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【事件名】パチスロ機の特許侵害事件(2)
【年月日】平成17年10月12日
 知財高裁 平成17年(ネ)第10001号 損害賠償請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成11年(ワ)第23945号)
 (平成17年9月12日 口頭弁論終結)

判決
控訴人 サミー株式会社
代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 牧野利秋
同 飯田秀郷
同 栗宇一樹
同 早稲本和徳
同 七字賢彦
同 鈴木英之
同 片山英二
同 北原潤一
同 大月雅博
同 牧義行
同 近藤義徳
訴訟復代理人弁護士 隈部泰正
同 大友良浩
補佐人弁理士 黒田博道
同 廣瀬隆行
同 米山淑幸
控訴人補助参加人 日本電動式遊技機特許株式会社
代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 島田康男
補佐人弁理士 紺野正幸
被控訴人 アルゼ株式会社
代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 松本司
同 岩坪哲
同 美勢克彦


主文
 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
 被控訴人の請求を棄却する。
 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 主文と同旨
2 被控訴人
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は、発明の名称を「スロットマシン」とする特許第1855980号発明(昭和63年3月18日出願〔特願昭63−65543号〕、平成6年7月7日設定登録、以下「本件特許」といい、その特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である被控訴人が、控訴人に対し、控訴人の製造・販売する製品が、本件特許権を侵害しているとして、100億6685万9000円及びこれに対する付帯金員の損害賠償の支払を求めた事案である。原審は、控訴人の製造・販売する製品が本件特許権を侵害していると認定判断し、被控訴人の請求を、74億1668万円及びこれに対する付帯金員の支払を求める限度で一部認容したため、控訴人は、原判決中、控訴人敗訴部分を不服として、その取消しを求めて控訴したものである。
2 当事者の主張
 当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」及び「第3 争点に関する当事者の主張」欄記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 控訴人の当審における主張
ア 本件特許に対し、平成13年6月25日、本件控訴人より無効審判請求がされ、無効2001−35267号事件として特許庁に係属したところ、特許庁は、平成14年12月25日、特許第1855980号発明(注、請求項1及び2に係る発明)についての特許を無効とする旨の審決(以下「別件審決」という。)をした。本件被控訴人は、東京高等裁判所に対し、別件審決に対する審決取消請求の訴えを提起し、同庁は、これを平成15年(行ケ)第36号事件として審理した結果、平成17年2月21日、本件被控訴人の請求を棄却する旨の判決をした。本件被控訴人は、上記判決を不服として、上告(平成17年(行ツ)第165号)及び上告受理(平成17年(行ヒ)第177号)の申立てをしたが、最高裁判所は、同年7月14日、「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない。」との決定をし、これにより、本件特許を無効にすべき旨の別件審決が確定した。
イ したがって、本件特許権に基づく被控訴人の請求は、理由がないことが明らかになったから、原判決中、控訴人敗訴部分を取り消して、被控訴人の請求を棄却すべきである。
(2) 被控訴人の反論
 控訴人の上記主張アの事実は認め、同イは争う。
第3 当裁判所の判断
1 控訴人の当審における主張アの事実は、当事者間に争いがない。
2 そうすると、特許第1855980号発明についての本件特許を無効にすべき旨の別件審決が確定したことに伴い、本件特許権は、特許法125条本文により、初めから存在しなかったものとみなされるから、本件特許権を有していることを前提とする被控訴人の請求は、その前提を欠くに至り、理由がないことが明らかである。
 よって、原判決中、控訴人敗訴部分を取り消し、被控訴人の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第1部
 裁判長裁判官 篠原勝美
 裁判官 青柳馨
 裁判官 宍戸充
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