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【事件名】著作権フリーの画像素材CD−ROM事件
【年月日】平成17年3月29日
 大阪地裁 平成14年(ワ)第4484号 著作権に基づく侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成17年2月7日)

判決
原告 A
訴訟代理人弁護士 南石知哉
同 岡村久道
同 堀寛
同 中道秀樹
同 北岡弘章
同 川内康雄
同 神田孝
同 湯原伸一
被告 イシイ株式会社
被告 株式会社アイピーネットシステム
被告両名訴訟代理人弁護士 三山峻司
同 泉秀昭
同 門脇隆宏


主文
1 被告イシイ株式会社は、別紙目録第1記載のCD−ROMを制作し、頒布してはならない。
2 被告イシイ株式会社は、その所有する別紙目録第1記載のCD−ROM及び別紙目録第11記載の画像データを廃棄せよ。
3 被告イシイ株式会社は、原告に対し、金1000万2500円及び内金866万2500円に対する平成14年3月14日から、内金134万円に対する平成15年9月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告らは、別紙目録第12記載の画像データを公衆送信してはならない。
5 被告らは、別紙目録第12記載の画像データを別紙目録第4記載のウェブページに掲載してはならない。
6 被告らは、その所有する別紙目録第12記載の画像データを廃棄せよ。
7 被告らは、原告に対し、連帯して金228万2500円及びこれに対する平成15年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
9 訴訟費用はこれを3分し、その1を原告の、その余を被告らの各負担とする。
10 この判決は、第3項及び第7項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 被告イシイ株式会社は、別紙目録第1記載のCD−ROMを制作し、頒布してはならない。
2 被告イシイ株式会社は、その所有する別紙目録第1記載のCD−ROM及び別紙目録第2記載の画像データを廃棄せよ。
3 被告イシイ株式会社は、別紙1記載のとおりの広告を、同被告のホームページ並びに毎日新聞の全国版朝刊の社会面に1回掲載せよ。
4 被告イシイ株式会社は、原告に対し、金3943万5000円及び内金3543万5000円に対する平成14年3月14日(解除の意思表示(甲11の1)が到達した日の翌日)から、内金400万円に対する平成15年9月1日(不法行為の終了した日の翌日)から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告イシイ株式会社及び被告株式会社アイピーネットシステムは、各自、別紙目録第2記載の画像データについて公衆送信してはならない。
6 被告イシイ株式会社及び被告株式会社アイピーネットシステムは、各自、別紙目録第3記載の画像データを別紙目録第4記載のウェブページに掲載してはならない。
7 被告イシイ株式会社及び被告株式会社アイピーネットシステムは、各自、その所有する別紙目録第2記載のウェブ用画像の画像データを廃棄せよ。
8 被告イシイ株式会社及び被告株式会社アイピーネットシステムは、各自、別紙2記載のとおりの広告を、別紙目録第5記載の各ウェブページ及び毎日新聞の全国版朝刊の社会面に1回掲載せよ。
9 被告イシイ株式会社及び被告株式会社アイピーネットシステムは、原告に対し、各自、金1841万4000円及びこれに対する平成14年1月1日(不法行為が行われていたことが明らかな日)からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 原告は、被告イシイ株式会社(以下「被告イシイ」という。)が制作販売する別紙目録第1記載のCD−ROM(以下「本件CD−ROM」という。)に収録されているデジタル画像データのうち、別紙目録第7記載のデジタル画像データの基となった写真を撮影した者であり、当該写真の著作権を有していると主張している。
 原告は、被告イシイが本件CD−ROMの制作販売行為により原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害したとして、同被告に対し、本件CD−ROMの制作頒布差止め等、謝罪広告、損害賠償及び慰謝料を請求している。
 また、原告は、被告らが、本件CD−ROMに収録されたデジタル画像データの一部(別紙目録第3記載のデータ)を、ウェブサイトへ掲載するために同一性を失うような低解像度のウェブ用画像を蓄積目的で複製し、同ウェブ用画像を用いて無料ダウンロードサービスを行い、その際原告の氏名を表示しなかったことにより、原告の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)をそれぞれ侵害したと主張して、被告らに対し、上記ウェブ用画像の掲載・ダウンロードサービスの差止め等、損害賠償及び慰謝料を請求している。
 これに対し、被告らは、原告が著作権を主張する写真の一部につき、原告が写真を撮影したことを否認している。また、被告らは、複製行為や公衆送信行為について明示又は黙示に原告の許諾があり、氏名表示権や同一性保持権については原告との間で権利不行使特約が存在すると主張し、さらに原告の本件訴訟における請求が権利濫用であると主張している。
1 当事者間に争いのない事実等(末尾に証拠の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 原告は、職業写真家組織「社団法人日本写真家協会」に所属する職業写真家である。
イ 被告イシイは、写植・製版印刷を業とし、付帯事業としてCD−ROMの制作販売等を行っている会社である。
ウ 被告株式会社アイピーネットシステム(以下「被告アイピーネット」という。)は、被告イシイのソフト部門を担当する会社であり、ホームページの制作、CD−ROMの制作等を業としている。代表者及び本店所在地は被告イシイと同一である。
(2) ビジュアルディスクについて
 訴外株式会社ディザイン(以下「ディザイン」という。)は、写真をデジタル画像データ化してCD−ROMに収録し、商品名を「Visual Disk」、シリーズ名を「デジタルフォトライブラリー」とするパッケージ商品(以下「ビジュアルディスク」という。)の販売を企画した。被告イシイは、ビジュアルディスクのCD−ROMを制作販売した者である。ビジュアルディスクの各CD−ROMには、それぞれ「海洋」「雲」「山」などのタイトルが付され、タイトルに沿うようなデジタル画像データ50点が収録され、CD−ROM1組あたり8800円(消費税別)で販売された。
(3) 本件出版契約について
ア 原告は、ディザインに対し、ビジュアルディスクのCD−ROMに収録するデジタル画像データの基となる写真を貸し出していたが、平成9年7月14日、これまでの合意内容を踏まえた著作権フリー写真集CD−ROM出版契約(甲18。以下「本件出版契約」という。)を締結した。
 その内容は次のとおりである。
 第2条(ポジ使用の許諾)
 1項 乙(原告)は甲(ディザイン)に対して乙所有のポジフィルム(以下「ポジ」という。)の情報をデジタル化により甲が管理または所有するCD−ROMに書き込む方法によって使用することを許諾する。
 2項 乙は前項により制作されたCD−ROMを、甲が"Visual Disk"として第三者に販売し、商品を購入した第三者が商品に書き込まれた情報を使用することを許諾する。
 第3条(ポジフィルムの権利について)
 1項 ポジに関する権利は、本契約に関わらず乙が有することとし、乙はポジ使用契約を甲以外の第三者と自由に締結することが出来る。
 2項 乙は前項に関わらず、ポジ使用について第三者と独占的な使用契約を締結する等、第2条による甲のポジ使用、あるいは商品の販売を妨げる契約は締結することが出来ないものとする。
 3項 甲は、写真に含まれている人物・物品・建物・場所等に関わるモデルリリース、商標権、著作権利用権は持っていない。万一その権利について紛争を生じても責任を負わなくてもよい。
 4項 使用契約を締結したポジの使用地域は、日本国内に限定されている。海外での使用、又は、輸出物への使用の場合、甲は乙に事前に報告する。報告なき使用での紛争が生じた場合、乙は責任を負わなくてもよい。
 5項 乙は使用契約を締結したポジと同一、又は、類似の写真が他社、又は、他のスポンサーで既に使用され、又は、将来使用されることがあることを承知する。
 第4条(商品の著作権について)
 商品の著作権は甲が有する。乙は甲の同意を得ないで商品または類似の商品を製造販売し、又は他人を通して製造販売させてはならない。
 第5条(著作権の保全について)
 1項 甲は自己負担又は自己の責任のもとでCD−ROMタイトルを発行する。既に出版・販売された商品の内容について、甲は乙に対し一切のクレーム、訴訟など乙の根本的著作権を侵さない。
 2項 乙が甲以外の第三者とポジ使用契約を締結した結果、甲と第三者の間で紛争が発生しても、当該紛争は乙において解決するものとし、甲は一切責任を負わないものとする。
 第6条(ロイヤリティについて)
 甲は乙に対し、第2条のポジ使用料として、ポジ1点に対し、5000円のロイヤリティを支払うものとする。
 第7条(ロイヤリティの支払条件及び、重版の報告について)
 1項 甲は乙に対してロイヤリティを、該当ポジの情報が書き込まれた商品の発売された日の翌々月末日に乙指定の金融機関口座に支払う。
 2項 CD−ROMプレスは、商品の各タイトル500枚のみとする。売り上げ報告は、半年に一度とする。
イ 原告は、平成9年夏にビジュアルディスクの新しいタイトルのためにディザインに貸し出した写真152点の使用料が未払であるとして、平成10年3月16日付け及び同月19日付けの書面にてディザインに対し支払催告を行い、同日付け書面は同月25日にディザインに到達した(甲19、20の1及び2)。
(4) 本件覚書
 原告は、上記のとおりディザインに対して使用料を支払うよう催告すると共に、実際にビジュアルディスクの販売を行っていた被告イシイに対し、平成10年3月16日付け通知書(乙2)を送付した。
 同通知書の送付を契機として、原告と被告イシイとの間で交渉がなされ、平成10年12月27日、原告と被告イシイの間で覚書(甲10。以下「本件覚書」という。)が取り交わされた。その内容は次のとおりである。
 「 甲(被告イシイ)は、甲が発売しているVisual Disk(CD.ROM)の中に乙(原告)が著作権を有する写真144点を使用し、この著作権使用につき株式会社ディザインを通じて許諾を得ていたところ、株式会社ディザインが破産宣告を受けかつ乙への著作権使用料が未払いのため契約が解除となったため、甲乙が改めて使用許諾につき協議した結果以下のとおり合意に達したので本覚書を作成する。
