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【事件名】商号“セコム”不正競争事件
【年月日】平成17年7月12日
 東京地裁 平成17年(ワ)第11271号 商号使用差止等請求事件
 (平成17年7月5日 口頭弁論終結)

判決
原告 セコム株式会社
訴訟代理人弁護士 石田省三郎
同 鎮西俊一
被告 A
被告 B


主文
1 被告らは、その営業上の施設又は活動に「セコム防災設備」の商号及び「セコム」の表示を使用してはならない。
2 被告らは、その営業上の施設又は活動に「セゴムサービス」の商号及び「セゴム」の表示を使用してはならない。
3 被告らは、その占有する「セコム防災設備」及び「セゴムサービス」の商号並びに「セコム」及び「セゴム」の表示の付された看板、備品、什器、広告その他の営業関連物品を廃棄せよ。
4 被告らは、原告に対し、各自300万円及びこれに対する平成17年6月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は被告らの負担とする。
6 この判決は、第4項及び第5項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求の趣旨
 主文と同旨
第2 請求の原因
1 不正競争防止法違反について
(1) 原告の商品等表示
 原告は、昭和37年7月、日本警備保障株式会社の商号で、日本国内で初めて民間警備保障会社として設立された、警備の請負及びその保障に関する業務、防犯、防火、防災、救急及び安全に関する設備、機器、システム等の開発、製造、賃貸、販売並びに運営に関する業務を目的とする株式会社である。
 原告は、昭和58年12月、セコム株式会社に商号を変更し、関連会社、関係会社、関係団体の社名等の多くに「セコム」を冠した表示を使用している。
 「セコム」は、「SECURITY COMMUNICATION」の2語の冒頭部分を結合して「SECOM」及び「セコム」とした原告による造語である。
(2) 周知性・著名性
ア 原告は、昭和48年2月、朝日新聞、読売新聞、日経新聞等の全国紙に「セコム社会の実現」を提唱する広告を掲載した。
 原告は、昭和49年6月に、東京証券取引所第2部に株式を上場し、同53年5月に、東京証券取引所第1部に昇格した。
 原告は、昭和58年12月に、商号をセコム株式会社に変更した後、長嶋茂雄元巨人軍監督を起用したテレビコマーシャルを初め、新聞、雑誌等において宣伝広告活動を展開している。
 原告は、平成17年3月現在の資本金は663億円、現在の事業所は544箇所、原告グループにおいては、現在、会社数154社、事業所数1467箇所に昇る。
イ 以上のとおり、原告が「セコム」の表示について多大な費用と時間をかけて宣伝・広告し、営業活動をしてきた結果、「セコム」の表示は、原告ないし原告グループ会社が提供する各サービス及び商品を指すものとして一般に広く認識され、「セコム」といえば、一般人が直ちに原告ないし原告グループ会社が提供する各種サービス、商品を想起するほどに、著名性を有している。
(3) 被告らの行為
ア 被告らは、平成16年11月ころから、関東地方を皮切りに、全国各地において、「セコム防災設備」あるいは「セゴムサービス」の名称を使用し、訪問販売の方法で消火器の点検と称して訪問先の消火器を見分し、点検・消火剤取替え等を実施したなどとして、法外な料金請求を行なう営業を行なっている。その訪問先には原告の契約先顧客も含まれている。
 被告らは、訪問先に交付する請求書、領収書等の書類に「セコム防災設備」の記名と押印をし、また、名刺及び作業服の胸ワッペンに「セコム防災設備」の表示をしているほか、営業に使用している車両(紺色ステーションワゴン・大阪***−**)に「セコム防災設備」の表示を付して全国各地で営業を継続している。
 被告らは、平成17年2月ころからは、「セゴムサービス」の名称を併せて使用し、前記と同様の営業を継続している。
イ 被告らの上記営業行為により被害を受けた(あるいは未遂に終わった)被害者から、原告に対し、苦情や問い合わせが相次ぎ、被害者側弁護士からは、原告において法的な対応をするよう要請が出ている。被害の状況は、届出等により、原告が把握できたものだけでも、別表のとおり、平成16年11月25日から平成17年2月24日までに35件になる。
(4) 類似性
ア 被告らが営業表示として使用している「セコム防災設備」は、「セコム」と普通名称である「防災設備」の2語からなっている。この商号の核心部分は、原告と同一の「セコム」であるから、両者の類似性は明白である。
イ 被告らが営業表示として使用している「セゴムサービス」は、「セゴム」と普通名称である「サービス」の2語からなっている。この商号の核心部分は、「セゴム」であるが、これは、原告の商品等表示である「セコム」の「コ」の部分に代えて濁点のある「ゴ」を使用しているだけであり、外観上はもちろん、称呼においても紛らわしく、両者には類似性がある。
(5) 混同のおそれ
