7720円の限度で理由があり、その余の損害賠償請求は理由がないことになる。なお、控訴人任天堂は、上記第1の2(4)のとおり、控訴人イズが不正競争防止法上の請求主体と認められない場合には、控訴人イズに生じるはずの損害1億2915万円を自己の損害1億2915万円の上積みとして主張して請求するというが、以上判示のとおり、控訴人任天堂に生じた損害は、客観的にみると、1億2915万円を明らかに下回っており、当初の請求のほか上積みとして主張して請求する分もまた理由がない。
第6 結論
 以上によれば、控訴人イズの請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、控訴人イズの控訴は棄却を免れない。また、控訴人任天堂の請求のうち、著作権法に基づく請求を棄却した部分、及び、不正競争防止法に基づく製造販売等の差止請求を棄却した部分は、これを棄却した原判決は結論において相当であるが、不正競争防止法に基づく損害賠償請求を全部棄却した部分は、一部不当であるので、これを7646万7720円及びその遅延損害金の支払いを命ずる限度で変更する。
 よって、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所知的財産第4部
 裁判長裁判官 塚原朋一
 裁判官 田中昌利
 裁判官 佐藤達文

 
(別紙1)
控訴人らの主張するトラキアと被控訴人ゲームに共通する表現形式
 (以下、[ ]表示は、別紙1@「控訴人らが主張するトラキアとイ号物件において、映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で表現された共通する表現」、別紙1A「ゲームソフト『ファイアーエムブレム トラキア776』の表現の全体構成及び全体構成におけるア項、イ項、ウ項、エ項の表現」、別紙1B「ゲームソフト『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』(イ号物件)の表現の全体構成及び全体構成におけるア項、イ項、ウ項、エ項の表現」記載にかかる場面をいうものとする。)
(1) 登場ユニット(登場するユニット全12種)
 両ゲームには、敵国に祖国を追われ王国再興のために立ち上がる亡国の王子である主人公と、主人公を助けてともに敵を制圧する自軍ユニットと、相手方となる敵軍ユニットが登場する。登場するユニットは以下のとおりである。
 主人公ユニットは、敵に祖国を追われた亡国の少年王子である。
 戦闘マップにおいてユニットが騎乗できる乗り物として、ペガサス、ドラゴン、馬があり、これらの3つの乗り物に乗り降りすることができ、戦闘マップ上において3つの乗り物に騎乗して多彩な行動をすることができる乗り物ユニット(ペガサスユニット、ドラゴンユニット、馬ユニット)が登場する。
 戦闘マップ上で踊ることにより自軍ユニットを再行動させることができる踊れるユニット、全身を頑強な鎧で固めている特異な形状のアーマーユニット、盗賊ユニット、斧を使う斧ユニットが登場する。
 魔道書を使う魔道士ユニット、杖を使う杖ユニットが登場する(馬ユニットの中にも杖を使える者がいるが、これは乗り物に乗れるユニットであるから馬ユニットになる。)。
 その他の登場ユニットとしては、扱う武器の種類により、剣ユニット、弓ユニットが登場する。
 ユニットとして登場する人物を、乗り物、装備できる武器、特別な能力等によって分ければ、主人公ユニット、ペガサスユニット、ドラゴンユニット、馬ユニット、踊れるユニット、杖ユニット、魔道士ユニット、斧ユニット、弓ユニット、剣ユニット、アーマーユニット、盗賊ユニットの合計12種に分類される。
 上記12種の登場ユニットは、いずれも「戦闘マップ」上では、トップビューの視点で表現され、西洋中世風の衣装をつけ、全身は移動範囲及び攻撃範囲のほぼ一桝目大であって人間に近い頭身比の人物として表現されている。上記12種の登場ユニットが、戦闘マップ上で待機する姿態は、基本的には斜め前向きで武器等を絶えず動かしている。12種の登場ユニットが戦闘マップ上で行動を終了した場合には、基本的に斜め前向きで武器等を絶えず動かしている待機の容姿・姿態が透けてみえる暗系色の待機ポーズに変わる。
 各登場ユニットの人物設定、それぞれの容姿、姿態、服装、特技、使用武器、戦闘マップ上での上、下、左、右への移動の効果音を伴った移動の場合の姿態及び態様等の表現は、以下のとおりである。 
@ 主人公ユニット
 主人公ユニットは、亡国の少年王子として設定されており、兵種は主人公専用の兵種である。襟を立てた肩当てのある衣装をつけ、裏地が赤となっている丈の長いマントを翻し、武器としては主人公専用の長い剣を持つ。乗り物(ペガサス・ドラゴン・馬)には乗れないため、移動はタッタッタッとの移動の効果音とともに駆け足で行う。
 死亡すると、死にセリフの言葉と主人公の影像が半透明となって徐々に消える様子が順に影像表現される。次いで、トップビューの戦闘マップ画面上で、主人公に最も親しい自軍ユニットの主人公の死に対する無念の気持ちを伝える場面が影像表示され、ゲームオーバーとなる。
 特定のマップにおいては、移動させて「制圧」コマンドを選択することで、当該マップのクリア条件を充足することができる。
 特定の章では、マップクリア後のイベントでクラスチェンジする。
 主人公ユニットは、[待機][攻撃]のほか、[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][主人公の死亡によるゲームオーバーの場面][マップクリア後に主人公がクラスチェンジする場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][「制圧」コマンドによるマップクリアの場面][ユニット間の会話で寝返る場面][ユニット間の会話で仲間になる場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
A ペガサスユニット
 ペガサスに騎乗する女性騎士ユニットであり、白い胸当て及び白い肩当てのある衣装をつけ、武器としてはペガサス騎乗時は槍を、ペガサスから降りた状態では剣を持っている。ペガサスユニットは、ペガサスの翼を広げてバサバサと風を切る移動の効果音とともに空中を飛翔し、地上の地形を無視して移動することができるが、弓による攻撃に弱い。
 移動させて「乗る」又は「降りる」コマンドを選択すると、移動先のその場で、ペガサスに乗ったペガサスユニットの影像とペガサスから降りた女性騎士の影像とが切り替わる。
 ペガサスユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][ペガサスに乗る場面][ペガサスから降りる場面][ユニット間の会話で寝返る場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面][再移動の場面]に登場する。
 特に、アニメーション切替戦闘の戦闘シーンでは、攻撃するときは空中から地面に降下して相手を攻撃し、相手の攻撃を避けるときは後ろに軽く飛翔して避け、再攻撃する時は垂直に飛翔してから再び相手に向かって降下して攻撃するという、リアルな羽をはばたかせた飛翔戦闘シーンを展開する。 
B ドラゴンユニット
 ドラゴンに騎乗する騎士ユニットであり、武器としては主に槍を持つ。ドラゴンユニットは、ドラゴンの翼を広げてバサバサと風を切る移動の効果音とともに空中を飛翔し、地上の地形を無視して移動することができるが、弓による攻撃に弱い。しかしドラゴンに守られているため高い防御力を持つ。
 移動させて「乗る」又は「降りる」コマンドを選択すると、移動先のその場で、ドラゴンに乗った「ドラゴンユニット」の影像とドラゴンから降りた騎士の影像とが切り替わる。
 ドラゴンユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][ドラゴンに乗る場面][ドラゴンから降りる場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面][再移動の場面]に登場する。
 特にアニメーション切替戦闘の戦闘シーンでは、騎士を乗せて大きな翼を曲げるようにして飛翔し、頂点の高さに達した位置から斜め下方の地上に降下して相手を攻撃し、再攻撃する時は垂直に飛翔してから再び相手に向かって降下して攻撃するというリアルな戦闘シーンを展開する。
C 馬ユニット
 戦闘マップにおいて乗り物である馬に騎乗できる騎士であり、兵種に応じて槍、剣等の各種の武器を持つ。馬に乗っている状態では、高い移動力を持ち、馬を走らせて地を蹴る移動の効果音とともに移動する。
 移動させて「乗る」又は「降りる」コマンドを選択すると、移動先のその場で、馬に乗った馬ユニットの影像と馬から降りた騎士の影像とが切り替わる。
 馬ユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][馬に乗る場面][馬から降りる場面][武器屋の場面][道具屋の場面][杖を使って相手を回復させる場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面][再移動の場面]に登場する。
D 踊れるユニット
 自軍ユニットで踊れるユニットは、ただ一人であり、必ず女性である。
 踊れるユニットは、茶色の長い髪をポニーテールに結ったプロポーションの良い姿で表現され、衣服は上下に分かれて腹部を一部露出しており、両腕はあらわになっている。またスカートのスリットは足の付け根にまで及んでおり、長い足が付け根から露出している。踊れるユニットはこのような衣服で、長いひも状のリボンを両手に絡ませてくるくると回転して踊り、最後には長いひも状のリボンを地面に長く垂らした決めポーズで静止する。
 踊ることによって隣接する自軍ユニットを再行動させることができる。
 踊れるユニットは、[待機][攻撃]のほか、[エ:その他の表現]の中の[踊る場面][ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][秘密の店の場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
E 杖ユニット
 戦闘マップにおいて杖ユニットは、戦場であるにもかかわらず非常に軽装で、長いローブを身につけて杖を持ち、タッタッタッとの移動の効果音とともに移動する。杖を用いて自軍ユニットを別の場所にワープさせたり、杖を用いて自軍ユニットのヒットポイント(以下「HP」という。)を回復させたりすることができる。
 とりわけ、被控訴人ゲームの杖ユニットであるネイファとトラキアの杖ユニットであるサラとは、兵種(シスター)、容姿(あどけなさが残る顔立ちで、波うつようなウェーブの紫系統のロングヘアであり、前髪を中央で分けて髪の分け目には額飾りが見える。)まで同一である。
 杖ユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][秘密の店の場面][武器屋の場面][道具屋の場面][杖を使って相手をワープさせる場面][杖を使って相手を回復させる場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
F 魔道士ユニット
 戦闘マップにおいて魔道士ユニットは、戦場であるにもかかわらず非常に軽装で、長いマントを身につけて、タッタッタッとの移動の効果音とともに移動する。武器である魔道書を用いて、魔法攻撃を行うことができる。
 とりわけ、被控訴人ゲームの魔道士ユニットであるマルジュは、トラキアの魔道士ユニットであるアスベルと人物設定(風魔法を得意とする少年で、自身専用の風魔法を持ち、登場時の兵種は魔道書で攻撃魔法を専用に使う下位の兵種である。)、容姿(少女のような風貌で、ショートヘアーで耳を出している。)まで同一である。
 魔道士ユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面][アスベル専用の風魔法の場面]に登場する。
G 斧ユニット
 戦闘マップにおいて斧ユニットは、比較的軽装で、武器として斧を持ち、強力な破壊力を特徴とするユニットである。乗り物に乗れないので、タッタッタッとの移動の効果音とともに移動する。
 斧ユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][ユニット間の会話で寝返る場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
H 弓ユニット
 戦闘マップにおいて弓ユニットは、比較的軽装で、武器として弓を使い、弓を用いて2桝目以上離れた敵を攻撃することができる間接攻撃専門のユニットである。タッタッタッとの移動の効果音とともに移動する。弓による攻撃は、飛翔するユニットであるペガサスユニット及びドラゴンユニットに対して強力な攻撃力を発揮する。
 弓ユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
I 剣ユニット
 戦闘マップにおいて剣ユニットは、剣を操る技に優れた剣士であり、軽装で、武器として剣を持ち、タッタッタッとの移動の効果音とともに移動するユニットである。
 とりわけ、被控訴人ゲームの代表的な剣ユニットである「ヴェガ」は、トラキアの特徴的な剣ユニットである「シヴァ」と、その容姿(鋭い目つきで、黒髪の前髪をばさりと垂らし、鎧をつけずに着流し的な服装)、人物設定(当初は敵として登場し、自軍の女性ユニットとの会話が行われると寝返って自軍ユニットになる)、スキル(攻撃直前に音とともに全身から光が放たれ、剣で敵に与えたダメージ分自らのHPが回復するというスキル)まで同一にしてある。
 剣ユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][ユニット間の会話で寝返る場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
J アーマーユニット
 戦闘マップにおいてアーマーユニットは、全身を頑強な鎧で固めているという極めて独自の特異な形状のユニットである。全身を頑強な鎧で固めているという重量から、機動力には乏しいものの、高い防御力を誇るユニットである。
 アーマーユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][クラスチェンジの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
K 盗賊ユニット
 戦闘マップにおいて盗賊ユニットは、比較的軽装で、武器として剣を持ち、タッタッタッとの移動の効果音とともに素早く動く動きを特徴とし、宝箱や扉を開けられたり、跳ね橋を降ろしたりすることを特徴とするユニットである。
 盗賊ユニットは、[待機][攻撃]のほか、基本的に[エ:その他の表現]の中の[ユニット間のアイテム交換の場面][ステータス画面の場面][死亡判断と死にセリフの場面][闘技場の場面][秘密の店の場面][ユニット間の会話で寝返る場面][武器屋の場面][道具屋の場面][民家を訪ねて仲間を増やす場面][民家を訪ねてアイテムを得る場面][宝箱を開ける場面][扉を開く場面][跳ね橋を降ろす場面]に登場する。
(2) ゲームの全体構成とその各場面の表現
 ゲームの全体構成とその各場面の表現に関し、両ゲームの共通する表現は、以下のとおりである。
 トラキアと被控訴人ゲームでは、全体マップ部分から個別の戦闘マップに移行し、当該戦闘マップにおける「戦闘マップをプレイする場面」をプレイし、当該戦闘マップをクリアすると、全体マップ部分に戻って次の戦闘マップに移行する。次の戦闘マップにおいて「戦闘マップをプレイする場面」をプレイして全体マップ部分に戻る、というように、基本的には全体マップ部分と個別の戦闘マップを繰り返し、最終の戦闘マップにおける「戦闘マップをプレイする場面」をクリアしたときにゲームクリアとなる。
 全体マップ部分は架空の大陸を表現した全体地図であり、セピア色の古地図として表現しており、個々の戦闘マップの所在場所とこれらをつなぐ道等を表現している。
 個々の戦闘マップは、西洋中世風の要塞、領主館内、山岳地帯、峡谷、民家の点在する村、城内、祭壇等を背景としており、全12種のユニットが登場する。戦闘マップにはマップタイトル(章タイトル)が付されており、各戦闘マップは、「戦闘前の出撃準備場面」を経て「戦闘マップをプレイする場面」を開始する。「戦闘前の出撃準備場面」は、文字どおり「戦闘マップをプレイする場面」を開始する前の準備の場面であり、当該マップの地形等を出撃前スクロール等で確認したり、出撃前の自軍ユニットの編成、ユニットの所持するアイテムの編集をしたりする。「戦闘前の出撃準備場面」において、メニューコマンドで「進撃」を選択すると、戦闘を開始することができ、戦闘前会話場面を経て「戦闘マップをプレイする場面」になる。
 戦闘マップにおける「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成は、後に(4)に詳述するとおりであるが、要約すると、プレイヤーがカーソルを操作して、トラキア独自の西洋中世風の人物設定及び容姿とした登場ユニット12種からなる自軍ユニットを行動させる自軍ターンと、コンピューターが自動的に敵軍ユニットを行動させる敵軍ターンを、繰り返すことからなっている。
 そして、プレイヤーが当該マップのクリア条件を達成したときに当該マップのクリアとなる。
 クリア条件をクリアすると、当該マップ用に用意されたマップクリア後の会話の場面が自動的に影像表示される(この会話場面にはキャンセル機能がついているので、キャンセルして飛ばすことが可能である。)。次いで全体マップに戻る場合には、全体マップが影像表現され、全体マップに戻らず戦闘マップに移行する場合には戦闘マップのマップタイトルが表示されて、次の「戦闘マップをプレイする場面」が表現される。そして、上記記載の「戦闘マップをプレイする場面」の内容が再び繰り返される。
 最終マップをクリアしたときにゲームクリアとなる。
(3) 基本ストーリー(ゲームの概要)
 両ゲームの基本ストーリー(ゲームの概要)は、以下のとおりである。
 両ゲームは、戦略性の高い戦闘システムと壮大なシナリオを満喫できるSRPGである。西洋中世をモチーフとして、ペガサスユニット、ドラゴンユニット、魔道士ユニット等も登場するファンタジーな世界を背景とし、架空の大陸における架空の小王国、小公国、小領主国間の戦乱を舞台とする。主人公は、亡国の少年王子である。プレイヤーは、西洋中世風の架空の要塞、山岳地帯、領主館内、峡谷、森林地帯、民家の点在する村、城内、祭壇等を背景とし、章立てて次々と表示される戦闘マップ上で、主人公や自軍ユニットを移動させ、戦闘等を行って仲間を増やし、成長させ、敵側を制圧する。死亡したユニットは原則として生き返らず、主人公の死亡によってゲームオーバーとなる。
(4) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成とその各場面の表現
 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成及び各場面に関し、両ゲームの表現は、以下の点で共通する。
 両ゲームの各戦闘マップでは、「戦闘前の出撃準備場面」を経て「戦闘マップをプレイする場面」が開始する。
 「戦闘マップをプレイする場面」のマップの背景は、西洋中世風の民家の点在する村、海岸の村、山岳地帯、森林地帯、地下の祭壇等を背景とし、前記(1)で詳述したとおりの西洋中世風の人物設定と容姿をもった登場ユニット全12種が登場する。
 「戦闘マップをプレイする場面」の構成は、プレイヤーがカーソルを操作して西洋中世風の全12種の自軍ユニットを行動させる自軍ターンと、コンピューターが自動的に敵軍ユニットを行動させる敵軍ターンを、繰り返すことからなっている。
 「戦闘マップをプレイする場面」においては、コンピューターが戦闘マップ上に自動的に配置した位置に、自軍ユニットと敵軍ユニットが配置されており、かかる配置画面に自軍ターンであることを示す英文文字が現れて消える画面によって、「戦闘マップをプレイする場面」が開始する。
 背景となる地形等は、すべてトップビューによる視点で描かれた西洋中世の架空の大陸風景である。
 これらの戦闘マップ上の地形には「地形効果」が設定してあり、「戦闘マップをプレイする場面」においては、カーソルが移動した場所の「地形効果」を画面上方隅に小さな長方形状の枠を表示してその枠内に「平地」等の漢字文字と「何%」という数字で当該効果を表現し、またカーソルが表示される画面の位置とは常に左右が反対側の位置にこの小さな長方形状の枠を表示している。
 戦闘マップ上において、プレイヤーがカギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている自軍ユニットに合わせると、特徴的な吹出し形状の影像(以下「吹出し」という。)が、当該ユニットに自動的に表示される。吹出しには、上段に当該ユニットの名前が、下段に当該ユニットのHPが影像表現され、HPは分母にユニットが持つ最大値を、分子に現在値を表示している。吹出しは自軍ユニットは青色系で表現し、敵軍ユニットは赤色系で表現している。カーソルをユニットから外すと、吹出しは消え、カーソルは上下左右に移動させるときに「ピコッ、ピコッ」というカーソル移動音を発生する。プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きの影像を開始すると同時に、選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には、相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。敵軍ユニットを選択してカーソルを合わせて操作ボタンを押した場合も、当該敵軍ユニットの移動可能な範囲と自軍を攻撃可能な範囲が同様の表現で影像表示される。
 自軍ターンでの行動を終了した当該ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、当該ユニットの全身の色が暗系色に変化して、吹出しが自動的に表示される。
 「戦闘マップをプレイする場面」に登場する登場ユニットはいずれもマップ上では、トップビューの視点で表現し、西洋中世風の衣装をつけ、全身は移動範囲及び攻撃範囲表示のほぼ一桝目大で、人間に近い頭身比として表現されており、その特徴的な表現の詳細は前記(1)記載のとおりである。
 戦闘マップ上において自軍ターンであることを示す英文文字が消えた状態では、登場ユニットは、それぞれの配置場所でユニット所定の待機ポーズ(基本的に斜め前向きで武器等を動かしている)をとっている。
 自軍ターンの基本構成は、当該戦闘マップに登場する自軍ユニットを、プレイヤーがカーソルを操作してユニット1人につきそれぞれ1回だけ行動させることからなっている。プレイヤーがカーソルを操作して自軍ターンで自軍ユニットに行わせることができる行動は、後記(6)で後述する[ア:待機]、又は(7)で後述する[イ:攻撃]、あるいは(9)ないし(42)で後述する[エ:(ア)ないし(メ)のその他の表現]を含むその他の行動である。
 プレイヤーは自軍ターンにおいて、当該戦闘マップに登場した自軍ユニットをカーソルで操作して、各ユニットを自軍ターン内で一回だけ行動させることができ、主として[イ:攻撃]の「行動」をさせることによって自軍ユニットに経験値(EXP)を得させて成長させる。ユニットは経験値が100を超えるとレベルアップして能力が向上して成長することができ、クラスチェンジの条件を満たしたときには、クラス(兵種)が変わって、さらに成長できる。しかしながら、死亡したユニットは二度と生き返らない(登場しない)という構成に表現しているため、プレイヤーはかかるリスクを考えた上で、マップクリアを目指して戦術を立て、基本的には、ユニットを移動させて待機させるか([ア:待機の表現])、移動させて攻撃させるか([イ:攻撃の表現])の操作を行う。
 [イ:攻撃]の表現において、戦闘の場面は、1対1の登場ユニットの戦いであり、攻撃を仕掛けた側から攻撃を1回して、相手が反撃を1回し、攻撃速度の差が所定値以上の場合に攻撃速度の大きい方が再攻撃(再反撃)を1回行うという戦闘であり、戦闘終了後に自軍ユニットが経験値を獲得し、経験値が100を超えるとレベルアップして、自軍ユニットの戦闘パラメータがアップして成長するという場面展開となっている。そして、1回の攻撃でのダメージ値は「攻撃力−守備力」で一定値となっており、その代わりに、1回の攻撃は、確率により当たってダメージを与える又は外れてダメージを与えられないものとなっており、さらに、確率により大ダメージを与えられる必殺の一撃となる場合を設けている。この場面展開が変化する不確定要素(運)により、メリハリが極端にきいた明確な表現となっている。
 戦闘場面は、設定により自動的にアニメーション切替戦闘場面又はオンマップバトル場面で表現される。アニメーション切替戦闘場面は、サイドビューでの遠景の風景を背景に、人間に近い頭身比で、西洋中世風の衣装をつけたユニットによるサイドビューの視点でのリアルなアニメーション影像での戦闘を表現している。
 「戦闘マップをプレイする場面」においては、[ア:待機][イ:攻撃][ウ:敵軍ターン]とともに、[エ:その他の表現(ア)ないし(メ)]という多彩な場面と分岐によって繰り広げられる全体構成となっている。
 自軍ターンにおける自軍ユニットの行動を終えたとプレイヤーが判断して、メインメニューを画面に表示し、最下段の「終了」コマンドを選択すると、敵軍ターンの場面に切り替わる。敵軍ターンの場面に切り替わった直後の表現は、暗系色に変わっていた全ての自軍ユニットが元の色に一瞬にして戻ると同時に、敵軍ターンであることを示す英文文字が、赤く浮かび上がるように出現した後、色が消えて溶け込むように文字が消える表現によって開始する。
 敵軍ターンは、自軍ターンの最終場面で待機ポーズとなっているユニットの配置で開始する。プログラムにしたがって敵軍ユニットが自動的に自軍ユニットに対して攻撃を仕掛けてくるが、敵軍ターンの基本構成は、敵軍ユニットの移動して待機あるいは敵軍ユニットの移動して攻撃であり、[ウ:敵軍ターン]の配置及び順序構成を含めた詳細な表現内容は後記(8)記載のとおりである。
 敵軍ターンはプログラムによって自動的に終了する。敵軍ターンが終了すると、行動を終えて暗系色の待機ポーズとなった敵軍ユニットが元の色に戻ると同時に、自軍ターンであることを示す英文文字が現れて消える表現によって自軍ターンが開始する。
 自軍ターンと敵軍ターンは、各戦闘マップに設けられたクリア条件をクリアするまで繰り返され、クリア条件をクリアすることにより、当該戦闘マップがマップクリアとなる。
(5) 「戦闘マップをプレイする場面」の各場面展開によって表現される「本質的ストーリー」
 「本質的ストーリー」は、プレイヤーが「戦闘マップをプレイする場面」をプレイしたときに、ディスプレイ上に現れるプレイの遊戯内容から、プレイヤーに感得されるものであり、その影像表現は「戦闘マップをプレイする場面」の各種の場面展開の影像表現それ自体である。両ゲームは、プレイヤーに何度でもプレイを積み重ねる意欲を起こさせる遊戯内容に作り上げられているものであって、このことにより、単に視聴しただけでは深く感得しづらい本質的ストーリーをプレイヤーに体感させ、非常に強い感情移入を生じさせる点で共通する(その詳細は甲494記載のとおりである。)。
(6) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[ア:自軍ターンにおけるユニットの行動の表現例(待機する場合)]の表現(根幹的表現)
 両ゲームに共通する待機の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上には自軍ユニット、敵軍ユニットが登場する。
 これらの登場人物はいずれもマップ上では、トップビューの視点で表現し、西洋中世風の衣装をつけ、人間に近い頭身比の人物として表現する。
 戦闘マップ上において自軍ターンであることを示す英文文字が消えた状態では、登場人物は、それぞれのユニット所定の待機ポーズ(基本的に斜め前向きで武器等を動かしている)をとっている。
 プレイヤーがカギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに吹出し影像が表示され、当該吹出し中には上段に当該ユニットの名前と下段に当該ユニットのHPが影像表現される。HPは,その分母にユニットが持つ最大値を、分子に現在値を表示している。吹出しは自軍ユニットであるかどうかを一目で分かるように自軍ユニットを青色系で表現し、敵軍ユニットの吹出しを赤色系で表現している。かかる表現により、当該ユニットが自軍であるか否か、ユニットの名前及びHPがどの程度残っているかがわかるように表現している。カーソルをユニットから外すと、吹出しは消える。
 カーソルは上下左右に移動させるときに「ピコッ、ピコッ」というカーソル移動音を発生する。
 プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きの影像を開始し、選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には、相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。また、敵軍ユニットを選択してカーソルを合わせて操作ボタンを押した場合は、当該敵軍ユニットの移動可能な範囲と自軍を攻撃可能な範囲が同様の表現で影像表示される。これにより、自軍及び敵軍の各ユニットの移動可能な範囲だけでなく、敵軍による攻撃可能な範囲をも同時にプレイヤーが判断できるような影像表現となっている。
 続いて、自軍ユニットを選択した場合、カーソルを移動させて自軍ユニットが移動可能な範囲内で移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択された自軍ユニットが移動する様子が、トップビューの影像で、アニメーション手法により影像表現されて、ユニットは画面上では桝目は現れていないにもかかわらず桝目の上を動く動作によって、移動先へ移動する。この移動の様子は、西洋中世風の衣装をつけ、剣、斧、弓等の武器をもった人間に近い頭身比であらわされたユニットが、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合はバサバサと風を切る効果音とともに空中を飛翔し、馬に乗っている場合は地を蹴る効果音とともに馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合はタッタッタッという効果音とともに駆け足で、画面上の上に行くときは後ろ向きの姿で、画面上の下に移動するときは前向きの姿で、右に移動する場合は右向きで武器を右手に持ち(弓の場合は弓を左手に持つ)、左に移動するときは左向きで武器を右手に持って(弓の場合は弓を左手に持って)、上記のとおりの移動の効果音とともに移動するという表現がとられている。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に移動すると、当該自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 この移動後のメニューに記載された「待機」コマンドを選択すると、「ピコッ」というコマンド決定音が生じるとともに、当該ユニットは当該自軍ターンでの行動を終える。当該ユニットの行動が終了したことを表現するために、当該ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、当該ユニットの全身の色が変化する。
(7) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[イ:自軍ターンにおけるユニットの行動の表現例(攻撃する場合)]の表現(根幹的表現)
 両ゲームに共通する攻撃の表現は以下のとおりである。
 戦闘マップ上において、プレイヤーが、カギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットから吹出し形状の影像が表現され、当該吹出し中に当該ユニットの名前が上段に、下段にHPが影像表現される。HPは、その分母に当該ユニットが持つ最大値を、分子に当該ユニットの現在値を表示している。吹出しは自軍ユニットであるかどうかを一目で分かるように自軍ユニットは青色系で表現し、敵軍ユニットの吹出しは赤色系で表現している。かかる表現により、当該ユニットが自軍であるか否か、ユニットの名前及びHPがどの程度残っているかがわかるように表現している。カーソルをユニットから外すと、吹出し形状の影像は消える。
 次に、プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きを開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。また、敵軍ユニットを選択して操作ボタンを押した場合には、当該敵軍ユニットの移動可能な範囲と自軍を攻撃可能な範囲が同様の表現で影像表示される。
 これにより、自軍及び敵軍の各ユニットの移動可能な範囲だけでなく、敵軍による攻撃可能な範囲をも同時にプレイヤーが判断できるような影像表現となっている。
 続いて、自軍ユニットを選択した場合、カーソルを移動させて自軍ユニットが相手方を攻撃することが可能な範囲であってかつ移動可能な位置に移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択された自軍ユニットが移動する様子が、アニメーション手法により影像表現されて、ユニットは桝目の上を動く動作によって移動先へ移動する。この移動の様子は、西洋中世風の衣装をつけ、剣、斧、弓、槍等の武器をもった人間に近い頭身比であらわされたユニットが、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合はバサバサと風を切る効果音とともに空中を飛翔し、馬に乗っている場合は地を蹴る効果音とともに馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合はタッタッタッという効果音とともに駆け足で、画面上の上に移動するときは後ろ向きの姿で、画面上の下に移動するときは前向きの姿で、右に移動する場合は右向きで武器を右手に持ち(弓の場合は弓を左手に持つ)、左に移動するときは左向きで武器を右手に持って(弓の場合は弓を左手に持って)、上記のとおりの移動の効果音とともに移動するという表現がとられている。
 当該ユニットがカーソルで指定された移動先に移動すると、自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 この移動後のメニューに記載された攻撃コマンドを選択すると、ピコッというコマンド決定音が生じ、当該ユニットが使用できる武器のメニュー及び選択中の武器を装備した場合のユニットのパラメータ値を表示したメニューとが、メニュー表示の効果音とともに自動的に影像表示される(この2つのメニューはペアになっており、以下、2つを総称して「武器選択メニュー」という。)。
 武器のメニューには、当該自軍ユニットがその時点で攻撃に使用し得る武器を、武器アイコン、武器名称、耐久度の数値によって影像表示する。
 選択中の武器を装備した場合のユニットのパラメータ値を表示したメニューには、当該自軍ユニットが現在装備している武器を、「属性」(トラキアの場合。被控訴人ゲームの場合は「タイプ」。)という項目のもとに六角形状の枠内にアイコンで表現し、その下に当該武器を装備したときの当該自軍ユニットのパラメータ値を影像表示する。プレイヤーは攻撃する武器をこの2種類のメニューを比較することによって選択する。
 この選択に当って、プレイヤーがカーソルを操作して武器のメニューのリストの一番上に記載されている現在装備している武器から、リスト上に記載されている別の武器にカーソルを移動すると、選択中の武器を装備した場合のユニットのパラメータ値を表示したメニューでは、当該別の武器に装備を変えた場合の武器が六角形状の枠内にアイコンで表現され、当該武器に装備を変えた場合の当該自軍ユニットのパラメータ値を連動して変化させて影像表現する。そしてこの変化したパラメータ値の数値の右側には、現在装備している武器に比べて当該自軍ユニットのパラメータ値が増えた場合には上向きの矢印を、減った場合には下向きの矢印を影像表現する。これらの一連の影像表現により、一見して、どの武器を装備すると当該自軍ユニットはどのパラメータにおいて有利になるか、不利になるかがわかるように影像表現する。
 武器選択メニューによって以上のようにして武器を選択した後に、カーソルを合わせて敵軍ユニットを選択すると、敵軍ユニットと自軍ユニットの戦闘前パラメータを影像表示する場面となる。
 戦闘前パラメータは戦闘マップに重なって影像表現され、枠内には相手と自軍の各ユニットの攻撃パラメータを比較できるように、中央の縦方向に攻撃パラメータの項目(レベル、HP、攻撃力、守備力、命中率、必殺率、攻速(攻撃速度))が記載され、これを挟んで右側に自軍ユニットの名前と各値が、左側に敵軍ユニットの名前と各値が表示されている。
 戦闘前パラメータが表示された後にプレイヤーが操作ボタンを押すと、当該マップの戦闘画面の設定にしたがって、サイドビューによる1対1のアニメーションによる戦闘影像(アニメーション切替戦闘)あるいは、トップビューによる1対1のオンマップ上での戦闘影像(オンマップバトル)のいずれかが開始する。
<アニメーション切替戦闘>
 アニメーション切替戦闘に設定されている場合は、戦闘前パラメータが表示された後にプレイヤーが操作ボタンを押すと、トップビューのマップの場面から真っ黒な画面に切り替わる。その後にサイドビューの視点に切り替わり、サイドビューでの遠景の風景を背景に、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけたユニットがサイドビューの視点でリアルなアニメーション影像で表現され、一人のユニット対一人のユニットの戦闘が、リアルなアニメーション影像で表現される。今までのトップビューのマップ画面から、サイドビューの戦闘画面へ切り換えることから、アニメーション切替戦闘と呼んでいる。トップビューのマップ画面の場合とは背景音楽も変化する。
 アニメーション切替戦闘で戦闘する影像は、右側に自軍のユニットを、左側に敵軍ユニットを影像表現する。
 切替戦闘シーンにおいては、画面の上段に、サイドビューで一対一での戦闘影像が表現される。画面の下段には、右側の青色系の横長の四角の枠内に、自軍ユニットの名前、使用する武器の名称、アルファベット3文字と数字で影像表現された攻撃能力等が影像表示され、左側の赤色系の横長の四角の枠内には、敵軍ユニットの名前、使用する武器の名称、アルファベット3文字と数字で影像表現された攻撃能力等が影像表示される。また、各ユニットのHPは、長方形状でHPの値1に対して1目盛りずつ区切られた棒グラフとその横側の数値により影像表示され、ダメージを受けた場合には棒グラフが減じる影像表現となっている。
 戦闘は、基本的には自軍ユニットが1回攻撃し、相手方が1回反撃し、攻撃速度差が所定値以上になると、攻撃速度の値の大きい方が再度攻(反)撃を1回して、攻撃の行動は終了となる。
 この攻撃の表現は以下のとおりである。
 攻撃は使用した武器等に特有のリアルな効果音(剣を振り下ろす音、弓を引き絞って矢を放つ音等)とともに、武器等の軌跡が白く表現される。
 攻撃を受けたユニットがダメージを受けなかった場合は、ダメージを受けなかった乾いた金属音のような効果音が生じるとともに、攻撃を受けたユニットはそのままの影像で表現され、HPの棒グラフにも変化はない。
 しかしながら、攻撃を受けたユニットがダメージを受けた場合は、当該ダメージを受けたユニットはそのままのポーズでダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPを示す棒グラフと数値が減少して、ダメージをどれだけ受けたかを表現する。
 また、攻撃を受けたユニットに攻撃が当たらなかった場合には、攻撃を受けたユニットが避ける動きを影像表現しており、HPの棒グラフと数値は変化しない影像表現をしている。
 次に相手方のユニットが反撃する。反撃も、使用した武器等に特有のリアルな効果音とともに、武器等の軌跡が白く表現される。攻撃によってダメージを受けた場合にはユニットがダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPの棒グラフの影像が変化すること等は上記と同じである。
 反撃が終わると、対戦するユニットの攻撃速度の差が4以上の場合には、攻撃速度の値の大きいユニットが再攻(反)撃する。ダメージを受けたユニットはダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPの棒グラフの影像が変化すること等は上記と同じである。1回目の反撃後に攻撃速度の値の差が4以上とならない場合は、再攻(反)撃は行われない影像表現となっている。
 自軍ユニットの攻撃(又は再攻撃)で敵軍ユニットのHPを0にすることに成功した場合には、自軍ユニットの攻撃(又は再攻撃)が終了した時の敵軍ユニットの姿勢のまま、敵軍ユニットの影像は徐々に半透明になって消滅の効果音とともに消滅し、敵軍ユニットが死亡したことを表現する。
 戦闘が終了し、自軍ユニットが生き残っている場合には(敵軍ユニットが死亡しない場合でも)、自動的に経験値が付与される場面となり、経験値が水銀柱のような横棒グラフと数値で影像表示され、戦闘により獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、当該ユニットが戦闘によって経験値を獲得して成長したことが表現される。経験値が加算されるときには、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。水銀柱のような横棒グラフと数値は、横長の長方形状の枠内に、左側から経験値、棒グラフの順に表現されている。
 当該戦闘で経験値を獲得した結果、経験値が100を超えると自動的にレベルアップの場面へ移行し、また経験値が100を超えなかった場合には経験値獲得の表現がなされた後に、自動的に画面はトップビューのマップ場面に切り替わり、当該ユニットは当該自軍ターンでの行動を終える。当該ユニットの行動が終了したことを表現するために、当該ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 レベルアップの場面へ場面が切り替わった場合は、以下のとおりに表現する。
 レベルアップ場面に自動的に場面が切り替わる場合には、まず当初表示されていた経験値の水銀柱のような横棒グラフ等の影像が消え、画面上に長方形状の枠が表示される。長方形状の枠内には、左端に当該自軍ユニットの斜め前向きの顔の影像が表現され、その右には当該ユニットの戦闘能力データが影像表示され、次いで戦闘能力パラメータのうちの上昇した項目に、上昇した数値(基本的に1だけ上昇)を新たに影像表示し、上昇した項目の右には上昇したことを示す表示(トラキアの場合は矢印マークであり、被控訴人ゲームの場合は「+」マークと数字)が、上昇したことを示す効果音とともにはねるように影像表現される。
 レベルアップ場面が終了すると、画面はトップビューのマップ場面に切り替わり、当該ユニットは当該自軍ターンでの行動を終え、マップ上の戦闘を開始した位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
<オンマップバトル>
 オンマップバトルの場合は、トップビューによるユニットの移動影像とは何らの切れ目なく、オンマップ上のユニット間での戦闘影像が表現される。
 オンマップバトルでは、マップ上に、一部上部に突出のある横に細長い長方形状が隣り合わせになった形状のHP表示が表示される。このHP表示は自軍表示は青色系に、敵軍表示は赤色系に色分けされており、両ユニットのHPが黄色い棒グラフと棒グラフ横の数字で示されており、上部突出部には両ユニットの名前が記載されている。戦闘の当初には両ユニットの戦闘開始時のHPが棒グラフに表示され、戦闘でダメージを受けると棒グラフが数字の方向に向かって減少する。
 戦闘は、基本的にはアニメーション切替戦闘と同様に、自軍ユニットが1回攻撃し、相手方が1回反撃し、攻撃速度差が所定値(4)以上になると、攻撃速度の値の大きい方が再度攻(反)撃を1回して、攻撃の行動は終了となる。
 この攻撃の表現は以下のとおりである。
 攻撃は使用した武器等に特有のリアルな効果音(剣を振り下ろす音、矢を放つ音等)とともに、武器等の軌跡が白く表現される。
 攻撃を受けたユニットがダメージを受けなかった場合は、ダメージを受けなかった乾いた金属音のような効果音が生じるとともに、攻撃を受けたユニットはそのままの影像で表現され、HPの棒グラフにも変化はない。
 しかしながら、攻撃を受けたユニットがダメージを受けた場合は、当該ダメージを受けたユニットは、そのままのポーズでダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPの棒グラフと数値が減少してダメージをどれだけ受けたかを表現する。
 また、攻撃を受けたユニットに攻撃が当たらなかった場合には、攻撃を受けたユニットが避ける動きを影像表現しており、HPの棒グラフと数値は変化しない影像表現をしている。
 次に、相手方のユニットが反撃する。反撃も、使用した武器等に特有のリアルな効果音とともに、武器等の軌跡が白く表現される。反撃によってダメージを受けた場合にはユニットがダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPの棒グラフの影像が変化すること等は上記と同じである。
 反撃が終わると、対戦するユニットの攻撃速度の差が4以上の場合には、攻撃速度の値の大きいユニットが再攻(反)撃する。ダメージを受けたユニットはダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPの棒グラフの影像が変化すること等は上記と同じである。1回目の反撃後に攻撃速度の値の差が4以上とならない場合は、再攻(反)撃は行われない。
 自軍ユニットの攻撃(又は再攻撃)で敵軍ユニットのHPを0にすることに成功した場合には、自軍ユニットの攻撃(又は再攻撃)が終了したときの敵軍ユニットの姿勢のまま、敵軍ユニットの影像は徐々に半透明になって消滅の効果音とともに消滅し、敵軍ユニットが死亡したことを表現する。
 戦闘が終了し、自軍ユニットが生き残っている場合には(敵軍ユニットが死亡しない場合でも)、自動的に経験値が付与される場面となり、戦闘時には画面上に継続して表示されていた、名前とHPを示す棒グラフと数値のHP表示が一瞬にして画面より消去され、その後に、経験値が水銀柱のような横棒と数値で影像表示され、戦闘により獲得した経験値が自動的に加算されて水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化して、当該ユニットが戦闘によって経験値を獲得して成長したことが表現される。経験値が加算されるときには、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 当該戦闘で経験値を獲得した結果、経験値が100を超えると自動的にレベルアップの場面へ移行する。当該自軍ターンでの行動が終了すると、当該ユニットの行動が終了したことを表現するために、当該ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 レベルアップの場面へ場面が切り替わった場合は、以下のとおりに表現する。
 レベルアップ場面へ自動的に場面が切り替わる場合には、まず当初表示されていた経験値の水銀柱のような横棒グラフ等の影像が消え、長方形状の枠が画面上に表示され、枠内に当該ユニットの戦闘能力データが影像表示され、次いで戦闘能力パラメータのうちの上昇した項目に、上昇した数値(基本的に1だけ上昇)を新たに影像表示し、上昇した項目の右には、上昇したことを示す表示(トラキアの場合は矢印マークであり、被控訴人ゲームの場合は「+」マークと数字)が、上昇したことを示すように影像表現される。レベルアップした場合には、レベルアップの場面が終了すると、画面はトップビューのマップ場面となり、当該ユニットの当該自軍ターンでの行動を終え、マップ上の戦闘を開始した位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
<自軍ユニットの死亡>
 上記のアニメーション切替戦闘又はオンマップバトルの戦闘中に、自軍ユニット(主人公以外)が敵の反撃(又は再反撃)を受けてダメージを受けて白く光り、次いでユニットが死亡したことが棒グラフで示されていたHPが0まで減ったことによって影像表現されると(死亡判断)、自動的に「死にセリフ」の場面に場面が切り替わる。死亡した自軍ユニットは、以降は影像表示されない。かかる死亡した自軍ユニットは二度と登場しないとの影像表現をとることにより、死亡したユニットは生き返らないことを表現している。
 自軍ユニットが死亡した場合には、当該自軍ユニットなしでゲームを続行するか、あるいはリセットしてゲームをし直すかをプレイヤーは選択することができる。ゲームを続行する場合は当該死亡ユニットの行動は死にセリフ場面をもって終了し、トップビューのマップ場面に切り替わったときに、当該ユニットが戦闘を開始した位置に当該ユニットはもはや影像表現されない。
<主人公の死亡>
 上記のアニメーション切替戦闘又はオンマップバトルの戦闘中に、主人公が敵の反撃(又は再反撃)によりダメージを受けた効果音とともに白く光り、次いで主人公が死亡したことが棒グラフで示されていたHPが0まで減ったことによって表現されると(死亡判断)、自動的に「主人公の死亡によるゲームオーバーの場面」に場面が切り替わる。ゲームはここで終了であり、プレイヤーはゲームをし直すことになる。
(8) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[ウ:敵軍ターンの場面]の表現(根幹的表現)
 両ゲームに共通する敵軍ターンの表現は、以下のとおりである。
 プレイヤーが自軍ターンにおける自軍ユニットの行動を終えて、マップ上のユニットが存在していない場所にカーソルを合わせて、ボタン操作すると、マップ上に「ピコッ」という効果音とともにメインメニューが表示される。
 このメインメニューの最下段には「終了」(トラキアの場合。被控訴人ゲームの場合は「ターンエンド」)コマンドが記載されている。この最下段のコマンドを選択すると、自動的に敵軍ターンの場面に切り替わる。
 敵軍ターンの場面に切り替わった直後の影像表現は、暗系色に変わっていた全ての自軍ユニットが、元の色に一瞬にして戻ると同時に、敵軍ターンであることを示す英文文字が、赤く浮かび上がるように出現した後、色が消えて溶け込むように文字が消えるという表現となっており、自軍ターンの場合とは背景音楽が変化する。
 敵軍ターンは、自軍ターンの最終場面で待機ポーズとなっているユニットの配置で開始し、プログラムにしたがって敵軍ユニットが自動的に自軍ユニットに対して攻撃を仕掛けてくる。敵軍ユニットが移動して待機する場合には、自軍ターンのときの自軍ユニットの移動と待機の表現と同じく、トップビューであらわされた西洋中世風の衣装をつけ人間に近い頭身比の敵軍ユニットが、トップビューによるアニメーション手法によって、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、画面上を上へ移動する場合は後ろ向き、下へ移動する場合は前向き、右へ移動する場合は右向き、左へ移動する場合は左向きで、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに動いて移動する。
 プログラムによって移動を終えると、当該敵軍ユニットは当該敵軍ターンでの行動を終える。当該敵軍ユニットの行動が終了したことを表現するために、当該敵軍ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 敵軍ユニットが移動して攻撃する場合は、自軍ターンのときの自軍ユニットの移動して攻撃する場合と同じく、敵軍ユニットはトップビューによるアニメーション手法で桝目の上を動く動作によって画面上を上へ移動する場合は後ろ向き、下へ移動する場合は前向き、右へ移動する場合は右向き、左へ移動する場合は左向きに、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、移動の効果音とともに動いて移動する。攻撃は、設定によってアニメーション切替戦闘又はオンマップバトルでプログラムにしたがって自動的に表現される。
 敵軍ターンはプログラムにしたがって自動的に終了する。
 アニメーション切替戦闘又はオンマップバトルの表現は、自軍ターンの戦闘の場合と全く同様に表現する。
 敵軍ユニットが仕掛けてきた攻撃で自軍ユニットが生き残った場合には、自軍ターンのときと同じ表現で、自軍ユニットに対する経験値付与場面を表現する。
 自軍ユニットが経験値付与によって経験値が100を超えれば、自軍ターンのときと同じ表現で、自軍ユニットのレベルアップ場面を表現する。
 自軍ユニットが敵軍ユニットが仕掛けてきた攻撃で死亡した場合には、自軍ターンのときと同じ「死亡判断と死にセリフ」の場面に自動的に切り替わる。死亡した自軍ユニットは、以降、影像表現されることはなく、自軍ターンが開始しても、もはや死亡したユニットは生き返らず登場しない。
 主人公が敵軍ユニットが仕掛けてきた攻撃で死亡した場合には、自軍ターンのときと同じ表現で、「主人公死亡によるゲームオーバーの場面」に、場面が自動的に切り替わる。主人公の死亡によりゲームオーバーとなる。
 敵軍ターンは、プログラムによっては敵軍ユニットが何の行動もとらずに終了する場合もある。
(9) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の「(ア)踊る場面」の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンにおいて自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットが踊るスキルを持った踊れるユニットである場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させるときに、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて踊らせて、当該自軍ターンでの行動を終了している他の自軍ユニットを再行動させることができる。
 両ゲームに共通する、自軍の踊れるユニットに踊る行動をさせて、他のユニットを再行動させる場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上において踊れるユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該踊れるユニットに合わせると、自動的に当該踊れるユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該踊れるユニットの名前とHPを表現する。
 当該踊れるユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該踊れるユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択した踊れるユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には敵軍を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて踊れるユニットの移動先を、当該踊れるユニットの移動範囲内でかつ当該自軍ターンでの行動が終了している自軍ユニットと隣接する位置に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。選択された当該踊れるユニットは人間に近い頭身比の人物影像で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、移動先へ移動する。
 当該踊れるユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該踊れるユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示される。踊れるユニットが移動した場合には、「踊る」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「踊る」コマンドを選択し、続いて、隣接しておりかつ行動が終了している自軍ユニットの中から、再び行動させたいユニットにカーソルを合わせると、その名前とHPが影像表現される。このときにカーソルは、隣接しかつ行動が終了している自軍ユニットのみを指すようになっており、隣接していても行動が終了していない自軍ユニットをカーソルが指すことはない。
 プレイヤーがボタンを押して再行動させる相手を選択すると、トップビューのマップ画面から真っ暗な画面に切り替わり、その後にサイドビューの視点に切り替わって、踊れるユニットが画面の上段に、踊れるユニットの名前、攻撃能力等が表示された青色系の横長の四角の枠が画面下段の右側に影像表現される。この場面では、踊るような背景音楽に変化する。
 踊れるユニットは、茶色の長い髪をポニーテールに結ったプロポーションの良い姿で表現され、衣服は上下に別れて腹部を一部露出しており、両腕はあらわになっている。またスカートのスリットは足の付け根にまで及んでおり、長い足が付け根から露出している。踊れるユニットはこのような衣服で、長いひも状のリボンを両手に絡ませてくるくると回転して踊り、最後には長いひも状のリボンを地面に長く垂らした決めポーズで静止する。決めポーズは、上記のような髪と衣装の踊り子が、左腕を真っ直ぐに高く上げ、左足は真っ直ぐに伸ばして重心を置き、足の付け根までを全部露わにした右足を斜め前方に出しており、真っ直ぐに横に伸ばした右腕には長いひも状のリボンを持ち、そのリボンを地面に長く垂らしているという、極めて特徴的でありかつ印象的に静止して決めるポーズとなっている。
 踊る場面が終了すると、踊れるユニットに経験値が付与される場面となり、経験値が水銀柱のような横棒グラフと数値で影像表示されて、踊ったことにより獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、当該踊れるユニットが踊ることによって経験値を獲得して成長したことが表現される。経験値が加算されるときには、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 経験値を獲得した結果、経験値が100を超えると自動的にレベルアップの場面へ移行し、また経験値が100を超えなかった場合には自動的にトップビューのマップ場面に場面が切り替わる。トップビューの場面に切り替わると、相手方となった自軍ユニットは再行動が可能となって暗系色から通常の色彩に戻って影像表現され、一方、当該踊れるユニットは当該自軍ターンでの行動を終えて、移動後の位置において、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(10) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(イ)ユニット間のアイテム交換の場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンにおいて自軍ユニットを行動させるときに、プレイヤーは単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて交換させて、ユニット間での所持アイテムを交換させることができる。
 両ゲームとも、各々の自軍ユニットが所持できる数には制限を設けているため、必要なアイテムを他の自軍ユニットからアイテム交換により取得できる表現をとっている。これがユニット間のアイテム交換の場面である。
 両ゲームに共通するユニット間のアイテム交換の場面の表現は以下のとおりである。
 戦闘マップ上において自軍ユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に当該自軍ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを待機ポーズをしている当該自軍ユニットに合わせると、自動的に当該自軍ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該自軍ユニットの名前とHPを表現する。
 当該自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該自軍ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択した当該自軍ユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には敵軍を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて当該自軍ユニットの移動先を、当該自軍ユニットの移動範囲内でかつアイテム交換ができる自軍ユニットの隣りの位置に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。選択された当該自軍ユニットは人間に近い頭身比の人物影像で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、移動先へ移動する。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示される。移動後のメニューに記載された「物交換」コマンドを選択して(トラキアの場合。被控訴人ゲームの場合は「アイテム」コマンドを選択して操作ボタンを押し、次いで「交換」コマンドを選択する。)、操作ボタンを押すと自動的に隣接する自軍ユニットからアイテム交換する相手をカーソルで選択する場面となり、カーソルを合わせた隣接する自軍ユニットの名前と所持アイテムが影像表示される。ボタンを押して相手を選択すると、アイテム交換の場面に切り替わる。
 アイテム交換の場面は、画面を縦に二分して、左にアイテム交換のコマンドを実行した当該自軍ユニットを、右に交換する相手となる自軍ユニットを影像表現する。
 画面左側のアイテム交換のコマンドを実行した当該自軍ユニットの側には、上段の横長の長方形状の枠内に当該自軍ユニットの斜め前向きの顔影像を表現し、下段の縦長の長方形状の枠内には当該自軍ユニットの現在所持している所持アイテムがアイテムのアイコン、アイテム名称、耐久度の数値によって、影像表示されている。また上段のユニットの顔影像の左側にはユニットの名前、兵種、HP等も表示される。画面右側のアイテム交換の相手となるユニットについても同様の表現がなされている。
 指差し形状の白い手のカーソル(以下「指カーソル」という。)を操作して相手の所持アイテムの中から交換したいアイテムを選択してボタンを押すと、指カーソルはその動きを止め、新たな指カーソルがアイテム交換を実行したユニットの所持アイテム欄で空欄となっている個所を指す。ここでボタンを押すと、所持アイテムが交換されて各々の所持アイテム欄に表示される。交換する相手の所持アイテム欄が空欄となると、下方にあるアイテム名が上に繰り上がって影像表示される。そして、引き続き次のアイテムを交換することができる影像表現となっている。
 アイテム交換場面においては、アイテム交換を終了する場合にはボタン操作により、当該ユニットの移動後のメインメニューの場面に戻る影像表現となっている。
 移動後のメインメニュー場面に戻ると、引き続いて待機や攻撃等のコマンドを選択し、これらの行動が表現される。待機あるいは攻撃等を終了すると、戦闘マップ上のユニットの行動は終了し、当該ユニットの行動が終了したことを表現するために、当該ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 なおユニット間のアイテム交換は、「戦闘マップをプレイする場面」が開始する前の「戦闘前の出撃準備場面」においても表現させることができる。
(11) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ウ)ステータス画面の場面]の表現
 両ゲームに共通するステータス画面の表現は、以下のとおりである。
 トップビューの戦闘マップ上において、プレイヤーが当該自軍ターンにおいて行動させる自軍ユニットや戦う相手である敵軍ユニットの能力、状態、アイテム等の情報を確認する場合に、トップビューの戦闘マップ上において、カーソルを当該ユニットに合わせて操作ボタンを押すと、画面全体に当該ユニットのステータス画面が表示される。
 ステータス画面は、画面全体を2つの横長方形状によって上下2段に分けており、上段と下段は縦巾で1:2の比率となっている。
 上段部の中央には、当該ユニットの斜め前向きの顔影像を表現し、上段部の顔影像の左側には当該ユニットの名前、兵種、HP(分母が最大値、分子が現在値)、LV(レベル)、E(経験値)を表現している。上段部の顔影像の右側には、当該ユニットの攻撃パラメータを、攻撃力、命中率、射程、必殺率、回避率(被控訴人ゲームの場合にはこれに「必殺回避率」、「守備力」、「そくど(攻撃速度)」が付加される。)等で表現している。
 下段の横長方形状は中央で左右に分かれて表現され、下段部の左側には、当該ユニットの戦闘能力を力、魔力、技、速さ、幸運、守備(トラキアの場合は「体格」、被控訴人ゲームの場合は「ぶきL」、「戦闘力」が付加される。)等で表現している。下段部の右側には当該ユニットの現在所持しているアイテムを、アイテムを示すアイコン、アイテム名、アイテムの耐久度を示す数値で表現している。
 プレイヤーが操作ボタンを押すと、ステータス画面は消えて、元のトップビューの戦闘マップ影像が表現される。
(12) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(エ)死亡判断と死にセリフの場面]の表現
 両ゲームに共通する死亡判断と死にセリフの場面の表現は、以下のとおりである。
 アニメーション切替戦闘中に、画面上段でリアルなアニメーションの手法で表現されている戦闘影像において、自軍ユニットがダメージを受けると、ダメージを受けた効果音とともに白く光る。次いで、ユニットのHPが0になったことが、画面下段の青色系枠内の棒グラフ(HPの値1に対して1目盛りずつ区切られたもの)と数値によって影像表現されると、ユニットは死亡したものと判断され、戦闘場面から自動的に死にセリフの場面に切り替わる。
 死にセリフの場面に切り替わると、画面下段の青色系枠と赤色系枠の影像が消え、画面下段には左側に当該ユニットの右斜め前方を向いた顔の影像が表現され、その顔の影像から右側の横一杯に長い吹出しが長方形状に影像表現され、その吹出しの中に当該ユニットの死にセリフの言葉が文字で影像表示される。
 死にセリフの言葉が文字で表示された後、画面の上段に戦闘によって反撃を受けた状態のままで影像表現されていた当該自軍ユニットの全身影像は、半透明となって徐々に消えるように影像表現され、最後には消滅の効果音とともに消えてしまう。
 以上の表現が終了すると、当初のオンマップの場面に切り替わる。マップ場面に切り替わったときに、死亡したユニットはマップ上の戦闘を開始した位置にもはや影像表現されない。
 オンマップバトル中の戦闘影像においても、自軍ユニットがダメージを受け、ダメージを受けた効果音とともに白く光り、次いでユニットのHPが0になったことが、戦闘マップ画面上に表示されている青色系枠内の棒グラフと数値によって影像表現されると、ユニットは死亡したものと判断され、戦闘場面から自動的に死にセリフの場面に場面が切り替わる。
 オンマップバトルにおける死にセリフの場合には、HP表示の影像が消えて、上記と同じ当該ユニットの斜め前方を向いた顔の影像と、その顔の影像の横の長い長方形状の吹出しが影像表現され、その吹出しの中に当該ユニットの死にセリフの言葉が文字で影像表示される。
 死にセリフの言葉が文字で表示された後、顔の影像と吹出しは消えて、戦闘マップ上の戦闘によって反撃を受けた状態のままで影像表現されていた当該ユニットのトップビューによる影像は、半透明となって徐々に消えるように影像表現され、最後には消滅の効果音とともに消えてしまう。
 以上のようにして戦闘中に死亡したユニットは、以降はゲームに登場することはなく、また自軍ターンと敵軍ターンが切り替わっても、さらには次のマップを開始しても、死亡したユニットは二度と影像表現されない。
(13) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(オ)主人公の死亡によるゲームオーバーの場面]の表現
 両ゲームに共通する主人公の死亡によるゲームオーバーの場面の表現は、以下のとおりである。
 アニメーション切替戦闘中に、画面上段でリアルなアニメーションの手法で表現されている戦闘影像において、主人公がダメージを受け、ダメージを受けた効果音とともに白く光り、次いで主人公のHPが0になったことが、画面下段に表現されている青色系枠内の棒グラフ(HPの値1に対して1目盛りずつ区切られたもの)と数値によって影像表現されると、主人公は死亡したものと判断され、戦闘場面から自動的に主人公の死亡によるゲームオーバーの場面に場面が切り替わる。
 主人公の死亡によるゲームオーバーの場面に切り替わると、画面下段の青色系枠と赤色系枠の影像が消えて、画面下段には左側に主人公の右斜め前方を向いた顔の影像が表現され、その顔の影像から右側の横一杯に長い吹出しが長方形状の枠一杯に影像表現され、その吹出しの中に主人公の死にセリフの言葉が文字で影像表示される。
 死にセリフの言葉が文字で表示された後、画面の上段に戦闘によって反撃を受けた状態のままで影像表現されていた主人公の全身影像は、徐々に半透明となって消えるように影像表現され、最後には消滅の効果音とともに消えてしまう。
 このようにして主人公が死亡して消えると、画面はトップビューによる戦闘マップの場面に切り替わり、主人公が当初いた場所にはもはや主人公は影像表現されない。そして, このトップビューの戦闘マップ画面下方一杯に長方形状の吹出しが表示される。吹出しの上方かつ画面の右側には、主人公に最も親しい自軍ユニットの顔が主人公の顔のあった左側を向いて影像表現され、吹出し内には、主人公の死に対する自軍ユニットによる無念の気持ちを伝える言葉が文字で影像表示される。
 オンマップバトルにおける主人公の死亡の場合には、主人公がダメージを受け、ダメージを受けた効果音とともに白く光り、次いでユニットのHPが0になったことが戦闘マップ画面上に表示されているHP表示によって影像表現されると、戦闘マップ上に主人公の斜め前方を向いた顔の影像が表現され、その顔の影像から長方形状の吹出しが影像表現され、その吹出しの中に主人公の死にセリフの言葉が文字で影像表示される。
 死にセリフの言葉が文字で表示された後、顔の影像と吹出しは消えて、トップビューの戦闘マップ上で、反撃を受けた状態のままで影像表現されていた主人公の影像は、半透明となって徐々に消えるように影像表現され、最後には消滅の効果音とともに消えてしまう。
 次いで、トップビューの戦闘マップ画面下方一杯に長方形状の吹出しが表示される。その吹出しの上方かつ画面の右側に、主人公に最も親しい自軍ユニットの顔が左側を向いて影像表現され、吹出し内には、主人公の死に対する自軍ユニットによる無念の気持ちを伝える言葉が文字で影像表示される。
 以上のようにして主人公が死亡した場合には、ゲームオーバーとなる。
(14) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(カ)クラスチェンジの場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットがレベル10以上になりかつクラスチェンジを可能にするアイテムを持っている場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させるときに、単に待機や攻撃をするのではなく、移動させてクラスチェンジをさせて行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する、ユニットを移動させてクラスチェンジをさせる場面の表現は、以下のとおりである。
 プレイヤーがカギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている前記の条件を満たす自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中には上段に当該ユニットの名前と下段に当該ユニットのHPが影像表現される。HPは,その分母にユニットが持つ最大値を、分子に現在値を表示している。
 次に、プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きの影像を開始し、また選択したユニットが移動することが可能な範囲を背景とは異なる色の半透明な桝目で表現しかつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目を半透明な黄色で影像表現した移動範囲・攻撃範囲の影像が表示される。
 当該ユニットの移動先をカーソルで指定して決定すると、トップビューの影像で人間に近い頭身比で表現された当該自軍ユニットが、西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音を伴って移動する。移動先に到達すると、移動後のメニューが自動的に影像表示される。移動後のメニューには、クラスチェンジを可能にするアイテムを所持していると、「持ち物」(トラキアの場合。被控訴人ゲームでは「アイテム」。)コマンドが表示され、当該コマンドを選択すると、当該ユニットの所持するアイテムメニュー及び「使う・すてる」のコマンドメニューが表示される。メニュー上のクラスチェンジするアイテムを使用すると、戦闘画面の設定がオンマップであってもトップビューのマップ画面から自動的にサイドビューのクラスチェンジの場面に切り替わる。
 クラスチェンジ場面では、サイドビューの視点によりクラスチェンジをする当該ユニットを現在の兵種での服装(及び乗り物)で画面中央に左向きの影像で表現し、画面下段は黒背景として、その右半分に、自軍ユニットの名前等を青色系の枠内に影像表示する。
 次に、自軍ユニットは強い光に照らされるように明るく表現され、ユニットを照らすような光が徐々に弱くなると、やがてクラスチェンジしたユニットがクラスチェンジ後の兵種での服装(及び乗り物)の姿に切り替わり、体の向きも当初とは逆の右向きになった影像で表現される。
 クラスチェンジがこのようにして完了すると、長方形状の枠が表示され、枠内の左端に当該自軍ユニットの右斜め前向きのバストアップの影像を、その影像の横には当該ユニットのクラスチェンジ後の戦闘能力パラメータを影像表示する。
 クラスチェンジによって、パラメータがアップする場合には、上昇したパラメータの右に上昇した数値が「+」マークと上昇したことを表す効果音とともに跳ね上がるように表現されると同時に、パラメータの値がクラスチェンジ前の値からクラスチェンジ後の値へと変化する。
 クラスチェンジの場面が終了すると、当該ユニットの当該自軍ターンでの行動は終了となり、トップビューのマップ場面に再び切り替わる。当該ユニットは行動が終了となったことを示すために移動先の位置で、クラスチェンジ後の所定の待機ポーズに切り替わって変化し、当該ユニットの全身が暗系色に変わる。
(15) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(キ)マップクリア後に主人公がクラスチェンジする場面]の表現
 両ゲームに共通する、マップクリア後に主人公がクラスチェンジする場面の表現は、以下のとおりである。
 特定の章において、自軍ユニットが敵軍のボスとの戦闘を行って敵軍ボスを死亡させた後に、主人公をカーソルにより選択し、カーソルを敵軍ボスがいた「玉座」(トラキアの場合。被控訴人ゲームの場合は「玉座」又は「拠点」。)に合わせて移動先を決定すると、マップ上をトップビューのアニメーション手法の表現で、主人公が桝目の上を動く動作によって、移動音をともなって駆け足で移動する。主人公が移動先に移動すると、移動後のメニューが自動的に影像表示される。このクリア条件を充足すると、移動後のメニューには「制圧」コマンドが表示され、この「制圧」コマンドを選択すると、当該マップはマップクリアになる。「制圧」コマンドを選択すると自動的にトップビューのマップ場面からマップクリア後の会話場面に場面が切り替わる。この会話場面が終了すると、画面が切り替わり、サイドビューにより表現された、クラスチェンジの場面となる。
 クラスチェンジ場面では、サイドビューの視点によって、クラスチェンジをする主人公をそのときの主人公専用兵種の服装で画面中央に左向きの影像で表現し、画面下段は黒背景として、その右半分に、主人公の名前等を青色系の枠内に影像表示する。
 次に、主人公は強い光に照らされるように明るく表現され、主人公を照らすような光が徐々に弱くなると、やがてクラスチェンジした主人公が、クラスチェンジ後の兵種の服装の姿に切り替わり、体の向きも当初とは逆の右向きになった影像で表現される。
 クラスチェンジがこのようにして完了すると、長方形状の枠が表示され、枠内の左端に主人公の右斜め前向きのバストアップの影像を、そのバストアップ影像の横には主人公のクラスチェンジ後の戦闘能力パラメータを影像表示する。
 クラスチェンジによって、上昇したパラメータの右に上昇した数値が「+」マークと上昇を表す効果音とともに、跳ね上がるように表現されると同時に、パラメータの値がクラスチェンジ前の値からクラスチェンジ後の値へと影像が変化する。全ての上昇パラメータの表現をもって、マップクリア後のクラスチェンジの場面は終了し、次の場面に切り替わる。
(16) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ク)闘技場の場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、闘技場が影像表現されているマップでは、自軍において自軍ユニットを行動させるときに、当該ユニットの移動可能な範囲内に闘技場がある場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させるときに、単に待機や攻撃をするのではなく、移動させて闘技場で対戦させて行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する、ユニットを移動させて闘技場で対戦させる場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上でプレイヤーがカギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中には上段に当該ユニットの名前と下段に当該ユニットのHPが影像表現される。HPは、その分母にユニットが持つ最大値を、分子に現在値を表示している。
 次に、プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きの影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 当該ユニットの移動範囲内に古代ローマの闘技場のごとき外観の闘技場がトップビューで影像表現されている場合に、プレイヤーはカーソルを闘技場の上へ移動させて決定すると、選択された当該自軍ユニットが人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、桝目の上を動く動作によって闘技場の上へ、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて当該ユニットが闘技場へ移動する。
 自軍ユニットが移動すると、闘技場をコマンドとして記載している移動後のメニューが表示される。この移動後のメニューにおいて闘技場を選択すると、トップビューのマップ画面から自動的に闘技場の場面に切り替わる。
 コマンドのメニューで闘技場を選択すると、連続したアーチ構造をもつ古代ローマの闘技場の建物のサイドビューによる外観と、いかつい顔をした闘技場の「おやじ」の顔の影像と吹出しが影像表現され、吹出しの枠内には「おやじ」の言葉が文字で表示される。次に、現在の所持金と賭金が表示され、戦うかどうかの選択を問う「おやじ」の言葉が吹出し内に文字で表示される。次に、プレイヤーが戦うことを選択すると、対戦相手のデータ等がさらに枠内に(トラキアの場合。被控訴人ゲームの場合は、ステータス画面として。)影像表示される。この影像表示により、対戦相手の能力が、プレイヤーに判明する。続いて、闘技場の「おやじ」の言葉として、戦闘を中止したい場合は、操作ボタンを押すことにより戦闘を中断することができることが吹出しの中に文字で表示される。次に、闘技場の外観の場面から真っ黒な画面に切り替わり、その後にサイドビューで表現されたアーチ状の柱が並ぶ闘技場内を背景として、サイドビューの表現によるアニメーション切替戦闘の場面となる。アニメーション切替戦闘では、サイドビューで右側に自軍のユニットが、左側に対戦相手ユニットが、人間に近い頭身比で、西洋中世風の衣装をつけたものとして影像表現される。切替戦闘シーンは、一対一での戦闘影像をリアルなアニメーション影像で表現し、画面の下方には、自軍ユニットの名前、武器、攻撃能力等が右側の青色系の欄内に、対戦相手ユニットの名前、武器、攻撃能力等が左側の赤色系の欄内に、それぞれ影像表示されている。また、各ユニットのHPは、棒グラフ(長方形状のHPの値1に対して1目盛りずつ区切られたもの)と数値で影像表示され、ダメージを受けた場合には棒グラフが減じる影像表現となっている。
 戦闘は、基本的にどちらかが死亡するか、プレイヤーがキャンセルのためのボタンを操作するまで続けられる。この対戦は、使用した武器に特有のリアルな効果音(剣を振り下ろす音、弓を引き絞って矢を放つ音等)とともに、武器の軌跡が白く表現される。
 攻撃を受けたユニットがダメージを受けなかった場合は、ダメージを受けなかった乾いた金属音のような効果音とともに、攻撃を受けたユニットはそのままの影像で表現され、HPの棒グラフにも変化はない。しかしながら、攻撃を受けたユニットがダメージを受けた場合は、当該ダメージを受けたユニットはそのままのポーズでダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPを示す棒グラフと数値が減少して、ダメージをどれだけ受けたかを表現する。また、攻撃を受けたユニットに攻撃が当たらなかった場合には、攻撃を避ける動きを影像表現しており、HPの棒グラフと数値は変化しない影像表現となっている。対戦相手ユニットのHPを0にすることに成功した場合には、対戦相手ユニットの影像が徐々に半透明になって消滅の効果音とともに消えてゆき、対戦相手ユニットが死亡したことを影像表現する。
 対戦が終了し、自軍ユニットが生き残った場合には、自動的に経験値が付与される場面となり、対戦によって獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、当該ユニットが対戦によって経験値を獲得して成長したことが影像表現される。経験値が加算される時には、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 対戦が終了すると、自動的に古代ローマの闘技場の外観と闘技場の「おやじ」の影像に場面が切り替わり、「おやじ」の言葉として獲得した賞金額が吹出しの内に文字で表現され、獲得賞金が所持金に加算された所持金額を別の横長の枠の中に影像表示する。
 闘技場の場面が終了すると、トップビューの戦闘マップの場面に自動的に切り替わり、ユニットの行動が終了し、当該ユニットの影像はマップ上のトップビューであらわされた古代ローマ風の闘技場の上の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 なお、闘技場に入って、「おやじ」に戦うかどうかの選択を問われて、戦わずに闘技場を出た場合には、行動を終了したことにはならず、もう一度行動をし直すことができる表現となっており、もう一度闘技場に入ることもできる。
<自軍ユニットの死亡>
 闘技場内の対戦で自軍ユニットが対戦相手の攻撃によりダメージを受け、ダメージを受けた効果音とともに白く光り、次いで自軍ユニットが死亡したことが棒グラフで示されていたHPが0まで減ったことによって影像表現されると、自動的に死にセリフの場面に切り替わる。死亡判断と死にセリフの場面の表現の詳細は前記(12)で述べたとおりである。死亡した自軍ユニットは、以降は影像表示されない。かかる死亡した自軍ユニットは二度と登場しないとの影像表現をとることにより、死亡したユニットは生き返らないことを影像表現している。
 自軍ユニットが死亡した場合には、当該自軍ユニットなしでゲームを続行するか、あるいはリセットしてゲームをし直すかをプレイヤーは選択することができる。ゲームを続行する場合は当該死亡ユニットの行動は死にセリフ場面をもって終了し、トップビューのマップ場面に切り替わったときに、当該ユニットが戦闘を開始した位置に、当該ユニットはもはや影像表現されない。
<主人公の死亡>