 1 甲と乙は、甲が発売しているVisual Disk(CD.ROM)中、乙が著作権を有する写真は別紙甲が平成9年6月作成のカタログ中のコードナンバー一覧表(別添同カタログに赤丸を付した写真)の144点であることを確認する。
 2 乙は甲が前項の写真を使用することを認める。
 3 甲は、上記写真の著作権使用料(消費税込・ただし500組を限度とする)として金39万9000円を乙に支払うものとし、1998年12月末日限り(中略)に振込送金して支払う。
 4 甲は、乙に対し、上記のCD.ROMのユーザーへの販売組数を本覚書締結後1年毎に乙に報告するものとする。
 5 甲が上記のCD.ROMを500組を超えて販売する場合は、甲は乙に対し、1組につき、著作権追加使用料として金1500円を乙指定の銀行口座宛振込送金して支払う。」
 本件覚書において対象とされた写真(別紙目録第8記載のデジタル画像データの基となった写真)144点を以下「原告写真」といい、平成9年に被告イシイによって制作されたビジュアルディスクのCD−ROMを以下「平成9年タイトル」という。
(5) 被告らの行為
ア 被告イシイは、本件覚書締結後もビジュアルディスクの制作販売を継続した。
イ 被告イシイは、平成8年5月ころインターネットのウェブサイト「ISHII ONLINE」(以下「本件ウェブサイト」という。)を開設し、ビジュアルディスクのCD−ROMに収録されているデジタル画像データ(約350dpi・120mm×95mm)よりも低解像度のウェブ用画像(約72dpi・120mm×95mm)を作成した上、本件ウェブサイトに掲載した。なお、本件ウェブサイトは、平成9年5月1日以降は被告アイピーネットが管理運営していた。
 被告アイピーネットは、平成9年12月ころから、本件ウェブサイトにおいて、「VDDS(ビジュアルディスクダウンロードサービス)」という標題のコンテンツで、ウェブ用画像をダウンロードすることができるサービス(以下「本件ダウンロードサービス」という。)を行った。本件ダウンロードサービスは、形式上は会員登録制とされているが、利用規約を承認の上本件ウェブサイトから「お申し込みフォーム」に従って送信すれば、誰でも入会費無料で会員となり、無料で本件ダウンロードサービスを利用できる。一度会員になれば、その後は自由に本件ダウンロードサービスを無料で利用できる。
 本件ダウンロードサービスに提供されているウェブ用画像のうち、原告がその基となった写真の著作権を有していると主張しているものは、別紙目録第3記載のウェブ用画像(以下「本件ウェブ用画像」という。)1254点である。
 本件ウェブ用画像には、左上に「ビジュアルディスク ISHI Co.,Ltd」との記載があるが、原告の氏名の表示はない。
ウ 訴外株式会社ミスミ(以下「ミスミ」という。)は、デジタルデザイン関連ツールの企画・販売などを業とする株式会社であり、ビジュアルディスクに関して被告イシイとの間で販売契約を締結していたが、ビジュアルディスクの販売に関してダウンロード販売することを企画した。ミスミからダウンロード販売の許諾を求められた被告イシイは、これを許諾した。
 ダウンロード販売される画像データの価格は、1画像あたり、高解像度(約350dpi・120mm×95mm)のものは3440円、低解像度(約72dpi・640pics×480pics)のものは500円である。被告イシイは、このうちロイヤリティーとして販売価格の40%を受け取ることとされていた。
(6) 原告による本件覚書解除の意思表示等
 原告は、被告イシイに対し、ビジュアルディスクには原告写真以外にも原告が著作権を有する写真を基とするデジタル画像データが収録されたCD−ROMがあるから、同被告のビジュアルディスクのCD−ROMの制作販売行為は原告の著作権を侵害するものであると述べるとともに、信頼関係の破壊を理由として本件覚書を直ちに解除し、ビジュアルディスクのCD−ROMの制作販売の中止、既存商品の廃棄、損害賠償を求めることなどを記載した平成14年3月12日付け通知書(甲11の1)を発送した。同通知書は翌13日に被告イシイに到達した。
 また、原告は、被告アイピーネットに対して、本件ダウンロードサービスの対象となっているデジタル画像データには、原告が撮影した写真を基にしたものが何点かあるとして、デジタル画像データの抹消と損害賠償を求める平成14年3月12日付け通知書(甲12の1)を発送し、同通知書は翌13日に被告アイピーネットに到達した。
(7) 本件訴訟において、原告は、当初別紙目録第2記載の画像データの基となった写真全てについて原告が撮影し著作権を有している旨主張していたが、当初第三者が著作権を有する写真についても請求できると誤解していたこと等を理由に、原告が撮影しその著作権を有している写真は別紙目録第7記載の画像データの基となった写真1243点(以下「本件写真」という。)であるとして、その内容を減縮した。しかし、被告らは、これに伴う訴えの一部取下げに同意しなかった。
2 争点
(1) ビジュアルディスクに収録されているデジタル画像データのうち、原告が撮影した写真を基とするものはどれか
(2) 本件覚書について
ア 本件覚書の対象とされた原告写真以外の本件写真についても、CD−ROMにデジタル画像データを収録する形式で利用することが本件覚書上許諾されているか
イ 本件覚書上、ウェブサイト掲載用の画像データを作成し、これをウェブサイトへ掲載したり、無料で本件ダウンロードサービスを行ったりすることも許諾されているか
ウ 本件覚書は、氏名表示権や同一性保持権の不行使特約を含むか
エ 本件覚書の解除の成否
(3) 本件出版契約について
ア 本件出版契約は、著作権譲渡契約か、著作物利用許諾契約か
イ 本件出版契約は、氏名表示権や同一性保持権の不行使特約を含むか
ウ 本件出版契約の解除の成否
エ 被告イシイは、本件出版契約解除前にディザインから著作権の譲渡を受けていたことを、原告に対して主張できるか
(4) ミスミのダウンロード販売行為について
(5) 権利濫用
(6) 差止めの必要性の有無
(7) 損害賠償請求について
ア 被告らの故意過失
イ 原告の損害
(8) 謝罪広告の必要性の有無
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(ビジュアルディスクに収録されているデジタル画像データのうち、原告が撮影した写真を基とするものはどれか)
【原告の主張】
(1) ビジュアルディスクに収録されているデジタル画像データのうち、原告が撮影した写真は別紙目録第7記載のデジタル画像データの基となった写真1243点(本件写真)である。
 原告は、その大半のマスターポジ写真を所持し、原告の個人フィルムライブラリーであるAフォトライブラリー「ブレーンセンター」(以下「ブレーンセンター」という。)にて保管している。本件訴訟において本件写真全てのマスターポジ写真の存在が提示できなかったのは、原告が保有する写真数が膨大であり、短期間に検索することが不可能であったからにすぎない。原告は、マスターポジ写真の存在が確認できなかった場合でも、記憶によって自ら撮影した写真を特定できた。
(2) 被告らは、原告が本件覚書締結時に原告写真144点しか指摘できなかったことを強調するが、本件覚書は144点の写真の使用料を清算するための合意であるから、原告はそれ以外の写真が原告の著作物ではないと認めたわけではない。
 また被告らは、当初原告が第三者撮影の写真について著作権に基づく主張をしていたことをもって、原告写真以外の写真を原告が撮影したということはできないと主張する。しかし、原告が当初第三者撮影の写真についても著作権に基づく主張をしていたのは、ブレーンセンターでの管理等を委託されていた第三者撮影の写真についても、原告が著作権に基づく訴訟上の請求ができると誤解していたためにすぎない。ブレーンセンターでは、第三者が撮影して原告に管理等を委託している写真については、ポジフィルムのマウント部に当該第三者を意味するアルファベットを記載して明確に原告が撮影した写真と区別していた。したがって、誤解解消後に整理した別紙目録第7記載のデジタル画像データの基となった写真には、第三者が撮影した写真は含まない。
【被告らの主張】
 原告写真以外の写真について、原告が撮影した著作物であることは否認し、原告の著作権について争う。
 被告イシイが、本件覚書締結時、ビジュアルディスクのCD−ROMに収録されている画像のうち原告が撮影した写真を基とするものを確定して欲しいと述べたところ、原告は原告写真144点しか指摘しなかった。また、本件覚書には、「乙(原告)が著作権を有する写真は…144点である」など、ビジュアルディスクに収録された全デジタル画像データのうち、その基となる写真について原告が著作権を有するのは原告写真144点であることが明記されている。
 また、当初原告が自己の著作物であるかのように主張していた写真の約10分の1は、その後原告の著作物ではないことが判明した。このことは、それ以外にも原告の著作物ではない写真を原告が自己の著作物であると主張していることを窺わせる事情である。原告は、第三者から管理を委託されている写真についてはマウント部に当該第三者のイニシャルを入れており、自分が撮影した写真との区別は可能であるから、そのような齟齬はないと主張するが、全ての写真について必ずしもそのような取扱がなされているわけではないから同主張は信用できない。
 さらに、マスターポジ写真さえ提示できず、原告が自己の記憶のみに基づいて自らが撮影した写真であると主張しているもの(約230点。なお、そのうちいくつかは撮影場所も原告が撮影したとの供述もない。)については、原告の著作物であることの証拠がないに等しい。
2(1) 争点(2)(本件覚書について)ア(本件覚書の対象とされた原告写真以外の本件写真についても、CD−ROMにデジタル画像データを収録する形式で利用することが本件覚書上許諾されているか)
【被告イシイの主張】
 本件覚書には、対象となる著作物を原告写真に限定する旨の確認条項がある。
 また、原告写真について未払となっていた使用料を支払う旨の記載や、原告写真の使用を認めるとの記載がある一方で、ビジュアルディスクの中の平成9年タイトルに限定することなく、1年ごとの販売組数の報告を義務付けたり、500組を超えて販売する場合の著作権追加使用料規定などをおいている。
 本件覚書締結当時、原告は、被告イシイが今後もビジュアルディスクを制作販売すること、そしてその中には原告写真以外の本件写真を基とする画像データが収録されたCD−ROMがあることを、当然了解していた。
 したがって、原告は、本件覚書において、原告写真については明示的に、原告写真以外の本件写真については黙示的に、その写真を基として作成されるデジタル画像データを収録する本件CD−ROMを制作販売することを許諾していたというべきである。
