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【事件名】“イッセイミヤケ”デザインの不正競争事件
【年月日】令和元年6月18日
 東京地裁 平成29年(ワ)第31572号 不正競争行為差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成31年4月16日)

判決
原告 株式会社三宅デザイン事務所 A
原告 株式会社イッセイミヤケ B
上記両名訴訟代理人弁護士 墳ア隆之
同 戸澤晃広
同 瀬川哲弘
被告 株式会社ラルジュ C
同訴訟代理人弁護士 堀内 岳
同 三橋創


主文
1 被告は、別紙1被告商品形態記載の形態のトートバッグ、ショルダーバッグ、リュックサック等の鞄及び袋物並びに携帯用化粧道具入れを譲渡し、引き渡し、譲渡又は引き渡しのために展示し、輸入してはならない。
2 被告は、前項の商品を廃棄せよ。
3 被告は、原告株式会社イッセイミヤケに対し、7106万8000円及びこれに対する平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告株式会社イッセイミヤケのその余の請求をいずれも棄却する。
5 原告株式会社三宅デザイン事務所の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、原告株式会社イッセイミヤケに生じた費用の6分の1及び被告に生じた費用の10分の1を原告株式会社イッセイミヤケの負担とし、原告株式会社三宅デザイン事務所に生じた費用のすべて及び被告に生じた費用の10分の4を原告株式会社三宅デザイン事務所の負担とし、その余を被告の負担とする。
7 この判決は、第3項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙1被告商品形態記載の形態のトートバッグ、ショルダーバッグ、リュックサック等の鞄及び袋物並びに携帯用化粧道具入れを製造し、譲渡し、引き渡し、譲渡又は引き渡しのために展示し、輸入してはならない。
2 被告は、前項の商品を廃棄せよ。
3 被告は、原告株式会社イッセイミヤケ(以下「原告イッセイミヤケ」という。)に対し、1億1000万円及びこれに対する平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は、原告株式会社三宅デザイン事務所(以下「原告デザイン事務所」という。)に対し、7199万5000円及びこれに対する平成29年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告は、別紙4広告目録第1記載の謝罪広告を、別紙4広告目録第2記載の要領をもって掲載せよ。
第2 事案の概要
 本件は、原告らが、三角形のピースを敷き詰めるように配置することなどからなる鞄の形態は、原告イッセイミヤケの著名又は周知の商品等表示であり、被告による上記形態と同一又は類似の商品の販売は不正競争防止法2条1項1号又は2号所定の不正競争行為に該当するとともに、同形態には著作物性が認められるから、被告による上記販売行為は原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害するなどと主張して、被告に対し、@原告イッセイミヤケが、不正競争防止法3条1項、2項又は著作権法112条1項、2項に基づき、原告デザイン事務所が著作権法112条1項、2項に基づき、それぞれ上記商品の製造販売等の差止め及び商品の廃棄を、A原告イッセイミヤケが、不正競争防止法4条、5条1項又は民法709条、著作権法114条1項に基づき損害の一部である1億1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年10月4日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、B原告デザイン事務所が、主位的に不正競争防止法4条又は民法709条(著作権侵害)に基づき、予備的に民法709条(一般不法行為)に基づき損害の一部である7199万5000円及びこれに対する上記Aと同一の遅延損害金の支払を、C原告らが不正競争防止法14条又は著作権法115条に基づき謝罪広告の掲載を、それぞれ求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告デザイン事務所は、衣類・服飾雑貨等のデザインを考案することを業とする株式会社である(甲1)。
イ 原告イッセイミヤケは、原告デザイン事務所の子会社であり、衣服・服飾雑貨等を製造・販売することを業とする株式会社である(甲2、283、337)。
ウ 被告は、主に衣料品、靴、鞄、ベルト、ネクタイ、アクセサリーなどの装飾雑貨等の企画、製造、販売等を営む株式会社である。
(2)原告イッセイミヤケによる鞄シリーズの製造・販売
 原告イッセイミヤケは、平成16年7月から、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」という名称のブランドにおける「Bilbao」の商品として、平成22年9月からは「BAO BAO ISSEYMIYAKE」という名称のブランド(以下「本件ブランド」という。)の商品として、別紙3原告商品目録記載の各商品を含むトートバッグ、クラッチバッグ、ハンドバッグ、携帯用化粧品入れ、リュックサック等の鞄(以下、これらを総称して「原告商品」といい、個別の商品について、別紙3原告商品目録記載の各商品を同目録の表記に従い「原告商品1」等という。)を製造し、販売している(甲6ないし240、242ないし244)。
 なお、原告デザイン事務所は、本件ブランドの名称である「BAO BAO ISSEY MIYAKE」につき商標権を有している(甲255、以下「本件商標」という。)
(3)被告の行為
ア 被告は、遅くとも平成28年9月から、別紙2被告商品目録記載のショルダーバッグ、携帯用化粧品入れ、リュックサック及びトートバッグ(以下、これらを総称して「被告商品」といい、個別の商品について、同目録の表記に従い「被告商品1」等という。)を販売した(甲245、争いのない事実)。
イ 被告商品の形態は、別紙1被告商品形態の各写真に示されるとおりである。
2 争点
(1)不正競争行為の有無
ア 原告商品の形態は商品等表示に該当するか(争点1)
イ 原告商品の形態は周知ないし著名か(争点2)
ウ 被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか(争点3)
(2)著作権侵害行為の有無
ア 原告商品1ないし6に著作物性が認められるか(争点4)
イ 原告らが原告商品1ないし6の著作権者であるか(争点5)
ウ 著作権(複製権又は翻案権)侵害の成否(争点6)
(3)本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否(争点7)
(4)原告らの損害額(争点8)
3 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(原告商品の形態は商品等表示に該当するか)について
(原告らの主張)
 原告商品は、各商品に共通して、以下の特徴@ないしBをすべて備えた形態(以下「本件形態1」)を有しており、これらの特徴が相まって、需要者の感覚に訴える意匠的特徴を有している。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形する(以下「本件特徴@」という。)。
A 上記@の外観を持たせるため、鞄の生地に無地のメッシュ生地又は柔らかい織物生地を使用し(以下「本件特徴A」という。)、
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置する(以下「本件特徴B」という。)。
 また、原告商品は、本件特徴@ないしBに加えて、以下の特徴Cを備えた形態(以下「本件形態2」という。)を有し、これらの特徴が相まって、需要者の感覚に訴える意匠的特徴を有している。
C 上記Bのピースは、厚さ1mm程度の1種類の三角形により構成され、その配置方法は規則的である(以下「本件特徴C」という。)。
 このように、タイル状のピースを敷き詰め、目地様の間隔を空けるという手法をとることにより、鞄等の表面が平面でなく立体的になり、荷物の形に応じて凸凹が生じるという点が、原告らの独創的なアイデアであり、一般的な鞄とは視覚面に決定的な違いを生じさせる原告商品の根幹的特徴である。
 原告イッセイミヤケは、平成16年7月に本件形態1及び2を備える鞄の販売を開始したところ、当時、我が国の市場において本件形態1及び2を備える鞄は、原告商品以外に皆無であった。原告イッセイミヤケは、外観が立体的に変化するという本件形態1及び2を、一般の鞄と異なる原告商品の最大の特徴として、発売当初から継続して全面に打ち出しており、また大半の各種雑誌記事、広告等にも、原告商品の全体写真とともに「イッセイミヤケ」等の出所が併せて表示されているから、原告商品の本件形態1及び2を見れば、その出所が原告イッセイミヤケであることは需要者の間で広く認識されている。
 したがって、本件形態1及び2は、原告イッセイミヤケの独自の形態として際立った顕著性を有し、また原告イッセイミヤケの出所表示機能を有しているから、原告イッセイミヤケの商品等表示といえる。
(被告の主張)
 原告商品は、それぞれショルダーバッグ(原告商品1)、携帯用化粧品入れ(原告商品2)、リュックサック(原告商品3)及びトートバッグ(原告商品4ないし6)であるところ、これらの鞄は、中に物を収納するという機能・効用を持たなければならないため、中に入れる荷物の形状に応じて変形するように柔らかい生地を使用している。したがって、仮に原告商品の形態に商品等表示性が認められるとしても、それは「1種類の直角二等辺三角形のピースを規則的・連続的に配置する」という限度(本件特徴Bの一部、本件特徴C)であり、本件特徴@及びAは、技術的機能や効用に由来するありふれた形態にすぎず、商品等表示とは認められない。
 被告は、三角形のピースを同一の間隔を空けて敷き詰めるように配置するという本件特徴Bを原告商品の特徴と主張するが、原告商品のうち雑誌・カタログ等に掲載されているものの大部分(原告ら証拠提出にかかる雑誌等の全掲載商品のうち89.70%)は、1種類の直角二等辺三角形のピースを規則的・連続的に配置したデザインであり、それ以外のデザインの商品はごく一部である。また原告らのデザイナー自身が、試行錯誤の末に1種類の直角二等辺三角形を規則的・連続的に配置するという形態を採用し、同形態が原告商品の本質的特徴であると述べているとおり、原告らは、10年以上にわたり、同特徴を本件ブランドのアイコンとし、主軸のデザインとして商品展開してきた。原告らの本件形態1及び2に係る主張は、原告商品の90%以上に共通する特徴から明らかに逸脱し、自らの広告・宣伝・商品展開等の実情に明らかに反し、これまで一度も製造・販売したことのない被告商品のような形態を含ませるものであり、相当でない。
(2)争点2(原告商品の形態は周知ないし著名か)について
(原告らの主張)
 原告イッセイミヤケは、本件形態1及び2を有する原告商品を、平成16年7月から現在に至るまで約13年以上の長期間にわたって、全国で継続して販売し、その販売数量も飛躍的に増加している。また、原告商品は、原告イッセイミヤケの出所とともに多数の新聞や雑誌の記事に掲載されている。
 したがって、本件形態1及び2は、原告イッセイミヤケの製造販売に係る商品であることを示す表示として著名であり、少なくとも周知されている。
(被告の主張)
 争う。仮に原告商品に周知性が認められる形態があるとしても、それは「1種類の直角二等辺三角形のピースを規則的・連続的に配置する」という形態のみである。
(3)争点3(被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか)について
(原告らの主張)
ア 被告商品は、いずれも、本件形態1の本件特徴@ないしBをほぼ全て備えている上、原告商品とピースの厚さも一致し、数も似通っており、中に入れる荷物の形に応じて凸凹が生じた状態の両商品の外観は酷似する。需要者は、取引においては、本件形態1及び被告商品を、平面的な図柄ではなく立体的な物として視覚的に感知するのであり、両者の外観に基づく印象、記憶、連想等から、これらを全体的に類似のものとして受け取るおそれがあることが明らかである。実際に、対比的観察で行ったアンケート調査の結果(甲287、以下「本件アンケート調査」という。)及びSNSの投稿内容によれば、需要者の多くが被告商品を原告商品と誤認している。さらには販売店等も、被告商品及び被告商品に類似した商品と本件形態1の類似性を認めている。
イ また、本件形態2についても、被告商品は、ピースの配置方法の規則性がそれほど高いものではなく、複数の種類の三角形のピースが用いられている点で、本件特徴C(「1種類の三角形のピースを」「規則的に」配置する)と相違しているが、以下に述べるとおり、このような相違は全体の類似性からすれば極めて些細である。