 また、闘技場での対戦中に、主人公が対戦相手ユニットの攻撃を受けることによりダメージを受け、ダメージを受けた効果音とともに白く光り、次いで主人公が死亡したことが、棒グラフで示されていたHPが0まで減ったことによって影像表現されると、自動的に主人公の死亡によるゲームオーバーの場面に切り替わる。主人公の死亡によるゲームオーバーの場面の表現の詳細は前記(13)で述べたとおりである。ゲームはここで終了し、プレイヤーはゲームをし直すことになる。
(17) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ケ)秘密の店の場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、特殊な条件として設定したアイテムを持った自軍ユニットのみが入れる秘密の店を影像表現している。秘密の店は、武器屋、道具屋の建物とは異なった表現としてあって、店だとはわからないような表現をしている。秘密の店のあるマップでは、特殊な条件として設定したアイテム(トラキアの場合は「メンバーカード」、被控訴人ゲームの場合は「ギルドのカギ」。)を持った自軍ユニットがいる場合のみに、自軍ターンのときに当該ユニットを移動させて、秘密の店に入らせて珍しいアイテム等を売買して行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する秘密の店の場面の表現は、以下のとおりである。
 プレイヤーがカギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている自軍ユニット(特殊な条件として設定した上記アイテムを所持している)に合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中には上段に当該ユニットの名前と下段に当該ユニットのHPが影像表現される。HPは、その分母にユニットが持つ最大値を、分子に現在値を表示している。
 次に、プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きの影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 当該ユニットの移動範囲内に秘密の店がある場合に、プレイヤーはカーソルを秘密の店のある地形の上へ移動させてユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択された当該自軍ユニットが、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、桝目の上を動く動作によって秘密の店の上へ、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、アニメーション手法により影像表現される。当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると自動的に表示される移動後のメニューには、この場合のみメニュー上に「秘密店」(トラキアの場合。被控訴人ゲームの場合は「訪ねる」。)コマンドが表示されるので、このコマンドを選択する。このコマンドを選択すると、トップビューのマップ画面から秘密の店の店内の影像となり、秘密の店の主人の顔と吹出し、所持金と在庫している珍しいアイテムとその価格のリスト表が表示され、吹出し内に主人の言葉が文字表示され、「買う」か「売る」かの選択文字が表示される。「買う」コマンドを選択して、カーソルを操作して、欲しい珍しいアイテムを選択すると、主人のそれでいいのかどうかを尋ねる言葉が吹出しの内に文字で表示され、吹出し枠内の「はい」を選択すると、所持金からアイテムの代金が差し引かれた残金額が影像表示される。続いて、主人の他に欲しいアイテムがあるかと尋ねる言葉が吹出し内の文字で表示され、操作ボタンを押してキャンセルすると、主人がさらに他にも用があるかどうかを尋ね、「買う」「売る」のコマンドを影像表示する。続いて、操作ボタンを押して「ピッ」というコマンドキャンセル音を伴ってキャンセルすると、秘密の店の主人のまた来て欲しい、との言葉が吹出し内の文字で表示され、秘密の店の場面が終了する。
 秘密の店の場面が終了すると自動的にトップビューのマップ画面に切り替わり、当該ユニットは当該自軍ターンでの行動を終え、秘密の店の上の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、色が暗系色に変わる。
 なお、秘密の店に入って、売買せずに秘密の店を出ると、行動を終了したことにならず、もう一度行動をし直すことができる。
(18) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(コ)「制圧」コマンドによるマップクリアの場面]の表現
 両ゲームに共通する、「制圧」コマンドによるマップクリアの場面の表現は、以下のとおりである。
 主人公による「制圧」コマンドの選択がマップクリア条件となっているマップにおいて、自軍ユニットが敵軍ボスとの戦闘を行って敵軍ボスを死亡させた後に、主人公をカーソルにより選択し、続いてカーソルを敵軍ボスが居た城内の玉座等の「制圧」できる所定の場所に合わせて移動先を決定すると、トップビューのマップ上を主人公が移動する。主人公が、マップ上をトップビューの影像で、上に移動する場合は後ろ姿でマントをなびかせる等して、移動の効果音とともに駆け足で移動する様子が、アニメーション手法で表現されて、移動先へ移動する。主人公が所定の移動位置に、桝目の上を動く動作によって到達すると、自軍ユニット移動後のメニューが自動的に影像表示される。そして、以上のクリア条件を充足した場合にのみ、移動後のメニューに「制圧」コマンドが表示される。この「制圧」コマンドを選択すると、当該マップのクリアとなり、当該マップは終了する。
(19) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(サ)ペガサスに乗る場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンである自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットがペガサスに乗れる兵種のユニット(女性)で、かつ、ペガサスから降りた状態で当該戦闘マップ上で影像表現されている場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させてペガサスに乗せることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通するペガサスに乗る場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上においてペガサスに乗れるユニットが、ペガサスから降りた状態で、斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットの行動のときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該自軍ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択された当該自軍ユニット(女性)が、人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風のマントを翻し、剣を持って、桝目の上を動く動作によって駆け出して、タッタッタッという移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現される。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、ペガサスに乗れるユニットが、ペガサスから降りた状態で移動した場合には、「のる」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「のる」コマンドを選択すると、当該自軍ユニットの影像は移動先のその場で、ペガサスに乗れる女性騎士がペガサスに乗った影像に切り替わり、ペガサスが移動先の空中で翼を羽ばたかせている状態がトップビューのアニメーション手法によって影像表現される。地上には、空中で羽ばたくペガサスの黒い影が表現されている。
 この状態で、移動後のメニューの「待機」コマンドを選択すると、当該自軍ペガサスユニットは、ペガサスに乗った状態で移動先の位置に着陸して行動を終了し、ペガサスユニットのペガサスに乗ったときの待機ポーズであるところの、ペガサスが翼をたたんで斜め前を向いた待機ポーズに影像が切り替わって変化し、当該ユニットの行動が終了したことを示すためにペガサスに乗ったペガサスユニット全体の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 なお、戦闘マップでペガサスが飛翔できない屋内や祭壇等の場合には、ペガサスから降りた状態のペガサスユニットが移動して移動後のメニューが影像表示されても、「のる」コマンドは影像表示されず、ペガサスに乗ることができない影像表現となっている。
(20) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(シ)ペガサスから降りる場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで自軍のペガサスユニットを行動させるときに、プレイヤーは単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させてペガサスから降ろすことにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通するペガサスから降りる場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上において、カギ括弧形状を4つ組み合わせて、フワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、翼をたたんで斜め前を向いているペガサスに女性騎士が騎乗している影像で表現される待機ポーズをとっているペガサスユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該ペガサスユニットはその場でペガサスが空中で大きな羽を羽ばたかせて飛翔する動きの影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてペガサスユニットの移動先を指定し操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択されたペガサスユニット(女性騎士)が翼を大きく羽ばたかせて空中を飛翔するペガサスに騎乗して、移動先に桝目の上を動く動作によって、バサバサと風を切る効果音とともに飛んでゆく様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、アニメーション手法によりトップビューの影像で表現される。
 当該ペガサスユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、ペガサスユニットがペガサスに騎乗した状態で移動した場合には、「おりる」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 影像表示された移動後のメニューに記載されている「おりる」コマンドを選択すると、ペガサスユニットの影像は移動先のその場でペガサスから降りた単なる西洋中世風の衣装をつけて剣を持った女性騎士の人物影像に切り替わり、女性騎士がその場での駆け出し運動をしている状態がアニメーション手法によって影像表現される。
 この状態で、移動後のメニューの「待機」コマンドを選択すると、当該自軍ユニットはペガサスから降りた状態で行動を終了し、当該ユニットのペガサスから降りたときの斜め前向きの待機ポーズに影像が切り替わって変化し、当該ユニットの行動が終了したことを示すためにユニットの全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(21) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ス)ドラゴンに乗る場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンである自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットがドラゴンに乗れる兵種のユニットで、かつドラゴンから降りた状態で当該戦闘マップ上で影像表現されている場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させてドラゴンに乗せることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通するドラゴンに乗る場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上においてドラゴンに乗れるユニットがドラゴンから降りた状態で斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットの行動のときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該自軍ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択したユニットが移動することが可能な範囲を背景とは異なる色の半透明な桝目で表現しかつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目を半透明な黄色で影像表現する。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択された当該自軍ユニットが、人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風の衣装をつけ、剣を持って、桝目の上を動く動作によって駆け出し、タッタッタッという移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現される。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、ドラゴンに乗れるユニットがドラゴンから降りた状態で移動した場合には、「のる」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「のる」コマンドを選択すると、当該自軍ユニットの影像は移動先のその場で、ドラゴンに乗れる兵種のユニットがドラゴンに乗った影像に切り替わり、ドラゴンが移動先の空中で翼を羽ばたかせている状態がトップビューのアニメーション手法によって影像表現される。地上には、空中で羽ばたくドラゴンの黒い影が表現されている。
 この状態で、移動後のメニューの「待機」コマンドを選択すると、当該自軍ドラゴンユニットはドラゴンに乗った状態で移動先の位置に着陸して行動を終了し、ドラゴンユニットのドラゴンに乗ったときの待機ポーズであるところの、ドラゴンが翼をたたんで斜め前を向いた待機ポーズに影像が切り替わって変化し、当該ユニットの行動が終了したことを示すためにドラゴンに乗ったドラゴンユニット全体の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 なお、戦闘マップでドラゴンが飛翔できない屋内や祭壇等の場合には、ドラゴンから降りた状態のドラゴンユニットが移動して移動後のメニューが影像表示されても、「のる」コマンドは影像表示されず、ドラゴンに乗ることができない影像表現となっている。
(22) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(セ)ドラゴンから降りる場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで自軍のドラゴンユニットを行動させるときに、プレイヤーは単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させてドラゴンから降ろすことにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通するドラゴンから降りる場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上において、カギ括弧形状を4つ組み合わせて、フワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、ドラゴンが翼をたたんで斜め前を向いている影像で表現される待機ポーズをとっているドラゴンユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該ドラゴンユニットはその場でドラゴンが空中で大きな羽を羽ばたかせて飛翔する動きの影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてドラゴンユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択されたドラゴンユニットが翼を大きく羽ばたかせて空中を飛翔するドラゴンに騎乗して、桝目の上を動く動作によって、バサバサと風を切る効果音とともに移動先に飛んでゆく様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、アニメーション手法によりトップビューの影像で表現される。
 当該ドラゴンユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該ドラゴンユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、ドラゴンユニットがドラゴンに騎乗した状態で移動した場合には、「おりる」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 影像表示された移動後のメニューに記載されている「おりる」コマンドを選択すると、ドラゴンユニットの影像は移動先のその場でドラゴンから降りた単なる西洋中世風の衣装をつけて剣を持った人物影像に切り替わり、当該ユニットがその場での駆け出し運動をしている状態がアニメーション手法によって影像表現される。
 この状態で、移動後のメニューの「待機」コマンドを選択すると、当該自軍ユニットはドラゴンから降りた状態で行動を終了し、当該ユニットのドラゴンから降りたときの斜め前向きの待機ポーズに影像が切り替わって変化し、当該ユニットの行動が終了したことを示すためにユニットの全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(23) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ソ)馬に乗る場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンである自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットが馬に乗れる兵種のユニットで、かつ馬から降りた状態で当該戦闘マップ上で影像表現されている場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて馬に乗せることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する馬に乗る場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上において馬に乗れるユニットが馬から降りた状態で斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットの行動のときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該自軍ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択された当該自軍ユニットが人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風の衣装をつけ、剣を持って桝目の上を動く動作によって駆け出し、タッタッタッという移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現される。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、馬に乗れるユニットが馬から降りた状態で移動した場合には、「のる」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「のる」コマンドを選択すると、当該自軍ユニットの影像は移動先のその場で、馬に乗れる兵種のユニットが馬に乗った馬ユニットの影像に切り替わり、馬に乗って移動先でギャロップをしている状態がトップビューのアニメーション手法によって影像表現される。
 この状態で、移動後のメニューの「待機」コマンドを選択すると、当該自軍馬ユニットは馬に乗った状態で行動を終了し、馬に騎乗して斜め前を向いた待機ポーズに影像が切り替わって変化し、当該ユニットの行動が終了したことを示すために馬に乗った馬ユニット全体の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 なお、戦闘マップで屋内や祭壇等の場合には、馬から降りた状態の馬ユニットが移動して移動後のメニューが影像表示されても、「のる」コマンドは影像表示されず、馬に乗ることができない影像表現となっている。
(24) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(タ)馬から降りる場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで自軍の馬ユニットを行動させるときに、プレイヤーは単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて馬から降りさせることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する馬から降りる場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上において、カギ括弧形状を4つ組み合わせて、フワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、馬に騎乗して斜め前を向いた待機ポーズをとっている馬ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該馬ユニットはその場でギャロップをしている動きの影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて馬ユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、選択された馬ユニットが、馬に乗って移動先へ桝目の上を動く動作によって馬を走らせ、地を蹴る移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、アニメーション手法によりトップビューの影像で表現される。
 当該馬ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該馬ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、馬ユニットが馬に騎乗した状態で移動した場合には、「おりる」のコマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 影像表示された移動後のメニューに記載されている「おりる」コマンドを選択すると、馬ユニットの影像は移動先のその場で馬から降りた単なる西洋中世風の衣装をつけて剣を持った人物影像に切り替わり、当該ユニットがその場での駆け出し運動をしている状態がアニメーション手法によって影像表現される。
 この状態で、移動後のメニューの「待機」コマンドを選択すると、当該自軍ユニットは馬から降りた状態で行動を終了し、当該ユニットの馬から降りたときの斜め前向きの待機ポーズに影像が切り替わって変化し、当該ユニットの行動が終了したことを示すためにユニットの全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(25) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(チ)ユニット間の会話で寝返る場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンにおいて、ある自軍ユニットを行動させるときに、マップ画面上に話して仲間にできる(寝返る)敵軍ユニットが影像表現されている場合には、プレイヤーは、自軍ユニットを単に待機又は攻撃させるのではなく、当該敵軍ユニットと話をさせて、当該敵軍ユニットを自軍に寝返らせることにより、当該自軍ユニットの行動を終了させることができる。敵軍ユニットによっては、特定の自軍ユニットが話しかけないと寝返らないが、その場合は当該特定自軍ユニット以外には「話す」コマンドが表示されない。
 両ゲームに共通する、自軍ユニットを敵軍ユニットに話しをさせて、敵軍ユニットを寝返らせる場合の影像表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上に敵軍ユニットであってかつ話して仲間にできる(寝返る)ユニットが影像表現されており、自軍のユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしているとき、当該ユニットを行動させるために、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを待機ポーズをしている当該ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該ユニットはその場動きの運動の影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を当該ユニットの移動範囲内であって、さらに敵軍ユニット(カーソルを合わせたときの吹出しは赤色系)であってかつ話して仲間にできる(寝返る)ユニットの隣りに指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該自軍ユニットが、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現され、話して仲間にできる(寝返る)敵軍ユニットの隣りへ移動する。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該自軍ユニットが選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、当該自軍ユニットが敵軍ユニットであってかつ話して仲間にできる(寝返る)ユニットの隣りに移動した場合には、「話す」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「話す」コマンドを選択して操作ボタンを押すと、話す相手をカーソルで選択する場面となり、カーソルを合わせた隣接している相手方の名前、HP等がメニューに表示される。プレイヤーがボタンを押して話しをする相手方を選択すると、トップビューのマップ場面から会話場面に切り替わり、会話をする人物2人のバストアップの影像が、画面の左右に表現される。両者の会話用の吹出しが、横に長い長方形状の吹出しとして表現され、吹出し内に会話内容が文字で表示される(この会話場面は、スタートボタンを押すことによりキャンセルして、次の場面へ直ちに飛ぶことが可能である。)。
 会話場面が終了すると、トップビューの元のマップ画面に画面が切り替わる。両者のマップ上の位置関係は、「話す」コマンドを選択したときと同位置である。寝返って仲間になった自軍ユニットにカーソルを合わせたときに表示される吹出しは、以降は、青色系の自軍の色に変化する。つまり、当該青色系の吹出しの中に当該ユニットの名前とHPが影像表現されることによって、寝返って仲間になったことが表示される。行動を終了した当該自軍ユニットの影像は、トップビューのマップ上で、行動が終了したことを示すために、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに影像が切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(26) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ツ)ユニット間の会話で仲間になる場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、マップ画面上に話して仲間にできるユニット(自軍でもなく、敵軍でもない中立のユニット)が影像表現されている場合には、プレイヤーは、自軍ユニットを単に待機又は攻撃させるのではなく、当該ユニットと話をさせて仲間にすることにより、当該自軍ユニットの行動を終了させることができる。相手方のユニットによっては、特定の自軍ユニットが話しかけないと仲間にならないが、その場合は当該特定自軍ユニット以外には「話す」コマンドが表示されない。
 両ゲームに共通する、自軍ユニットに会話をさせて、相手方ユニットを仲間にする場合の影像表現は、以下のとおりである。
 話して仲間にできる中立のユニット(カーソルを合わせたときの吹出しは自軍の青色系でもなく、敵軍の赤色系でもなく、緑色である)が影像表現されている戦闘マップ上において、自軍のユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該自軍ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを待機ポーズをしている当該自軍ユニットに合わせると、自動的に当該自軍ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該自軍ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該自軍ユニットはその場動きの運動の影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を当該自軍ユニットの移動範囲内であって、さらに話して仲間にできるユニットの隣りに指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該自軍ユニットが、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現され、話して仲間にできるユニットの隣りへ移動する。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、自軍ユニットが話して仲間にできるユニットの隣りに移動した場合には、「話す」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「話す」コマンドを選択して操作ボタンを押すと、話す相手をカーソルで選択する場面となり、カーソルを合わせた隣接している相手方の名前、HP等がメニューに表示される。プレイヤーがボタンを押して話をする相手方を選択すると、トップビューのマップ場面から会話場面に切り替わり、会話をする人物2人のバストアップの影像が、画面の左右に表現される。両者の会話用の吹出しが、横に長い長方形状の吹出しとして表現され、吹出し内に会話内容が文字で表示される(この会話場面は、スタートボタンを押すことによりキャンセルして、次の場面へ直ちに飛ぶことが可能である。)。
 会話場面が終了すると、次の場面であるトップビューの元のマップ画面に切り替わる。両者のマップ上の位置関係は、「話す」コマンドを選択したときと同位置である。仲間になった自軍ユニットにカーソルを合わせたときに表示される吹出しは、以降は青色系の自軍の色に変化する。つまり、当該青色系の吹出しの中に当該ユニットの名前とHPが影像表現されることにより、仲間になったことが表示される。行動を終了した当該自軍ユニットの影像は、トップビューのマップ上で、行動が終了したことを示すために、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに影像が切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(27) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(テ)武器屋の場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、武器屋が影像表現されているマップでは、プレイヤーは自軍ターンのときに当該ユニットを武器屋に移動させて、武器屋に入らせて武器等を売買して行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する武器屋の場面の表現は、以下のとおりである。
 プレイヤーがカギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中には上段に当該ユニットの名前と下段に当該ユニットのHPが影像表現される。HPは、その分母にユニットが持つ最大値を、分子に現在値を表示している。
 次に、プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きの影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 当該ユニットの移動範囲内にトップビューで民家とは異なった四角く中央がへこみ、周りが少し高い壁となっており、壁は西洋中世の城のように四角いでこぼこが並んだ屋根をもった四角い建物として影像表現されている武器屋がある場合に、プレイヤーはカーソルを武器屋の上へ移動させてユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該自軍ユニットが、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、桝目の上を動く動作によって武器屋の上へ、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現され、当該ユニットが移動先である武器屋へ移動する。 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると自動的に表示される移動後のメニューには、この場合のみメニュー上に武器屋のコマンドが表示されるので、このコマンドを選択する。このコマンドを選択すると、トップビューのマップ画面から自動的に武器屋の店内の影像に切り替わり、武器屋の主人の顔と吹出し、所持金と在庫している武器とその価格のリスト表が表示され、吹出し内に主人の言葉が文字表示され、「買う」か「売る」かの選択文字が表示される。「買う」コマンドを選択して、カーソルを操作して、欲しい武器を選択すると、主人のそれでいいのかどうかを尋ねる言葉が吹出しの内に文字で表示され、吹出し枠内の「はい」を選択すると、所持金から武器の代金が差し引かれた残金額が影像表示される。続いて、主人の他に欲しい武器があるかと尋ねる言葉が吹出し内の文字で表示され、操作ボタンを押してキャンセルすると、主人がさらに他にも用があるかどうかを尋ね、「買う」「売る」のコマンドを影像表示する。続いて、操作ボタンを押して「ピッ」というキャンセル音とともにキャンセルすると、武器屋の主人のありがとうまた来てくれとの言葉が吹出し内の文字で表示され、武器屋の場面が終了する。
 武器屋の場面が終了すると自動的にトップビューのマップ画面に切り替わり、当該ユニットは当該自軍ターンでの行動を終え、武器屋の上の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変わる。
 なお、武器屋に入って、売買をせずに武器屋を出ると、行動を終了したことにはならず、もう一度行動をし直すことができる表現となっている。
(28) トラキアの「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の「(ト)道具屋の場面」の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、道具屋が影像表現されているマップでは、プレイヤーは自軍ターンのときに当該ユニットを道具屋に移動させて、道具屋に入らせて道具等を売買して行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する道具屋の場面の表現は、以下のとおりである。
 プレイヤーがカギ括弧形状を4つ組み合わせてなるフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている自軍ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中には上段に当該ユニットの名前と下段に当該ユニットのHPが影像表現され、HPは、その分母にユニットが持つ最大値を、分子に現在値を表示している。
 次に、プレイヤーが自軍ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、自軍ユニットは自動的にその場動きの影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 当該ユニットの移動範囲内に民家とは異なった白い四角の枠がはまった屋根の建物としてトップビューで影像表現されている道具屋がある場合に、プレイヤーはカーソルを道具屋の上へ移動させてユニットの移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該自軍ユニットが、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、桝目の上を動く動作によって道具屋の上へ、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、当該ユニットが移動先である道具屋へ移動する。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると自動的に表示される移動後のメニューには、この場合のみメニュー上に道具屋のコマンドが表示されるので、このコマンドを選択する。このコマンドを選択すると、トップビューのマップ画面から自動的に道具屋の店内の影像に切り替わり、道具屋の主人の顔と吹出し、所持金と在庫している道具等とその価格のリスト表が表示され、吹出し内に主人の言葉が文字表示され、「買う」か「売る」かの選択文字が表示される。「買う」コマンドを選択して、カーソルを操作して、欲しい道具等を選択すると、主人がそれでいいのかどうかを尋ねる言葉が吹出しの内に文字で表示され、吹出し枠内の「はい」を選択すると、所持金から道具等の代金が差し引かれた残金額が影像表示される。続いて、主人が他に欲しい道具等があるかと尋ねる言葉が吹出し内の文字で表示され、操作ボタンを押してキャンセルすると、さらに他にも用があるかどうか尋ね、「買う」「売る」のコマンドを影像表示する。続いて、操作ボタンを押して「ピッ」というキャンセル音とともにキャンセルすると、道具屋の主人のまた来てくれとの言葉が吹出し内の文字で表示され、道具屋の場面が終了する。
 道具屋の場面が終了すると自動的にトップビューのマップ画面に切り替わり、当該ユニットは当該自軍ターンでの行動を終え、道具屋の上の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変わる。
 なお、道具屋に入って、売買をせずに道具屋を出ると、行動を終了したことにはならず、もう一度行動をし直すことができる表現となっている。
(29) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ナ)縮小マップの場面]の表現
 両ゲームに共通する縮小マップの表現は、以下のとおりである。
 トップビューの戦闘マップ上において、戦闘マップの一面が画面サイズより大きく、一画面だけでは戦闘マップの状況を把握できないときに、戦闘マップの一面全体の地形や自軍及び敵軍のユニットの配置を確認するために、プレイヤーが操作ボタンを押すと、マップ画面上に縮小マップが重なって表示される。
 縮小マップ上に表示されるカーソルは、画面上で背景として表現されている戦闘マップが、縮小マップ上において占めている位置関係を表現している。このカーソルを上下左右に移動させると、縮小マップの背景として表現されている画面上の戦闘マップが、カーソルの動きに合わせて画面上でスクロールして表現される。プレイヤーが操作ボタンを押すと、縮小マップの影像表現は一瞬にして消滅し、元のトップビューの戦闘マップ影像が表現される。
(30) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ニ)ユニット一覧の場面]の表現
 両ゲームに共通するユニット一覧の表現は、以下のとおりである。
 トップビューの戦闘マップ上において、プレイヤーが当該自軍ターンにおいて行動させる自軍ユニットの経験値、HP、装備武器等を確認する場合に、トップビューの戦闘マップ上において、カーソルの位置にユニットが存在していない状態で、プレイヤーが操作ボタンを押すと、戦闘マップ画面上にメインメニューが、メインメニュー表示音とともに表示される。次いで、メインメニューの最上段に記載されている「部隊」(トラキアの場合。被控訴人ゲームの場合は「ユニット」。)コマンドを選択すると、ユニット一覧が表示される。
 ユニット一覧には左端に縦列に当該戦闘マップに登場している自軍ユニット名が記載されており、当該ユニットの横には順にクラス(兵種)、LV、経験値、HP(最大値と現在値)等が表示されている。
 ユニット一覧は、ユニット名は固定して表示したままで、操作ボタンを押す操作によって画面上の横方向の項目を順次切り換えて表現するものとなっており、横方向の最後の項目はスキル(ユニットの持つ特殊な能力)をアイコンで表現している。
 また、方向キーの上下でユニットを選択して、操作ボタンを押すと、一瞬にしてユニット一覧表は消え、戦闘マップ画面に切り替わり、場合によっては、戦闘マップがスクロールすることにより、ユニット一覧表で選択されたユニットにカーソルが合わされ、吹出しが影像表示される。
(31) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ヌ)杖を使って相手をワープさせる場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットが杖を使える杖ユニットであり、「ワープの杖」(トラキアの場合。被控訴人ゲームでは「てんそうの杖」。以下同様。)を所持している場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させるときに、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて「ワープの杖」を使わせることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する自軍ユニットに「ワープの杖」を使わせる場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上において杖を使えるユニット(「ワープの杖」を所持)が斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該杖ユニットに合わせると、自動的に当該杖ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該杖ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該杖ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該杖ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択した杖ユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて杖ユニットの移動先を当該杖ユニットの移動範囲内でかつ自軍ユニットと隣接する位置に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該杖ユニットが、人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風の衣装で杖を持っている場合は杖を持って、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現される。
 当該杖ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該杖ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、杖ユニットが移動した場合には、「杖」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「杖」コマンドを選択すると、当該ユニットが使用可能な杖のメニューが自動的に影像表示される。
 杖のメニューから「ワープの杖」を選択すると、次に隣接する自軍ユニットの中からワープさせたい相手をカーソルで選択する場面となり、カーソルを合わせた隣接する自軍ユニットの名前とHPが影像表現される。
 プレイヤーがボタンを押してワープさせる相手を選択すると、ワープさせる場所を選択する場面となる。この場面では、指が四角い枠を下げ持っている形状の特別な指カーソルが影像表示される。この指が四角い枠を下げ持っている形状の特別な指カーソルを移動させて、戦闘マップをスクロールさせる等して、戦闘マップの全域からワープする先を指定する。ワープ先を指定すると、杖を使ってワープさせる場面となり、杖ユニットが「ワープの杖」を使うと、ワープさせる相手が立っている場所が光るようになり、ワープさせる相手はその場から消える影像表現となっている。
 続いて、画面はワープする場面となり、ワープ先に指定した場所にワープさせた相手が現れる。
 そして、画面は、「ワープの杖」を使った杖ユニットに経験値が付与される場面に自動的に切り替わる。
 杖を使って相手をワープさせると、杖ユニットに対する経験値が付与され、経験値が水銀柱のような横棒グラフと数値で影像表示されて、杖を使ったことにより獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、当該杖ユニットが杖を使ったことによって経験値を獲得して成長したことが影像表現される。経験値が加算されるときには、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 経験値を獲得した結果、経験値が100を超えると自動的にレベルアップの場面へ移行する。
 当該自軍ターンでの行動が終了すると、当該杖ユニットの行動が終了したことを表現するために、当該杖ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(32) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ネ)杖を使って相手を回復させる場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットが杖を使える杖ユニットであり、「ライブの杖」(トラキアの場合。被控訴人ゲームでは「いやしの杖」。以下同様。)を所持している場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させるときに、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて「ライブの杖」を使わせることにより、自軍の他のユニットのHPを回復させて、当該杖ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する、自軍ユニットに「ライブの杖」を使わせる場面の表現は、以下のとおりである。
 戦闘マップ上において杖を使えるユニット(「ライブの杖」を所持)が斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該杖ユニットに合わせると、自動的に当該杖ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該杖ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該杖ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該杖ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択した杖ユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて、杖ユニットの移動先を当該杖ユニットの移動範囲内でかつHPが減少している自軍ユニットと隣接する位置に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該杖ユニットが、人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風の衣装で杖を持って、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現される。
 当該杖ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該杖ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、杖ユニットが移動した場合には、「杖」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「杖」コマンドを選択すると、当該ユニットが使用可能な杖のメニューが自動的に影像表示される。
 杖のメニューから「ライブの杖」を選択すると、続いて、隣接する自軍ユニットの中からHPを回復させたい相手をカーソルで選択する場面となり、カーソルを合わせた隣接する自軍ユニットの名前とHPが影像表現される。このときには、カーソルは隣接しかつHPの減少している自軍ユニットのみを指すようになっており、隣接していてもHPが減少していない自軍ユニットをカーソルが指すことはない。
 プレイヤーがボタンを押してHPを回復させる相手を選択すると、HPを回復させる場面となる。
 杖ユニットが杖を使うと、杖ユニットから光る輪が外へ広がり、回復させる相手方ユニットに光の輪がすぼまってゆく影像表現が行われる。
 次いで、HPを回復させられた自軍ユニットのHPが回復して増加したことが、効果音とともに当該ユニットのHPを表す数値と棒グラフが増加したことによって表現される。
 そして、画面は、当該杖ユニットに、経験値が付与される場面に自動的に切り替わる。
 杖を使って相手を回復させると、杖ユニットに対する経験値が付与され、経験値が水銀柱のような横棒グラフと数値で影像表示されて、杖を使ったことにより獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、当該杖ユニットが杖を使ったことによって経験値を獲得して成長したことが影像表現される。経験値が加算される時には、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 経験値を獲得した結果、経験値が100を超えると自動的に既述したレベルアップの場面へ移行する。
 当該自軍ターンでの行動が終了すると、当該杖ユニットの行動が終了したことを表現するために、当該杖ユニットの影像はマップ上の移動後の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(33) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ノ)敵軍ボスの口上の場面]の表現
 両ゲームに共通する敵軍ボスの口上の場面の表現は、以下のとおりである。
 既述した自軍ターンにおける攻撃時に、敵軍のボスユニットが初めて自軍ユニットと戦闘を行う場合には、以下のとおりの敵軍ボス口上の場面が表現される。
 トップビューのマップ上において、自軍ユニットを、当該ユニットの移動可能な範囲内であってかつ敵軍のボスユニットを攻撃可能な範囲に移動させ、移動後のメニューに記載された攻撃コマンドを選択すると、既述のとおり、自動的に武器選択メニューが表示され、武器を選択したのちにカーソルを敵軍のボスユニットに合わせると、当該自軍ユニットと敵軍のボスユニットの戦闘前パラメータが影像表示される。戦闘前パラメータが表示されたのちにプレイヤーが操作ボタンを押すと、トップビューのマップ場面から真っ黒な画面に切り替わり、その後にサイドビューの視点での敵軍のボスユニットと当該自軍ユニットによるアニメーション戦闘場面に切り替わる。
 アニメーション切替戦闘場面では、先ず画面上段において右側に自軍ユニットを、左側に敵軍のボスユニットを、サイドビューで対峙するように影像表現する。画面の下段には、自軍ユニットについては右側の青色系の枠内に、敵軍のボスユニットについては左側の赤色系の枠内に、それぞれ名前、武器、攻撃能力等を影像表示する。また各々のユニットのHPは長方形状の棒グラフと数値で影像表示する。
 次いで、画面下段の青色系枠と赤色系枠の影像が消えて、横長の長方形状の吹出しが影像表現されるとともに当該敵軍のボスユニットの斜め前方を向いた顔の影像が表現され、その吹出しの中に当該敵軍のボスユニットの戦闘を初めて行うに当たっての口上が文字で影像表示される。
 その後、顔影像と吹出しは消えて、画面下段に青色系枠・赤色系枠が再び表現され、画面上段に自軍ユニットと当該敵軍のボスユニットが1対1で対峙しているアニメーション切替戦闘画面に戻り、両者間のアニメーション切替戦闘場面がリアルなアニメーション影像で表現される。
 オンマップバトルにおいても、上記と同様の敵軍のボスユニットの口上の場面が表現される。
(34) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ハ)敵軍ボスの死にセリフの場面]の表現
 両ゲームに共通する「敵軍ボスの死にセリフの場面」の表現は、以下のとおりである。
 既述した自軍ターンにおける攻撃の戦闘中に、基本的に敵軍ユニットは死亡しても死にセリフの場面は表現されないが、敵軍のボスユニットが死亡した場合には、以下のとおりの敵軍ボスの死にセリフの場面が表現される。
 アニメーション切替戦闘中に、画面上段でリアルなアニメーションの手法で表現されている戦闘影像において、敵軍のボスユニットが、ダメージを受け、ダメージを受けた効果音とともに白く光り、次いでユニットのHPが0になったことが画面下段の赤色系枠内の棒グラフと数値によって影像表現されると、敵軍のボスユニットは死亡したものと判断され、戦闘場面から自動的に敵軍ボスの死にセリフの場面に切り替わる。
 死にセリフの場面では画面下段の青色系枠と赤色系枠の影像が消えて、敵軍のボスユニットの斜め前方を向いた顔の影像が表現されるとともに、横長の長方形状の吹出しが影像表現され、その吹出しの中に敵軍のボスユニットの死にセリフの言葉が文字で影像表示される。
 死にセリフの言葉が文字で表示された後、画面の上段に戦闘によって攻撃を受けた状態のままで影像表現されていた敵軍のボスユニットの全身影像は、徐々に半透明となって消えるように影像表現され、最後には消滅の効果音とともに消えてしまう。
 以上の表現が終了すると、敵軍のボスユニットを倒した自軍ユニットに対する経験値が付与される場面となり、経験値が水銀柱のような横棒グラフと数値で影像表示され、戦闘により獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、当該ユニットが戦闘によって経験値を獲得して成長したことが表現される。経験値が加算される時には、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 レベルアップする場合にはレベルアップ場面が表現される。レベルアップしなかったときには経験値付与場面の後に、レベルアップした場合はレベルアップ場面の後に、画面は当初の戦闘マップ画面に切り替わる。マップ場面に切り替わったときに、死亡した敵軍のボスユニットはマップ上の戦闘を開始した位置にもはや影像表現されない。
 また、戦った自軍ユニットは当該自軍ターンでの行動が終了して、当該ユニットの影像はマップ上の攻撃開始時の位置で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
 オンマップバトル中においても、上記と同様の敵軍のボスユニットの死にセリフの場面が表現される。
 敵軍のボスユニットの死にセリフの場面は、敵軍のボスユニットが口上を述べた当該自軍ユニットとの間の戦闘で死亡しなかった場合には、当該マップにおいて敵軍のボスユニットが死亡した他の自軍ユニットとの間の戦闘場面において影像表現される。
(35) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ヒ)民家を訪ねて仲間を増やす場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、マップ画面上にドアが開いており、かつ仲間にできるユニットが中にいる民家が影像表現されている場合には、プレイヤーは当該自軍ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて民家を訪ねて仲間を増やすことにより、当該自軍ユニットの行動を終了させることができる。民家にいるユニットによっては特定のユニットが訪ねないと仲間にならない場合があるが、その場合にはその他のユニットが訪れても民家のドアは閉じられないので、当該特定ユニットの行動のときに、民家を訪ねて仲間を増やすことになるが、その場合の影像表現も以下と全く同じである。
 両ゲームに共通する、自軍ユニットに民家を訪ねさせて仲間を増やす場合の影像表現は、以下のとおりである。
 ドアが開いており、かつ仲間にできるユニットが中にいる民家が影像表現されている戦闘マップ上において、自軍のユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを待機ポーズをしている当該ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該自軍ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該自軍ユニットはその場動きの運動の影像を開始し、また選択した当該自軍ユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて当該自軍ユニットの移動先を当該ユニットの移動範囲内でかつドアが開いており仲間にできるユニットが中にいる民家の上に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該ユニットが、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、移動先であるドアが開いておりかつ仲間にできるユニットが中にいる民家へ移動する。
 当該自軍ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該自軍ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、当該自軍ユニットがドアが開いていて、かつ仲間にできるユニットが中にいる民家に移動した場合には、「訪ねる」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「訪ねる」コマンドを選択して操作ボタンを押すと、トップビューのマップ場面から、民家内での会話の場面に切り替わり、人物影像の下に設けられた横に長い長方形状の吹出し内に、仲間になる旨の会話内容が文字で表示される会話場面が影像表現される(この会話場面は、スタートボタンを押すことによりキャンセルして、次の場面へ直ちに飛ぶことが可能である。)。
 会話場面が終了すると、次の場面であるトップビューの元のマップ画面に画面が切り替わり、新たに仲間になった自軍ユニットが民家の外に出て所定の待機ポーズをしている影像が表現され、以降、新たに仲間になったユニットにカーソルを合わせると青色系の自軍の吹出しが出て、当該青色系の吹出しの中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。かかる影像表現によって仲間になったことが表示される。
 訪ねて新たな仲間ができた民家は、以降は、ドアが閉じた状態に変わって影像表現される。行動を終了した自軍ユニットの影像は、トップビューで、移動先である民家の外に出て民家と重なった位置関係で影像表現され、行動が終了したことを示すために、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに影像が切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(36) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(フ)民家を訪ねてアイテムを得る場面]の表現
 当該自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、マップ画面上にドアが開いており、かつアイテムを得ることができる民家が影像表現されている場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて民家を訪ねてアイテムを入手させることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。民家によっては特定のユニットが訪ねないとアイテムを得られない場合があるが、その場合にはその他のユニットが訪れても民家のドアは閉じられないので、当該特定ユニットの行動のときに、民家を訪ねてアイテムを得させることになるが、その場合の影像表現は以下と全く同じである。
 両ゲームに共通する、自軍ユニットに民家を訪ねてアイテムを得させる場面の表現は、以下のとおりである。
 ドアが開いており、かつアイテムを得ることができる民家が影像表現されている戦闘マップ上において、自軍のユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該ユニットはその場動きの運動の影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を当該ユニットの移動範囲内で、かつドアが開いておりアイテムを得ることができる民家の上に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該ユニットが、人間に近い頭身比で西洋中世風の衣装をつけて武器を持った状態で、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合は空中を飛翔し、馬に乗っている場合は馬を走らせ、乗り物に乗っていない場合は駆け足で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、移動先である、ドアが開いておりかつアイテムを得ることができる民家へ移動する。
 当該ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、ユニットがドアが開いていて、かつアイテムを得ることができる民家に移動した場合には、「訪ねる」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。影像表示された移動後のメニューに記載されている「訪ねる」コマンドを選択して操作ボタンを押すと、トップビューのマップ場面から、民家内での会話の場面に切り替わり、人物影像とともに表現された横に長い長方形状の吹出し内に会話内容が文字で表示される会話場面が影像表現される(この会話場面は、スタートボタンを押すことによりキャンセルして、次の場面へ直ちに飛ぶことが可能である。)。
 会話場面が終了すると、次の場面であるアイテム獲得場面となる。アイテム獲得場面では画面中央に横に長い長方形のウィンドウが表現され、そのウィンドウ中に、獲得したアイテムのアイコン及びアイテム名称並びに当該アイテムを手に入れたという文字が影像表現され、音階が上がる短いファンファーレが鳴り、このウィンドウはしばらくすると自動的に消える。
 自軍ユニットが民家を訪ねてアイテムを得ると、トップビューの元のマップ画面に画面が切り替わるが、訪ねられた民家は、以降は、ドアが閉じた状態に変わって影像表現される。行動を終了した当該ユニットの影像は、トップビューで、移動先である民家の外に出て民家と重なった位置関係で影像表現され、行動が終了したことを示すために、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに影像が切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(37) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ヘ)宝箱を開ける場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、マップ画面上に宝箱が影像表現されておりかつ当該自軍ユニットが宝箱を開けることのできる鍵又は技を持った盗賊ユニットの場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて宝箱を開けることにより、アイテムを入手させて、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する宝箱を開ける場面の表現は、以下のとおりである。
 宝箱が影像表現されている戦闘マップ上において、宝箱を開けることのできる鍵又は技を持った自軍の盗賊ユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該盗賊ユニットに合わせると、自動的に当該盗賊ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該盗賊ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該盗賊ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該盗賊ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択した盗賊ユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて盗賊ユニットの移動先を当該盗賊ユニットの移動範囲内でかつ宝箱の上に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該盗賊ユニットは人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風の衣装をつけて、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、移動先である宝箱の上へ移動する。
 当該盗賊ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該盗賊ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、宝箱を開けることのできる盗賊ユニットが宝箱の上に移動した場合には、宝箱を開けることを意味するコマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 影像表示された移動後のメニューに記載されている当該コマンドを選択して操作ボタンを押すと、当該宝箱が開けられた影像となり、画面中央には横に長い長方形のウィンドウ中に、獲得したアイテムのアイコン及びアイテム名称並びに当該アイテムを手に入れたという文字が影像表現され、音階が上がる短いファンファーレが鳴り、このウィンドウはしばらくすると自動的に消える。
 宝箱を開けてアイテムを入手すると当該ユニットの行動は終了となり、当該ユニットの影像は移動先である宝箱の上で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(38) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ホ)扉を開く場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、マップ画面上に閉まった扉が影像表現されておりかつ当該自軍ユニットが、扉を開ける鍵又は技を持ったユニットである場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて扉を開けることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する扉を開けさせる場面の表現は、以下のとおりである。
 閉まった扉が影像表現されている戦闘マップ上において、扉を開ける鍵又は技を持つ特定の自軍ユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を当該ユニットの移動範囲内でかつ閉まった扉と隣接する位置に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該ユニットは人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風の衣装をつけて、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、移動先である閉まった扉と隣接する位置へ移動する。
 当該ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、閉まった扉と隣接する位置に移動した場合には、「扉」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 影像表示された移動後のメニューに記載されている「扉」コマンドを選択して操作ボタンを押すと、当該扉が開く影像となり、扉が軋むように開く効果音が鳴り、以後、戦闘マップ上では扉が開いている地形に変化する。
 扉が開いた地形に変化するために、扉を開けた以降は、自軍ユニットは、開いた扉を通して自由に出入りすることができるようになる。
 扉を開けると当該ユニットの行動は終了となり、当該ユニットの影像は移動先で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(39) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(マ)跳ね橋を降ろす場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンで、ある自軍ユニットを行動させるときに、マップ画面上に開いている跳ね橋が影像表現されておりかつ当該自軍ユニットが跳ね橋を降ろすことのできる鍵を所持している場合には、プレイヤーは当該ユニットを行動させる際に、単に待機や攻撃をさせるのではなく、移動させて跳ね橋を降ろさせることにより、当該ユニットの行動を終了させることができる。
 両ゲームに共通する跳ね橋を降ろさせる場面の表現は、以下のとおりである。
 横棒を並べたような形状をし、中央から跳ね上がるようにして開いている跳ね橋が影像表現されている戦闘マップ上において、跳ね橋を降ろすことのできる鍵を所持している自軍ユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に、当該ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを、待機ポーズをしている当該ユニットに合わせると、自動的に当該ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に当該ユニットの名前とHPが影像表現される。
 当該ユニットを選択して、カーソルを合わせて操作ボタンを押すと、当該ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択したユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させてユニットの移動先を当該ユニットの移動範囲内でかつ開いている跳ね橋と隣接する位置に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された当該ユニットが、人間に近い頭身比の人物影像で、西洋中世風の衣装をつけて、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向き)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現されて、移動先である開いている跳ね橋と隣接する位置へ移動する。
 当該ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、当該ユニットがコマンド選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示されるが、この場合には開いている跳ね橋と隣接する位置に移動したときに、「跳ね橋」コマンドが含まれた移動後のメニューが自動的に影像表示される。
 影像表示された移動後のメニューに記載されている「跳ね橋」コマンドを選択して操作ボタンを押すと、当該跳ね橋が降ろされる効果音とともに跳ね橋が降りる影像となり、以後、戦闘マップ上では横棒を並べたような形状の跳ね橋が降りている地形に変化する。
 跳ね橋が降りている地形に変化するために、跳ね橋を降ろした以降は、自軍ユニットは、降りた跳ね橋を通して自由に移動することができるようになる。
 跳ね橋を降ろすと当該ユニットの行動は終了となり、当該ユニットの影像は移動先で、行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(40) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ミ)風魔法の場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンにおいて自軍ユニットを行動させるときに、当該自軍のユニットが代表的な魔道士ユニット(トラキアの場合は「アスベル」、被控訴人ゲームの場合は「マルジュ」。)である場合に、プレイヤーが魔道士ユニットを使って攻撃させる際に、武器選択メニューで魔道士専用の風魔法(トラキアのアスベルの場合は「グラフカリバー」、被控訴人ゲームのマルジュの場合は「ウンダーガスト」。)を選択した場合には、両ゲーム共通の以下の表現がなされる。
 戦闘マップ上において魔道士ユニットが斜め前向きの所定の待機ポーズをしている場合に魔道士ユニットを行動させるときに、カギ括弧形状を4つ組み合わせてフワフワと物をつかむような動きをするカーソルを待機ポーズをしている魔道士ユニットに合わせると、自動的に魔道士ユニットに青色系の吹出し形状の影像が表示され、当該吹出し中に魔道士ユニットの名前とHPが影像表現される。吹出しは自軍ユニットの場合は青色系で表現される。
 魔道士ユニットにカーソルを合わせて操作ボタンを押すと、魔道士ユニットはその場での駆け出し運動の影像を開始し、また選択した魔道士ユニットの移動可能範囲が背景とは異なる色の半透明な桝目で表現され、かつ移動可能範囲の外側には相手方を攻撃することが可能な範囲の桝目が半透明な黄色で影像表現される。
 続いて、カーソルを移動させて魔道士ユニットの移動先を、魔道士ユニットの移動範囲内でかつ敵軍ユニットを攻撃できる範囲に指定し、操作ボタンを押して移動先を決定する。すると、選択された魔道士ユニットが、人間に近い頭身比の人物影像で、桝目の上を動く動作によって、移動の効果音とともに移動する様子(画面上で上へ移動するときは後ろ向き、下へ移動するときは前向き、右へ移動するときは右向き、左へ移動するときは左向きでマントをなびかせる。)が、トップビューのアニメーション手法により影像表現される。
 魔道士ユニットがカーソルで指定された移動先に到達すると、魔道士ユニットが選択可能な移動後のメニューが自動的に影像表示される。移動後のメニューに記載された攻撃コマンドを選択すると、自動的に魔道士ユニットが使用できる武器選択メニューが表示される。
 魔道士ユニットの武器選択メニューでは、魔道士ユニットが使用できる魔道書のみが影像表示される。武器選択メニューで風魔法を選択した後に、オンマップバトルの場合は、トップビューのこれまでのマップ影像と切れ目なく、オンマップ上のユニット間の戦闘影像が表現される。
 オンマップバトルの場合には、マップ上に、一部上部に突出のある細長い長方形状が隣り合わせになったHP表示が表示される。このHP表示は自軍は青色系に敵軍は赤色系に色分けされており、両ユニットのHPが黄色い棒グラフと棒グラフ横の数字で示されており、上部突出部には両ユニットの名前が記載されている。
 戦闘の当初には、両ユニットの戦闘開始時のHPが棒グラフに表示され、戦闘でダメージを受けると棒グラフが数字の方向に向かって減少する。魔道士ユニットによる専用の風魔法攻撃においては、魔道士ユニットは手を敵軍ユニットに向かって真っ直ぐに伸ばして白っぽい三日月形の鎌のような強力な風を敵軍ユニットに向かって飛ばすとの表現がなされる。この風魔法を受けてダメージを受けた敵軍ユニットはダメージを受けた効果音とともに白く光ってHPの棒グラフが減少する。
 この風魔法は、他のいかなるユニットも使用することはできず、魔道士個人専用の風魔法であって、その攻撃時のみに影像表現される。
 アニメーション切替戦闘の場合には、トップビューのマップ画面から真っ黒な画面に切り替わってから、次いでサイドビューによる1対1の戦闘場面がリアルなアニメーション影像で表現される。当該魔道士ユニット専用の風魔法による攻撃は、白っぽい三日月形の鎌のような強力な風を敵軍ユニットに向かって飛ばすという表現により、オンマップバトルの場合と同様に表現する。
 戦闘が終了すると、経験値が付与される場面となり、経験値が水銀柱のような横棒グラフと数値で影像表示されて、当該魔道士ユニットの獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、経験値を獲得して成長したことが影像表現される。経験値が加算されるときには、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 経験値を獲得した結果、経験値が100を超えると自動的にレベルアップの場面へ移行し、また経験値が100を超えなかった場合には自動的にトップビューのマップ場面に切り替わる。トップビューの場面に切り替わると、当該魔道士ユニットは当該自軍ターンでの行動を終えて、移動後の位置において行動する前と同一の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わって変化し、全身の色が暗系色に変化して、吹出し形状の影像が表示される。
(41) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(ム)ロングアーチ/クインクエインの場面]の表現
 両ゲームに共通する敵軍ユニットである「ロングアーチ」(トラキアの場合。被控訴人ゲームでは「クインクエイン」。以下同様。)の表現は、以下のとおりである(以下は切替戦闘の場面についての表現である。)。
 敵軍ターンにおいて、敵軍ユニットである「ロングアーチ」を装備したユニットの行動となり、プログラムにしたがって自軍ユニットを攻撃する場合には、敵の攻撃を受ける自軍ユニットに対してカーソルが影像表現された後、真っ黒な画面に切り替わり、次いでトップビューのマップ影像から、サイドビューの視点のアニメーション戦闘場面に切り替わる。
 画面の下段には、自軍ユニットの名前、攻撃能力等を記載した青色系の枠が右側に、敵軍ユニットの名前、攻撃能力等を記載した赤色系の枠が左側に表現される。画面の上段中央には、敵軍ユニットが装備する「ロングアーチ」とこれを操作する兵士のみが表現される。
 「ロングアーチ」は、巨大な機械式の弓兵器であり、木製の台枠からなる骨組みに巨大な弓が設置されている。木製の台枠は2本の支柱を見せてやや斜め正面を向き、巨大な弓の平面は地面とは垂直に、また射出方向は斜め右上方へ設定して設置されて表現される。
 この巨大な機械式の弓には、操作する敵軍兵士が鎧をつけた姿で傍らに立っている。この巨大な弓兵器を敵軍兵士が操作すると、矢が放たれる効果音とともに、巨大な矢が斜め右上方に向かって発射される。
 ここで画面は切り替わって、この巨大な矢の攻撃を受ける自軍ユニットが画面上段の中央に立っている場面となる。
 この場面において左上から自軍ユニットに対して「ロングアーチ」から放たれた巨大な矢が飛んでくる影像が表現され、この巨大な矢によってダメージを受けた自軍ユニットはダメージを受けた効果音とともに白く光り、HPの棒グラフの数値が減少する影像表現がなされる。
 敵軍の「ロングアーチ」との戦闘が終了し、当該自軍ユニットが生き残っている場合には、当該自軍ユニットに経験値が付与される場面となり、経験値が水銀柱のような横棒グラフと数値で影像表示されて、当該自軍ユニットの獲得した経験値が自動的に加算されて、水銀柱のような横棒グラフが右方向に伸びかつ数値が変化し、経験値を獲得して成長したことが影像表現される。経験値が加算されるときには、「ポポポッ」という効果音とともに横棒グラフが右方向に伸びる。
 当該自軍ユニットが経験値を獲得した結果、経験値が100を超えると自動的に既述したレベルアップの場面へ移行し、また経験値が100を超えなかった場合にはトップビューのマップ場面に場面が切り替わり、敵軍ターンの場面がプログラムにしたがって自動的に継続して表現される。
 自軍ユニットが「ロングアーチ」の攻撃で死亡した場合には、自軍ターンのときと同じ死亡判断と死にセリフの場面に自動的に切り替わる。死亡した自軍ユニットは、以降、影像表現されることはなく、自軍ターンが開始しても、もはや死亡したユニットは生き返らず登場しない。
 主人公が「ロングアーチ」の攻撃で死亡した場合には、自軍ターンのときと同じ表現で、主人公死亡によるゲームオーバーの場面に自動的に切り替わる。主人公の死亡によりゲームオーバーとなる。
(42) 「戦闘マップをプレイする場面」の全体構成図に示される配置及び順序構成において表現される[エ:その他の表現例]の中の[(メ)再移動の場面]の表現
 自軍ターンにおけるユニットの行動の表現としては、既述した待機と攻撃の表現を基本としているが、自軍ターンにおいて、乗り物に乗った状態のペガサスユニット、ドラゴンユニット又は馬ユニットをプレイヤーが選択して攻撃させ、攻撃が終了してトップビューのオンマップ場面に切り替わったとき(具体的には、アニメーション切替戦闘又はオンマップバトルが終了し、経験値付与場面及び経験値が100を超えた場合にはレベルアップ場面が終了した後)に、当該ユニットが残りの移動力で移動できる状態であった場合には、当該ユニットは全身の色が暗系色に変化して所定の待機ポーズに切り替わることなく、自動的に当該ユニットの再移動の場面となる。
 両ゲームに共通する再移動の場面の表現は、以下のとおりである。
 再移動の場面に切り替わると、残りの移動力で移動できる状態のユニットは、自動的にその場動きを開始し、また同時に、当該ユニットが移動可能な移動力から攻撃前に消費した移動力を差し引いた残りの移動力で移動することが可能な範囲が、背景とは異なる色の半透明な桝目で表現される。
 続いて、カーソルを移動させて移動先を指定し、操作ボタンを押して移動先を決定すると、当該自軍ユニットが移動する様子が、アニメーション手法により影像表現されて、当該ユニットは桝目が表現されていないにもかかわらず、桝目の上を動く動作によって移動先へ移動する。この移動の様子は、人間に近い頭身比であらわされたユニットが、ペガサス又はドラゴンに乗っている場合はバサバサと風を切る効果音とともに空中を飛翔し、馬に乗っている場合は地を蹴る効果音とともに馬を走らせ、画面上の上に移動するときは後ろ向きの姿で、画面上の下に移動するときは前向きの姿で、右に移動する場合は右向きで、左に移動するときは左向きで、影像表示される。
 当該ユニットがカーソルで指定された移動先に移動すると、移動後のメニューが自動的に影像表示され、このとき、攻撃やアイテム交換等のユニットの行動のコマンドは一切影像表示されることはなく、唯一の行動を行うコマンドとして表示されている「待機」コマンドを選択すると、「ピコッ」というコマンド決定音が生じるとともに、当該ユニットは当該自軍ターンでの行動を終える。当該ユニットの行動が終了したことを表現するために、その影像はマップ上の再移動後の位置で、当初の斜め前向きの所定の待機ポーズに切り替わり、当該ユニットの全身の色が暗系色に変化する。
 (以上)
 