【原告の主張】
 本件覚書は、平成9年タイトルにそのデジタル画像データが収録されているにもかかわらず、ディザインが支払わなかった写真152点の使用料を、被告イシイがディザインに代わり原告に支払うことを内容とする未払使用料の清算契約である。このことは、支払われた金額39万9000円(内消費税1万9000円)が、10円(ポジ1点の使用料)×500組(CD−ROMプレス数)×152点÷2によって算出されることからも裏付けられる。
 ただし、このとき原告は、自分が撮影した写真として原告写真144点しか指摘できなかったため、原告写真144点に関してのみ、そのデジタル画像データを収録したCD−ROMを販売することを許諾した。原告は、本件覚書締結当時、被告イシイがディザインのプレスしたCD−ROMの在庫商品を販売している販売業者にすぎないと認識していたため、その使用許諾料はディザインから受領しており、改めて被告イシイが支払う必要はないと考えていた。被告イシイが、本件CD−ROMを自らプレスし、パンフレットを新しく作り直し、インターネットや代理店を通じて販売しているのを知ったのは、本件覚書締結後である。
 原告は職業写真家であるから、写真の著作権使用料等も収入の一部としている者である。したがって、約1000点以上の写真について他に黙示に無償利用を許諾することはあり得ない。
 したがって、原告写真以外の本件写真を基とするデジタル画像データが収録されたCD−ROMについてまでその制作販売を許諾したものではない。
(2) 争点(2)イ(本件覚書上、ウェブサイト掲載用の画像データを作成し、これをウェブサイトへ掲載したり、無料で本件ダウンロードサービスを行ったりすることも許諾されているか)
【被告イシイの主張】
 著作物の販売を許諾されているときは、その広告宣伝の範囲での利用も許諾されているというべきである。
 ビジュアルディスクは、デジタル画像データを収録したCD−ROMであるが、本件覚書締結当時、このような商品の広告宣伝を行う場合には、収録されているデジタル画像データの一部をウェブサイトへ掲載したりダウンロードサービスしたりする方法を採ることが社会的に認知されていた。このことからすれば、本件ウェブ用画像の作成、本件ウェブサイトへの同画像の掲載、本件ダウンロードサービスは、いずれもビジュアルディスクの販売のための宣伝広告の一環として、本件覚書締結当時許諾されていたとするのが、本件覚書の合理的意思解釈というべきである。
 また、被告らは、本件ウェブサイトへの掲載や本件ダウンロードサービスをあくまで広告宣伝行為と考えており、別途利益を得る目的で行ったわけではない。
 したがって、原告は、本件覚書によって、本件ウェブ用画像を作成して、本件ウェブサイトへ掲載することや本件ダウンロードサービスを行うことについても許諾していたというべきである。
【原告の主張】
 本件覚書は未払使用料の清算を目的とする契約にすぎない。
 本件ウェブ用画像を作成したことは原告の著作物(写真)の複製行為というべきであり、本件ウェブサイトへの掲載や本件ダウンロードサービスの実体は本件ウェブ用画像という原告の著作物の複製物を公衆送信する行為にほかならない。また、本件ウェブ用画像を本件ダウンロードサービスによりダウンロードすればカンプの作成等が可能になるのであるから、上記行為は原告の著作権者たる地位に基づく経済的利益を害するおそれのある行為である。未払使用料の清算を目的とする契約によって、原告の著作権(複製権、公衆送信権)に関わり、かつ原告の著作権者たる地位に基づく経済的利益を害するような行為が許諾されていると解釈することはできない。
 仮に本件ウェブ用画像を作成し、これを本件ウェブサイトに掲載し、本件ダウンロードサービスを行うことが、広告宣伝活動の一環であっても、被告らが別途利益を得る目的がなかったとしても、そのことは被告らの著作権侵害行為の違法性を阻却するものではない。
(3) 争点(2)ウ(本件覚書は、氏名表示権や同一性保持権の不行使特約を含むか)
【被告イシイの主張】
ア 氏名表示権について
(ア) 本件CD−ROMについて
 原告は、本件覚書締結時、本件CD−ROMに収録されている画像データに原告の氏名が表示されていないことを知っていた。しかし、原告は、被告イシイに対し、本件覚書締結に際し、本件CD−ROMに原告の氏名を表示するよう要求しなかった。
 また、ビジュアルディスクのような、著作権フリーで修正加工が自由な画像素材集の商品の利用態様からしても、氏名表示を一々要求することは非現実的である。
 したがって、本件CD−ROMに原告の氏名を表示しないことに対し氏名表示権を行使しないことについて、原告は本件覚書において黙示に合意していたというべきである。
(イ) 本件ウェブ用画像について
 本件ウェブサイトの開設や本件ダウンロードサービスは、いずれもビジュアルディスクの商品の広告宣伝のために行われた。本件ウェブ用画像はそのために作成されたものにすぎない。
 ビジュアルディスクは、著作権フリーの画像素材集であり、本件CD−ROMにおいてさえ本件覚書によって氏名表示権を行使しないことが黙示に合意されていたと解される以上、その広告宣伝のために作成される本件ウェブ用画像に関して氏名表示権を行使しないことについても、本件覚書で黙示に合意されていたというべきである。
イ 同一性保持権について
(ア) 本件ダウンロードサービスで提供されるのは、本件CD−ROMに収録されたデジタル画像データを低解像度のものにした画像データにすぎず、基となる写真と比較して構成そのものには変形を加えていない。
 また、本件ダウンロードサービスで提供される画像データが低解像度のものであることは明らかであるから、これを利用しようとする者は、画像の基となる写真のきめ細かな色合いが反映されていないことを承知している。
 さらに、本件ウェブ用画像を作成し、これを本件ウェブサイトに掲載したり本件ダウンロードサービスに供したりしても、原告の声望が害されることはない。
 したがって、本件ウェブ用画像は、原告が本件写真について有する同一性保持権を侵害しているということはできない。
(イ) 本件CD−ROMは著作権フリーの画像素材集として販売されており、本件覚書締結時、収録されているデジタル画像データを本件CD−ROMの購入者が変形させて利用することが当然の前提となっていた。また、本件CD−ROMのようなデジタル画像データを扱う物の販売についてウェブサイト上で広告等を行うときには、当該データをさらに低解像度にしたデータを利用することは原告も認識していた。しかし、原告は、被告イシイに対し、本件覚書締結に際し、同一性保持権に基づく主張をしなかった。
(ウ) したがって、被告らによる同一性保持権侵害行為に該当する行為はないし、仮に本件ウェブ用画像の作成等が同一性保持権侵害行為に該当するとしても、原告は、被告イシイに対し、本件覚書において、黙示に当該権利を行使しない旨合意していたというべきである。
【原告の主張】
 原告は、本件覚書において、被告イシイに対し、氏名表示権や同一性保持権を行使しない旨の合意をしたことはない。
 また、本件覚書は未払使用料の清算を目的とする契約であるから、氏名表示権や同一性保持権のような著作者人格権を行使しないことの黙示の合意まで含んでいるものと解することはできない。
 なお、被告らは、本件ウェブ用画像の作成等が同一性保持権を侵害することはないと主張するが、本件ウェブ用画像のような低解像度のデジタル画像データへの改変は原告の意にそぐわない改変であり、職業写真家としての声望が害されるおそれがあるから、同一性保持権の侵害であることは明らかである。
(4) 争点(2)オ(本件覚書の解除の成否)
【原告の主張】
 原告は、平成13年4月ころ、被告イシイが新たにパンフレットを作り直し、自己の会社の名前入りのパッケージを施した本件CD−ROMを代理店やインターネットを通じて販売していることを知った。さらにその後、被告イシイが、原告に対して通知せず、被告アイピーネットとともに、本件ウェブサイトに本件ウェブ用画像を掲載し、本件ダウンロードサービスを行っていることを知った。
 原告はこれらの点について被告イシイに対して抗議したが、被告イシイは原告の抗議に全く取り合おうとしなかった。
 また、被告イシイは、本件覚書締結から3年を経過しているにもかかわらず、販売組数を原告に一度も報告せず、追加使用料を支払わなかった。被告イシイは500組を超えて販売された平成9年タイトルのCD−ROMがなかったためというが到底信用できない。
 以上の経緯から、原告と被告イシイとの間の信頼関係は完全に破壊された。
 原告は、平成14年3月12日付け通知書において、被告イシイに対して、信頼関係の破壊を理由として本件覚書を解除する旨の意思表示をした。同意思表示は、翌13日に被告イシイに到達しているから、同日をもって本件覚書は解除された。
【被告イシイの主張】
 原告は、本件覚書により、明示又は黙示に、本件CD−ROMの制作・販売や、本件ウェブサイトへの本件ウェブ用画像の掲載、本件ダウンロードサービス等をすることを許諾していたのであるから、これらの行為により、原告と被告イシイの間の信頼関係が破壊されることはない。
 また、確かに被告イシイは本件覚書に記載された報告義務を怠ったが、そのような不履行は些細な事項にすぎないから、解除の根拠となるものではない。追加使用料を支払っていないのは、平成9年タイトルの各CD−ROMにつき500組を超えた組数を販売するときに支払うべきところ、未だ販売組数が500組を超えて販売されていないからである。
 したがって、原告は本件覚書を解除することはできない。
3(1) 争点(3)(本件出版契約について)ア(本件出版契約は、著作権譲渡契約か、著作権利用許諾契約か)
【被告らの主張】
ア 本件出版契約第4条は「商品の著作権は甲(ディザイン)が有する。」と規定しているが、これは、原告の有する著作権のうち、ビジュアルディスクというデジタル画像データを収録するCD−ROM商品に利用される限度の権利(複製権、公衆送信権を含む。)が、ディザインに譲渡されたことを意味すると理解されるべきである。このことは、ネガポジの写真の権利とは別にデジタル化したCD−ROM自体の権利はデジタル化作業を行った側に帰属させる契約が珍しくないこと、ポジの権利は原告が有し(同契約第3条)、CD−ROM版の商品の著作権はディザインが有するとされていること(同契約第4条)、アナログデータをデジタル化しただけでは著作権は発生しないので第4条の趣旨はCD−ROM商品という商品形態に限定して著作権が譲渡されたと理解するほかないこと、写真のアナログデータをデジタル化してCD−ROM商品にするには多大な労力作業と費用がかかること、ビジュアルディスクをディザインが自己の負担と責任で発行し(同契約第5条)、販売促進も原告が関与せずに行うこととなっていること(同契約第9条)、などからも裏付けられる。