 すなわち、原告商品の取扱店舗の店頭では、物を入れた状態で商品展示をすることにより、外観が立体的に変形するという本件形態2を視覚的に感知しやすくしており、需要者は、中に荷物を入れた状態、すなわち表面に凸凹が生じた状態の原告商品を見ることが多い。実際に、本件アンケート調査では、本件形態2を備えた原告商品と被告商品とを対比的観察により検討させた結果、約7割もの需要者が被告商品を原告商品と誤認混同した。原告商品の根幹的特徴は本件特徴@であり、本件特徴Cの「1種類の三角形のピースを」「規則的に」配置するという点は、対比的観察であっても些末な相違でしかなく、離隔的観察であればさらに些末な相違でしかない。加えて、凸凹が生じた状態の原告商品の外観は様々に変化するものであり、その状態では三角形のピースが規則的に配置されているとは見えないことも多く、また三角形の形が同一には見えない場合もある。
ウ 原告イッセイミヤケの商品等表示である本件形態1及び2は鞄の形態であるところ、被告は本件形態1及び2と同一又は類似した形態を、同じ鞄である被告商品に使用しており、これにより被告商品が原告イッセイミヤケの商品であるとの誤認を需要者に生じさせるおそれがある。特に、原告イッセイミヤケは、本件形態1及び2を用いた新商品を毎年販売していることから、被告商品が本件ブランドの新たなバリエーションの一つであるとの誤認を需要者に生じさせるおそれは極めて高い。
(被告の主張)
 原告商品の特徴は、仮に認められるとしても「1種類の直角二等辺のピースを規則的・連続的に配置する」という点にあるところ、これに対応する被告商品の特徴は「ふぞろいな複数種類の三角形・四角形のピースを不規則的・非連続的に配置する」というものであるから、被告商品は原告商品と類似せず、誤認混同のおそれも生じ得ない。原告らは、原告商品と被告商品の寸法等の類否は問題とせず、あくまで鞄等の表面のピース部分のみに着目して「同一若しくは類似」すると主張するところ、この唯一の構成要素であるピースの形及び配置に、上記のとおり明白な差異があるのであるから、被告商品が原告商品と類似しないことは明らかである。結局のところ、原告らの主張は、鞄の表面にピースを配置するというアイデアの保護を主張するにすぎない。
 また、仮に本件形態2が原告商品の特徴であるとしても、本件特徴Cは「1種類の三角形により構成され」るのに対し、被告商品は「複数種類の三角形・四角形のピース」から構成される点からしても、原告商品と被告商品が類似しないことは明らかである。
 原告らは、本件アンケート調査の結果から、被告商品は原告商品と類似し、混同のおそれがある旨主張するが、本件アンケート調査は、実施方法や調査対象者の抽出方法が証拠上不明である上、調査対象者に著しい偏りがあり、質問や選択肢が誘導的・誤導的である点において、結果に客観性がなく、信用性は認められない。
(4)争点4(原告商品1ないし6に著作物性が認められるか)について
(原告らの主張)
 原告商品1ないし6の個々の商品は、以下のアないしカで述べるとおり、それぞれ特徴的なデザインを有し、これらの特徴は鞄のデザインとして必然的に必要となるものではなく、また種々の賞を受けるなどその創作性が高く評価されているから、著作物性が認められる。
ア 原告商品1
 原告商品1は、ショルダーバッグとしての形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより5様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A上記@の外観を持たせるために、鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるように配置することという特徴的なデザインがされており、さらにCこのデザインがファスナーのある「まち」の部分にも施されている。
イ 原告商品2
 原告商品2は、底面が長方形であり側面は上底が長い等脚台形の携帯用化粧道具入れの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄(携帯用化粧道具入れ)の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄(携帯用化粧道具入れ)の外観が立体的に変形すること、A上記@の外観を持たせるために、鞄(携帯用化粧道具入れ)の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置することという特徴的なデザインがされている。
ウ 原告商品3
 原告商品3は、取り出し口にかぶせる蓋(「かぶせ」)がついているリュックサックの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A上記@の外観を持たせるために、鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置することという特徴的なデザインがされており、さらにCこのデザインが「かぶせ」の表面及び裏面の一部にも施されている。
エ 原告商品4
 原告商品4は、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A上記@の外観を持たせるために、鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置することという特徴的なデザインがされており、さらにCこのデザインがファスナーのある「まち」の部分にも施されている。
オ 原告商品5
 原告商品5は、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A上記@の外観を持たせるために、鞄の生地に黒色の無地の柔らかい織物生地(ポリエステル生地)を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置することという特徴的なデザインがされている。
カ 原告商品6
 原告商品6には、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A上記@の外観を持たせるために、鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置することという特徴的なデザインがされている。
(被告の主張)
 原告商品1ないし6は、実用品としての性質を超えて、これ自体が美的鑑賞の対象となる形態・外観を有するものではない。原告らが証拠として提出する雑誌等をみても、原告商品は、実用品たる鞄等として取り上げられているだけで、これを超えて美的鑑賞の対象とされている様子は一切窺われない。
 したがって、原告商品1ないし6は著作物には当たらない。
 また、原告商品1ないし6の原作品が著作物に当たるのであれば、これと全く同一の形態である原告商品1ないし6の個々の商品は原作品の複製物にすぎず、著作物とはなり得ない。一方、原作品は著作物ではなく、原告商品1ないし6の個々の商品が著作物であるとすれば、これらの商品は原作品と全く同一の形態なのであるから、原作品が著作物でないとすれば、当然に原告商品1ないし6の個々の商品も著作物ではないことになる。このように、原告らの著作権侵害の主張は論理的に成り立ち得ない。
(5)争点5(原告らが原告商品1ないし6の著作権者であるか)について
(原告らの主張)
 原告イッセイミヤケは、世界的な服飾デザイナーであるDが設立した原告デザイン事務所の100%子会社であり、原告らにおいて考案されたデザインを利用した衣服・服飾雑貨等を製造・販売することを業としているところ、原告イッセイミヤケが販売するすべての商品は、Dをはじめとする原告デザイン事務所の役員及び社員が監修し、デザインに関する個別的・具体的な指示を出し、デザインの作成過程に創作的に関与している。
 したがって、原告商品1ないし6は、原告らの役員及び従業員が共同で創作したものであるから、原告らは原告商品1ないし6の著作権を共有し、いずれも著作権者である。
(被告の主張)
 原告デザイン事務所は事業目的に「デザイン業」等を挙げるのに対し、原告イッセイミヤケは「製品の製造及び販売」等を挙げており、原告らは、デザインを原告デザイン事務所が、製造・販売を原告イッセイミヤケがそれぞれ行うとの役割分担をしていることが窺われる。実際に、原告デザイン事務所は単独で本件商標及び意匠権を保有しており、著作権のみ原告らが共有するのは不自然である。加えて、原告らが訴訟提起前に送付した警告書においては、「イッセイミヤケは、本件当社商品について著作権を有しております」と記載し、原告イッセイミヤケのみが原告商品1ないし6の著作権を有するとしていた。
 したがって、原告らが原告商品1ないし6に係る著作権を共有していたとは認められない。
(6)争点6(著作権侵害の成否)について
(原告らの主張)
 被告が、原告商品1ないし6に依拠し、被告商品1を製造・販売する行為は原告商品1に係る複製権を、被告商品2を製造・販売する行為は原告商品2に係る複製権を、被告商品3を製造・販売する行為は原告商品3に係る複製権を、被告商品4を製造・販売する行為は原告商品4及び5に係る複製権を、被告商品5を製造・販売する行為は原告商品4及び5に係る複製権を、被告商品6を製造・販売する行為は原告商品5及び6に係る複製権を、被告商品7を製造・販売する行為は原告商品4及び5に係る複製権を、被告商品8を製造・販売する行為は原告商品4及び5に係る複製権を、それぞれ侵害する。
 また、仮に被告の上記各行為が原告らの複製権を侵害しないとしても、以下のとおり、被告商品のデザインと原告商品1ないし6のデザインは共通し、被告商品から原告商品1ないし6の表現形式上の本質的な特徴を直接感得することができるから、被告商品が原告商品の翻案権を侵害することは明らかである。
ア 被告商品1
 被告商品1は、ショルダーバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mm10ないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること、C上記@ないしBの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分にも施されていることという特徴を有しており、上記各特徴は、上記(4)アで述べた原告商品1の特徴@ないしCと共通する。
イ 被告商品2
 被告商品2は、底面が長方形であり側面は上底が長い等脚台形の携帯用化粧道具入れの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄(携帯用化粧道具入れ)の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄(携帯用化粧道具入れ)の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置することという特徴を有しており、上記各特徴は、上記(4)イで述べた原告商品2の特徴@ないしBと共通する。
ウ 被告商品3
 被告商品3は、「かぶせ」がついているリュックサックの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地の柔らかい織物生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること、C上記@ないしBの特徴が「かぶせ」の表面及び裏面の一部にも施されていることという特徴を有しており、上記各特徴は、上記(4)ウで述べた原告商品3の特徴@ないしCと共通する。
エ 被告商品4
 被告商品4は、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること、C上記@ないしBの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分にも施されていることという特徴を有しており、上記各特徴は、上記(4)エで述べた原告商品4の特徴@ないしCと共通する。
 また、被告商品4の上記@ないしBの特徴は、上記(4)オで述べた原告商品5の特徴@ないしBと共通する。
オ 被告商品5
 被告商品5は、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること、C上記@ないしBの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分にも施されていることという特徴を有しており、上記各特徴は、上記(4)エで述べた原告商品4の特徴@ないしCと共通する。
 また、被告商品5の上記@ないしBの特徴は、上記(4)オで述べた原告商品5の特徴@ないしBと共通する。
カ 被告商品6
 被告商品6は、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置することという特徴を有しており、上記各特徴は、上記(4)オ及びカで述べた原告商品5及び6の特徴@ないしBと共通する。
キ 被告商品7
 被告商品7は、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること、C上記@ないしBの特徴が鞄の内側の上部にも施されていることという特徴を有しており、上記各特徴、上記(4)エで述べた原告商品4の特徴@ないしCと共通する。
 また、被告商品7の上記@ないしBの特徴は、上記(4)オで述べた原告商品5の特徴@ないしBと共通する。
ク 被告商品8