(別紙2)
トラキアと被控訴人ゲームの構成要素ごとの相違部分及び共通部分に関する被控訴人らの主張
1 ストーリー
 被控訴人ゲームとトラキアのストーリーに関する相違部分は、下記の表のとおりである。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) 世界観  
 トールキン(指輪物語)的なファンタジー世界であるが,敵として魔物が多数登場し,重要なギミックの役割を果たすなど,冒険ファンタジーの王道的な世界観である。  トールキン(指輪物語)的なファンタジー世界であるが,魔物など人間以外の敵は登場せず,戦記物として現実的な世界観に近い。
(b) 主題  
 戦場の物語に加えて,戦場外での物語が厚く描かれており,「友情」と「愛」が主要なテーマである。  ほとんどが戦場の物語であり,純粋な戦記物であり,騎士物語として,「主君への忠誠」,「祖国奪還」が主要なテーマである。
(c) 舞台設定  
 ラゼリア公国グラムド大公の息子リュナン公子はグラナダでカナンを相手に戦い続けたが,グラナダ陥落前に,親友で海賊シーライオンの長であるホームズとグラナダを脱出し,祖国奪還の兵を募るため,親交あるウエルト王国へ向けて船を進めていた。  グラン暦763年。トラキア軍によってレンスター城は落城。レンスターのリーフ王子は騎士フィン,フィンの娘ナンナらとともに脱出する。レンスター城落城から13年後のグラン暦776年,リーフは,フィアナ村にナンナらとともに隠れ住んでいた。
(d) ストーリーの概要  
 被控訴人ゲームのストーリーの概要は,「ゾーア帝国崩壊後,リーベリア大陸に興った4王国の1つリーヴェ王国ラゼリア公国の公子である主人公のリュナンが,4王国の1つであるカナンに占領され,放浪の後ラゼリア公国を奪回し,もう一人の主人公である友人ホームズらとともに,大きな魔力を秘めた腕輪を受け継いだため運命に翻弄される2人の少女を助けながら,その腕輪の力を利用して邪神ガーゼル復活を計画する神官を打倒する。」というものであり,戦記物の要素に加えて,冒険物の要素が多く含まれている。
 なお,主人公は,青年2人である。リュナン(17歳)は,亡国の公子(王子ではない)であるが,ホームズ(19歳)は,元海賊の冒険者である。トラキアを含め,ファイアーエムブレム・シリーズとの物語上の関連性は全く存在しない。
 トラキアのストーリーの概要は,「フィアナの女領主エーヴェルの下で成長した,滅亡したレンスター王家の遺児である主人公の王子リーフが,彼にとっての聖戦であるマンスター城攻略を果たすため,フィンら仲間と共にその過程におけるさまざまな脱出劇,制圧劇,防衛劇に成功し,勝利する。」というものであり,純粋な戦記物である。
 なお,主人公は,少年1人であり,亡国の王子リーフ(15歳)である。トラキアのストーリー自体が,ファイアーエムブレム・シリーズ第4作「聖戦の系譜」のサブストーリーにすぎない。主人公のリーフも同ゲームに登場した人物であり,その人物設定を引き継いでいる。
(e) エピソード  
 トラキア及びその他のファイアーエムブレム・シリーズに関連するエピソードは存在しない。  基本的なストーリー自体が、ファイアーエムブレム・シリーズ第4作「聖戦の系譜」のサブストーリーである。