 また、原告はディザインとの間の本件出版契約において、「商品(ビジュアルディスク)の著作権はディザインが有する」とし、「販促物については甲(ディザイン)が種類内容、数量等を決定し、販促活動を行う」としている(同契約9条1項)が、CD−ROM情報はデジタル情報であり、アナログ情報と異なりパソコン間で受送信される利用形態が当然に予測される。この点からしても、原告は、CD−ROM商品の著作権の支分権を一々区別せず、CD−ROM商品に利用する限度での写真の著作権(複製権、公衆送信権を含む。)をディザインに譲渡したというべきである。
イ 仮に本件出版契約が著作物利用許諾契約であったとしても、原告は、デジタル化されたCD−ROMという商品形態の限度において、上記の範囲で第三者に対して利用権の譲渡することにつき予め承諾を与えていた(著作権法63条3項)というべきである。
ウ 被告イシイは、ディザインとの間の平成10年1月12日付け「『ビジュアルディスク』および『トッポジージョ』に関する確認書」(乙3。以下「本件確認書」という。)によって、ディザインが原告に対して有していた全ての地位・権利の譲渡を受けた。
【原告の主張】
 本件出版契約は、原告とディザインとの間の、原告の著作物である写真の著作物利用許諾契約にすぎない。被告イシイは、原告の承諾なくしてディザインから契約上の地位を譲り受けることはできない。
 なお、本件出版契約第4条には「商品の著作権は甲(ディザイン)が有する。」とあるが、これは編集著作物に関する著作権がディザインにあることを確認したものにすぎない。編集著作物についての権利が成立したとしても、その編集物についての著作者の権利がそれにより影響を受けるものではない。
(2) 争点(3)イ(本件出版契約は、氏名表示権や同一性保持権の不行使特約を含むか)について
【被告らの主張】
ア 氏名表示権について
 原告は、ディザインとの本件出版契約において氏名を表示することを契約内容としていなかった。また、実際のCD−ROM商品においても、「本製品のご利用について」と題された添付文書に、収録されている画像データの修正加工は自由であり、著作権フリーである旨記載されているから、CD−ROMや画像データに氏名を表示しないことが前提となっていたといえる。さらに、本件出版契約締結当時、原告は既販売の本件CD−ROMに原告の氏名が表示されていないことを知っていたが、これについて何らディザインに異議を述べなかった。したがって、本件出版契約は、氏名表示権につき黙示の不行使特約を含むというべきである。
 なお、ビジュアルディスクのような、著作権フリーで修正加工が自由な画像素材集の商品の利用態様からしても、画像データに氏名表示を要求することは非現実的である。
イ 同一性保持権について
 本件出版契約では、著作権フリーの画像素材集であるビジュアルディスクという商品の性質上、第三者が画像を自由に修正加工して使用することが当然予定されていた(同契約第2条2項参照)。商品内容がデジタル情報であるところ、解像度について少なくとも原告が制約を加えるような約定はなかったのであるから、デジタル画像データ化等を行うにあたって解像度に修正を加えることも許されていたと考えるべきであり、。
 また、画面上にどれだけのドット(画素点)を表示できるかを表す解像度は、現実に使用される写真データが印刷される紙等の大きさやプリンターによってその印刷結果(見映え)が異なるところ、原告はCD−ROMの写真データが著作権フリー画像素材集であることを認識しながら写真素材のデジタル化を許諾するにあたって解像度について制限していなかった。
 そうすると、本件出版契約上、ビジュアルディスクというCD−ROMの商品形態において収録されるデジタル画像データを、解像度のみを変更させた上で広告宣伝等を行うことについて、同一性保持権を行使しないとの黙示の合意があったとみるべきである。
 なお、本件ウェブ用画像は、基となる写真と比較して構成そのものには変形を与えない程度の解像度にしたにすぎず、写真の内容は十分認識できるし、使用が可能な程度の解像度である。この程度の変さらに関してであれば本件出版契約において原告の黙示の包括的同意あるいは不行使特約があるというべきであって、上記解像度の変更はその同意内あるいは特約内での修正にすぎない。
ウ 被告イシイは、ディザインが原告との関係で有していた以上のような地位を本件確認書に基づき全て引き受けた。
【原告の主張】
 原告は、本件出版契約によって、明示にも黙示にも氏名表示権や同一性保持権を行使しない旨の合意をしたことはない。特に、本件ダウンロードサービスは本件出版契約後になされたものであるから、本件出版契約において本件ダウンロードサービスに関し氏名表示権や同一性保持権を行使しない旨黙示に合意することはあり得ない。また、上記(1)【原告の主張】のとおり、被告イシイは、本件出版契約に基づく主張をすることはできない。
(3) 争点(3)ウ(本件出版契約の解除の成否)
【原告の主張】
 原告とディザインは、新タイトルを発売するたびに、同タイトルに含まれる原告撮影の写真について使用許諾契約を締結した。
 平成9年7月14日、原告とディザインは、本件出版契約を締結した。同契約に基づく、平成9年タイトル分のロイヤリティーの支払期日は同年9月1日であったが、ディザインはこれを支払わず、平成10年8月25日に破産宣告を受けた。
 原告は、ディザインとの間の本件出版契約を解除し、そのことを前提として被告イシイとの間で本件覚書を締結した。
【被告らの主張】
 ディザインが破産したというだけでは本件出版契約の解除事由にならない。また、ディザインの破産管財人は原告から本件出版契約に関して解除通知等を受け取っていない。したがって、本件出版契約は解除されていない。
 なお、本件出版契約は、平成9年タイトルに関して締結された契約であるから、それ以前の原告とディザインとの間の原告著作物に関する契約は解除されていない。したがって、平成9年タイトル以外の写真に関して、被告らの行為に著作権侵害が成立することはない。
(4) 争点(3)エ(被告イシイは、本件出版契約解除前にディザインから著作権の譲渡を受けたことを、原告に対して主張できるか)について
【被告イシイの主張】
 ディザインは、本件出版契約によって、原告著作物の著作権につき、CD−ROM商品という商品形態に利用される限度に限定して、原告から譲渡されている。そして、被告イシイは、本件出版契約解除前に、ディザインから本件CD−ROMに関する地位・権利の譲渡を受けている。したがって、被告イシイは、解除前の第三者として、本件出版契約の解除によりその地位が覆されることはない(民法545条1項但書)。
【原告の主張】
 本件出版契約は、原告とディザインとの間の著作権利用許諾契約にすぎない。
4 争点(4)(ミスミのダウンロード販売行為について)
【原告の主張】
 ミスミは、平成14年3月6日から平成15年8月31日まで、被告イシイの許諾を得た上で、本件CD−ROMに収録されている画像データについてダウンロード販売を行った。公衆たる各ユーザーがブラウザで閲覧しうるようにウェブサイト内に各画像を掲載する行為及び公衆たる各ユーザーにダウンロード形式での画像データの自動公衆送信を可能にする行為は、公衆送信権侵害行為である。そして、これらの目的でウェブサイトにかかるサーバー上に各画像データを蓄積するためにデータを複製する行為は複製権侵害行為である。
 また、ミスミは上記ダウンロード販売を行うに当たり背景に透かしを入れたが、これは同一性保持権侵害というべきである。また、著作者が原告であるとの表示を行わなかったから、氏名表示権侵害でもある。
 以上のミスミの著作権侵害の各行為について、被告イシイは、あらかじめこれを許諾したのであるから、共同不法行為者として損害賠償責任を負うべきである。
【被告イシイの主張】
 ミスミが行ったダウンロード販売では、必ずしもビジュアルディスクに収録されている画像データが全て対象となっているわけではない。
 また、前記のとおり、原告は本件CD−ROMの商品形態に限定して利用される著作権をディザインに譲渡しており、被告イシイはその権利をディザインから譲渡されている。また、同一性保持権及び氏名表示権については、本件出版契約において不行使特約があったというべきである。
 なお、ミスミが複製行為・公衆送信行為の実施者なのであって、被告イシイは実施行為を行う立場にはないから、損害賠償責任を負うものではない。
5 争点(5)(権利濫用)について
【被告らの主張】
(1) 原告は、被告イシイの求めに応じて、ビジュアルディスクの全タイトルが記載されているカタログに、原告撮影の写真が基となっているデジタル画像データについて赤丸を付した。しかるに、原告は今頃になって多数の写真の著作権侵害を主張し、しかも著作物の特定も不明確なまま訴訟を遂行するなどして被告らに不測の損害を被らせている。
(2) 原告は、原告写真については本件覚書に基づいて被告イシイから、本件写真についてはディザインから、相応の対価(使用料)を受領している。原告は、被告イシイの本件CD−ROMの継続販売を認識した上で本件覚書を締結したのだから、被告イシイに対し、カタログに自ら赤丸を付した以外の画像データについては、既に対価清算を終えていたか対価を請求しない意思であったと客観的に認められる。
(3) 原告は、本件覚書締結などの時点で、本件CD−ROMには原告の氏名が表示されていないことを知っており、また画像データ化や広告に使用するために、低解像度のものが作成され、ウェブサイトに掲載され、ダウンロード可能な状態に置かれることを予想できた。しかるに、当時、原告は被告イシイに対して氏名表示権や同一性保持権について何ら主張しなかった。
(4) したがって、原告が、現時点において、被告らに対し、原告の写真著作物の利用を認めず、著作権・著作者人格権侵害であることを理由とする差止め、損害賠償等の請求を行うことは、権利の濫用である。
【原告の主張】
 本件は被告らが原告に無断で原告の写真を使用した事案であり、本件請求が権利濫用などという余地はない。
6 争点(6)(差止めの必要性の有無)について
【原告の主張】
 被告らは、原告が自己の著作物を特定して侵害行為をやめるように請求したにもかかわらず、本件CD−ROMの制作販売を継続し、本件ウェブ用画像について本件ダウンロードサービスを継続した。
 その後被告らは、本件CD−ROMを廃棄し、また本件ウェブサイトへの掲載及び本件ダウンロードサービスを中止しているが、その源となる画像データ自体を廃棄したことの立証をしていない。
 したがって、本件において差止めの必要性は認められる。
【被告らの主張】