 被告商品8は、トートバッグの形状に、@中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること、A生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用すること、Bその上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピースを、タイルの目地部分のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること、C上記@ないしBの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分にも施されていることという特徴を有しており、上記各特徴は、上記(4)エで述べた原告商品4の特徴@ないしCと共通する。
 また、被告商品8の上記@ないしBの特徴は、上記(4)オで述べた原告商品5の特徴@ないしBと共通する。
(被告の主張)
 被告商品が、原告商品1ないし6に依拠して製造等された事実はない。
 また、原告商品の本質的特徴は「1種類の直角二等辺三角形のピースを規則的・連続的に配置する」という点にあるが、被告商品の本質的特徴は「ふぞろいな複数種類の三角形・四角形のピースを不規則的・非連続的に配置する」というものであり、差異は顕著であるから、本質的な特徴に何らの同一性もない。
 したがって、被告が被告商品を販売する行為は、原告らの著作権(複製権及び翻案権)を侵害しない。
(7)争点7(本件ブランドに係る価値の棄損による損害賠償請求権の存否)について
(原告デザイン事務所の主張)
 原告デザイン事務所は、被告の被告商品販売に係る不正競争行為及び著作権侵害行為により、原告デザイン事務所が本件商標を有する本件ブランドの持つ社会的信用やブランドイメージを毀損された。
 すなわち、原告商品が緻密で高い品質及びデザイン性を備えている結果、本件ブランドは非常に高い社会的な評価・信用、そしてブランドイメージを獲得することに成功しており、このことは原告商品の売上げ規模や2013年度毎日ファッション大賞特別賞をはじめとする受賞歴によって裏付けられる。原告デザイン事務所は、このような本件ブランドの価値を維持・向上するため、原告商品の販売を本件ブランドの商品のみを扱う専門店に限定し、他社の安価な鞄等と並べて陳列・販売されることのないように徹底し、セール等の安売りも行っていない。また、広告活動や模倣品対策にも多大な労力及び費用を投じてきた。
 一方、被告商品は、生地に接合する三角形のピースの各辺が角ばっており、触れると手に角が刺さる感触があり、持ち手部分もいくつかの部材が雑に貼り合わされており、さらには「まち」を設けずに鞄の上辺でない内側部分にファスナーを付けるなど使い勝手が悪いものであるなど、原告商品と比較して品質が粗悪であり、耐久性も低い。また、被告商品は小売店において1000円ないし6000円程度で販売されており、安売りがされ、インターネットや小売店において、その他の低価格の鞄等と並べて販売されている。被告の上記行為は、需要者に対し、本件ブランドが「安物である」という強い印象を与えるものであり、本件ブランドの社会的評価は著しく毀損されている。
 したがって、被告は、原告デザイン事務所に対し、@不正競争防止法4条、又はA民法709条(著作権侵害)に基づき損害賠償義務を負う。また、仮に原告デザイン事務所が上記@に基づく請求権を有していない場合であっても、B被告商品の販売により本件ブランドの価値を棄損する行為は、一般不法行為(民法709条)に該当するため、被告は、原告デザイン事務所に対し、民法709条に基づく損害賠償義務を負う。
(被告の主張)
 被告が被告商品に本件ブランドを表示した事実はないし、本件アンケート調査の結果によれば、需要者の95%は被告商品を見ても本件ブランドを想起しないというのであるから、被告商品の販売が不正競争行為に該当すると仮定したとしても、本件ブランドの価値を毀損するとはいえない。
(8)争点8(原告らの損害額)について
(原告らの主張)
ア 原告イッセイミヤケの損害
(ア)損害の発生
 被告商品の販売により原告イッセイミヤケには損害が生じ、原告イッセイミヤケは、不正競争防止法5条1項に基づき損害賠償を請求することができる。
 被告は、被告商品を卸売業者・小売業者にのみ販売し、これらの業者の中には被告商品を原告商品と誤信して取引を行った者はいないから、原告イッセイミヤケには得べかりし利益としての損害が生じていない旨主張する。
 しかし、不正競争法5条1項は不正競争行為の被害者の逸失利益を推定する規定であるところ、侵害品が卸売業者・小売業者に販売され市場に置かれれば、それが一般消費者に販売され、被害者は販売の機会を失う。このように、原告商品と被告商品は、最終的に販売される需要者が異ならない以上、被告が被告商品を卸売業者・小売業者にのみ販売したという事実は損害の発生を否定しない。
(イ)不正競争防止法5条1項に基づく損害額
a 被告商品の譲渡数量
 被告は、被告商品を、それぞれ以下の数量、譲渡した。
 被告商品1  ●(省略)●
 被告商品2  ●(省略)●
 被告商品3  ●(省略)●
 被告商品4  ●(省略)●
 被告商品5  ●(省略)●
 被告商品6  ●(省略)●
 被告商品7  ●(省略)●
 被告商品8  ●(省略)●
b 原告商品が「その侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たること
 被告は、本件形態1又は2と同一又は類似した形態を女性向けの鞄である被告商品に使用しているところ、原告イッセイミヤケは本件形態1及び2を鞄に使用した原告商品を販売しており、その需要者の圧倒的多数は女性であることから、原告商品と被告商品は女性向けの鞄の市場において競合することは明らかである。
 したがって、原告商品の全体と被告商品の全体には競合可能性ないし代替可能性が認められ、原告商品は「その侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たる。
 また、原告商品の全体と被告商品の全体に競合可能性ないし代替可能性が認められないとしても、被告商品1につき原告商品1が、被告商品2につき原告商品2が、被告商品3につき原告商品3が、被告商品4、5、7及び8につき原告商品4及び5が、被告商品6につき原告商品5及び6が、それぞれ「その侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たる。
c 原告商品の単位数量当たりの利益の額
 被告商品と同種の鞄等についての原告商品の販売価格及び当該商品の単位数量当たりの利益額(いずれも平均額)は、以下の表の「原告商品1個当たりの利益額(平均)」欄記載のとおりである。
  種別 原告商品の販売価格(平均) 原告商品1個当たりの利益額(平均)
被告商品1 ショルダーバッグ 6万5118円 ●(省略)●
被告商品2 携帯用化粧品入れ 1万8417円 ●(省略)●
被告商品3 リュックサック 12万8250円 ●(省略)●
被告商品4 トートバッグ 7万8375円 ●(省略)●
被告商品5
被告商品6
被告商品7
被告商品8
 また、原告商品1ないし6の1個当たりの利益額は以下のとおりである。
 原告商品1  ●(省略)●
 原告商品2  ●(省略)●
 原告商品3  ●(省略)●
 原告商品4  ●(省略)●
 原告商品5  ●(省略)●
 原告商品6  ●(省略)●
d 損害額
 被告の不正競争行為による原告イッセイミヤケの損害額(原告商品1個当たりの利益額に被告商品の販売数量を乗じた額)は、以下のとおり、合計6億2110万6611円であり、その一部として1億円の支払を求める。
  原告商品1個当たりの利益額(平均) 被告商品の販売数量 損害額
被告商品1 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品2 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品3 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品5 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品6 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品7 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品8 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
 また、被告商品1につき原告商品1が、被告商品2につき原告商品2が、被告商品3につき原告商品3が、被告商品4、5、7及び8につき原告商品4及び5が、被告商品6につき原告商品5及び6が、それぞれ「その侵害の行為がなければ販売することができた物」であるとすると、被告の不正競争行為のよる原告イッセイミヤケの損害額は、以下のとおり、合計6億4999万7300円(以下の表の「損害額」欄記載の金額の合計)である。なお、被告商品4ないし8については、対応する原告商品が2つあるが、損害額はいずれも低い金額に基づき算出する。
  原告商品 原告商品1個当たりの利益額 被告商品の販売数量 損害額
被告商品1 原告商品1 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品2 原告商品2 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品3 原告商品3 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品4 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品5 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品6 原告商品5 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品6 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品7 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品8 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
e 「販売することができないとする事情」(不正競争防止法5条1項ただし書)
 本件においては、「譲渡数量の全部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情」は存在しない。
 被告商品は、原告商品の需要者が訪れる一等地の商業地や百貨店等5においても販売されており、販売場所が完全に別ではないから、被告商品の需要者と原告商品の需要者が重なることは明らかである。
 また、被告商品は、被告商品のブランド名である「Avancer」を強調するような形で販売されておらず、被告の商品であるから、又は被告のブランドの商品であるから被告商品を販売できたという事情は存在しない。
(ウ)著作権法114条1項に基づく損害額
a 被告商品の譲渡数量
 被告商品1  ●(省略)●
 被告商品2  ●(省略)●
 被告商品3  ●(省略)●
 被告商品4  ●(省略)●
 被告商品5  ●(省略)●
 被告商品6  ●(省略)●
b 原告商品の単位数量当たりの利益の額
 原告らの著作物である原告商品1ないし6の1個当たりの利益額は、前記(イ)cのとおりである。
c 損害額
 被告の著作権侵害行為による原告イッセイミヤケの損害額(原告商品1個当たりの利益額に被告商品の販売数量を乗じた額)は、以下のとおり、合計6億7218万円(以下の表の「損害額」欄記載の金額の合計)であり、その一部として1億円の支払を求める。なお、被告商品4ないし8については、対応する原告商品が2つあるが、損害額はいずれも高い金額に基づき算出した。
  原告商品 原告商品1個当たりの利益額 被告商品の販売数量 損害額
被告商品1 原告商品1 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品2 原告商品2 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品3 原告商品3 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
被告商品4 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品5 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品6 原告商品6 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品7 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
被告商品8 原告商品4 ●(省略)● ●(省略)● ●(省略)●
原告商品5 ●(省略)● ●(省略)●
(エ)弁護士費用
 本件の請求に係る弁護士費用は、上記の損害額1億円の1割に相当する1000万円を下らない。
イ 原告デザイン事務所の損害
(ア)損害の発生