 控訴人らは、両ゲームの基本ストーリーは共通すると主張するが、両ゲームのストリーは、上記のとおり、全く異なっている。SRPGのゲームソフトの翻案該当性の判断に際し、その複数の構成要素の中で、ストーリーが、最も重視されるべき要素である以上、被控訴人ゲームとトラキアのストーリーが全く異なることは、本件における翻案該当性の判断に際して、決定的に重要な意味をもつ。
 なお、被控訴人ゲームとトラキアは、その基本となる世界観が、いわばトールキン的(指輪物語的)なファンタジー世界、すなわち、「剣と魔法と魔物の世界」である点や、その基本となる舞台設定が、西洋中世の架空の大陸における物語である点などの抽象的な部分において共通するところがある。しかしながら、これらは、いずれもアイデアというべきものであり、著作権法上の保護対象となる表現ではない。
2 ゲームシステム
(1) 相違部分とその評価
 被控訴人ゲームとトラキアのゲームシステムの相違部分の概要は、下記の表に掲げたとおりである。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) 基本システム  
 任意コマンド発給型。全体マップでプレイヤーが操作してゲームの進行に関与できる度合いが大きい。  シナリオキャンペーン型。全体マップでプレイヤーがゲームの進行に関与することは全くできず,プレイヤーは,シナリオに沿って戦闘マップを順に消化していく。
 全体マップにおいて,ADVシステムを採用。戦闘マップにおいて,大戦略型のSLGシステムを採用。  全体マップには,システム設定がない。戦闘マップにおいて,大戦略型のSLGシステムを採用。
(b) ユニット  
 被控訴人ゲームには,ユニットのクラスとして,91種類が存在するが,このうちトラキアに存在しないクラスは72種類も存在する。被控訴人ゲームには,トラキアに設定されていないユニットのクラスとして,トールキン的世界観に忠実であるがゆえに設定された「ゾンビ」,「オーガ」,「ゴーレム」などの被控訴人ゲームを特徴づけるクラスが存在する。  トラキアには,ユニットのクラスとして,53種類が設定されているが,被控訴人ゲームに存在しないクラスは34種類も存在する。トラキアは,その世界観がリアルなものであるため,被控訴人ゲームに存する魔物系のクラスは存在しない。
(c) コマンド  
 被控訴人ゲームには,ユニットのコマンドとして26種類が存在するが,トラキアには存在しないコマンドが10種類もある。トラキアに存在しない被控訴人ゲームのコマンドの中には,例えば,「うたう」,「もどる」,「聖剣」,「変身」,「門攻撃」などがある。  トラキアには,ユニットのコマンドとして26種類が存在するが,被控訴人ゲームには存在しないコマンドが10種類もある。被控訴人ゲームに設定されていないトラキアのコマンドの中には,「おろす」,「かつぐ」,「解放」,「りだつ」,「捕える」などのトラキアのゲーム性を強く特徴づけるコマンドが含まれている。
(d) アイテム  
(d-1) 武器  
 被控訴人ゲームには,武器の種類として剣,槍,斧,弓の4系統合計71種類が設定されている。被控訴人ゲームには,このうちトラキアに設定されていない武器が,合計47種類も存在する。例えば,被控訴人ゲームには,トラキアに設定されていない武器として,相手の剣を折ることができる「ソードブレイカー」,当たると敵のアイテムを盗むことができる「シーフソード」などがある。  トラキアには,武器の種類として剣,槍,斧,弓の4系統合計73種類が設定されている。トラキアには,このうち被控訴人ゲームに設定されていない武器が,合計49種類も存在する。例えば,トラキアには,被控訴人ゲームに設定されていない武器としては,「どくの剣」,「スリープの剣」,「バーサクの剣」,あるいはキャラクター名が付された「マリータの剣」や「ベオの剣」などがある。
(d-2) 道具  
 道具の種類として,HP回復薬(5種類),盾(11種類),能力値プラス及びクラスチェンジアイテム(17種類),その他(13種類)の合計46種類の道具が存在する。このうちトラキアに設定されていない道具は45種類も存在する。特に,被控訴人ゲームでは,道具に関するゲームシステムとして,「盾」という道具が採用された点において特徴的であり,盾を装備して「守備力」を上げるという特徴的なシステムが採用されている。  道具の種類として,リング(9種類),書(12種類),その他(18種類)の40種類の道具が存在する。このうち被控訴人ゲームに設定されていない道具は39種類も存在する。トラキアと被控訴人ゲームに共通する道具のうち,名称が一致する物は,トラキアの「とびらのかぎ」と被控訴人ゲームの「とびらのカギ」のみであり,名称が類似する物も,トラキアの「はねばしのかぎ」と被控訴人ゲームの「はしのカギ」だけである。
(d-3) 魔法  
 被控訴人ゲームには,29種類の魔法と16種類の杖が存在するが,このうちトラキアに存在しない魔法は24種類,杖は10種類もそれぞれ存在する。被控訴人ゲームには,トラキアに設定されていない魔法として,一度に複数のユニットに打撃を与えることのできる「範囲魔法」(その中でも「オーラレイン」は画面上全ての敵ユニットに打撃を与える。)などの被控訴人ゲームを特徴づける魔法が存在する。  トラキアには,19種類の魔法と18種類の杖が存在するが,このうち被控訴人ゲームに存在しない魔法は14種類,杖は12種類もそれぞれ存在する。トラキアは,杖に特徴があり,ユニットを眠らせたり,混乱させたり,逆にそれらを治したりといった魔法(「バーサク」,「スリープ」,「レスト」,「キア」など)が多数ゲームソフト中に登場する。
(d-4) その他  
 被控訴人ゲームには,「ブレス」という被控訴人ゲームに特徴的なアイテムが存在する。なお,ブレスとは,ストーリー上の重要キャラクターである4人のシスター(巫女)が変身する4匹の竜の攻撃方法である。  トラキアには,「ブレス」に相当する特殊なアイテムは存在しない。
(d-5) パラメータ  
(d-5-1) ユニットのパラメータ  
 被控訴人ゲームには,トラキアに設定されていないパラメータとして,@武器熟練度,A兵種熟練度,Bマップ属性熟練度,C好意度が存在する。特に,「熟練度」は,「命中率」と「回避率」の計算にボーナスが与えられるという新しいパラメータである。  トラキアには,被控訴人ゲームに設定されていないパラメータとして,@体格,A疲労,B指揮,C行動が存在する。特に,「体格」と「疲労」のパラメータは,「かつぐ」,「捕える」というトラキアを特徴づけるコマンドと関連するパラメータであり,トラキアのゲーム性を強く特徴づけている。
(d-5-2) 武器に関するパラメータ  
 被控訴人ゲームには,トラキアに設定されていないパラメータとして,「範囲」,「撃破数」,「呪い状態」が存在する。  トラキアには,被控訴人ゲームに存在しないものとして,ある武器を持つと,当然に一定のスキルが備わるという特殊な武器(あんこくの剣,せいなる剣,マリータの剣,ベオの剣,ドラゴンランス)が設定されている。
(d-5-3) マップに関するパラメータ  
 被控訴人ゲームには,トラキアに設定されていないパラメータとして,「マップ属性」が存在する。  トラキアには,被控訴人ゲームに設定されていないパラメータとして,「地形防御力」,「地形魔力」が存在する。
(d-5-4) 共通するパラメータを利用した計算式の相違  
 被控訴人ゲームとトラキアに共通して設定されているパラメータからなる計算式の内容は,「魔法攻撃力」,「守備力」,「攻撃速度」,「命中値」,「回避値」,「必殺値」,「必殺回避値」などの多くの計算式で異なっている(むしろ,計算式の内容が共通であるのは,唯一,「物理攻撃力」のみにすぎない。)。  
(d-6) マップ上の施設,地形等  
 被控訴人ゲームでは,全体マップ上に,武器屋,道具屋等の施設が設定され,戦闘マップに設定されたマップ属性も見ることができる。戦闘マップ上に,トラキアには設定されていない施設,地形として,攻撃できる門が存在する。  被控訴人ゲームでは,全体マップ上に施設は設定されておらず,戦闘マップのマップ属性も見ることができない。戦闘マップ上に,被控訴人ゲームには設定されていない施設,地形として,離脱ポイントがある。
(d-7) 対戦ゲームシステム  
 対戦モードの設定がある。  対戦モードの設定がない。

