visual

line
 ミュージカル キャッツ
line

キャッツ
 25年前、キャッツは、新宿淀橋浄水場跡地にテント小屋を設営して始まった。そのときに観る機会はなかったが、汐留め操車場跡地のテント小屋のときは観た。各々その跡地は、いまや新宿副都心と汐留ベイエリアになって新しい東京を象徴している。キャッツは、五反田に得た専用劇場で驚異的なロングランを伸ばし、来年4月19日に千秋楽を迎えようとしている。
 「ポッサムおじさんの猫と付き合う法」(ちくま文庫)を読んだときには、このミュージカルのストーリーにとってT.S.エリオットの作品は、原作というより、原案といったほうが良かろう、と思った。しかし、後になって田村隆一訳の「キャッツ−ボス猫・グロールタイガー絶体絶命」と同じく田村訳の「魔術師キャッツ―大魔術師ミストフェリーズ マンゴとランプルの悪ガキコンビ」(ともに、ほるぷ出版)を読んで、たしかにミュージカルの原作だと納得する。
 しかし、これらを併せてミュージカルの形式に整えたうえ、原作に「宗教的ともいえる主題」を注ぎ表現したのは、ひとえにロイドウェーバーの天賦の才能というほかない。
 30匹に近い猫は、大都会のごみが集まる掃き溜めを会場に、年に一度の「ジェリクル舞踏会」に集まり始める。そこに参加することを許されている猫が、奇妙な名前を持っているのは、人間が愛玩のためにつけた名前を、彼らが拒否しているからだ。
 人間に飼われることを拒否し、奔放で強靭な思想を持ち、逆境に負けずしたたかに生き抜いている猫だけが集うことを許される満月の夜。集まった猫たちは、こもごも自己の人生を振り返り、華やかだった過去や、得意の才能をダンスに託して披露する。
 ミュージカルは、それぞれの猫の人生を一見オムニバス風に展開するだけのように見えるが、舞踏会の最後に、長老猫が集まった猫の中から「ジェリクルキャッツ」を選ぶ。その猫は、新しい命を得て新しい人生を送るべく、選ばれて天に召される。果たしてその猫は誰か。このラストシーンは、ミュージカルを貫く一筋の光、ロイドウェーバーの思想を浮かび上がらせる。
 
[目録へ]
line