 本件ブランドを付した原告商品の平成28年度における売上金額は●(省略)●であり、このうち国内の売上金額は●(省略)●、国内の利益額は●(省略)●であること、かつ、同規模の売上がその後2年以上にわたり継続していることに鑑みれば、被告の不正競争行為により棄損された本件ブランドの価値は、上記国内利益額である●(省略)●の約100分の1である●(省略)●を下らない。
(イ)弁護士費用
 本件の請求に係る弁護士費用は、上記の損害額●(省略)●の1割に相当する●(省略)●を下らない。
(被告の主張)
ア 原告イッセイミヤケの損害
(ア)損害の不発生
 被告は卸売業者であり、被告商品を卸売業者・小売業者に販売したが、自ら一般消費者には販売していない。当該卸売業者・小売業者は、購入する被告商品は被告が製造販売する商品であることを明確に認識しており、被告商品を原告商品であると誤信して購入した業者は存在しない。
 商品等表示は、それ自体に独立の価値が存在せず、商品の出所たる企業の営業上の信用等と結び付くことによって一定の価値を生じるところ、被告商品の販売行為の相手方は、被告を知っている卸売業者・小売業者であり、出所を誤信し、被告商品を原告商品と誤信して取引を行った者はいない。
 したがって、本件においては、逸失利益に係る損害が生じていないというべきである。
(イ)不正競争防止法5条1項に基づく損害額
a 譲渡数量
 認める。
b 原告商品が「その侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たらないこと
 原告商品は、一等地にある商業地の路面店、著名な百貨店や空港内の直営店にて6万円ないし12万円で販売されるのに対し、被告商品は、安価な鞄等を販売する店舗にて数千円程度で販売されており、その販売価格の差は30倍ないし129倍である。またイッセイミヤケのブランドに誘引されて路面店等において原告商品を購入する需要者層と、ブランドに関係なく安価な多種多様な鞄等を販売する店舗において被告商品を購入する需要者層は明らかに異なる。これらの事実からすれば、被告商品と原告商品との間には、排他的関係も補完関係も一切存在しないことは明らかである。
 また、被告は前記(ア)のとおり、被告商品を卸売業者・小売業者のみに販売しているのに対し、原告イッセイミヤケは、原告商品を卸売販売するという商流は一切とっていない。原告イッセイミヤケは卸売業者・小売業者への販売を行わないのであるから、被告商品の販売によって、原告イッセイミヤケの卸売業者・小売業者への原告商品の販売が阻害される関係にない。
 したがって、原告商品が「その侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たる余地はない。
c 単位数量当たりの利益の額
 原告イッセイミヤケが単位数量当たりの利益の額を裏付ける証拠として提出する陳述書(甲242)は、@そこに記載された各数値を裏付ける客観的証拠がないこと、A限界利益ではなく粗利益しか示されていないこと、B価格等に顕著な差異がある多数の商品を「ショルダーバッグ」等と大まかにカテゴライズして集計を行なっていること、C侵害行為の開始時点を基準として集計していることが窺われないこと等の理由から、客観性を欠き、信用性は低い。
d 損害額
 争う。
e 「販売することができないとする事情」(不正競争防止法5条1項ただし書)
 前記(ア)で述べたとおり、被告商品の販売先は、被告を知っている卸売業者・小売業者であり、被告商品の出所は原告イッセイミヤケであると認識して購入した者はいないから、仮に、被告商品の形態が原告イッセイミヤケの商品等表示たる形態と類似するとしても、同形態の寄与度はないか、あるとしても極めてわずかである。また、原告イッセイミヤケはこれまで卸売業者・小売業者への販売を行なっておらず、被告商品の販売により原告商品の市場が奪われる関係には立たないから、被告商品の販売がなかったとしても原告イッセイミヤケの卸売業者・小売業者への販売が増える関係にはない。
 さらに、前記bで述べたとおり、被告商品と原告商品の販売価格との差は30倍ないし129倍であり、デザインにも顕著な差異があるから、原告商品と被告商品の需要者層は明らかに異なる。
 したがって、原告イッセイミヤケには、被告が被告商品を販売した数量の全部又は大部分につき、「販売することができないとする事情」が存在したということができる。
(ウ)著作権法114条1項に基づく損害額
a 譲渡数量
 争う。
b 単位数量当たりの利益の額
 争う。
c 損害額
 争う。
(エ)弁護士費用
 争う。
イ 原告デザイン事務所の損害
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(原告商品の形態は商品等表示に該当するか)について
(1)前記前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実を認めることができる。
ア 原告商品の形態
(ア)原告イッセイミヤケは、平成16年7月より、女性向けブランドである「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」における鞄シリーズのブランドである「Bilbao(ビルバオ)」として、原告商品の販売を開始した(甲6ないし12)。その後、平成22年9月、上記鞄シリーズを軸とした雑貨ブランドである本件ブランドを立ち上げ、本件ブランドの下で原告商品の販売を継続した(甲13ないし21)。
(イ)原告イッセイミヤケは、1年に2回程度、原告商品の新商品を発売してきたが、それらの商品は、わずかな例外(「CHORD」シリーズ・甲218等、「MADO」シリーズの一部・甲269)を除き、いずれも鞄等を構成する柔らかい生地の表面に、相当多数のタイル状の三角形のピースを2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるように配置するとの特徴を有しており、本件特徴@及びA、並びに、「その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する相当多数の三角形のピースを、タイルの目地のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置する」という特徴(以下「本件特徴B´」という。)を備えていた(以下、同形態を「本件形態1´」)という。)。
 また、本件形態1´を備える原告商品のうち、およそ9割においては、タイル状のピースは同じ大きさの直角二等辺三角形であり、この二等辺三角形のピース4枚が90度の頂点を中心に組み合わさり、正方形を構成するように規則的に配置されていた。(甲6ないし16、18ないし23、25ないし53、55ないし77、81、83ないし85、87ないし91、93ないし98、100ないし103、105ないし114、116、117、121、123ないし128、130ないし136、138ないし144、146ないし150、159、160、162、164ないし170、173ないし176、178ないし183、187ないし189、193、195ないし197、199、200、202ないし206、208ないし227、231ないし240、乙6等)。
(ウ)本件ブランドを取り上げた平成22年9月発行の雑誌においては、原告商品のほとんどに二等辺三角形のピースが使われていること、デザインの開発段階では二等辺三角形以外の30ないし40パターンのピースが検討されたが最終的に二等辺三角形が採用されたこと、その理由について原告商品の企画チームのデザイナーが「一つのシンプルな三角形をつなぎ合わせることで、いくらでも形が広がっていくのが面白かった」と述べていることが紹介された(甲16)。
イ 原告商品の販売実績
 原告商品の平成23年度以降の国内売上額は、以下のとおりである(甲242)。
 平成23年度  ●(省略)●
 平成24年度  ●(省略)●
 平成25年度  ●(省略)●
 平成26年度  ●(省略)●
 平成27年度  ●(省略)●
 平成28年度  ●(省略)●
ウ 原告商品の取扱店舗及び展示方法
 原告イッセイミヤケは、原告商品のみを取り扱う店として、平成22年9月、銀座松屋に専門店を出店し、その後、銀座、青山、丸の内、大阪船場、神戸の商業地で路面店を展開しているほか、札幌から福岡まで全国の複数の著名な百貨店や成田空港等の空港内に専門店を設け、平成29年9月当時、全国に21店舗を出店していた(甲150、243)。
 また、上記専門店においては、荷物に合わせて外観が立体的に変形するとの原告商品の特徴を分かりやすく展示するため、原告商品を、中に物を入れた状態で陳列していた(甲27、72、63、150、242)。
エ 原告商品の雑誌等への掲載
 原告商品は、発売開始以来、「FUDGE」、「VOGUE」、「ELLE」といった女性ファッションを扱う各種雑誌に多数掲載されたほか、「FASHION PRESS」、「FASHION HEADLINE」等の女性ファッションを取り上げるウェブサイトに掲載された(甲19ないし22、25ないし29、32、34ないし46、48ないし59、61ないし65、67ないし72、74ないし79、83ないし85、87、88、90、91、93ないし97、100ないし103、105ないし107、111ないし114、116ないし118、121ないし128、130ないし139、141ないし143、146ないし155、158ないし167、169、170、173ないし176、178ないし180、182ないし185、187ないし190、193、195ないし196、199ないし201、203ないし214、217ないし225、227ないし238)。
オ 新聞等への掲載
(ア)日本繊維新聞、繊研新聞、毎日新聞、サンケイエキスプレス及び読売新聞は、平成22年7月から9月、原告イッセイミヤケが本件ブランドを立ち上げる旨を報じるに際し、いずれも表面が立体的に変化した状態の原告商品の写真を掲載した(甲13ないし16、18)。
(イ)原告商品は、平成19年秋、その表面が立体的に変化した状態の写真がニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に掲載された(甲240)。このことは、原告商品を取り上げた平成22年9月1日発行の日刊新聞(サンケイエキスプレス)において、「2007年には『デザインと機能性』を併せ持ったアイテムだけを厳選して掲載するMoMA(ニューヨーク近代美術館)の商品カタログの表紙にも登場し、そのデザイン性が高く評価された。」と紹介された(甲16)。
(ウ)平成22年10月7日発行の繊研新聞は、原告商品の売上が好調であることを紹介し、表面が立体的に変化した状態の原告商品の写真を掲載した(甲24)。
(エ)原告イッセイミヤケは、平成23年4月14日、朝日新聞のテレビ欄の下段に、表面が立体的に変化した状態の原告商品の写真と共に、本件ブランドの広告を掲載した(甲30)。
(オ)平成23年6月16日発行の朝日新聞夕刊は、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載した(甲33)。
(カ)平成24年3月16日発行の繊研新聞は、原告商品の専門店の出店が拡大することを報じた(甲47)。
(キ)平成24年8月20日発行の繊研新聞は、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲60)。
(ク)原告イッセイミヤケは、平成24年10月6日、朝日新聞の2頁に、表面が立体的に変化した状態の原告商品の複数のカラー写真と共に、本件ブランドの広告を掲載した(甲66)。
(ケ)平成25年2月20日発行の繊研新聞は、原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲73)。
(コ)平成25年5月2日発行の繊研新聞は、原告商品につき「『バオ・バオ・イッセイミヤケ』が取り扱い各店舗で品切れが出るほどブレーク。」と報じた(甲80)。
(サ)平成25年5月8日発行の繊研新聞は、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載すると共に、同商品の売上がアジアからの観光客を中心に好調であり、「以前から前年比150%で伸びていたが、今年に入り予想を上回る売れ行きを見せている。」と報じた(甲81)。
(シ)平成25年5月10日発行の日経流通新聞は、原告商品がタイ人観光客の人気を集めている旨を報じた(甲82)。
(ス)平成25年7月9日発行の繊研新聞は、「ファッションビジネス13年春夏場所ヒット番付」として本件ブランドを紹介した(甲86)。
(セ)平成25年9月26日発行の毎日新聞は、表面が立体的に変化した状態の原告商品の写真を掲載するとともに、「『日本が世界に誇るプロダクト』。そんな声が選考委員会で上がるほど今年、『バオ・バオ・イッセイミヤケ』の存在は際立っていた。日本人だけでなく外国人観光客にも人気は抜群だ。」と紹介した(甲89)。
(ソ)平成26年1月7日発行の読売新聞は、原告商品がアジアの観光客に人気で、東京の百貨店では開店前に行列ができる旨を報じた(甲92)。
(タ)平成26年3月4日発行の繊研新聞は、原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲98)。