 被告イシイは、平成14年6月ころ、本件CD−ROMやカタログから原告写真144点に基づく画像を削除し、平成15年3月31日をもって、本件CD−ROMの販売を中止し、また平成15年10月18日にビジュアルディスクのCD−ROMを全て廃棄した。今後ビジュアルディスクの販売を行う予定はない。
 被告らは、平成15年6月2日をもって、ビジュアルディスク及びこれに関連する本件ウェブサイト内の画像データを削除した。これらの画像データについては、本件訴訟の結果いかんにかかわらず、今後一切本件ウェブサイトに掲載しない。
 したがって、本件において差止めの必要性は認められない。
7(1) 争点(7)(損害賠償請求について)ア(被告らの故意過失)について
【原告の主張】
ア 本件CD−ROMの制作販売について
 被告イシイは、本件CD−ROMを制作販売しているが、被告イシイと原告の間には本件覚書以外に契約関係はなかった。原告は、被告イシイに対し、平成13年4月末ころ、原告の撮影した写真を無断使用していると抗議し、本件CD−ROMの制作及び販売の即刻停止を求め、平成14年3月12日付け通知書において、本件写真については原告が著作権を有し、被告イシイの行為は原告の著作権を侵害するものであるから、直ちにその制作販売を中止するよう請求し、併せて、本件覚書を直ちに解除するとの意思表示をした。
 したがって、被告イシイは、原告の上記解除の意思表示後は本件CD−ROMに収録されている画像データの基となった写真について著作権の利用許諾を受けていない状態となったことを認識していたのであるから、本件CD−ROMの制作・販売行為による複製権及び氏名表示権の侵害について故意又は過失があることは明らかである。
イ 本件ダウンロードサービスについて
 原告は、被告アイピーネットシステムに対し、平成14年3月12日付け通知書において、本件ダウンロードサービスで提供している画像の中には、原告が著作権を有する画像が多数含まれていることを指摘し、被告アイピーネットの本件ダウンロードサービスは原告の著作権を侵害しているから、直ちにやめるよう通知した。
 被告アイピーネットの代表者と被告イシイの代表者が同一であることからすれば、前記アの事情も加えて、被告らは、本件ウェブ用画像の基となった写真が他人の著作物であることを認識していたというべきである。したがって、被告らには、本件ウェブサイトにおける本件ウェブ用画像の掲載や本件ダウンロードサービスの実施による複製権、公衆送信権、氏名表示権及び同一性保持権の侵害について故意又は過失があることは明らかである。
【被告らの主張】
 争う。被告イシイは、本件覚書締結に際し、原告に対して原告が著作権を有すると主張する写真の特定を要請し、原告は、ビジュアルディスクの全画像データが掲載されたカタログの中の原告写真144点に限りに赤丸を付したのである。それ以外の写真が原告の著作物であることを、被告らが認識するすべはなかった。
 また、被告らは、本件出版契約あるいは本件覚書によって、被告イシイが本件CD−ROMを制作販売し、本件ダウンロードサービスを適法に行うことができると考えていた。本件出版契約や本件覚書は未だ解除されていない。したがって、被告らには著作権・著作者人格権侵害行為がないというべきであり、そのように考えたことに過失はない。
(2) 争点(7)イ(原告の損害)
【原告の主張】
ア 本件CD−ROMの制作・販売行為についての著作物使用料相当額
(ア) ビジュアルディスクに収録されている画像データは、カタログに記載されているように「商業印刷に最も適していることはもちろんのこと、ビジネス、デザインパーソナル、教育用と、どんな用途にも使いやすく美しい写真」「加工・レイアウトをして、ポスター・カタログ・パンフレット・チラシに幅広く利用」できるものであり、その基である本件写真は原告が有する写真の中でも多様な用途に活用できる通用性の高い写真である。
 また、ビジュアルディスクのCD−ROMに収録されているのは写真を画像データ化したものであるから、CD−ROMを購入したユーザーは今後画像を自由に使うことができる。したがって、ビジュアルディスクのような著作権フリーの画像素材集に写真を収録することを許諾することは、雑誌に一度写真を掲載することとは異なる。
 原告の損害を検討する際には、以上のような特殊性が考慮されるべきである。
(イ) 社団法人日本写真家協会の「雑誌・書籍・写真使用最低料金規定」(甲13)には、最低料金として、依頼制作の場合は1点3万円以上、自主制作を寄稿する場合は1点4万5000円以上との記載がある。
 30余年に亘り国内・海外の写真家を代表して写真著作権のライセンス業務を行ってきたPPS通信社が使用する広告使用基本料表(甲14)には、写真を旅行パンフレットに1/8ページ以内で使用する場合の料金は2万5000円、パンフレット・カタログ・チラシ等に使用する場合には3万円から7万円との記載があり、また、高名な写真家については別料金となるとの記載もある。
 原告が使用している「写真使用料金表」(甲29)においては、ポスターに使用する場合の料金は6万5000円とされており、パンフレット等に使用する場合の料金は3万円から3万5000円とされている。
(ウ) 以上の点を考慮すれば、原告の撮影した写真の使用料は、1点について金7万円を下らない。
(エ) 原告はディザインとの間でビジュアルディスクの制作のための原告撮影の写真について使用許諾契約を締結した際、ロイヤリティーを(収録ポジ数)×(プレス数)×10円の計算式により算出していたが、これは、著作権フリーの画像素材集というものが一般化していない時期に、ディザインが企画から立ち上げて、ポジフィルムをデジタル画像データ化する制作費用などを支出していたことなどの事情を踏まえ、破格の価格で合意したものにすぎないから、損害額の基準とすることはできない。
イ 本件ダウンロードサービスの実施等についての著作物使用料相当額
 被告らは、本件ダウンロードサービスについて「『ビジュアルディスク』全タイトルの低解像度画像を無料でダウンロードして使うことができる便利なサイト」であり、その画像は「カンプ作成・プレゼンテーション」に使用可能であると述べている。
 本件ダウンロードサービスは、入会費は無料である上、世界中の誰でも画像を自由に閲覧利用することが可能である。
 本件ダウンロードサービスでは、本件写真を画像データ化した本件ウェブ用画像を使用しており、これをダウンロードした者はこれを容易に複製・改変することができる。
 被告らは、その主張によれば、本件ダウンロードサービスを平成9年12月ころから平成15年6月2日までの相当の長期間に亘って行っていた。
 以上の事情によれば、原告の撮影した本件写真を基とする本件ウェブ用画像を本件ウェブサイトに掲載して本件ダウンロードサービスを実施する場合の基の写真1点当たりの使用料は、金1万円を下らない。
ウ 慰謝料
(ア) 本件CD−ROMの制作・販売行為による精神的損害
 原告は、アメリカ芸術雑誌協会最優秀賞の受賞歴を有する職業写真家である。
 写真をデジタル画像化した場合、繰り返し使用することが可能になるだけでなく、自由に画像を複製・改変することも可能である。
 本件CD−ROMは、原告の著作物であるとの表示がないに止まらず、著作権フリーの画像素材集として販売されている。
 平成13年4月ころ、原告が被告イシイに対して、本件CD−ROMの販売に関して抗議したところ、被告イシイは、その件については全て済んでいる旨を電話により回答し、日付も捺印もない覚書をファックスで送付してきた。
 弁護士を通じての原告の抗議に対して、被告イシイは本件CD−ROMに収録された画像のうち、原告が著作権を有する写真を把握していないと回答したことから、原告は原告の著作物を特定して、同被告に対して早急に確認するように求めた。しかしながら、被告イシイは原告は本件覚書の合意にかかる別紙目録第8記載の画像以外については権利を放棄したものであるなどという内容の回答をした。この権利放棄の主張は、本件訴訟においても維持された。
 被告イシイは、本件覚書締結以後、平成14年3月25日まで、販売組数を一回も報告しなかった。なお、平成14年3月25日の報告も、原告からの抗議を受けて行われたにすぎない。
 以上の経緯において、原告は精神的苦痛を被った。
(イ) 本件ダウンロードサービスの実施等による精神的損害
 本件ダウンロードサービスにおいて提供されている本件ウェブ用画像は、職業写真家である原告が撮影した本件写真を、低解像度の画像データにしており、精細な色彩や微妙な陰影の表現が失われている。
 本件ウェブ用画像には、左上部分に「Visual Disk ISHI Co.,Ltd」との記載があるが、原告の著作物であることの表示はない。
 以上の経緯においても、原告は精神的苦痛を被った。
(ウ) 原告は、職業写真家であり、著作物たる写真を経済財として利用するのは当然である。そして、職業写真家であるがゆえに、写真への思い入れは強く、著作者の権利が侵害された場合の精神的な損害は大きい。さらに、本件ダウンロードサービスを中止していないのに、訴訟においてこれを中止したと主張するなどの被告らの訴訟遂行態度に、原告は憤りを禁じ得ない。
エ ミスミのダウンロード販売等行為による損害
(ア) ダウンロード販売による損害
a 高解像度画像データのダウンロード販売行為による損害
 高解像度データはビジュアルディスクのCD−ROMに収録されている画像データと同様の解像度を有する。したがって、前述のとおり、写真1点あたりの著作権使用料相当額は最低でも7万円を下らない。
 そして、高解像度画像データがダウンロード販売された枚数は、34枚である。したがって、原告がこれにより被った損害は238万円を下らない。
b 低解像度画像データのダウンロード販売行為による損害
 低解像度画像データは、72dpi・640pics×480picsであり、被告イシイが本件ダウンロードサービスに使用している本件ウェブ用画像よりも高解像度である。したがって、カンプの作成やプレゼンテーションなどの用途に使用できる。
 プレゼンテーションに使用する場合の著作権使用料は、原告が使用している「写真使用料金表」(甲29)によれば5000円、PPS通信社の「広告使用基本料金表」(甲14)によると8000円〜2万円とされている。したがって、写真1点あたりの著作物使用料相当額は最低でも金1万円を下らない。
 そして、低解像度画像データがダウンロードされた枚数は、85枚である。したがって、原告がこれにより被った損害は85万円を下らない。
(イ) ウェブサイトへの無断掲載による損害
 ミスミのダウンロード販売においては、サンプル画像等が掲載されている。同ウェブサイトに掲載されているサンプル画像の解像度は92dpi・320pics×212picsであり、被告イシイが行った本件ダウンロードサービスとほぼ同程度の解像度である。