ア 基本システム
 SRPGのゲームソフトを制作するにあたり、基本システムとして、どのようなシステムを採用するのかは、ストーリーとも密接不可分に関連する、ゲーム制作上、極めて重要な事項である。
 トラキアは、1つの部隊が、戦場を順に移動し、戦闘をしてゆくだけの単純なストーリーであり、それと表裏一体の関係として、基本システムとして、大戦略型のSLGシステムが順々に繰り返し展開されるというシナリオキャンペーン型の基本システムが採用されている(トラキアの全体マップでは、プレイヤーは一切操作をすることができず、ゲームの進行に全体マップは影響しない。)。
 これに対し、被控訴人ゲームは、2つの部隊が、戦場のみならず、戦場以外の場所へも移動し、戦闘以外のイベントも同時多発的に経験してゆく複雑かつ壮大なストーリーであり、それと表裏一体の関係として、基本システムとして、戦場マップにおける大戦略型のSLGシステムに加えて、全体マップにおけるADVシステムが採用された(被控訴人ゲームの全体マップでは、プレイヤーは色々な操作ができ、全体マップの存在と全体マップでのプレイヤーの操作が、ゲームの進行に大きな影響を与える。)。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアの基本システムの違いは、ストーリーの違いと表裏一体のものとして、被控訴人ゲームとトラキアとの全体的な印象、ゲームバランス等の違いを強く印象付けている。
イ ユニット、アイテム、コマンド、パラメータ、マップ上の施設等
 ユニット、コマンド、アイテム、パラメータ、マップ上の施設や地形等の設定もゲームシステムの一部を構成するものであり、これらの相違こそ、まさに、各SRPGのゲームソフトの戦略的妙味や各キャラクターの個性を産み出し、ひいては、各SRPGのゲームソフト特有のゲームバランスを形成する重要な原因となっている。
 例えば、トラキアでは、他人を捕えたり運んだりすることができるというゲームのルールを設定し、このルールを実現するためのゲームシステムとして、コマンドについては、「かつぐ」、「おろす」、「人交換」、「捕える」、「解放」というトラキアに特徴的なコマンドを設定し、パラメータについても、「かつぐ」や「捕える」というコマンドに関連する「体格」や、一定値に達するとユニットがマップに出撃できなくなる「疲労」というトラキアに特徴的なパラメータを設定している。これらのコマンドやパラメータを設定したことによって、トラキアの戦略的妙味は増加し、トラキア固有のゲーム性が形成される重要な原因となっている。
 他方、被控訴人ゲームにおいては、城内に籠城しているような敵を攻略する場合、その難易度を決定する要素の一つとしてHPを設定した門が設定されており、これを破壊しないと城の中に入れないといった、城塞攻防戦におけるリアリティを強化する演出がなされている。また、被控訴人ゲームでは、個々のユニットに対するプレイヤーのプレイによる個人差を反映し、プレイヤーのユニットに対する思い入れを強化するという側面から、「撃破数」という武器に関するパラメータが設定されている。各マップと各ユニットに、それぞれ属性(例えば、マップについては、沼地、草原など、そのマップ全体を印象づけるもの。ユニットについては、歩兵、騎馬など。)を設定し、これらの属性に適合する状況で戦闘することで、その状況における経験が増加し、同一条件下では育成したユニットが有利に戦えるようになるなど、プレイヤーの操作によってキャラクターの特性が変化することを実現している。2人のプレイヤーが同一のキャラクターを育成したとしても、その戦闘したマップなどが違えば、ユニットの特性も違うものになるのである。これは、クラスチェンジなどとは異なり、プレイヤーの個人差が反映するものであり、被控訴人ゲーム独自のゲーム性の形成に大きく寄与している(この「撃破数」というパラメータは、もちろんトラキアには存在しない。)。
 以上のとおり、コマンド、パラメータ等に関するゲームシステムの相違も、被控訴人ゲームとトラキアの違いを印象づける要因となっている。
ウ 対戦ゲームシステム
 複数のプレイヤー同士で対戦できる対戦ゲームシステムの設定は、一般に、プレイヤーのキャラクターに対する思い入れをさらに深める効果をもち、ゲームバランスを特徴づける一つの要素であるから、対戦ゲームシステムの採用についての相違もまた両ゲームの違いを印象づける要因である。
エ まとめ
 以上のとおり、被控訴人ゲームとトラキアのゲームシステムは、基本システムの点では全く異なり、その余の部分でも、大きく異なっており、ストーリーの違いとあいまって、両ゲームソフトのゲームバランスの違いを形成している。
(2) 共通部分とその評価
 被控訴人ゲームとトラキアは、ユニット、コマンド、アイテム、パラメータ、戦闘マップ上の施設、地形などのシステムにおいて、一部、共通のユニットやコマンドなどが設定されている。しかしながら、これらは、いずれもアイデアというべきものであって、著作権法上の保護対象となる表現でなく、しかも、その多くは他のSLGやSRPGとも共通するものであるから、アイデアのレベルにおいても、ありふれたものであって、創作性は認められない。
 例えば、被控訴人ゲームとトラキアに共通するコマンド(例えば、攻撃、待機、制圧等)やパラメータ(例えばLv:レベル、HP:ヒットポイント等)は、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作するに際して参考にした、「大戦略」、「ガイアの紋章」、「ネクタリス」、「ドラゴンクエスト」等のゲームに既に存在したアイデアであり、コンピューターゲームとしてのSLG、RPGやSRPGにおいて、古くから存在するオーソドックスなありふれたアイデアにすぎない。また、被控訴人ゲームとトラキアには、ユニットのクラス(種類)として共通のクラスが何種類か存するが、その大半は、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作するに際して参考にした、「ガイアの紋章」、「エルスリード」等のゲームに既に存在したアイデアであり、SLGやSRPGにおいて古くから存するオーソドックスなありふれたユニットのクラスにすぎない(両ゲームソフトに共通するユニットのクラスの名称は、いずれも普通名詞であって、トラキアに固有の造語ではない。)。
 仮に、ゲームシステムがアイデアのレベルにおいて創作性が高いものであったとしても、翻案該当性を判断するに際して、著作物の背後にあるゲームシステムやゲームのルールの創作性が考慮されるべきでない。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアの両ゲームソフトにゲームシステムの一部が共通することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づけるような事実ではない。
3 ゲームの場面
 SRPGのゲームソフトにおいて、場面をどのように設定するかは、ストーリーやゲームシステムと密接に関係する、ゲーム制作上のアイデアにすぎない。また、SRPGのゲームソフトの各場面における影像表現(グラフィック)の中には、著作権法上の保護対象となる表現も含まれ得るが、これらの影像表現の中には、あるゲームシステムを実現しようとすれば、必然的に選択せざるを得ない表現であったり、あるいは、ゲーム影像のユーザーインターフェース性やハード機等の性能等に起因する表現上の制約を考慮すれば、選択の幅の狭い表現であったりするものが多い。具体的には、以下のとおりである。
(1) 場面の種類とその展開順序
ア 相違部分とその評価
 被控訴人ゲームとトラキアにおける場面の種類の相違とその展開順序の相違点を指摘すると、以下のとおりである。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) 場面の種類  
 戦闘マップの一種として,ストーリーの進行と無関係な遭遇戦マップの場面が設定されている。このマップの存在は,ユニットが経験値等を獲得しやすくして難易度を易しくするなど,被控訴人ゲーム固有のゲーム性の形成に重要な影響を与える。  遭遇戦マップは存在しない。他方,トラキアには,外伝マップが存在し,特定のマップにおいて特定の条件(例えば,村が全て壊されていない。)が実現すると,外伝マップに行けるという,被控訴人ゲームにはない設定がされており,被控訴人ゲーム固有のゲーム性に影響を与えている。
(b) 場面の展開順序  
 全体マップの中でプレイヤーの操作が可能であるから,全体マップの場面の中だけでゲームが進行したり,全体マップ場面とイベントの場面を繰り返したりするなど,戦闘マップの場面を経ないで場面が展開することも多い。  全体マップでプレイヤーの操作はできないので,全体マップの場面と戦闘マップの場面の繰り返しの順序でしか場面は展開しない。