(チ)平成26年8月8日発行の繊研新聞は、表面が立体的に変化した状態の原告商品の写真を掲載すると共に、本件ブランドの専門店がアジアで相次ぎ出店する旨報じた(甲108)。
(ツ)平成26年10月28日発行の繊研新聞は、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載すると共に、中国の国慶節の期間中に売れたブランドとして本件ブランドを紹介した(甲109)。
(テ)平成27年1月26日発行の日本経済新聞は、「模倣品に悩むファッション業界」と題して、原告商品の写真を掲載すると共に、原告商品の模倣品が絶えない旨報じた(甲110)。
(ト)平成27年8月12日発行の繊研新聞は、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲140)。
(ナ)平成27年8月18日発行の朝日新聞(デジタル版)は、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の限定商品を紹介した(甲144)。
(ニ)平成27年11月18日発行の読売新聞夕刊は、原告商品であるケースの絵と共に、原告商品の愛用者によるコラムを掲載した(甲168)。
(ヌ)平成28年3月2日発行の繊研新聞は、原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲181)。
(ネ)平成28年7月22日発行の繊研新聞は、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲202)。
(ノ)Yahoo!Japan、時事通信JIJI及び朝日新聞デシタル(いずれもウェブサイト)は、平成28年9月5日、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲214ないし216)。
(ハ)平成29年2月21日発行の繊研新聞は、原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲226)。
(ヒ)Yahoo!Japan及び時事通信JIJI(いずれもウェブサイト)は、平成29年5月9日及び同月11日、表面が立体的に変化した状態の原告商品のカラー写真を掲載した(甲236、237)。
(フ)平成29年7月20日発行の繊研新聞は、原告商品のカラー写真を掲載すると共に、原告商品の新商品を紹介した(甲239)。
カ 雑誌・新聞等における原告商品の形態の評価
 原告商品について取り上げた前記エ及びオの雑誌や新聞等において、原告商品の形態は、以下のとおり表現された。
(ア)「シンプルなピースを組み合わせ、(中略)平面から球体へと変容する」(甲13)
(イ)「商品の特徴は三角パーツを並べた幾何学模様。」(甲14)
(ウ)「メッシュ地に三角パネルを圧着し、中に入れる物によって形が変わる画期的なデザインのバッグ」(甲15)
(エ)「柔らかいメッシュの継ぎ目がパタパタと折れ、三角形が連なった立体的なフォルムを自由自在に作り出している。」(甲16)
(オ)「折り紙風に形を変えられ、その形を維持できることから、入れる荷物の形状や持つ人の好みに応じてカスタマイズできる。」(甲24)
(カ)「シンプルなピースが集まって自在に変化するユニークな形と豊富なカラーバリエが魅力。」(甲25)
(キ)「三角形のピースが寄せ集まって一つとなり、そのピースの動きによって自在に形を変える画期的なアクセサリー。」(甲27)
(ク)「各ピースが立体的に形を変える。」(甲28)
(ケ)「三角のピースが生み出す偶然の形が特徴」(甲29)
(コ)「三角形をつないだデザイン(中略)で、畳んだりマチをつけたり、形が変わる」(甲33)
(サ)「三角形のピースの集まりで作られていることで、折り畳んだり、マチをつけたりと自由自在な使い方が魅力」(甲35)
(シ)「三角形のパーツをグラフィカルに組み合わせたバッグ」(甲47)
(ス)「三角形のシンプルなピースが生み出す不思議な形が特長」(甲52)
(セ)「このバッグ、大きくロゴが入っているわけではありませんが、特徴がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別できます。」(甲53)。
(ソ)「規則的に並ぶ三角パーツがユニークな表情を創る」(甲59)
(タ)「三角形のピースが集まって出来たバッグは、中に入れるものによって様々に表情を変化させます。」(甲66)
(チ)「三角形のピースを4つ組み合わせた正方形を1ユニットに、その数の大小で生み出される様々な形状のバッグ」(甲70)
(ツ)「バッグのベースは小さな三角形。その小さなピースが集まると、正方形や長方形のカラーブロックへと姿を変える。」(甲83)
(テ)「三角形のパーツをつなぎ合わせたフューチャーリスティックなデザインが人気」(甲86)
(ト)「メッシュ生地の上に、三角パネルを規則正しく並べたデザイン。入れる物によってバッグの形状が変化し、表情も変わる。」(甲89)
(ナ)「三角形の連なりは、もういろんなものに見えるんですよね。ある時は人のなめらかな肌のように、またある時はそびえ立つ岩肌のようにも見える。」(甲114)
(ニ)「三角形ピースで、変幻自在の表情に」(甲203)
(ヌ)「小さな三角ピースを組み合わせた特徴的なデザインは、一度見たら忘れられないインパクト」「バオバオイッセイミヤケの特徴は、なんといっても三角のピースを組み合わせたストラクチャー。実はこのピース、正三角形だけじゃない。実は二等辺三角形のものも存在するのだ。」(甲206)
(ネ)「『バオ・バオ・イッセイミヤケ』は三角形のピースが特徴的な大人気のバッグ。フレキシブルにシルエットを変え、偶然が生み出す形を楽しめる。」(甲236、237)
キ 受賞歴
(ア)原告商品は、平成25年9月、「日本が世界に誇るバッグ」として、毎日新聞が主催する毎日ファッション大賞の特別賞を受賞した(甲89)。
(イ)原告商品は、平成26年5月、繊研新聞社が選ぶ「2013年度百貨店バイヤーズ賞」を受賞した(甲104)。
(2)不正競争防止法2条1項1号は、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止するものであるところ、商品の形態は、通常、商品の出所を表示する目的を有するものではない。しかし、@商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、Aその形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は宣伝広告や販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている(周知性)場合には、商品の形態自体が、一定の出所を表示するものとして、不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当することがあるといえる。(3)原告商品の形態の特徴(特別顕著性)について
ア 原告商品は、前記1(ア)(イ)で述べたとおり、わずかな例外を除いて本件形態1´を備え、メッシュ生地又は柔らかな織物生地に、相当多数の硬質な三角形のピースが、2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるように配置されることにより、中に入れる荷物の形状に応じてピースに覆われた表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり、立体的で変化のある形状を作り出す。一般的な女性用の鞄等の表面は、布製の鞄のように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか、あるいは硬い革製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないことからすれば、原告商品の形態は、従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる特徴を有していたといえる。このことは、新聞や雑誌といったメディアにおいて「画期的なデザインのバッグ」(前記(1)カ(ウ))、「シンプルなピースが集まって自在に変化するユニークな形(前記(1)カ(カ))、「三角形のパーツをつなぎ合わせたフューチャーリスティックなデザイン」(前記(1)カ(テ)、「特徴がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別でき」る(前記(1)カ(セ))などと、そのデザインの独特さ、斬新さが取り上げられ、平成19年秋にはデザイン性と機能性を併せ持ったアイテムだけを厳選して掲載するニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に採用されたことからも裏付けられ、原告商品の形態は、これに接する需要者に対し、強い印象を与えるものであったといえる。
 したがって、原告商品の本件形態1´は、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していたといえ、特別顕著性が認められる。
なお、本件形態1´のうちの本件特徴@は、鞄に荷物を入れた場合に現れる形状であるが、鞄を荷物を入れるという通常の用途に従って使用した場合の形状であり、原告商品の販売の際にも中に物を入れた状態で陳列するなどして(後記(1)ウ)、そのような使用時の形状が分かるように、あるいは使用時にそのような形状が現れることを強調して販売され、需要者もその形状を認識していたか認識することが容易にできたというものである。これらからすると、本件において、本件特徴@を含む本件形態1´を形態の特別顕著性や周知性、混同の有無を検討するに当たり商品の形態とすることが相当である。
イ これに対し、被告は、原告商品の形態に特別顕著性が認められるとしても、それは「1種類の直角二等辺三角形のピースを規則的・連続的に配置する」という点のみである旨主張する。
 ここで、原告商品の形態の開発過程において、これを担当したデザイナーらは、二等辺三角形以外の多くのパターンを検討した上で、1種類の二等辺三角形で構成される形態を採用し(前記(1)ア(ウ))、実際に、その後発売された原告商品のおよそ9割においては、ピースは直角二等辺三角形であり、この二等辺三角形のピース4枚が90度の頂点を中心に組み合わさり、正方形を構成するように規則的に配置されていたと認められる(前記(1)ア(イ))。
 しかしながら、前記アのとおり、一般的な女性用の鞄等の表面は、布製の鞄のように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか、あるいは硬い革製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないのに対し、原告商品の形態は、中に入れる荷物の形状に応じて相当多数のピースに覆われた表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり、立体的で変化のある形状を作り出すものであり、この点において、従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる特徴を有していたといえる。そして、需要者は、本件ブランドの専門店、新聞や雑誌あるいは街頭において、荷物を入れ表面が立体的に変化した状態の原告商品を観察するところ(前記(1)ウないしオ)、その状態において、需要者は、従前の鞄との根本的な違いが存在する部分であることからも、原告商品の表面にピースの継ぎ目が折れ曲り、鞄の表面に様々な角度に傾いた相当多数の三角形を面とした多様な立体形状が現れる点が強く印象付けられるといえる。実際に、原告商品を取り上げた雑誌や新聞等において、三角形が二等辺三角形であることや一種類であることなどを挙げる記事がないわけではないものの(前記(1)カ(ソ)、(チ)、(ト)、(ヌ))、大部分の記事は、原告商品の形態につき「三角形が連なった立体的なフォルムを自由自在に作り出している。」、「三角形のピースが寄せ集まって一つとなり、そのピースの動きによって自在に形を変える」など、相当多数の三角形のピースが敷き詰められるように配置されることによって形成される多様な立体形状について述べるものが大部分である(前記(1)カ)。
 そうすると、本件特徴@ないしB´を備えている本件形態1´について、それのみで他の同種商品とは異なる顕著な特徴と捉えることが相当であり、被告の上記主張は採用することができない。
 したがって、被告の上記主張には理由がない。
(4)周知性について
 原告商品及び被告商品の需要者は、鞄を含むファッション全般に関心を有する一般消費者であるといえる。
 そして、本件形態1´を有する原告商品は、@平成16年7月より14年余りにわたって継続的に販売されたこと)、(前記(1)ア(ア)、A平成22年9月以降は原告商品を取り扱う専門店が出店され、平成29年9月時点で、全国の主要な商業地や空港にある21の店舗にて展示・販売されていたこと(前記(1)ウ)、B国内における売上は平成23年度から毎年倍増し、平成27年度には●(省略)●に達したこと(前記(1)イ)、C全国紙において複数回写真付きの広告等が掲載されたこと(前記(1)オ(ア)、(エ)、(オ)、(ク)、(セ)、(ナ)、(ノ))、D原告商品の形態は、売上が好調なことを報じる女性ファッション雑誌や新聞等のメディアにおいて、本件形態1´を一見して認識し得る形で度々取り上げられたこと(前記(1)エ及びオ)が認められる。また、(前記(1)カ(セ)のとおり、平成24年5月28日付けの「Fashionnap.com」の記事においては、「このバッグ、大きくロゴが入っているわけではありませんが、特徴がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別できます。」と掲載された。