 ウェブサイト上で掲載(公衆送信)されているサンプル画像は、ユーザーが自らのサーバーに保存することによって利用可能であるから、本件ダウンロードサービスとミスミのウェブサイト上での掲載行為は、原告に対してほぼ同程度の損害を与える行為である。したがって、本件ダウンロードサービスにおいて主張したところとほぼ同様の理由により、写真1枚あたりの使用料は1万円となる。
 ミスミのダウンロード販売においては、ビジュアルディスク全タイトルが対象とされているから、原告の著作物である写真(1243点)は全てこのウェブサイトに掲載されたものである。
 したがって、ウェブサイト掲載によって原告が被った損害は1243万円となる。
オ 弁護士費用
 本件訴訟は、被告らによる原告の著作権及び著作者人格権侵害に基づく損害賠償等請求事件であり、原告は本件訴訟の提起のために弁護士への委任を余儀なくされた。
 したがって、本件訴訟提起に要した弁護士費用も、被告らの著作権侵害等により発生した損害となる。その金額は、上記金額の10%相当額である。
カ 以上を前提とすると、原告の損害は次のように算定される。
(ア) 被告イシイに対して
a 本件CD−ROMの制作販売による財産的損害
 2707万5000円
(a) 主位的請求
 本件CD−ROM制作による、別紙目録第7記載の写真の複製権侵害行為により原告により生じた財産的損害は、写真点数1243点に1点あたり7万円を乗じた8701万円となる。
(b) 予備的請求1
 本件CD−ROMの販売定価は8800円である。これに対し、制作原価はCD−ROM及びそのパッケージ原価程度であり、その他CD−ROMのプレス設備等(なお、同設備等は本件とは関係なく以前より被告イシイが有していた。)の費用、販管費などの諸経費について約1割(700円)程度を差し引いたとしても、被告イシイの利益は8000円を下らない。そうすると、本件CD−ROMは1枚あたり50点の写真が収録されているから、写真1点あたりの被告イシイの利益は160円である。
 そして、被告イシイが本件CD−ROMを制作する前に同制作作業を行っていた訴外株式会社システムソフトによる販売枚数報告によれば、月間平均販売枚数は1タイトル1か月あたり7枚である。
 そこで、本件CD−ROMタイトル毎に、販売期間(発売月から平成15年8月までの期間)と月間平均販売枚数の7を乗じ、初回分として許諾されていた500組を引く。この計算によって出された数に、それぞれのCD−ROMタイトル毎に収録されているデジタル画像データ(原告が撮影した写真を基にするもの)の点数と、写真1点あたりの利益160円を乗じる。以上の計算式によって算出される、3249万5200円が原告の損害というべきである。
(c) 予備的請求2
 平成10年1月12日より前の被告イシイの本件CD−ROMの制作行為は、原告とディザインとの間の本件出版契約によって初回500プレスのみが認められていた。したがってこれを超える組数をプレスした場合には複製権侵害となる。ただし、被告イシイは500プレスを超えていないことの立証をしていないから、結局、平成10年1月12日に被告イシイがディザインから引き継いだとする在庫商品はいずれも著作権侵害行為の対象となる。そして、在庫商品中の本件写真の点数を積算すると、6万5167枚となる。
 したがって、平成10年1月12日より前の著作権侵害行為による損害額は、6万5167枚に写真1点あたりの被告イシイの利益160円を乗じた1042万6720円となる。
 また、平成10年1月12日以降被告イシイが制作した本件CD−ROMの組数の本件写真の点数を積算すると、14万8000枚となる。被告イシイは、廉価販売していたと主張するので、これを含めて写真1点あたりの被告イシイの利益は100円とする。
 したがって、平成10円1月12日以降の著作権侵害行為による損害は、14万8000枚に写真1点あたりの被告イシイの利益100円を乗じた1480万円である。
 そうすると、本件CD−ROMの制作行為による被告イシイの著作権侵害行為によって原告が被った損害は、これらを足した2666万6720円を下らない。
(d) 原告は、以上の財産的損害の内金として、2707万5000円を請求する。
b 本件CD−ROMの制作販売による精神的損害につき100万円
c 本件CD−ROMの制作販売における氏名表示権侵害による精神的損害につき377万5000円
d 本件CD−ROM販売行為に関する弁護士費用として358万5000円
e ミスミのダウンロード販売行為に関する損害内金として、高解像度画像データに関して80万円、低解像度データに関して50万円、ウェブサイトへの掲載として50万円
f ミスミのダウンロード販売行為に関する精神的損害の内金として、複製権・公衆送信権侵害に関して50万円、氏名表示権侵害に関して50万円、同一性保持権侵害に関して80万円
g ミスミのダウンロード販売行為に関する弁護士費用として40万円
h 以上について、本件CD−ROM販売行為に関しては、原告の被告イシイに対する解除の意思表示(甲11の1)が到達した日の翌日(平成14年3月14日)以降の、ミスミのダウンロード販売行為に関しては最後の不法行為日の翌日(平成15年9月1日)以降の民法所定年5分の割合による各遅延損害金
(イ) 被告らに対して
a 本件ウェブサイトへの掲載及び本件ダウンロードサービスによる、別紙目録第7記載の写真の複製権及び公衆送信権侵害についての、財産的損害として写真1243点につき1点あたり1万円として1243万円、精神的損害として100万円
b 本件ウェブサイトへの掲載及び本件ダウンロードサービスにおける氏名表示権侵害及び同一性保持権侵害による精神的損害として331万円
c 弁護士費用として、上記請求金額合計の10%である167万4000円
 以上について、原告が本件ダウンロードサービスの存在を知った平成14年1月以降の民法所定年5分の割合による遅延損害金
【被告らの主張】
ア(ア) 本件CD−ROMの制作販売について
a 本件出版契約等において、「Aフォトライブラリー/ブレーンセンターの写真使用料金表」(甲29)、「雑誌・書籍・写真使用最低料金規定」(甲13)や「広告使用基本料金」(甲14)などに基づく料金算定がなされたことはなく、あくまで契約に規定された料金に基づき算定されていた。
 また、本件覚書に記載された使用料の算定方法は、本件出版契約を踏まえて原告と被告イシイとの間で取り決められたものであって、その交渉過程が被告イシイの一方的な取決め等によるものではなかった。
 そうすると、本件CD−ROMに関する写真使用料の算定は、本件出版契約あるいは本件覚書に記載された算定方法を一応の基準とするのが合理的である。したがって、本件においては、本件出版契約において決められた、収録ポジ数×プレス数×10円=CD−ROMのポジ使用料を基準とすべきである。
 各タイトル毎に収録ポジ数とプレス数を積算したところ、ポジ使用枚数の「のべ枚数」は9万7206枚であった。これにポジ1点あたりの使用料10円を乗じて算出すると、97万2060円となる。被告イシイの行為が著作権等侵害行為に該当するとしても、原告に生じた損害額はこの97万2060円というべきである。
b(a) 原告は、著作権フリーの画像素材集CD−ROMは本件出版契約当時も珍しいものであったため、かなり低額の使用料とすることに応じたと主張する。しかし、本件出版契約当時、著作権フリーの画像素材集は珍しいものではなかったので、合意金額が格段に低額であるということはできない。
 また、原告は、原告主張の写真は多様な用途に活用できる通用性の高い写真で、本件CD−ROMが市場に出れば本件写真に対する需要は著しく減少すると主張する。しかし、このような事情は本件出版契約締結時、本件覚書締結時となんら異なるものではない。
 このように、写真1点につき7万円とする原告の主張は、過剰あるいは法外な金額請求というほかない。
(b) CD−ROMとするには、多大な労力(企画・商品デザイン・スキャニング・オーサニング・プレマスタリング・マスタリング・プレス・パッケージ・リーフレットなどの制作作業等)や費用(スキャナー1台でも3900万円余。また、商品化における販促活動費用)がかかるが、これらは全てディザインや被告イシイ側において負担している。営業が成功するか失敗に終わるかのリスクも、原告は全く関知していない。ポジ使用料については、これらの事情の存在も無視されるべきではない。
 写真1点あたり160円の利益との原告の主張はあまりに実態とかけ離れている。
(c) 原告の月間販売枚数に関する主張についても、最初に大量販売してその後売上が落ちるという傾向があるにもかかわらず、販売期間を短く設定して意図的に大きな数字が出るように操作している。
(d) 原告は、平成10年1月12日以前の本件CD−ROMの制作は、ディザインに許諾されていた初回500プレス分であることの具体的主張、立証がない限り、被告イシイの著作権等侵害行為となると主張する。しかし、当時、被告イシイは本件出版契約の当事者であるディザインからの委託に基づいて本件CD−ROMを制作していたのだから、著作権等侵害行為ではないことは明らかである。そして、原告はディザインから販売組数の報告を受ける立場にあったから、契約違反の具体的主張は、原告側においてなされなければならない。
 原告側の資料(甲44)によっても、平成8年8月の時点において一番よく売れたタイトルですら381組に止まっており、また、同年同月の1か月の売上は1タイトル2組未満であるから、平成10年1月までに500組を超えて発売されたタイトルがあるとは到底思われない。
(イ) 本件ウェブサイトへの掲載等について
 被告らは、ビジュアルディスクの広告宣伝のために、本件ウェブ用画像を作成し、本件ウェブサイトに掲載して、本件ダウンロードサービスを行っていた。これらによって被告らは何ら利益を得ていない。本件ダウンロードサービスは、販促活動の一環であるから、本体CD−ROMの売上増加による損害額が認容されるならば、本件ダウンロードサービスによる損害額はこれに補填される関係にある。
 仮に損害が認められることがあるとしても、本件ダウンロードサービスによる損害は、本件CD−ROMに関する損害額の4割程度が相当である(原告が、当初本件CD−ROMに関する複製権侵害額の場合は写真1点あたり2万5000円としたのに対し、本件ダウンロードサービスの公衆送信権侵害額の場合は写真1点あたり1万円と主張しているところから算定した。)。
(ウ) ディザインと被告イシイは、それぞれ原告に対して使用料を支払い清算済みであった。ビジュアルディスクに関しては、500組が一応のプレスの限度となっていたが、500組を超えて販売されたタイトルはない。
イ 慰謝料の主張について
 原告は、本件で問題となっている写真の使用を、ディザインあるいは被告イシイに認め、財産的利益の取得を目的として写真著作物を利用していた。すなわち、原告は、著作物を経済財として利用していたのであるから、財産的損害と別個に精神的苦痛による無形損害の賠償が認められることはない。