イ 共通部分とその評価
 被控訴人ゲームとトラキアは、ゲーム中に配置された場面の種類が、概ね、@タイトル、オープニングの場面、A全体マップの場面、B戦闘マップの場面(オンマップ場面)、C切替戦闘アニメーションの場面、D会話、イベント等の場面(クラスチェンジの場面を含む。)、Eエンディングの場面である点において共通し、それらの場面がゲームソフト中で展開される順序にも共通するところがある。
 しかしながら、どのような場面を配置し、どのような順序で展開させるのかは、ストーリーやゲームシステムとも密接不可分に関連するゲームソフト制作上のアイデアにすぎない。例えば、被控訴人ゲームとトラキアの両ゲームソフトに共通するマップの中で重要なマップは全体マップと戦闘マップであるが、全体マップと戦闘マップを組み合わせて展開させるという「マップ制」のアイデアは、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作「暗黒竜と光の剣」を制作するに際して参考にした、「ガイアの紋章」、「ロード・オブ・ウォーズ」、「ネクタリス」等のゲームに既に存在したアイデアであり、SLGやSRPGにおいて古くから存するオーソドックスでありふれたアイデアにすぎない。他にも、ゲームソフト全体における場面の種類とその展開順序が被控訴人ゲーム及びトラキアと共通するSRPGは多数存在する。したがって、両ゲームソフトの共通性は、アイデアの部分(表現ではない部分)に存するにすぎず、しかも、そのアイデア自体が、ありふれた創作性のないものである。
(2) タイトル、オープニングの場面
 タイトル、オープニングの場面は、SRPGのゲームソフトのプレイヤーがSRPGのゲームソフトをプレイするに際し、最初に接する場面であるから、プレイヤーに与える印象は大きく、その違いは、SRPGのゲームソフト全体の印象に大きな影響を与える。これを被控訴人ゲームとトラキアについて見るに、両ゲームソフトのタイトル、オープニングの場面は、以下のとおり大きく相違する。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) 全体の印象  
 洋画的、実写的であり、写真のような現実感がある。  アニメ的あるいは紙芝居的である。
(b) ナレーションの文字表記  
 英語だけの表記を採用(年齢層の高さを考慮したためである。)。  英語に加えて、日本語表記を併用している(年齢層の低さにあわせたためである。)。
(c) 背景画面  
 連続した1枚のグラフィックであり、右から左へスクロールしながら連続影像で表現される。  背景は、異なる数枚のグラフィックであり、これが数回にわたって切り替わる。
(d) ゲームタイトルの表示されるタイミング   
 ナレーションの表示が終わると、直ちに、タイトルが表示される。  ナレーションの表示が終わると、タイトルの表示の前に、「13 years later」との文字表記がされる(ファイアーエムブレム・シリーズ第4作「聖戦の系譜」のサイドストーリーであるためである。)。
(e) タイトルの表示  
 ゲームタイトルが、実写的に表現された炎に包まれながら表示され、その後、著作権表示が行われる。  ゲームタイトルが単純に表示され、これと同時に著作権表示も行われる。