 これらの事実によれば、遅くとも原告商品の売上が●(省略)●に達した平成27年時点では、長年にわたる宣伝広告、メディアの報道、販売実績の増大により、需要者の間において、本件形態1´が原告イッセイミヤケの出所を示すものとして広く認識されていたと認めるのが相当である。
 そして、前記(1)イのとおり、原告商品は、平成27年以降も、販売規模を維持し、広告宣伝が従前と同様に継続されていることからすると、原告商品の本件形態1´は、本件口頭弁論終結時点においても、原告イッセイミヤケの出所を示すものとして需要者に広く認識されていると認めることができる。
(5)小括
 以上によれば、原告商品の本件形態1´は、不正競争防止法2条1項1号の商品等表示に該当すると認められる。
2 争点2(原告商品の形態は周知ないし著名か)について
 前記1のとおり、原告商品の本件形態1´は、遅くとも平成27年の時点で、原告イッセイミヤケの出所を示すものとして全国の需要者に広く認識されていたと認めることができる。
3 争点3(被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか)について
(1)前記前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実を認めることができる。
ア 被告商品の形態
 被告商品は、いずれも本件形態1´のうち本件特徴@及びAを備えている。また、本件特徴B´に対応する被告商品の形態は、以下のとおりである。(甲5、312)
(ア)被告商品1
 一定程度の硬質な質感を有する10種類程度の三角形のピース(片面で67枚)を、タイルの目地のように1mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、不規則に配置する。
(イ)被告商品2
 一定程度の硬質な質感を有する6種類程度の三角形のピース(片面で52枚)及び2種類程度の四角形のピース(片面で4枚)を、タイルの目地のように2mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、概ね規則的に配置する。
(ウ)被告商品3
 一定程度の硬質な質感を有する30種類以上の三角形のピース(前面及び側面で151枚)及び9種類程度の四角形のピース(前面及び側面で17枚)を、タイルの目地のように2mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、不規則に配置する。
(エ)被告商品4
 一定程度の硬質な質感を有する30種類以上の三角形のピース(片面で131枚)及び3種類程度の四角形のピース(片面で5枚)を、タイルの目地のように2mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、不規則に配置する。
(オ)被告商品5
 一定程度の硬質な質感を有する30種類以上の三角形のピース(片面で131枚)及び3種類程度の四角形のピース(片面で5枚)を、タイルの目地のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、不規則に配置する。
(カ)被告商品6
 一定程度の硬質な質感を有する30種類以上の三角形のピース(片面で74枚)及び7種類程度の四角形のピース(片面で13枚)を、タイルの目地のように3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、不規則に配置する。
(キ)被告商品7
 一定程度の硬質な質感を有する30種類以上の三角形のピース(片面で101枚)を、タイルの目地のように1mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、不規則に配置する。
(ク)被告商品8
 一定程度の硬質な質感を有する30種類以上の三角形のピース(片面で131枚)及び3種類程度の四角形のピース(片面で5枚)を、タイルの目地のように1mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように、不規則に配置する。
イ 被告商品と同種の商品に係る需要者の反応
(ア)氏名不詳者は、平成29年7月12日、インターネット上の短文投稿サイトであるツイッターに、被告商品と同様に複数種類の三角形のピースが不規則に配置された鞄の写真を投稿し、「宇都宮でバオバオ2000円くらいで売ってた!安すぎか!」とツイートした(甲246)。
(イ)氏名不詳者は、平成29年1月17日、ツイッターに、被告商品と同様に複数種類の三角形のピースが不規則に配置された鞄の写真を投稿し、「イッセイミヤケのバオバオ、近所のいなげやで割安で売られてた。」とツイートした(甲248)。
(ウ)氏名不詳者は、平成29年6月9日、ツイッターに、被告商品と同様に複数種類の三角形のピースが不規則に配置された鞄の写真を投稿し、「オペラパークでBAOBAO超特価で売ってた」とツイートした(甲249)。
(エ)氏名不詳者は、平成29年3月2日、ツイッターに、被告商品と同様に複数種類の三角形のピースが不規則に配置された鞄の写真を投稿し、「BAOBAOのバック買ってから愛用しておる」とツイートした(甲250)。
(オ)氏名不詳者は、平成29年5月14日、ツイッターに、被告商品と同様に複数種類の三角形のピースが不規則に配置された鞄の写真を投稿し、「外出先でランチしようと入ったお店でご主人&奥さんに『あ!それ、イッセイミヤケのやつやんね?』って言われてんけど」とツイートした(甲252)。
(カ)氏名不詳者は、平成29年6月1日、ツイッターに、被告商品と同様に複数種類の三角形のピースが不規則に配置された鞄の写真を投稿し、「先日買ったバックがDのデザインの物とそっくり」とツイートした(甲254)。
(キ)氏名不詳者は、平成29年8月23日、ツイッターに、被告商品と同様に複数種類の三角形のピースが不規則に配置された鞄の写真を投稿し、「前のおばちゃんBAOBAOのカバン持ってる」とツイートした(甲261)。
(2)被告商品の形態は前記(1)アのとおりであり、いずれも、本件特徴@及びAに加え、一定程度の硬質な質感を有する相当多数の三角形のピースを、タイルの目地のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置するとの本件特徴B´を備えると認められる。そうすると、被告商品は、原告商品の顕著な特徴である本件形態1´を有する点において、原告商品と同一の商品等表示を使用するものといえる(なお、少なくとも、本件形態1´が周知になった後において、被告商品に接した需要者は、そのピースの質感や鞄の生地等から、鞄に荷物を入れた状態の本件形態1´を認識するといえる。)。
 一方、前記1(1)ア(イ)のとおり、本件形態1´を備える原告商品のおよそ9割は、ピースは直角二等辺三角形であり、この二等辺三角形のピース4枚が90度の頂点を中心に組み合わさり、正方形を構成するように規則的に配置されているのに対し、被告商品は、特に被告商品1、3ないし8においては複数種類の三角形のピースが不規則に配置され、被告商品2ないし6、8のピースの一部は四角形である点において、相違する。
 しかしながら、前記1(3)イで述べたとおり、需要者は、原告商品の形態を荷物を入れた状態で観察するところ、その状態では、原告商品の表面には凹凸が生じており、原告商品の表面に直角二等辺三角形のピースが規則的に並べられているという点よりも、ピースの継ぎ目が折れ曲り、鞄の表面に、様々な角度に傾いた相当多数の三角形を面とした多様な立体形状が現れる点が、需要者に強い印象を与えるということができる。また、このような表面に凹凸が生じた状態においては、同じ直角二等辺三角形であっても、傾きによって様々な大きさ及び角度の三角形に見えることに加え、継ぎ目が不規則に折れ曲がるため、ピースが規則的に並べられているか否かは需要者に強い印象を与えないといえる。加えて、被告商品2ないし6、8に用いられている四角形のピースは、いずれも正方形ではなく不規則な台形であり、周囲の三角形のピースに調和している上、その数も三角形52枚に対して4枚(被告商品2)、三角形151枚に対して17枚(被告商品3)、三角形131枚に対して5枚(被告商品4、5、8)、三角形74枚に対して13枚(被告商品6)と少なく、注意深く観察しなければピースの一部が四角形であることは分からない。
 そうすると、中に荷物を入れた状態の原告商品と、被告商品の外観は、タイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する相当多数の三角形のピースを、タイルの目地のように2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置するという本件特徴B´が需要者に印象付けられるのに対し、被告商品の複数種類の三角形及び四角形が不規則に配置されているとの特徴は、両商品を離隔的に観察した場合に判別し得る相違点とまではいうことができない。前記(1)イのとおり、インターネット上において、被告商品と同様に複数種類の相当多数の三角形のピースが不規則に配置された鞄を原告イッセイミヤケの商品であると誤認する、投稿に不自然な点がうかがわれない一般需要者によるとみられる投稿が複数存在することも、これを裏付けるといえる。
 以上によれば、原告商品の形態と被告商品の形態は、全体として類似するということができる。
 そして、前記1(4)のとおり、本件形態1´は原告イッセイミヤケの出所を示すものとして需要者に広く認識されていることからすると、被告商品に接した需要者は被告商品の形態が原告イッセイミヤケの出所を表示するものと認識するといえる。なお、本件形態1´が他の同種製品とは異なる顕著な特徴といえること、原告商品と被告商品の需要者がファッションに関心を有する一般消費者であることなどを考慮すると、原告商品と被告商品に価格差があり、また、原告商品は本件ブランドの商品のみを販売する専門店で売られているのに対し(前記1(1)ウ)、被告商品が販売されるのがそのような店でないとしても、これらは、原告告商品に接した需要者が被告商品の形態が原告イッセイミヤケの出所を表示するものと認識するといえるという上記判断を左右するものではない。前記(1)イによれば、現に、被告商品と同様の形態を有し、本件ブランドの商品のみを販売する専門店以外で販売された商品の形態を原告イッセイミヤケの出所を表示するものと認識した者がいた。
 したがって、被告商品の形態は、原告商品と出所の混同を生じさせるものであると認められる。
(3)以上によれば、原告商品の本件形態1´は、遅くとも被告商品の販売が開始された平成28年9月頃の時点においては、原告イッセイミヤケの周知の商品等表示になっていたということができるから(前記1(4))、被告による被告商品の販売行為は、不正競争法2条1項1号の不正競争行為に該当する。
 そして、原告イッセイミヤケは、被告の上記不正競争行為によって、原告商品の販売に係る営業上の利益を侵害されている又は侵害されるおそれがある者であるから、被告に対し、同法3条1項に基づき、本件形態1´を備えた、別紙1被告商品形態「被告商品形態1」ないし「被告商品形態8」記載の各形態のトートバッグ、ショルダーバッグ、リュックサック等の鞄及び袋物並びに携帯用化粧道具入れの譲渡、引き渡し、譲渡又は引き渡しのために展示、輸入の差止めを請求することができるとともに、同条2項に基づき、侵害行為を組成した被告商品の廃棄を請求することができる。
 原告イッセイミヤケは、対象商品の製造行為の差止めを求めているが、被告が被告商品を製造したと認めるに足りる証拠や被告がその製造等を行う能力や意思を有することをうかがわせる証拠はなく、かえって証拠(甲288)によれば、被告商品は中華人民共和国で製造されたことがうかがわれるから、製造行為の差止めの必要性は認められない。
(4)前記1(4)で述べたとおり、原告商品の顕著な特徴である本件形態1´は、被告が被告商品の販売を開始した平成28年9月よりも相当程度前である平成27年時点において原告イッセイミヤケの出所を示すものとして周知であり、被告商品の形態は本件形態1´を備える点において原告商品と類似し、原告商品と出所の混同を生じさせるものであることからすれば、被告は、被告商品の販売行為によって原告イッセイミヤケの原告商品の販売に係る営業上の利益を侵害することを知っていたか、少なくとも知らなかったことに過失があったものと認められる。
 したがって、被告は、原告イッセイミヤケに対し、同法4条に基づき、上記侵害行為によって原告イッセイミヤケが受けた損害を賠償する責任を負うというべきである。