ウ ミスミのダウンロード販売行為について
 原告が自己の著作物であると主張するものの中で、当該著作物に著作権があると推認されるポジが確認された写真の発注状況は、単価200円のものが95件、単価360円のものが2件、単価1376円のものが28件、単価2729円のものが1件である。したがって、被告イシイは、6万0977円を得たのみである。なお、被告イシイのロイヤリティは販売価格の40%であるから、仮に被告イシイとミスミとを合わせた画像枚数全体の収益を考えても、15万2443円にすぎない。
 また、原告は、ミスミのダウンロード販売行為に関する慰謝料も請求している。しかし、ビジュアルディスクは、著作権フリーの画像素材集であって、収録されているデジタル画像データを繰り返しあるいは修正改変を行い広く利用することが予定されているものであるという点で、財産的利益の取得を目的とする写真著作物の利用が想定されているものである。経済的利益を目的としない著作活動がたまたま予想外に無断で使用されたことにより著作者に精神的苦痛を与えたというような事案ではない。したがって、著作権の侵害による損害により、慰謝料や著作者人格権侵害による損害もカバーされ得る事案と思料され、財産的損害とは別に、精神的苦痛による無形損害の賠償が認められるべき特段の事情はない。
8 争点(8)(謝罪広告の必要性の有無)について
【原告の主張】
 被告らは、本件CD−ROMが著作権フリーの画像素材集であると表示し、また、本件ウェブ用画像が上記著作権フリー素材の低解像度であると表示している。
 これらの行為は、第三者による利用を推奨する行為であり、このまま放置されると、第三者によって原告の著作権・著作者人格権が侵害される可能性が大きい。デジタル画像データは複製・改変が容易で質的劣化もほとんどなく、インターネットなどでの公衆送信が可能なため、無制約に膨大な量の複製物等が流通する可能性が高いからである。
 したがって、これを防止するには、被告らにおいて現に行っている、被告アイピーネットにおいて運営管理されている別紙目録第5記載のウェブサイト並びに朝日新聞、読売新聞及び毎日新聞の全国版に、別紙1及び2記載の謝罪広告を掲載することが必要不可欠である。
【被告らの主張】
 本件は、差止請求あるいは損害賠償請求のほかに謝罪広告を求めることは過剰である。
 著作者人格権侵害に基づく謝罪広告請求には、名誉感情の毀損では足りず、著作者の社会的声望名誉が低下したことを必要とするところ(最高裁判所昭和61年5月30日第二小法廷判決・民集40巻4号725頁)、本件では、原告の声望名誉が損なわれた事実はない。すなわち、本件CD−ROMの画像データには著作者名が表示されていない上、そのデータの自由な修正加工が認められていたのであるから、第三者がこれら写真データと原告とを結びつけることは考えられず、そのため原告の社会的評価の低下等に結びつかない。また、本件では原告の写真データについて虚偽事実を流布したというような事情もない。
 なお、被告らは、現在、既に本件CD−ROMの販売を中止し、これを廃棄し、本件ウェブ用画像を本件ウェブサイトから削除している。仮に原告が著作者であるとしても原告が著作者であることを確保するための環境は既に整えられているから、原告が本件で謝罪広告を求めることは、この点からも過剰というべきである。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(ビジュアルディスクに収録されているデジタル画像データのうち、原告が撮影した写真を基とするものはどれか)
(1) 前記第2の1(当事者間に争いのない事実等)、証拠(甲6、27、34ないし38、43、乙16、原告本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、昭和38年以降、写真撮影したフィルムを印刷会社あるいは広告代理店、デザイナー等に貸し出しその使用を許諾することによって使用料収入を得ている、いわゆる職業写真家である。写真集「ONE WORLD ONE PEOPLE」で、昭和60年にアメリカ芸術雑誌協会最優秀賞を受賞したことがある。
 原告は、当初は日本全国を巡って写真撮影をしていたが、3年くらいで国内での撮影を一応終了し、その後は世界各地を巡りながら、撮影した写真の使用料を得ては次の撮影地に向かって写真撮影をすることを繰り返し、現在に至るまで、120か国程度の国々で写真撮影を行っている。
 原告が以上のような職業写真家としての活動によって撮影した写真のポジ写真は、約20万点以上に上る。
イ(ア) 原告は、自己の撮影した写真の一部をPPS通信社等のいわゆるエージェント会社(以下「エージェント会社」という。)に預けており、エージェント会社が原告から預かった写真の貸出しや保管を行っている。本件訴訟以前に、貸し出された原告撮影のポジ写真が紛失したとき、エージェント会社が原告に代わって賠償金等の請求を行ったことがあった。
(イ) 原告は、エージェント会社に預けていない写真を、事務所や自宅等で自ら保管している。昭和46年以後はブレーンセンターを設立して、写真の管理保管をし、また、印刷会社、広告代理店、デザイナーなどの第三者への貸出し等を行っている。
 原告のポジ写真の管理方法は、マウント(写真を貼る台紙)を付け、マウントに3桁から6桁の番号を記載した上で、国別、地域別、季節別、テーマ別等に仕分けをしてロッカー等に収納し、併せて大学ノートに写真の番号等を記載して整理する、というものであった。マスターポジ写真を複製したポジ写真については、マウントに「デ」(「デュープ(複製)」の意味)と記載していた。なお、ポジ写真の中には、マウントを付けないまま保管されているものもあった。
(ウ) 原告がブレーンセンターから貸出しを行う場合は、貸出条件として、フィルム面に擦り傷等を入れないこと、マウントがはずれている場合は使用したものと見なすこと、貸出日より1か月過ぎて連絡のない場合には5000円を徴収すること、破損や紛失の場合には1点15万円以上の補償を請求すること等が記載されている貸出票(甲26参照)に、貸出先、写真の内容、点数を記載した上で、貸出先担当者と原告あるいはブレーンセンターの係の者が署名していた。
(エ) 原告は、知合いの写真家から、「使用権」を販売することを目的として当該写真家の撮影した写真の保管を依頼されることがあった。その場合、原告は、ブレーンセンターと依頼者との間で、ブレーンセンターが誠意を持って写真を保管すること、「使用権」を販売した場合にはブレーンセンターがその利益の40%を受け取り、依頼者が60%を受け取ること、写真の紛失、破損による補償についてはブレーンセンターが誠意をもってこれに当たること、原告は写真を預かったときには預かり証を委託者に発行し、委託者が原告から写真を返却されたときには返却証を発行することなどを内容とする契約(甲37参照)を締結していた。
 原告は、第三者から写真の保管を依頼された場合には、当該第三者のイニシャル等を決定し(甲38)、それを写真番号とともにマウントに記載することによって管理保管を行っていた。
 ただし、ディザインから「宇宙」あるいは「富士山」というタイトルで本件CD−ROMに収録するに相応しい写真を求められたとき、「宇宙」に関する写真をNational Aeronautics and Space Administration(NASA)のサービスセンターから、「富士山」に関する写真をFからそれぞれ借用したが、これらの写真については、特段の区別をしなくても判別可能との判断の下、マウントにイニシャル等を記載する方法にてNASA等の写真であることの明記のないままに保管管理している。
ウ 原告は、ビジュアルディスクに使用する写真をディザインが借り出す際に、ポジ写真をディザイン側の担当者に選択させており、また、使用する写真が決まったときには、使用料金を請求するために、どのようなタイトルで何点のポジ写真を使用したかを明確にさせていた。しかしながら、どの写真を実際に使用するのかについて、マウントに記載された番号等を明記させたり、ポジ写真を原告自らが確認したりすることはなかったため、貸し出され、ビジュアルディスクに使用された写真について、原告の手元資料によって特定する方法はなかった。
エ 原告は、ディザインが報告してきた平成9年タイトルの名称と使用した写真点数に基づいて、同タイトルに収録された画像データの基となる写真の使用料を請求したところ、ディザインから使用料が支払われなかった。原告は、ディザインの従業員から被告イシイがビジュアルディスクのCD−ROMを販売していると聞き、被告イシイに対して上記未払使用料の支払を求めたが、被告イシイはこれを拒絶した。
 原告は、弁護士に未払使用料の支払について相談し、同弁護士は未払使用料の支払を求める内容証明郵便を作成して被告イシイに送付した。その結果、原告と被告イシイとの間で本件覚書が締結されたが、本件覚書1条には、「甲(被告イシイ)と乙(原告)は、甲が発売しているVisual Disk(CD−ROM)中、乙が著作権を有する写真は別紙甲が平成9年6月作成のカタログ中のコードナンバー一覧表の144点であることを確認する。」と記載されている。
オ 原告は、本件覚書締結後、ビジュアルディスクのCD−ROMに収録された画像データの中に本件覚書の対象となった原告写真144点を基とするデータ以外に、原告が撮影した写真を基とするものが多数あると主張し始めた。しかし、その画像データの基となる写真を特定するにあたっては、ビジュアルディスクのCD−ROMのカタログに掲載されているデジタル画像を見て、自らの記憶を頼りに、ブレーンセンターに保管しているポジ写真を探し出すという方法を採るほかなかった。
 原告は、当初、エージェント会社が原告に代わり損害賠償請求等を行った経験を踏まえて、第三者の撮影した写真であってもブレーンセンターにて保管管理していれば、原告自身が損害賠償請求等をすることが可能であると考えており、本件訴訟提起当初はそのような考えの下、別紙目録第2記載のデジタル画像データの基となった写真全てについて、著作権を主張していた。その後これが誤解であると認識するに至り、第三者の撮影した写真を除いた別紙目録第7記載のデジタル画像データの基となった写真について著作権を主張している。
 別紙目録第7記載のデジタル画像データの基となる写真のポジ写真を探し出し、これを被告ら訴訟代理人に提示できたのは、そのうちの一部である。
 原告がポジ写真を探し出すことはできなかったがその撮影場所や自分が撮影したことを自らの弁護士に明確に述べた写真は、別紙目録第9記載のデジタル画像データの基となった写真である。
 ポジ写真を探し出すことができず、またその撮影場所や自分が撮影したことを弁護士に明確に述べることができなかった写真は、別紙目録第10記載のデジタル画像データの基となった写真である。
