concept

line
 トータルな法的サービス
line

 トータルな法的サービスは、司法改革議論の一つの核心である。とくに、最近の司法改革論議でにわかに強調されてきたのは、このような一つの事務所内での各専門資格者によるトータルな法的サービス(ワンストップサービス)の必要性である。
 しかしそれは、極めて形式的、現象的な把握である。
 ワンストップサービスが待望されるのは、現実のニーズがシームレスだからである。特許、税務、登記等々の弁護士業務以外の区分けは、専門家の能力に基づく分割ではあっても、現実のニーズは一個不可分であることが多いためなのである。
 区分けされた専門に振り分ける段階をむかえる前に、総合的把握によって判断ないし準備することの必要な、複雑高度な事案は、今後益々増えてゆくのであり、そのようなときにこそ、こうしたワンストップサービスの態勢が威力を発揮する。逆に言えば、一個の問題の解決に際してかかる諸分野の専門力が必要な場合であっても、しかるべきタイミングに電話一本で連絡を取り合って臨時に協働すれば足る場合もあり、そのような事案に関する限り、必ずしもワンストップを要する理由はない。
 それよりも更に重要なことは、ワンストップサービスは、総合的な法的サービスの全てではないという点である。こうした隣接分野の専門家との間の恒常的な関係もさることながら、むしろサービスの総合性が問題になるのは、複数弁護士間の協働に関してである。というのは、弁護士が扱う法的ジャンルは極めて広く、しかも、その一つ一つの質は益々より深いものを求められることとなるからである。そのとき求められる専門ジャンルの協働は、守秘やスピードその他の面からいっても、ますます所内においてということになろう。
 しかし、専門化された所内分業は、固定的な形で確立すればするほど、その協働が形骸化する。まして、事務所内の業務が、企業法務に特化すれば尚更である。なぜなら、そこには、社会の法的ニーズにトータルに対応することのできない偏頗な専門性しかなくなるからである。専門部門が強化されればされるほど、社会の広範なニーズに応じることのできる総合力醸成に意識的に配慮しながら、人材の拡充等の事務所建設問題を考えなければならないのである。
 そのためには、 弁護士部門の構成員は、専門性とともに、一般民事や刑事事件の処理能力をも有する、円満な市民感覚と総合力を持った個人でなければならない。その意味からも法律事務所は、コストを理由にいわゆる少額事件を切り捨てる態勢にあってはならないのである。
 

line