(5)原告イッセイミヤケは、被告による被告商品の販売行為により営業上の信用を害されたと主張して、信用回復措置として別紙4広告目録第1記載のとおりの謝罪文を同目録第2記載の要領で掲載するよう求める。しかし、原告商品と被告商品が全く同一の形態でないこと、被告商品には、「Avancer」との独自のブランド名が付されている一方で本件商標が付されていないこと(後記5(1))など本件における侵害態様等に鑑みれば、原告イッセイミヤケに、被告に対する被告商品の販売等の差止めと損害賠償の支払を命ずる以上に謝罪文を掲載する必要性までは認められない。
4 争点4(原告商品1ないし6に著作物性が認められるか)について
(1)原告らは、原告商品1ないし6の個々の商品のデザインは創作性の程度が高いから著作物性が認められ、被告商品は原告商品1ないし6を複製ないし翻案したものであるから、原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害する旨主張する。
(2)原告商品1ないし6は、ショルダーバッグ、携帯用化粧道具入れ、リュックサック及びトートバッグであり、いずれも物品を持ち運ぶという実用に供される目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。
 著作権法は、著作権の対象である著作物の意義について、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ、その定義や著作権法の目的(同法1条)等に照らし、実用目的で工業的に製作された製品について、その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ、その特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないものは、「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著作物として保護されないが、上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には、美術の著作物として保護される場合があると解される。
(3)これを原告商品1ないし6についてみるに、前記(2)のとおり、原告商品1ないし6は、物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作されたものである。
 そして、原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原告商品1ないし6の本件形態1は、鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるように配置され、これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形するという特徴を有するものである。ここで、中に入れる荷物に応じて外形が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に応じた構成そのものといえるものであるところ、原告商品における荷物の形状に応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き、鞄の外観が変形する程度に照らせば、機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は、著作物性を判断するに当たっては、実用目的で使用するためのものといえる特徴の範囲内というべきものであり、原告商品において、実用目的で使用するための特徴から離れ、その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備えた部分を把握することはできないとするのが相当である。
 したがって、原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一なものとみることができず、著作物性は認められないから、その余の点について判断するまでもなく、原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。
5 争点7(本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否)について
(1)原告デザイン事務所は、被告の被告商品販売に係る不正競争行為により、原告デザイン事務所が本件商標を有する本件ブランドの持つ社会的信用やブランドイメージが毀損されたと主張し、被告に対し、不正競争防止法4条に基づき、損害賠償を求める。
 原告デザイン事務所は本件商標を保有するが、証拠(甲288、329の1、329の2)によれば、被告商品には「Avancer」とのブランド名が付されており、本件商標に類似する表示はされていない。これによれば、被告の行為により直ちに本件商標について原告デザイン事務所が有する利益が害されたとは認められない。
 また、原告デザイン事務所が、本件商標とは離れて、本件ブランドに付帯する社会的信用やブランドイメージの棄損を主張するのであれば、本件ブランドに係る価値の棄損が原告デザイン事務所に対する信用棄損に当たることを要するというべきである。しかし、原告商品を製造し、店舗を開設してこれを販売するのは原告イッセイミヤケであり(前記前提事実(2)、甲243)、本件ブランドの需要者に本件ブランドが原告デザイン事務所のブランドであると認識されていることを認めるに足りる証拠もない。
 したがって、本件ブランドに係る価値の棄損が原告デザイン事務所に対する信用棄損に当たるとは認められず、原告デザイン事務所は、被告の行為によって営業上の利益を侵害されたとは認められないから、不正競争防止法4条に基づく請求には理由がない。
(2)また、原告デザイン事務所は、被告が被告商品の販売により本件ブランドの価値を毀損する行為は一般不法行為に該当すると主張し、民法709条に基づく損害賠償を求めるが、前記(1)と同様の理由により、本件ブランドの価値の棄損により原告デザイン事務所に対する法的利益が棄損されたとは認めがたいから、上記請求にも理由がない。
6 争点8(原告らの損害額)について
(1)損害の発生
 前記3(4)のとおり、被告は、原告イッセイミヤケの周知な商品等表示である本件形態1´を備え、原告商品と類似する被告商品を販売し、かつ、同行為は原告商品と出所の混同を生じさせ、原告イッセイミヤケの営業上の利益を侵害したものと認められるから、不正競争防止法4条に基づき、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。
 損害に関し、被告は、被告商品を卸売業者・小売業者にのみ販売しており、これらの業者は被告商品を原告イッセイミヤケの商品であると誤信して購入したものではないから、原告イッセイミヤケには逸失利益に係る損害が発生していない旨主張する。
 しかしながら、仮に被告が被告商品を卸売業者・小売業者のみに販売していたとしても、被告商品の性質等に照らし、被告から被告商品を購入した卸売業者・小売業者は被告商品を我が国の小売市場で販売すると認められ、これと異なる事実を認めるに足りる証拠はない。そうすると、被告は、卸売業者・小売業者を通じて本件形態1´を備えた被告商品を小売市場に流通させているといえるのであるから、原告イッセイミヤケが原告商品を小売市場で販売しており、被告が被告商品を卸売業者・小売業者に販売しているとしても、そのことを理由として原告イッセイミヤケに逸失利益に係る損害が発生することがない旨の被告の主張は理由がない。
(2)不正競争防止法5条1項に基づく損害額
ア 被告商品の譲渡数量
 証拠(乙20の1ないし20の8)によれば、被告商品の譲渡数量は以下のとおりと認められる。
 被告商品1  ●(省略)●
 被告商品2  ●(省略)●
 被告商品3  ●(省略)●
 被告商品4  ●(省略)●
 被告商品5  ●(省略)●
 被告商品6  ●(省略)●
 被告商品7  ●(省略)●
 被告商品8  ●(省略)●
イ 「その侵害の行為がなければ販売することができた物」
 証拠(甲4、5、312)によれば、被告商品1及び原告商品1はいずれも女性用のショルダーバッグであり、被告商品2及び原告商品2はいずれも女性用の携帯用化粧道具入れであり、被告商品3及び原告商品3はいずれも女性用のリュックサックであり、被告商品4及び原告商品4、被告商品5及び原告商品4、被告商品6及び原告商品6、被告商品7と原告商品4、被告商品8と原告商品4はいずれも女性用のトートバッグであり、いずれも本件形態1´を備えていると認められる。
 不正競争防止法5条1項にいう被侵害者が「侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける被侵害者の製品、すなわち侵害品と市場において競合関係に立つ被侵害者の製品であれば足りると解すべきであるところ、被告商品1に対しては原告商品1が、被告商品2に対しては原告商品2が、被告商品3に対しては原告商品3が、被告商品4に対しては原告商品4が、被告商品5に対しては原告商品4が、被告商品6に対しては原告商品6が、被告商品7に対しては原告商品4が、被告商品8に対しては原告商品4が、それぞれ侵害品と市場において競合関係に立つ被侵害者の製品と認めること相当である。原告イッセイミヤケは、同社が本件ブランドの商品として販売するもののうち、被告商品と同種のカテゴリーに分類されるショルダーバッグ、携帯用化粧品入れ、リュックサック、トートバッグの全商品(甲242・別紙5に品番コードで特定された商品)が、各被告商品と競合関係に立つ製品であると主張するが、こらの商品のすべてが本件形態1´を備えていると認めるに足りる証拠はなく、同主張は採用できない。
 原告商品が不正競争防止法5条1項にいう被侵害者が「侵害の行為がなければ販売することができた物」に該当するかに関し、被告は、@被告商品は安価な多種多様な鞄等を販売する店舗において数千円程度で販売されるのに対し、原告商品はイッセイミヤケのブランドの下に直営店にて6万円ないし12万円で販売されること、A被告は被告商品を卸売業者・小売業者のみに販売するのに対し、原告イッセイミヤケは卸売業者・小売業者への販売を行わないことから、両商品の需要者層及び市場は異なり、原告商品は被告商品と競合関係に立たない旨主張する。
 しかし、被告商品と原告商品は、女性用の同種の鞄であって、最終的にはいずれもファッションに関心を有する一般消費者に対して販売されるものであり、かつ、被告商品の形態は原告商品と需要者において出所の混同を生じさせるものである(前記3(2))。これらを考慮すると、不正競争防止法5条1項の解釈に当たり、原告商品と被告商品に価格差があるなど被告主張の事情があったとしても、原告商品は、被告商品と市場において競合関係に立ち、「その侵害の行為がなければ販売することができた物」に該当するとすることが相当である。また、被告が被告商品を卸売業者・小売業者にのみ販売しているとしても、前記(1)のとおり、被告は、卸売業者・小売業者を通じて被告商品を小売市場に流通させているといえるから、同項の解釈に当たり、原告商品と被告商品の市場が異なるとすることは相当でない。
ウ 原告商品1ないし4、6の単位数量当たりの利益額等
 証拠(甲242)によれば、原告商品1ないし4及び6の1個当たりの販売価格から、工場からの仕入価格、ビニール袋費用、個別段ボール費用、品質表示費用、フォージカード費用、下げ札費用、ギャランティカード費用、検品費用、輸送費用、型製造費用、修理費用、加工ロス等の費用を合計した金額を控除した、1個当たりの利益額は、以下のとおりと認められる。
 原告商品1  ●(省略)●
 原告商品2  ●(省略)●
 原告商品3  ●(省略)●
 原告商品4  ●(省略)●
 原告商品6  ●(省略)●
 これに対し、被告は、上記利益額は製品の売上から製造原価のみを控除した利益額(粗利益)であり、不正競争防止法5条1項の利益の額とすることは相当でない旨主張する。しかしながら、上記価額は、原告商品の各1ないし4及び6の各販売価格から、製造原価だけでなく、上記のとおりの、原告イッセイミヤケが当該個数だけ売上を増加させるために直接関連して追加的に必要となるべき費用を控除した金額と認められ(甲242)、上記の他に同費用を認めるに足りる証拠はなく、被告の主張には理由がない。
エ 「販売することができないとする事情」(不正競争防止法5条1項ただし書)
(ア)不正競争防止法5条1項ただし書にいう「販売することができないとする事情」とは、侵害行為により譲渡された数量と侵害行為により被侵害者が譲渡することができなくなった数量との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。
 被告は、原告商品と被告商品には大きな価格差が存在すること、被告商品の販売がなかったとしても原告イッセイミヤケの卸売業者・小売業者への販売が増える関係にないこと等から、原告イッセイミヤケには、被告が被告商品を販売した数量の全部又は大部分につき、販売することができない事情が存在したと主張する。
 ここで、被告の主張する事情のうち、原告商品と被告商品の価格差についてみると、小売店において、被告商品1が2730円で、被告商品2が780円で、被告商品3が3540円で、被告商品4が3900円で、被告商品5が3900円で、被告商品6及び7が併せて6480円で、被告商品8が6372円で、それぞれ販売された事実が認められる(甲338ないし342)。他方、原告商品の小売価格は、原告商品1が3万6000円、原告商品2が1万2000円、原告商品3が8万3000円、原告商品4が5万8000円、原告商品6が3万2000円、原告商品4が5万8000円であると認められる(甲242)。そうすると、小売店において販売された被告商品の上記価格と比べ、原告商品の小売店での販売価格は、価格差の割合が最も小さいものでも約9倍(被告商品8と原告商品4)であり、多くの商品が約13倍を超え、それが約23倍であったもの(被告商品3と原告商品3)もあった。これらの価格差は相当に大きい。
