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 世界貿易センタービルへのテロ攻撃とアスベスト
(100501 三多郎)
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 2001年9月11日、アメリカのN.Y.世界貿易センタービルに加えられた攻撃は、人類史上稀に見る無差別テロである。このテロに対し、多くの人は、テロ撲滅の必要性を改めて痛感した。問題は、如何にして撲滅するか、という点にあるし、そのことが、今回の事件の最大の核心であることは言うまでもない。
 しかし、以下に論じるのはそのことではなくアスベストについてである。
 悲惨な現実によって理性を失えば、見るべきものを見落とすのは人の常であるが、見落としてはならないものの一つがアスベスト問題である。
 そのことを強く感じたのは、先日日本人レポーターの現場中継をTVで見ていたときである。ビル崩落現場をバックにした画面上では既に粉塵は消えていたが、その女性は、やたらと咳き込んでいた。
 「もしや、アスベストの粉塵ではないか」という思いが頭を横切った。
 アスベストとはなにか。
 それについては、静岡の市民団体のサイトが判りやすい説明をしている。要するに、アスベストは、肺ガンないし悪性中皮腫の原因物質である。特に喫煙者におけるリスクはきわめて高い。その場合に90倍という報告もあるが、定説は、50倍と言われている。
 その粉塵は、タバコの煙の粒子より小さく、飛散したアスベストは長期間空中にとどまる。冒頭に述べたレポーターの咳の原因がアスベストの可能性があると推定している理由もそこにあった。
 そこで、まず日本語のサイトの中から、「世界貿易センタービル」を「アスベスト」で絞りこんで記事を探したが、見つからなかった。
 次に英語のサイトで、「world trade center building」を「asbestos」で絞りこむと8720件の情報が出てきた。案の上現地では、大変な問題になっている。たとえば、NBCのサイトは、トップ記事で大きく扱っている。
 CNNのサイトのHealth面にも、事件3日後の14日付けでこの問題が取り上げられている。
 マンハッタンや、ブルックリンでアスベスト濃度のチェックをしたところ、マンハッタンでは4パーセントという高濃度のアスベスト汚染があったと報じられている。通常の4倍である。
 これまで、アスベストのことがあまり問題にされていなかったのは、吸引してから発病までの潜伏期間が20ないし40年と長いため、因果関係に気付きにくいという点があろう。
 アスベストについては、日本でも1987年に問題となった。小中学校の天井や壁に防音防火目的でかなり前から使用されていることが報じられた。それは、このような若い人々が吸引した場合、その発症時期が、丁度青壮年期にかかるからである。
 だがその時全国の学校で行われた対策は、アスベストのうえにはく落防止の塗装をすると言うものであった。これが気休め程度のものでしかないことは言うまでもない。建築物に使用されているアスベストは、いずれ建物の取り壊しに際し、露出され飛散させられる。今回のビル爆破によって、大量のアスベスト粉塵が飛散したことは既に見たとおりである。
 次のサイトには、アスベストの粉塵が、飛散現場に行った人の被服について遠くへ運ばれると言う事例も紹介されている。前記サイトよりも、専門家グループによって解説されているので、もう少し詳しい。アスベスト除去工事の手法についても、アドバイスしている。
 私が知る限りでは、比較的厳密な除去方法(おそらく、日本で最初で、最上)を採ったのは、東京女学館の校舎建替工事におけるアスベスト除去工事である。このときの業者は鹿島建設。その意味で、同社には、比較的厳格なアスベスト除去工事のノウハウが蓄積された。
 しかし、環境問題に厳格なドイツでは、アスベスト除去の完全な手法が開発されていないことを理由に、アスベストを使用した歴史的建物の解体自体を当面禁止しているとも聞いている。さすがに、ワインの封にさえ鉛を使わせない国だけのことはある。
 さて、それにしても、日本語のアスベスト関連サイトが、今回の事件におけるアスベスト問題を扱っていないのは、どういうわけだろう。また、くだんのレポーターに現場で喋らせた(つまりマスクを使用できない環境においた)ディレクターは、環境問題ないしアスベストについて今もなんの問題意識も持っていないのだろうか。
 かのレポーターは、個人としても、ジャーナリストとしても、徹底的な調査に入るべきと思う。それにしてもドイツの厳格さに比すまでもなく、日本という国のメディアはかなりひどいのではないか。
 
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