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【事件名】ニフティへの発信者情報開示請求事件E
【年月日】令和元年11月7日
 東京地裁 令和元年(ワ)第11736号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和元年10年8日)

判決
原告 有限会社プレステージ
同訴訟代理人弁護士 鶴谷秀哲
被告 ニフティ株式会社
同訴訟代理人弁護士 村島俊宏
同 穂積伸一
同 谷口悠樹
同 工藤友良


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、映画の著作物について著作権を有すると主張する原告が、一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っている被告に対し、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して上記映画を何者かが原告に無断でインターネットの動画投稿サイトである「FC2動画」にアップロードした行為によって原告の公衆送信権(著作権法23条1項)が侵害されたと主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である。
2 請求原因(原告の主張)
(1)原告は、別紙著作物目録記載の映像作品(以下「本件著作物」という。)の著作権者である。このことは、本件著作物に係る動画が原告のウェブサイトで販売されていることのほか、本件著作物を収録したDVDのパッケージに原告の社名及び登録商標が発売元として通常の方法によって表示され、原告の法人名の下に公表されていることから明らかである。
(2)別紙動画目録記載のIPアドレス(インターネットプロトコルアドレス)の割当を受けてインターネットに接続した何者か(以下「本件利用者」という。)は、同目録記載の投稿日時に、インターネットの動画投稿サイトである「FC2動画」上に本件著作物の一部を複製して作成された同目録記載の動画(以下「本件動画」という。)のアップロードを行い、本件動画を同サイトの利用者からの求めに応じてインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置いた。
(3)被告は、上記日時において、本件利用者に対し、上記IPアドレスを割り当ててインターネット接続サービスを提供していた。よって、被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たる。
(4)被告は、本件利用者についての氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの情報(別紙発信者情報目録記載の各情報。以下「本件発信者情報」という。)を保有している。
(5)原告は、本件利用者に対し、本件著作物について有する公衆送信権の侵害に基づく損害賠償請求等を行う予定があるが、本件利用者の氏名、住所等が不明であるため、本件発信者情報の開示を受けるべき「正当な理由」がある。
3 請求原因に対する認否(被告の主張)
 請求原因(1)(2)は否認し、(3)の第1文は認め、(3)の第2文は不知、(4)は認め、(5)は争う。
第3 当裁判所の判断
1 請求原因について
(1)証拠(甲3ないし6)及び弁論の全趣旨によれば、原告のウェブサイトには、本件著作物を収録したDVDがパッケージの画像とともに掲載され、その「メーカー名」として「プレステージ」との記載がされているほか、本件著作物を収録したDVDのパッケージには、原告の登録商標である「PRESTIGE」の文字や原告の商号である「有限会社プレステージ」の文字が表示されており、原告は、本件著作物の著作者と推定され、その推定を覆すに足りる証拠は存在しない。
 したがって、原告が本件著作物の著作権者である(請求原因(1))と認められる。
(2)証拠(甲1、2、7ないし10。枝番を付したものは各枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば、@何者かが別紙動画目録記載の投稿日時に、「FC2動画」上に本件動画のアップロードを行ったこと、Aそれにより、本件動画は、「FC2動画」の会員の求めに応じてインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置かれたこと、B上記日時に本件動画をアップロードする際に使用されたIPアドレスが同目録記載のIPアドレスであること、C本件動画が本件著作物の一部を複製して作成されたものであることが認められる。
 上記認定事実によれば、本件利用者が、別紙動画目録記載の投稿日時に、同目録記載のIPアドレスを利用して、本件著作物の一部を複製して作成された本件動画を「FC2動画」上にアップロードし、同サイトの利用者からの求めに応じてインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置いたこと(請求原因(2))が認められる。
 被告は、上記IPアドレスが本件動画のアップロードに使用されたものであることを認めるに足りる証拠はないなどと主張するが、「FC2動画」を運営するFC2社は、原告から本件動画を含む多数の被疑侵害動画が投稿されていたページのURLを示された上でIPアドレス等の発信者を特定するための情報の開示を求められたのに対し、上記URLの一部分を抜き出したものを「videoid」として列挙した上で、「videoid」に対応させる形で「ipaddress」が記載された書面を提出し、そこには、本件動画のURL(一部分)に対応するものとして別紙動画目録記載のIPアドレスが記載されていたこと(甲7、10)、本件動画のアップロードに上記IPアドレスとは異なるIPアドレスが使用されたことをうかがわせる事情はないことに照らすと、本件動画をアップロードする際に使用されたIPアドレスは別紙動画目録記載のIPアドレスであると認められる。
(3)被告が本件発信者情報を保有していること(請求原因(3)第1文)は当事者間に争いがないところ、上記(2)に認定した事実関係からすれば、本件発信者情報は、いずれもプロバイダ責任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に当たり、被告は、本件発信者情報に関し、同条項の「開示関係役務提供者」に該当する(請求原因(3)第2文)。
(4)以上に説示したところによれば、原告は本件利用者に対して著作権侵害を理由に損害賠償請求権等を行使し得る。そして、本件利用者の氏名、住所等を覚知する手段が他にあることはうかがわれないから、原告には、本件発信者情報を有し、この情報に関しプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たる被告に対し、その「開示を受けるべき正当な理由」がある(請求原因(5))。
2 結論
 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 柴田義明
 裁判官 安岡美香子
 裁判官 古川善敬


(別紙)発信者情報目録
 別紙動画目録記載のIPアドレスを同目録記載の投稿日時に使用して情報を送信していた者に関する情報であって、次に掲げるもの。
@ 氏名又は名称
A 住所
B 電子メールアドレス

(別紙)動画目録
表題 オイルマッサージ店で卑猥で淫らな巨乳を持て余してる、欲求不満ビッチ女
投稿先URL http://以下省略
投稿日時 2018/05/1802:06:18
IPアドレス(省略)

(別紙)著作物目録
作品名 渋谷盗撮ぬるテカオイルマッサージ
発売日 平成30年5月4日
メーカー プレステージ
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日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/