 他人の商品等表示を使用する不正競争が問題となる場面において、需要者は、商品の購入の有無を決定するに当たり、商品等表示が示す出所のみならず、価格、品質等を総合的に考慮し、商品の価格も需要者の購買意欲(商品の顧客吸引力)に相当程度影響を与える場合があるといえる。そして、原告商品と被告商品の価格帯やそれらが服飾品であることを考えると、この価格差は、他人の商品等表示を使用する不正競争における不正競争防止法5条1項に基づく損害賠償を請求する場面においては、侵害行為により譲渡された数量と侵害行為により被侵害者が譲渡することができなくなった数量との相当因果関係を阻害する事情に当たるというべきであり、本件については、その価格差を考慮し、被告商品の販売数量のうち、90%に相当する数量については、被告による不正競争行為がなくとも、原告イッセイミヤケが原告商品を「販売することができないとする事情」があったと認めるのが相当である。したがって、前記アの被告商品の譲渡数量のうち90%に相当する個数に応じた金額を控除した金額を、原告イッセイミヤケの損害額とすべきである。
(イ)被告は、原告イッセイミヤケは卸売業者・小売業者への販売を行なっていないから、被告商品の販売がなかったとしても原告イッセイミヤケの卸売業者・小売業者への販売が増える関係になく、この点を「販売することができないとする事情」として考慮すべき旨主張する。
 しかしながら、被告から被告商品を購入した卸売業者・小売業者は被告商品を我が国の小売市場で販売するのであり(前記(1))原告イッセイミヤケが卸売業者・小売業者への販売を行っていなかったことを「販売することができないとする事情」として考慮するのは相当ではない。
オ 原告イッセイミヤケの損害額
 以上を前提に、原告イッセイミヤケの不正競争防止法5条1項に基づく損害額を、前記アの被告商品の販売数量に前記ウの原告商品1ないし6の一個当たりの利益額を乗じて算出した額の合計である6億5010万2900円(●(省略)●)から、上記販売数のうち90%に相当する個数(●(省略)●。小数点以下切り捨て)に前記利益額を乗じた額の合計である5億8503万4900円(●(省略)●)を控除して算出すると、6506万8000円となる。
(3)弁護士費用
 本件事案の性質・内容、本件訴訟に至る経緯、本件審理の経過等諸般の事情に鑑みれば、被告の不正競争行為と相当因果関係のある原告イッセイミヤケの弁護士費用相当額は、前記(2)の損害額の約1割に相当する600万円と認めるのが相当である。
(4)小括
 以上によれば、原告イッセイミヤケは、被告に対し、不正競争防止法4条に基づく損害賠償として7106万8000円(前記(2)と(3)の合計額)及びこれに対する不法行為後の日である平成29年10月4日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
7 結論
 よって、原告イッセイミヤケの請求は主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、原告デザイン事務所の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文第1項及び第2項には相当でないから仮執行宣言を付さないこととし、主文第3項には仮執行宣言を付すこととして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 柴田義明
 裁判官 安岡美香子
 裁判官 古川善敬


別紙1 被告商品形態
1.被告商品形態
 第1図は前面図、第2図は背面図、第3図は上面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 ショルダーバッグの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること
A 鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
C 上記@〜Bの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分(「まち」があれば「まち」に相当する部分)にも施されていること
 第1図:被告商品1 前面図
 第2図:被告商品1 背面図
 第3図:被告商品1 上面図
2.被告商品形態2
 第1図は前面図、第2図は背面図、第3図は上面図、第4図は下面図。第5図は左面図、第6図は右面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 携帯用化粧品入れの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、携帯用化粧道具入れの構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて携帯用化粧道具入れの外観が立体的に変形すること
A 携帯用化粧道具入れの生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
 第1図:前面図
 第2図:背面図
 第3図:上面図
 第4図:下面図
 第5図:左面図
 第6図:右面図
3.被告商品形態3
 第1図は前面図、第2図は背面図、第3図は上面図、第4図は下面図。第5図は左面図、第6図は右面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 リュックサックの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること
A 鞄の生地に黒色の無地の柔らかい織物生地を使用し
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
C 上記@〜Bの特徴が「かぶせ」の表面及び裏面の一部にも施されていること
 第1図:前面図
 第2図:背面図
 第3図:上面図
 第4図:下面図
 第5図:左面図
 第6図:右面図
4.被告商品形態4
 第1図は前面図、第2図は背面図、第3図は上面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 トートバッグの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること
A 鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
C 上記@〜Bの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分(「まち」があれば「まち」に相当する部分)にも施されていること
 第1図:前面図
 第2図:背面図
 第3図:上面図
5.被告商品形態5
 第1図は前面図、第2図は背面図、第3図は上面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 トートバッグの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること
A 鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
C 上記@〜Bの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分(「まち」があれば「まち」に相当する部分)にも施されていること
 第1図:前面図
 第2図:背面図
 第3図:上面図
6.被告商品形態6
 第1図は前面図、第2図は背面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 トートバッグの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること
A 鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
 第1図:前面図
 第2図:背面図
7.被告商品形態7
 第1図は前面図、第2図は背面図、第3図は上面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 トートバッグの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること
A 鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用し
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
C 上記@〜Bの特徴が鞄の内側の上部(「まち」があれば「まち」に相当する部分)にも施されていること
 第1図:前面図
 第2図:背面図
 第3図:上面図
8.被告商品形態8
 第1図は前面図、第2図は背面図、第3図は上面図。なお、各図の色は形態に含めないものとする。
 トートバッグの形状に次の特徴を有する。
@ 中に入れる荷物の形状に応じて、鞄の構成部分であるピースの境界部分が折れ曲がることにより様々な角度がつき、荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変形すること
A 鞄の生地に黒色の無地のメッシュ生地を使用すること
B その上にタイルを想起させる一定程度の硬質な質感を有する大部分が三角形のピース(タイル)を、タイルの目地部分のように2mm〜3mm程度の同一の間隔を空けて、敷き詰めるように配置すること
C 上記@〜Bの特徴が鞄の内側のファスナーより上の部分(「まち」があれば「まち」に相当する部分)にも施されていること
 第1図:前面図
 第2図:背面図
 第3図:上面図

別紙2 被告商品目録
 被告商品1: 品番68697−01
  品番68697−26
  品番68697−32
  品番68697−37
  品番68697−39
  品番68697−50
  品番68697−90

 被告商品2: 品番76780−00
  品番76780−01
  品番76780−07
  品番76780−08
  品番76780−31
  品番76780−32
  品番76780−35
  品番76780−50

 被告商品3: 品番68696−01
  品番68696−26
  品番68696−32
  品番68696−37
  品番68696−39
  品番68696−50
  品番68696−90

 被告商品4: 品番60013−01
  品番60013−26
  品番60013−32
  品番60013−34
  品番60013−37
  品番60013−39
  品番60013−50
  品番60013−90

 被告商品5: 品番68054−01
  品番68054−32
  品番68054−34
  品番68054−39
  品番68054−49

 被告商品6: 品番43516−01
  品番43516−31
  品番43516−32
  品番43516−35
  品番43516−50

 被告商品7: 品番57134−01
  品番57134−32
  品番57134−35
  品番57134−39
  品番57134−50

 被告商品8: 品番68062−89

別紙3 原告商品目録
 原告商品1:品番BB71AG054
 原告商品2:品番BB63AG051
 原告商品3:品番BB63AG821
 原告商品4:品番BB63AG401
 原告商品5:品番BB71AG311
 原告商品6:品番BB63AG053

別紙4 広告目録
第1 広告の内容
1.見出し
 謝罪広告
2.本文(ただし、日付は広告掲載の日とする。)
 弊社は、貴社の「BAO BAO ISSEY MIYAKE」という名称のブランドの鞄や携帯用化粧道具入れ(以下、併せて「鞄等」といいます。)と酷似した鞄等を製造及び販売し、貴社の著作権を侵害しました。また、弊社の上記製造行為及び販売行為は、不正競争防止法違反にも該当し、貴社の業務上の信用を害しました。
 弊社の著作権法及び不正競争防止法違反の行為によって、貴社に多大なるご迷惑をお掛けしたことを深くお詫びしますとともに、今後上記のようなご迷惑をかけないことを誓約いたします。
 平成 年 月 日
 (住所は省略)
 株式会社ラルジュ
 C
 (住所は省略)
 株式会社三宅デザイン事務所
 A殿
 (住所は省略)
 株式会社イッセイミヤケ
 B殿
第2 広告の要領
1.掲載媒体
(1)新聞
 朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、繊研新聞全国版朝刊
(2)ホームページ
 被告ホームページ(URLは省略)
2.掲載スペース:2段×4.0cm
3.使用活字:見出し及び被告の名称は12ポイント(ゴシック)、その他は10ポイント
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/