(3) 全体マップの場面
ア 相違部分とその評価
 全体マップの場面は、SRPGのプレイヤーが、ゲームソフトの進行の全体像を鳥瞰することができる場面であるから、全体マップの違いは、SRPGのゲームソフト全体の印象に大きな影響を与える。これを被控訴人ゲームとトラキアについて見るに、両ゲームソフトの全体マップの場面は、以下のとおり大きく相違する。 
被控訴人ゲーム トラキア
(a) 全体マップの果たす役割  
 プレイヤーが全体マップ中での操作(移動先の選択や編成など重要な操作である。)を行うことが可能であり、その操作は、ゲームの進行(ストーリーの展開や場面の展開順序)に大きな影響を与える。  プレイヤーが全体マップの中で操作を行うことは不可能であり、全体マップはゲームの進行に影響を与えない。
(b) 全体マップ中に表示される情報  
@ ユニットのフィギア(全身像)が小さく表示され、ユニットの位置や状況が表示される。
A ストーリー(ナレーション)は表示されない(全体マップにおけるADVシステムの採用により、ストーリーは、全体マップでユニットを移動させることによってプレイしながら自然に得られるようになっている。)。
B 緯線・経線は表示されない。
@ 主人公のリーフの顔絵が大きく表示されるが、その位置や状況は表示されない。
A ストーリー(ナレーション)が表示される(全体マップにおけるADVシステムが採用されていないので、ストーリーをナレーションで表示せざるを得ない。)。
B 緯線・経線が表示される。
(c) 具体的な影像表現  
 両ゲームソフトの全体マップは、マップ中に表示される大陸の形、大陸中に表示される情報の種類や地形等の表現において、全く異なっている。  

イ 共通部分とその評価
 両ゲームソフトの全体マップは、西洋中世風の架空の大陸をセピア色の色調の古地図風に表現しており、全体マップ上に地形等の情報が表示され、マップ上に主人公ユニットが表示されるなどの点において共通する。
 しかしながら、ストーリーの舞台設定が西洋中世風の架空の大陸とされれば、その設定にマッチする色調として、セピア色の色調が採用されることは、色の使い方として、いわば常識の範疇の事柄であり、両ゲームソフトに共通するセピア色の色調には、色使いの点において創作性は全く感じられない。
 また、SRPGのゲームソフトを全体マップと戦闘マップからなる「マップ制」で制作しようとすれば、通常の地図と同様に、地形などが表示され、ゲームソフト全体における進行状況を示すために、ユニットの移動する場所の表示がされることは、いわば当然のことであり、また、ユニットを全体マップ中に表示することにも何ら創作性は発揮されていない。
 以上のとおり、被控訴人ゲームとトラキアの全体マップに共通する事項は、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実では、およそあり得ない。
(4) 戦闘マップの場面
ア 相違部分とその評価
 被控訴人ゲームとトラキアの戦闘マップについて、ゲームシステムなどのアイデアの部分を捨象して、具体的な表現の違いを見れば、以下のとおり両者は全く異なっている。とりわけ、戦闘マップにおける地形、建物・村落等の配置、敵を含むユニットの配置(配置されるユニットの種類と配置される場所)は、SRPGのゲームソフトにおけるSLG的要素(戦術的要素)を左右する重要な事項であり、また、戦闘マップにおいて登場するユニットの内容や登場するタイミング等は、SRPGのゲームソフトのストーリーと密接に関連して設定される事項であるから、これらの相違は、被控訴人ゲームとトラキアのそれぞれに固有のゲームバランスに、極めて重要な相違を与えるというべきである。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) マップ数  
 基本マップは全40マップ。他に、遭遇戦マップが全11マップ。  基本マップは全25章(全27マップ)。他に、外伝マップが8マップ。
(b) 標準設定の内容  
@ ユニットにカーソルをあわせた場合は、吹出し形式ではない形式で表示される。
A ユニットを選択すると、移動可能範囲のみが表示される。
@ ユニットにカーソルをあわせた場合は、ユニットに関する情報が吹出し形式で表示される。
A ユニットを選択すると、移動可能範囲と攻撃可能範囲が両方表示される。
(c) 吹出しの表示  
 ユニットの名前、兵種(クラス)、HPは、3種類の表示方法から選ぶことができる。なお、吹出しの形以外の表示方法が標準設定である。  ユニットの名前とHPは、常に、吹出しの形で表示される。
(d) 移動可能範囲の表示  
 移動可能範囲は、味方ユニットは緑色、敵ユニットは青色、中立ユニットは白色で表示される。桝目は、境界線がない。なお、標準設定では移動可能範囲のみが表示され、攻撃可能範囲は表示されない。標準設定以外にも、@味方ユニットの移動可能範囲のみを表示する設定、A味方ユニットのみの移動可能範囲と攻撃可能範囲を表示する設定、B全ユニットの移動可能範囲と攻撃可能範囲を表示する設定が存在する。  移動可能範囲は、味方ユニット、敵ユニット、中立ユニットの区別なく、常に、青色で表示される。桝目は、白色の境界線で画されている。なお、標準設定が、移動可能範囲と攻撃可能範囲の両方が表示されるというものであり、標準設定以外の設定は存在しない。
(e) ユニットに関する情報を表示するウィンドウの表示  
<画面表示の内容>
@ ウィンドウ数は7枚。
A 画面上部は、ユニットのステータス一覧を表示し、左右にスクロールする。画面下部は、選択したユニットのステータスを表示し、スクロールしない。
B ユニット名の隣に、当該ユニットを表すアイコンは表示されない。
C 選択したユニットの顔イラストが大きく表示される。
D 選択したユニットの各パラメータを示すウィンドウが、画面下部に表示される。
<表示項目>
@ 名前、クラス、レベル、経験値、現在のHP・最大HP
A 移動力、装備している武器
B 攻撃力、射程、命中率、回避率
C 必殺攻撃率、必殺回避率、総合守備力、魔法防御力
D 行動速度、力、技、素早さ
E 魔力、運、武器レベル、戦闘力
F スキル
<画面表示の内容>
@ ウィンドウ数は6枚。
A 画面全体が、ユニットのステータス一覧を表示し、スクロールはしない。
B ユニット名の隣に、当該ユニットを表すアイコンが表示される。
C 選択したユニットの顔イラストは表示されない。
D 選択したユニットの各パラメータを示すウィンドウは表示されない。
<表示項目>
@ 名前、クラス、レベル、経験値、現在のHP・最大HP
A 装備している武器、攻撃力、命中率、回避率
B 移動力、疲労度、状態、同行者
C 力、魔力、技、速さ、幸運、守備力、体力
D 武器レベル
E スキル
(f) 縮小マップ  
@ 縮小マップの外周に、黒地の枠を表示する。縮小マップの枠として、赤い桝目を表示する。
A 境界線を表示する。
B 縮小マップの背景に表示されている戦闘マップは、暗転せず通常の色で表示される。
C 縮小マップ中、表示されている戦闘マップに対応した部分は、白枠で囲んで表示する。
 なお、被控訴人ゲームの縮小マップは、形と大きさの異なる複数の種類の設定が存在する。
@ 縮小マップの外周に枠を表示しない。
A 境界線を表示しない。
B 縮小マップの背景に表示されている戦闘マップは、暗転して表示される。
C 縮小マップ中、表示されている戦闘マップに対応した部分は、四隅のみ白枠を表示する。
 なお、トラキアの縮小マップは、1種類の設定しか存在しない。
(g) 戦闘マップ中の具体的な表現  
被控訴人ゲームとトラキアの各戦闘マップの場面における、地形、建物・村落等の配置やその具体的な表現、各マップにおいて登場するユニットの配置、各ユニットの容貌(ドット絵と顔絵)、髪型、服装、装飾品についての具体的な表現、画面に重ねて表示されるウィンドウの大きさ・形・枠線の色、ウィンドウ内に表示される情報の内容、攻撃移動可能範囲についての色の使い方、あるいはこれらの標準設定の内容など、具体的な表現は全く相違する。  

イ 共通部分とその評価
 被控訴人ゲームとトラキアの各戦闘マップの場面中には、一部、表現手法などのアイデアや具体的な表現において共通する部分がある。そこで、SRPGのゲームソフトの著作物特性に照らして、それらの共通部分が、著作権法上の保護対象となる表現であるのか、表現であるとして、その表現の同一性が、翻案該当性の判断において重要であるのか否かについて、以下検討する。
(ア) 大戦略型SLGシステムの踏襲
 戦闘マップにおいては、ゲームシステムとして大戦略型のSLGシステムが採用されているにすぎず、影像表現としても、大戦略型のSLGシステムに基づく影像表現がされているにすぎない。そして、この大戦略型のSLGシステムは、トラキアが制作される以前の時期から、多くのSLGやSRPGに採用されてきた。その代表的な例が、控訴人任天堂の「ファミコンウォーズ」である。
 したがって、トラキアの戦闘マップの場面において、それがアイデアにとどまるゲームシステムの部分であれ、ゲームシステムに基づく表現の部分であれ、大戦略型のSLGシステムに起因する部分である限り、当該部分が、トラキアの表現上の本質的な特徴を構成することはあり得ない。
(イ) トップビューの視点による戦闘マップ上のユニットの表現
 被控訴人ゲームとトラキアの両ゲームソフトの戦闘マップの場面は、トップビューの視点でユニットが表現されている点において共通する。
 しかしながら、写真の著作物において、カメラアングルそのものがアイデアにすぎず、著作権法上の保護対象にあたらないのと同様に、SRPGのゲームソフトにおける戦闘マップの場面において、ユニットをどの方向からの視点で表現するのかということも、アイデアにすぎない。
 しかも、トップビューの視点でユニットを表現するという手法は、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作するに際して参考にした、「ガイアの紋章」、「ファーストクイーン」、「エルスリード」、「大戦略」、「ドラゴンクエスト」、「三國志II」、「ロード・オブ・ウォーズ」、「ネクタリス」等のゲームに既に存在したアイデアであり、コンピュータゲームとしてのSLG、RPGやSRPGにおいて、古くから存したオーソドックスなありふれたアイデアにすぎない。戦闘マップ上のユニットを表現する視点として、トップビューの視点以外にも、クオータービューなど、いくつかの視点が考えられるが、それほど多くの視点が存在するわけではない。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップ上のユニットを表現する際のトップビューの視点が共通することは、被控訴人ゲームがトラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(ウ) 人間に近い頭身比によるユニットの表現
 被控訴人ゲームとトラキアの両ゲームソフトにおける戦闘マップ上のユニットの頭身比は、概ね共通する。しかしながら、ユニットを、ハード機の性能上の制約がある中で、どのような頭身比で表現するのかは、アイデアの問題である。しかも、戦闘マップ中のユニットをどのような頭身比で表現するかについては、いわゆるドット絵で表現せざるを得ない以上、さして表現上の選択の幅が広いものでもない。
 さらに、ユニットの頭身比も、ゲームのストーリーという最も重要な要素によって、表現上の制約を受けざるを得ない。例えば、頭デッカチな頭身比で表現すればコミカルな印象を与え、人間に近い頭身比で表現すればリアルな印象を与えるため、ゲームのストーリーが緊張感のある戦記物である場合であれば、できる限り実際の人間に近い頭身比が選択されることになるのは当然であり、選択の幅はないに等しい。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップ上のユニットの頭身比が概ね共通することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(エ) 選択前、選択後移動前、移動後の3段階におけるユニットの表現の使い分け
 被控訴人ゲームとトラキアは、戦闘マップ中の自軍ターンにおける自軍ユニットの表現として、@プレイヤーによって選択される前の状態にあるユニットについては、武器等を動かした所定の待機ポーズの表現、Aプレイヤーにより選択された後、移動前の状態にあるユニットについては、その場動きの表現、Bプレイヤーによって移動された後の状態にある(選択して移動させることのできなくなった状態にある)ユニットについては、暗系色に変わった所定の待機ポーズの表現という形式で、ユニットの置かれた状況に応じてユニットについて3種類の表現が使い分けられている点において共通している。
 しかしながら、これらの表現も、ユニットの置かれた状況をプレイヤーに画面上で視覚的にわかりやすく表現しようとするためのアイデアに基づく、選択の幅の極めて狭い中での表現であり、大戦略型SLGシステムを採用したことによる、いわば当然の帰結ともいうべき表現にすぎない。すなわち、大戦略型SLGシステムを踏襲して、プレイヤーが戦闘マップ上で行う基本的な操作を上記3種類とし、それぞれの状態を1対1対応で表現するというアイデアは、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作するに際して参考にした「大戦略」の他、「ガイアの紋章」、「ネクタリス」等のゲームソフトにも既に存在したありふれたアイデアである。次に、そのアイデアに基づき、ユニットの置かれた3段階の状態を、プレイヤーにとって容易かつ視覚的に区別できるように画面上で表現しようとすれば、せいぜい、@ユニットの色を変える、Aある状態に固有の動きをユニットにさせる、B点滅させる、Cある状態に固有のマークをつける(例えば、endを意味するE表示をつける)等のわずかな数の表現上の選択肢しか存在せず、その中から、ユニットの色を変えるというアイデアを採用したとしても、表現の選択の幅はほとんどない。
 したがって、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップ上のユニットについて、ユニットの置かれた3段階の状態に応じて3種類の表現が採用されていることは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(オ) ユニットの表現される順序(「移動」、「攻撃」その他の行動、「待機」の順序)
 被控訴人ゲームとトラキアの両ゲームソフトは、大戦略型SLGシステムを踏襲したがゆえに、前記のとおり、戦闘マップ中の自軍ターンにおけるプレイヤーの基本的な操作が、@移動させる「ユニットの選択」、A選択したユニットの「移動先の選択」、B移動後のユニットの「行動の選択」(「攻撃」、「待機」、その他のコマンドの選択)である点において共通する。
 しかしながら、ゲームを進行させるためのプレイヤーの操作として、どのようなタイミングで、どのような操作をさせるのかは、まさにゲームシステムそのものであり、ゲーム制作上のアイデアである。しかも、プレイヤーに前記3回の操作を行わせることを基本とするというアイデアは、「大戦略」、「ガイアの紋章」、「ネクタリス」等のゲームに既に存在したアイデアであり、古くから存するオーソドックスでありふれたアイデアにすぎない。
 そして、SRPGのゲームソフトにおいて、戦闘マップ中におけるプレイヤーの基本的な操作を上記の3種類にするというアイデアを採用すれば、ユニットの動きの順序として、(選択前の状態の表現→)@「移動」の表現→A(移動後における)「攻撃」その他の行動の表現→B「待機」後の状態の表現という流れで、画面上に順番に表示されることは当然である。このような順序でユニットの動きの影像が表示されることは、トラキア固有の特徴などではない。
 また、このような順序でユニットの動きの影像が表示される回数が多いことは、SRPGのゲームソフトにおいて、「繰り返し」の表現手法が多用されることの必然的な結果にすぎない。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップ上のユニットの動きが、「移動」、「攻撃」その他の行動、「待機」の順序で表現されることは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(カ) 移動中のユニットの表現
 被控訴人ゲームとトラキアは、プレイヤーの操作によって移動先を選択されたユニットが、移動先に移動するまでの間、当該ユニットが遠く(画面上方)へ行くときは後ろを向く等の4方向を向いた表現をしている点や、足などが動く表現をしている点において共通する。
 しかしながら、これらも、いずれもアイデアにすぎない。しかも、これらのアイデアは、ハード機等の性能が向上した後においては、多くのゲームにおいて採用されるに至った、ありふれた表現手法にすぎない。むしろ、ゲームのストーリー設定上、ある程度リアルな表現が求められるゲームソフトであれば、ハード機等の性能が許す限り、ユニットをこのような現実に近い形で表現しようとすることは当然のことである。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップ上のユニットの移動中の表現において共通部分が存することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(キ) 「移動」後のユニットに関する表現
 被控訴人ゲームとトラキアは、ユニットの移動後に、メニューコマンド形式で当該ユニットの選択できる行動の種類が画面上に表示される点において共通する。
 しかし、ユニットを、どのようなタイミングで、どのように動かせるようにするのかは、ゲームのルールそのものであり、それをメニューコマンド形式(ウィンドウ形式)で表示することは、表現手法の問題にすぎず、著作権法上の保護対象となる表現の問題ではない。
 また、被控訴人ゲームとトラキアは、ユニットが移動した後に行える行動の種類を規定するコマンドの名称とその内容において、共通する部分がある。
 しかしながら、ユニットが移動後にどのような行動をできるようにするのか(どのようなユニットコマンドを設定するのか)も、ゲームのルールそのものであり、ゲーム制作上のアイデアにすぎない。しかも、それらのコマンドの多くが、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作する以前から存在していた、オーソドックスなコマンドであることは、前記のとおりである。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップ上のユニットの移動後に関する表現において共通する部分が存することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(ク) カーソルやウィンドウの表現
 被控訴人ゲームとトラキアは、@カーソルが4つの鈎からなり、カーソルが大きくなったり小さくなったりするという動きがある点、Aユニットにカーソルを合わせる操作をすると当該ユニットについての基本的な情報がウィンドウ形式(画面全体よりも小さなウィンドウを画面上に重ねて表現する形式)で表現される点、Bユニットを選択する操作を行うと移動(攻撃)可能範囲が表現される点、C移動後に選択できる行動や選択できる武器がメニューコマンド方式(ウィンドウ方式)で表現される点、D武器を選択する操作を行うと戦闘前パラメータがウィンドウ形式で表示される点などの点において共通する。
 しかしながら、これらは、SRPGのゲームソフトにおけるユーザーインターフェース性を考慮した結果、選択の幅の乏しい中から、いわば必然的に採用された表現にすぎない。いずれの表現も、画面表示を通じて視覚的にわかりやすい形で、プレイヤーに対して、ゲームソフトをプレイするために必要な情報を提供するための工夫から導かれたものであり、このアイデアを実現しようとすれば、表現に選択の余地はほとんどない。しかも、これらのアイデアの多くは、「大戦略」、「ガイアの紋章」、「ネクタリス」等のゲームに既に存在したアイデアであり、古くから存在した、オーソドックスでありふれたアイデアにすぎない。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップ中のカーソルやウィンドウの表現において共通する部分が存することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(ケ) まとめ
 戦闘マップの場面において、被控訴人ゲームとトラキアが共通する部分は、いずれも、ゲームシステム、ゲームのルール、表現手法その他ゲーム制作上のアイデアか、さもなくば、具体的な表現であっても、そのアイデアを具体的に表現しようとすれば、ほとんど選択の余地のない表現ばかりである。
 しかも、それらのアイデアは、コンピュータゲームとしてのSLG、RPG、SRPGにおいて古くから見受けられ、現在においても多くのゲームにおいて採用されているオーソドックスな、ありふれたアイデアや表現にすぎない。
 したがって、被控訴人ゲームとトラキアの戦闘マップの場面に、一部共通するアイデアや表現が存することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実では全くない。
(5) 切替戦闘アニメーションの場面
ア 相違部分とその評価
 切替戦闘アニメーションの場面がテレビ画面上に表示されているときは、プレイヤーはゲームソフトを操作することができない。したがって、切替戦闘アニメーションの場面については、プレイヤーも単に見るだけであるから、この点においては、通常の映画の一種であるアニメーション映画と同様にとらえることができる。
 しかるに、被控訴人ゲームとトラキアの切替戦闘アニメーションの場面は、ユニットが画面全体に占める割合、ユニットの容貌、髪型、服装、装飾品、武器などの各表現、ユニットの動きの表現(特に、被控訴人ゲームでは、ユニットが画面から一瞬表示されなくなるという表現によって、ユニットが大きく動いている様を表現しているが、トラキアではそのような表現は採用されていない)、遠景として表現される背景画面、文字によるパラメータの変化の表示など、具体的な表現としては大きく相違している。これらの相違点を指摘すれば、以下のとおりである。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) スクロールの有無  
 背景画面との関係で、左右のみならず、上下のスクロールも存在し、ダイナミックな動きが表現されている。  背景画面との関係で、左右のスクロールしか存在せず、上下のスクロールは存在しない。
(b) ユニットの描き方  
 ユニットは、画面中に、大きく表示され、ユニットが画面から見えなくなるという特徴的な表現も行われ、ダイナミックな動きが表現されている。具体的なユニットや、それが騎乗するペガサス、ドラゴン馬等の動物の表現は、トラキアのものとは、全く異なる。  ユニットは、画面中に、小さく表示され、ユニットが画面から見えなくなる表現は採用されていない。具体的なユニットや、それが騎乗するペガサス、ドラゴン馬等の動物の表現は、被控訴人ゲームのものとは全く異なる。
(c) パラメータの表示  
 戦闘中、パラメータウィンドウは表示されない。HPが表示される色はトラキアとは異なる。減少したHPは表現されていない。  戦闘中、敵味方で左右に分かれたパラメータウィンドウが表示される。HPが表示される色は、被控訴人ゲームとは異なる。減少したHPは、黒色で表現される。
(d) メッセージウィンドウの表示  
 戦闘中、攻撃内容やダメージの数値を説明するウィンドウが表示される。  メッセージウィンドウは表示されない。
(e) 背景画面  
 背景画面は、全88種類も存在し、トラキアと類似する背景は存在しない。  背景画面は、相当の種類が存在し、被控訴人ゲームと類似する背景は存在しない。
(f) 具体的な影像表現の相違  
 被控訴人ゲームとトラキアの切替戦闘アニメーションの場面の具体的な表現は、ユニットが画面全体に占める割合、ユニットの容貌、髪型、服装、装飾品、武器などの各表現、ユニットの動きの表現、文字によるパラメータの変化の表示など、大きく相違している。  