 被告らが営業表示として使用する「セコム防災設備」の表示は、一般需要者において、これが原告あるいは原告グループ会社の表示であると誤認し、混同を生じさせることは明白である。現に、前記のとおり、被害者から原告に対して苦情や問い合わせがきている。
 被告らが営業表示として使用する「セゴムサービス」の表示は、外観及び称呼の類似により、原告のセコムと混同を生じさせるものである。
(6) 営業上の利益を害されるおそれ
 被告らの業務は、原告の業務範囲と重なり合う部分があり、被告らの使用する「セコム防災設備」及び「セゴムサービス」の営業表示は、原告の商号ないし営業表示である「セコム」と混同を生じさせるものである。
 被告らの行為は、原告が多大の費用と時間をかけて宣伝・広告、営業活動をし、業務への評価と信頼性が高まった結果獲得した「セコム」という表示の信用にただ乗りして営業上不正の利益を得るものである。
 また、被告らの行為は、一般需要者をして被告らの営業と原告の営業を混同させることによって、原告が多大の費用と時間をかけて築き上げてきた信用や信頼を毀損し、あるいは、著しく希釈化するものである。
(7) よって、被告らの上記行為は、不正競争防止法2条1項1号及び同2号の不正競争行為に該当するから、原告は、被告らに対し、同法2条1項1号、同2号、同法3条1項及び2項に基づき、請求の趣旨第1項ないし第3項記載のとおり、被告らの営業表示の使用の差止め及び看板等の廃棄を求める。
2 商法違反について
(1) 原告の商号である、セコム株式会社は、昭和58年12月に登記された。
(2) 被告らは「セコム防災設備」及び「セゴムサービス」の営業表示を使用しているところ、被告らの上記行為は、原告の著名表示である「セコム」の信用にただ乗りして不当な利益を上げようとするものである。
(3) よって、被告らの行為は、商法20条1項「不正の競争の目的を以て同一又は類似の商号を使用する」行為、同法21条1項の「不正の目的を以て他人の営業なりと誤認せしむべき商号を使用する」行為に該当するから、原告は、被告らに対し、商法20条1項、同法21条1項、2項に基づき、請求の趣旨第1項及び第2項記載のとおり、被告らの営業表示の使用の差止めを求める。
3 損害
 被告らは、原告の営業等表示ないし商号の核心部分である「セコム」と同一又は類似する「セコム防災設備」あるいは「セゴムサービス」の名称を使用し、訪問販売の方法で消火器の点検と称して訪問先の消火器を見分し、点検・消火剤取替え等を実施したなどとして、法外な料金請求を行なう悪質商法ともいうべき営業を行なっている。その訪問先には原告の契約先顧客も含まれている。
 そのため、被告らによる悪質商法の被害に遭ったり、訪問を受けた顧客からは、原告に対し、苦情や問い合わせが相次いでおり、原告の営業上の信用が著しく毀損された。
 被告らの上記行為により原告が信用を毀損されたことによる損害は300万円を下らない。
 よって、原告は、被告らに対し、不法行為に基づき損害賠償金300万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成17年6月17日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第3 当裁判所の判断
1 被告らは、適式の呼び出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出せず、請求原因事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。
2 以上によれば、「セコム」が原告の営業等表示として周知性を有すること、「セコム」と被告らが使用する「セコム防災設備」及び「セゴムサービス」とが類似していること、被告らによる「セコム防災設備」及び「セゴムサービス」の使用により、原告の営業と混同を生じさせるおそれがあることが認められるから、被告らの前記第2、1(3)ア記載の行為は、不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当する。そうすると、被告らの上記行為によって原告の営業上の利益が侵害されていると認められるから、原告の被告らに対する同法3条1項、2項に基づく請求は理由がある。
 被告らが「セコム防災設備」あるいは「セゴムサービス」を使用して訪問販売の方法で消火器の点検と称して訪問先の消火器を見分し、点検・消火剤取替え等を実施してその代金を請求する行為は、共同して、原告の営業上の信用を毀損する行為であるといえるから、共同不法行為(民法719条)に該当する。被告らの上記行為により原告が被った信用毀損による損害は、300万円と認めるのが相当である。そうすると、原告の被告らに対する不法行為に基づく請求は理由がある。
3 以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 設樂隆一
 裁判官 清水知恵子
 裁判官 吉川泉
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