イ 共通部分とその評価
(ア) 切替戦闘アニメーションの場面を設定することのアイデア性
 被控訴人ゲームとトラキアは、戦闘マップの場面中で、プレイヤーの選択によって、味方ユニットと敵ユニットが戦う場面をサイドビューのアニメーション画面(切替戦闘アニメーションの場面)で観ることのできる設定を採用している点において共通する。
 しかしながら、切替戦闘アニメーションの場面を設けるか否かは、プレイヤーの感興を催すようにするための工夫、すなわち、アイデアにすぎない。しかも、切替戦闘アニメーションの場面を設定するというアイデアは、それこそ、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作するに際して参考にしたゲームである「大戦略」、「ネクタリス」、「ロード・オブ・ウォーズ」等のゲームに既に存在したアイデアであり、古典的でありふれたアイデアにすぎない。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、戦闘マップから切り替わる場面として、切替戦闘アニメーションの場面が共通して存在することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(イ) 切替戦闘アニメーションの場面での表現の工夫
 被控訴人ゲームとトラキアは、切替戦闘アニメーションの場面への切替え時にいったん画面が暗転し、BGMも変化すること、トップビューの視点からサイドビューへの視点に変化し、敵味方で左右に配置されたユニットが比較的リアルなアニメーション影像でサイドビューの視点で表現されること、ウィンドウ形式で各種パラメータが表現されることなどが共通する。
 しかしながら、これらも、プレイヤーの感興を催すようにするための工夫であり、あるいは、ゲームソフトの画面表示の有するユーザーインターフェース性からの工夫であり、アイデアにすぎない。しかも、これらのアイデアの大半は、それこそ、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作するに際して参考にしたゲームである「大戦略」、「ネクタリス」、「ロード・オブ・ウォーズ」等のゲームに既に存在したアイデアであり、コンピュータゲームとしてのSLGやSRPGにおける古典的なありふれたアイデアにすぎない。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、切替戦闘アニメーションの場面での表現手法において共通する部分が存することは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(ウ) 「攻撃」の場合のアニメーション表現
 被控訴人ゲームとトラキアは、例えば、移動後の行動を選択するメニューコマンドの中から攻撃を選択した場合に、切替戦闘アニメーション画面において、使用した武器に特有なリアルの効果音とともに武器等の軌跡が白く表現されること、敵味方の攻撃を受ける側のユニットについて、攻撃があたりダメージを受けた場合、攻撃があたったがダメージを受けなかった場合にはいずれも効果音が鳴るが、両者の効果音に相違があること、攻撃があたらなかった場合には効果音がならないこと、ダメージを受けるとHPを示す棒グラフと数値が減少すること、HPを示す棒グラフは1メモリずつ区切られた形式であること等において共通する。
 しかしながら、これらの表現は、いわゆるアニメーションの典型的な技法を利用したにすぎず、多くのSRPGにおいて採用されているありふれた表現である上、とりわけ、ゲームの性格によって、リアルな表現が求められる場合であれば、採用されることの多い表現である(リアルな効果音等がその典型である。)。
 そもそも、HPを棒グラフ形式で表現することや、その棒グラフを1メモリずつ区分された形式とすることは、いずれも数値情報を視覚的に表現するための情報伝達の手法(アイデア)にすぎず、著作権法により保護される表現ではない。しかも、HPを示すための1メモリずつ区切られた形式の棒グラフは、被控訴人Aがファイアーエムブレム・シリーズ第1作を制作するに際して参考にした「ロード・オブ・ウォーズ」というゲームに既に存在したアイデアであり、被控訴人Aは、このゲームの表現手法を参考にしたにすぎない。
 また、被控訴人ゲームとトラキアは、敵味方それぞれ1回の攻撃が終わって対戦するユニット同士の攻撃速度の値の差が各ゲームに固有の数値(「トラキア」は4、「被控訴人ゲーム」は5)以上の場合には、攻撃速度の値の大きいユニットが再攻撃すること、HPが0になったユニットが死亡すること、戦闘が終了して生き残っているユニットについては経験値が付与されること、経験値が100を超えると自動的にレベルアップすることにおいても共通する。
 しかしながら、これらは、まさにゲームのルールそのものであり、アイデアにすぎない。しかも、ある特定の数値情報によってユニットが死亡消滅したりレベルアップしたりするというゲームのルールの大半は、ボードゲームとしてSLGの頃から存在する、オーソドックスなありふれたゲームのルールにすぎない(数値を100にするのか別の数値にするのかは、ゲーム性やゲームバランスに影響することはあっても、表現そのものの問題ではない)。
 以上のとおりであるから、被控訴人ゲームとトラキアにおいて、切替戦闘アニメーションの場面中の「攻撃」が選択された場面に、共通する表現手法や表現が存するとしても、このことは、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ない。
(エ) まとめ
 以上のとおり、切替戦闘アニメーション場面についていえば、表現手法等のアイデアにおいて共通するものが大半である。したがって、これらの共通部分の存在は、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実ではあり得ず、両ゲームソフトの印象という点においても、何ら類似しているかの如き印象を与えるものでもない。
(6) 会話、イベント等の場面
 被控訴人ゲームとトラキアの会話、イベント、クラスチェンジ等の場面も、その具体的な表現は、以下のとおり大きく異なっている。被控訴人ゲームの場合、ゲームソフト全体のセリフのうち約4割が、全体マップの会話、イベント等の場面において表示され、しかも、その場面で表示されるセリフは、ゲームの進行に大きな影響を与えるものであることからすれば、被控訴人ゲームにおける全体マップの会話、イベント等の場面は、プレイヤーに対して強い訴求力を有する場面であることが明らかである。これとの対比において、トラキアには、このような場面が全く存在しない以上、全体マップにおける会話、イベント等の場面の存在は、被控訴人ゲームに接した者が、被控訴人ゲームを通じて、トラキアの表現上の本質的な特徴を直接感得することを極めて困難にする重要な要素というべきである。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) ADVシステムの採否  
 全体マップにおける会話、イベント等の場面において、ADVシステムを採用し、会話、イベント画面でのプレイヤーの操作がゲーム進行に影響を与える。  全体マップにおける会話、イベント等の場面で、ADVシステムが採用されていない。
(b) 全体マップでの会話、イベント等の発生  
 全体マップにおいても、多数の会話、イベントが発生する。  全体マップでは、会話、イベントは発生しない。
(c) キャラクター同士の会話の場合における具体的な表現  
@ 茶色のボード上に、黄色の吹出しが画面下部にのみ表示される。せりふは黒字で表示される。
A 会話をする登場人物の胸像が、画面中央に大きく表示される。
B 登場人物の影像は、話者はカラーで、相手方は暗転させて表示される。
@ 紺色の吹出しが画面上下に表示される。せりふは白抜きで表示される。
A 会話をする登場人物の顔の影像が、画面中下部に比較的小さく表示される。
B 登場人物の影像の表示の仕方は、話者と相手方で区別されない。
(d) クラスチェンジの場面における具体的な表現  
@ 画面の演出方法
 背景とユニットの影像が、ユニットの影像を中心として放射状に揺れるように表現される。背景影像の色は変わらない。
A レベルアップ情報の表示方法
 画面下部のメッセージウィンドウにメッセージが表示される。パラメータがアップする場合は、数値の横に緑色の矢印を表示することで表現される。
@ 画面の演出方法
 ユニットの影像が、白い円柱状の光に包まれた状態に表現される。背景影像の色が変わる。
A レベルアップ情報の表示方法
 メッセージウィンドウは表示されない。パラメータがアップする場合は、アップするパラメータが「+1」という黄色い数字と棒グラフが伸びることで表現される。

 会話、イベント等の場面は、多くのSRPGにおいて存在するものであり、かつ、その表現手法も似通ったものである上、同一のゲームソフトにおいては、同一のシステム・表現手法が採用されることが通例である。したがって、被控訴人ゲームとトラキアの会話、イベント等の場面に共通するアイデアや表現が存したとしても、それらの共通部分は、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎づける事実では、およそあり得ない。
(7) エンディングの場面
 被控訴人ゲームとトラキアのエンディングの場面も、その具体的な表現は、以下のとおり大きく異なっている。通常の映画におけるエンディングの場面が、その映画の最終的な印象を与える部分として重要である以上に、SRPGのゲームソフトにおけるエンディングの場面は、プレイヤーのキャラクターに対する思い入れを再確認するという意味合いがあるから、より重要というべきである。しかも、被控訴人ゲームの場合、マルチエンディングシステムを採用することによって、プレイヤーのキャラクターに対する思い入れをより一層強める工夫がされている。これとの対比において、トラキアには、このような工夫がされていない以上、エンディングの場面の相違も、被控訴人ゲームに接した者が、被控訴人ゲームを通じて、トラキアの表現上の本質的な特徴を直接感得することを困難にさせる重要な要素というべきである。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) 時間  
 約75分  約30分
(b) マルチエンディングシステム  
 被控訴人ゲームでは、マルチエンディングシステムが採用されており、ゲームエンドまでに仲間にしたユニットの数などに応じて、エンディングにおけるユニット同士の会話や別れるタイミングが変化する。  トラキアでは、マルチエンディングシステムは設定されておらず、被控訴人ゲームのような変化は設定されていない。
(c) 具体的な進行と表現  
@ 大地母神ミラドナが登場し、この世界の成り立ちを述べる場面が表示される。
A ミラドナにより、主人公2人と主要人物セネト、ティーエのパートナー(エンテ、カトリ、ネイファ、リチャード)が蘇る場面が表示される。
B 登場人物のイラストとともに、制作スタッフ名が表示される。
C 全体マップの場面が表示される。
D 登場人物同士が会話するイベント場面が表示される。CとDが交互に表示され、登場人物が別れていく場面を表示する。CとDの間、プレイヤーがユニットを操作し、物語を進める。アイテムの売買、編成、セーブも可能。
E ゲームクリアした経過が文字で表示される。クリアしたマップのタイトル、クリアしたターン数がクリアした順番に表示され、最後に、クリアしたターン数の総合計が表示される。
F 各登場人物のクリア時のパラメータや撃破数が表示される。
G 机、羽根ペンのイラストとともに、「fin」と表示される。
@ 主人公ら登場人物が会話。
A ナレーションにより、今後の目的が述べられる。
B ゲームクリアした経過が文字で表示される。
C マップのクリアターン数、総合戦績が文字で表示される。
D 制作スタッフ名のみが表示される。
E 登場人物のその後のストーリーが表示される。
Fイラストはなく、「Fin」とのみ表示される。

4 キャラクター
 SRPGのゲームソフトの翻案該当性に際し、キャラクターについて検討する場合、当該キャラクターの外形的部分のみならず、名前も含む人物設定を考慮する必要がある。また、外形的部分を考慮するにあたっては、当該キャラクターの背後にあるアイデアが乏しい場合はその保護範囲は狭くとらえられるべきであり、また、通常予想されるありふれた表現の範疇にとどまるものである限り、やはりその保護範囲は狭くとらえられるべきである。
 これを被控訴人ゲームとトラキアについてみれば、両ゲームソフトにおける多数のキャラクターは、その外形面においても、人物設定面においても、全く異なっており、両ゲームソフトに共通して登場するキャラクターは全く存在しない。
被控訴人ゲーム トラキア
(a) 人数  
 120人  96人
(b) 主人公ユニットの人物設定(名前を含む)と外見  
 2人の主人公のうちの1人であるリュナンの人物設定は、すでに1年余の実戦を経験し「英雄」と呼ばれている17歳の青年公子である。リュナンの外形は、「精悍さと気の強さ」を主たる特徴として造形されている。具体的には以下のとおり。
@ 額に実戦用の防具である「はちがね(頭を刀剣から守るもの)」をつけている。
A 口元を引き締めて意思の強さを表現している。
B 眉がつりあがり、前をにらみつけた戦闘的な表情をしている。
C 青年体型(頭身が大きい)。
D 鎧が実戦向きで、自ら戦う騎士であることを特徴づけている。
 唯一の主人公であるリーフの人物設定は、戦いを経験したことが無い流浪の少年王子(15歳)である。リーフの外見は、「高貴さと優しさ」を主たる特徴として造形されている。具体的には以下のとおり。
@ 口元に微笑をもたせて高貴な印象を与える。
A 目元をやわらかくして優しい印象を与えている。
B 少年体型(頭身が小さい)。
C 鎧が装飾的(身分の高い人が用いるもので実戦向きではない)。
(c) その他のユニットの人物設定(名前を含む)と外見  
 (控訴人らが似ていると主張する人物同士の)人物設定(名前を含む)は多くの点において全く異なっている。
 (控訴人らが似ていると主張する人物同士の)外見は、容貌、髪型、服装、装飾品等の多くの点において全く異なっている。
 すなわち、人物設定の点においても、外見の点においても、被控訴人ゲームとトラキアに共通して登場するキャラクター(同一人物)は存在しない。
 

 トラキアのキャラクターは、いずれも、少女漫画風の、通常ありふれた表現の範疇にとどまっており、しかも、そのキャラクターの表現の背後には、特段の独創性のあるアイデアが存するものでもないから、トラキアのキャラクターの保護範囲は狭いというべきである。したがって、キャラクターによって、被控訴人ゲームが、トラキアの翻案に当たることを基礎付けられることは、到底、あり得ない。
5 音楽
 ゲーム音楽は、通常の映画における音楽以上に、そのゲーム固有の印象を形成する作用が強いところ、被控訴人ゲームとトラキアの音楽は、全く異なっており共通するところがない。
 (以上)
 
(別紙3)
控訴人らの主張する商品等表示としての影像及びその変化の態様
本件商品表示 被控訴人表示
1 「ファイアーエムブレム」
1−2 「エムブレム」
1 「エムブレムサーガ」
2 本件影像商品表示
本件影像商品表示目録
 本件「ファイアーエムブレム」シリーズのゲームソフトであることを示す商品表示性ある影像とその変化の態様(以下、「ゲーム影像」という)は下記の通りである。
 記
 西洋中世の架空の大陸を舞台とし、主人公が自軍と共に敵軍と戦う、シミュレーションロールプレイイングゲームのゲーム影像としての、
1.別紙3@に例示する如き、以下の特徴を含む戦闘プレイのゲーム影像、
1−1 トップビューで示されるマップ場面には、平地、山等の様々な地形が存在し、升目で表示される移動範囲内を、登場人物(ユニット)が、西洋中世風の衣装と武器を身につけ、移動する様子を表現する。
2 イ号物件影像表示
イ号物件影像表示目録
 イ号物件が使用する、本件影像商品表示に類似する影像とその変化の態様(以下、「ゲーム影像」という)は下記の通りである。

 西洋中世の架空の大陸を舞台とし、主人公が自軍と共に敵軍と戦う、シミュレーシーョンロールプレイイングゲームのゲーム影像としての、
1.別紙3@に例示する如き、以下の特徴を含む戦闘プレイのゲーム影像、
1−1 トップビューで示されるマップ場面には、平地、山等の様々な地形が存在し、升目で表示される移動範囲内を、登場人物(ユニット)が、西洋中世風の衣装と武器を身につけ、移動する様子を表現する。

1−2 「アニメーション切換戦闘場面」では、トップビューのマップ場面からサイドビューのアニメーション戦闘場面に自動的に切り換わり、人間に近い頭身比で表された自軍ユニットと敵軍ユニットによる1対1の戦闘をリアルなアニメーションで表現し、自軍ユニットは右側に位置せしめ且つ自軍であることを青色系の表示を用いることによって示し、敵軍は左側に位置せしめ且つ敵軍であることを赤色系の表示を用いることによって示す。ユニットの名前の下に両者のHP(ヒットポイント)を棒グラフと数値で表示する。戦闘によりHPが0になることによって死亡したとみなされるユニットは、影像が薄くなって画面から消える。戦闘後、自軍ユニットが経験値(EXP数値)を獲得した場合、その増加が棒グラフで表示される。
2.別紙3Aに例示する如き、以下の特徴を有する西洋中世の亡国の少年王子である主人公のゲーム影像、
2−1 容姿は、目鼻立ちが整った凛々しい少年の顔立ちで、髪の色は青色(但し、トラキアのみは茶色)であり、西洋中世風の衣装で肩当てを付けている。
1−2 「アニメーション切換戦闘場面」で、トップビューのマップ場面からサイドビューのアニメーション戦闘場面に自動的に切り換わり、人間に近い頭身比で表された自軍ユニットと敵軍ユニットによる1対1の戦闘をリアルなアニメーションで表現し、自軍ユニットは右側に位置せしめ且つ自軍であることを青色系の表示を用いることによって示し、敵軍は左側に位置せしめ且つ敵軍であることを赤色系の表示を用いることによって示す。ユニットの名前の下に両者のHP(ヒットポイント)を棒グラフと数値で表示する。戦闘によりHPが0になることによって死亡したとみなされるユニットは、影像が薄くなって画面から消える。戦闘後、自軍ユニットが経験値(EXP数値)を獲得した場合、その増加が棒グラフで表示される。
2.別紙3Aに例示する如き、以下の特徴を有する西洋中世の亡国の少年王子である主人公のゲーム影像、
2−1 容姿は、目鼻立ちが整った凛々しい少年の顔立ちで、髪の色は青色(但し、発売直前に茶色に変更)であり、西洋中世風の衣装で肩当てを付けている。

2−2 「ロード」を含む主人公専用の兵種(外伝のみ「せんし」または「ゆうしゃ」)であり、武器として主人公専用の長い剣を持つ。
3.別紙3Bに例示する如き、以下の特徴を有する、ペガサスと、それに騎乗する女性騎士のゲーム影像、
3−1 ペガサスは背中の左右に大きな翼の生えた白馬であり、「ペガサスナイト」等の兵種の女性騎士の「乗り物」として移動する。
3−2 ペガサスに騎乗する女性騎士は、「ペガサスナイト」等の兵種の飛行系騎士ユニットであり、武器として剣又は槍を持ち、西洋中世風の衣装で肩当てを付けている。ペガサス三姉妹として登場する場合は、ロング、セミロング、ショートのように髪の長さと色を三人三様に表現している。
2−2 「ロード」を含む主人公専用の兵種であり、武器として主人公専用の長い剣を持つ。
3.別紙3Bに例示する如き、以下の特徴を有する、ペガサスと、それに騎乗する女性騎士のゲーム影像、
3−1 ペガサスは背中の左右に大きな翼の生えた白馬であり、「ペガサスナイト」等の兵種の女性騎士の「乗り物」として移動する。
3−2 ペガサスに騎乗する女性騎士は、「ペガサスナイト」等の兵種の飛行系騎士ユニットであり、武器として剣又は槍を持ち、西洋中世風の衣装で肩当てを付けている。ペガサス三姉妹として登場する場合は、ロング、セミロング、ショートのように髪の長さと色を三人三様に表現している。
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