 さらに、本件写真のうち、L−02−6については、原告以外の第三者の撮影であることを原告が認めている。
 本件写真のうち別紙目録第10記載のデジタル画像データの基となった写真及びL−02−6の基となった写真を除いたものが、別紙目録第11記載のデジタル画像データの基となった写真である。
 また、本件ウェブサイトに掲載されている画像データのうち、別紙目録第11記載のデジタル画像データに対応するものが、別紙目録第12記載のデジタル画像データである。
(2) 以上の認定事実によれば、次のようにいうことができる。
 原告は、約40年にわたり写真家として活動し、国内外において相当程度の評価を得ている職業写真家である。
 また、原告は、収入を得るために、@エージェント会社に自らが撮影した写真を預けて貸出等を行ってもらい、エージェント会社から使用料相当額を受け取る方法、A自らブレーンセンターを通じて出版社等に原告が撮影したポジ写真を貸し出し、使用料相当額を受け取る方法、B第三者からポジ写真を預かり、ポジ写真を貸し出して使用料が支払われた場合にその一部を手数料等として受け取る方法、を採っている。特にBについては写真を預けている第三者との権利関係が問題となるため、写真を預かったときには預かり証を渡し、返却するときにはその旨の証書を第三者より受け取っているほか、保管や貸出の際に原告の撮影した写真と混同することのないよう、マウントに特定のアルファベットを記載することによって区別していた。アルファベットにおいて識別していなかったものは、保管経緯等の特殊性から十分に識別可能であったものに限られていた。
 このように、原告は写真の著作権やその帰属について常日頃より相当慎重に配慮していたということができるから、原告が、ポジ写真を確認し、被告ら側に提示した上で、自分が当該写真を撮影したと明言しているものについては、その内容は十分信用できるというべきである。また、仮にポジ写真を確認することができなったとしても、原告のような長年に亘り活動して相応の評価を得ている写真家であれば、写真撮影における癖や工夫等によって自ら撮影したのか第三者が撮影したのかを判別することが可能であると考えられるから、弁護士に対して自ら撮影した旨あるいはその撮影場所について明言できているものについても、原告が撮影したものと認められる。これに対し、ポジ写真が提示できず、原告が弁護士に撮影したこともその場所も明言できないものについては、原告が撮影した原告が著作権を有する写真であるということはできない。
 そうすると、別紙目録第2記載の画像データの基となった写真のうち、原告が第三者の撮影であると述べた写真を除き、原告がポジ写真を被告ら側に提示できた写真あるいは提示できなくとも弁護士に対して原告が撮影した旨明言している写真である別紙目録第11記載の画像データの基となった写真1222点については、原告が撮影した原告の著作物であると認められるが、その余の写真については原告が撮影した原告の著作物であると認めることはできない。
(3) 被告らは、原告が本件覚書締結時に原告撮影の写真は原告写真144点であると述べていたのであるから、これ以外の写真については原告の撮影したものとは認められないと主張している。また、当初は第三者の著作物を原告の著作物であると述べており、第三者の著作物たる写真であってもマウントにイニシャルが記載されないまま保管されていることからしても、原告が自分の著作物であると主張する写真の中にまだ原告の著作物とはいえないものが含まれている可能性があるし、とりわけポジ写真の存在を明らかにできないものについては、原告の記憶を記載した報告書(甲35)が提出されているにすぎないから、原告写真以外の本件写真について原告が撮影した原告著作物であるということはできないと主張する。
 しかしながら、本件覚書は後記2において詳述するとおり未払使用料の支払の交渉においてその額を確定するために作成されたものであって、厳密に原告が著作権を有する写真を限定することを目的としたものではないから、本件覚書において、「乙(原告)が著作権を有する写真は(中略)144点であることを確認する。」との記載があるからといって、それ以外の写真を原告の撮影した原告が著作権を有する写真から除外したものということはできない。
 また、当初原告が第三者の写真について原告に権利があるかのような主張をしていたのは、エージェント会社が原告に代わり損害賠償請求をしたことがあるとの事実から著作権自体は第三者にあっても訴訟等において写真を預かる原告が損害賠償等を請求することは可能と誤解していたことが窺われる(そのようなことは大いにあり得ることである。)から、その誤解が解消され、原告がこれを除外して写真を特定した後には、原告が撮影したことについて疑義が生じるような事情が認められない以上、原告の著作物ではないものが存在するということはできない。
 さらに、原告が自ら撮影したこと等を明言できるものについては、原告の職業やこれまでの活動内容及び原告に対する評価等に鑑みてその内容が信用できるというべきであり、本件各証拠を検討してもその信用性を左右するものはない。
 したがって、被告らの上記主張は失当である。
2 争点(2)(本件覚書について)
 同(2)ア(本件覚書の対象とされた原告写真以外の本件写真についても、CD−ROMにデジタル画像データを収録する形式で利用することが本件覚書上許諾されているか)、イ(本件覚書上、ウェブサイト掲載用の画像データを作成し、これをウェブサイトへ掲載したり、無料で本件ダウンロードサービスを行ったりすることも許諾されているか)、ウ(本件覚書は、氏名表示権や同一性保持権の不行使特約を含むか)、エ(本件覚書の解除の成否)について
(1) 前記第2の1(当事者間に争いのない事実等)、証拠(甲9の3ないし6、甲10、11の1及び2、甲21、26ないし28、36、49の1、甲50の1、乙1、2、5、6、7ないし10の各枝番1ないし3、検乙1ないし4、原告本人尋問及び被告ら代表者尋問の各結果)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア(ア) 平成5年ころ、ディザインの代表者であったCは、被告イシイの代表者であったBに対して、写真をデジタル画像データ化してCD−ROMに収録し、CD−ROMの購入者が収録されたデータを複写、改変等を行っても著作権者が著作権に基づく権利行使等をしないことを前提とする画像素材集(以下「著作権フリーの画像素材集」等ということもある。)として販売する企画を提案した。Bは、この企画に同意し、ディザインに対し1000万円を出資した。また、Bは、同業者から著作権フリー画像素材集のような企画においては著作権を買い取らないと後で問題が発生するとの助言を得て、Cに対し、CD−ROMに収録する画像データの基となる写真を買い上げるよう指示し、買上げのために写真1点あたり8000円拠出することを約束した。
 ディザインと被告イシイは、両者の役割分担を定め収録する写真を集めたり、CD−ROMに収録する際のレイアウトを考えたり、パッケージをデザインしたり、販売促進のための企画をしたりすることはディザインの責任において行い、ディザインが集めてきた写真をデジタル画像データ化したり、それをCD−ROMに収録したり、CD−ROMのカタログ等を作成したりすることは被告イシイが行うと取り決めた。
 ディザインは、被告イシイに対し、収録するために集めた写真に関して締結した契約内容等を一切知らせなかった。被告イシイは、写真の買取代金と被告イシイが拠出する金額との差額等についてはディザインの営業秘密であると考えたので、その契約内容等をあえて確認しようとはしなかった。
(イ) ビジュアルディスクの販売は当初株式会社システムソフトが行っていたが、途中から被告イシイが行うようになった。被告イシイが販売を行うようになった後の平成8年5月ころから、被告イシイはそのホームページ(本件ウェブサイト)でビジュアルディスクの広告宣伝を始めた。
 その後、被告アイピーネットが被告イシイのホームページ等を管理するようになった。被告アイピーネットは被告イシイの指示の下、平成9年12月ころからは、若干色調等が変化する程度の低解像度(約72dpi・120mm×95mm)の本件ウェブ用画像を作成し、これを同ホームページ(本件ウェブサイト)に載せた上、さらに所定の手続を踏むことによって、無料でデジタル画像データの入手が可能となるような本件ダウンロードサービスを開始した。なお、平成9年中頃にはCが行方不明になっていたこともあって、被告イシイは、本件ウェブサイトに本件ウェブ用画像データを載せたり本件ダウンロードサービスを行ったりする際に、Cに対して、権利関係等について相談したり確認したりすることができなかった。
 本件ウェブサイトでは、ビジュアルディスクが著作権フリーのデジタル写真素材集であること、収録されているデジタル画像データは高品位で印刷物への使用に最適であること、写真1点当たり約350dpi・120mm×95mmと高解像度であって、およそA3サイズくらいまでの使用に耐えること、ホームページ制作やその他のデジタルメディアへの使用も可能であることなどが記載されていた。また、その中に掲載されている本件ダウンロードサービスでは、これを低解像度のデータにて掲載しており、無料で直ぐにダウンロードできること、ダウンロードしたデータはカンプ作成やプレゼンテーションに使用できることなどが記載されていた。
(ウ) Bは、平成10年1月12日、偶然Cと会うことができたので、ビジュアルディスクについての一切の権利をディザインが被告イシイに譲渡する合意をし、その旨記載した書面(本件確認書。乙3)を作成してCに署名させた。本件確認書作成後、被告イシイは、ビジュアルディスクについてさらにCD−ROMを追加制作するなどして販売を継続した。また、平成9年6月当時のカタログ(乙1)から20タイトル(甲6のN−26ないし32、L−25、ST01−12。いずれも原告が著作権を主張している写真のデジタル画像化したものは収録されていない。)を追加したことに伴い、新しいカタログ(甲6)を作成して使用した。
イ(ア) 原告は、平成6年ころ、知人からCを紹介された。Cは、原告に対し、今後著作権フリーのCD−ROM写真集のようなものに対する需要が高まると考えられるので、そのような新商品を作ってみようと考えている、ついては世界中の写真を撮っている原告から写真を借用したいなどと話を持ちかけた。
 原告は、これに応じることとし、平成7年以降、ディザインがビジュアルディスクの新タイトルを追加発売しようとする度に、ディザインの要望に応じてタイトルに相応しい写真を貸与し、その使用を許諾し、使用料を受け取っていた。その貸与方法は具体的には次のような経緯を踏んでいた。ディザインの担当者が、ブレーンセンター等を訪れ、新タイトルについて説明し、原告からそれに相応しい写真の提供を受けてその中から何点か選んで借り出す。ディザインは、原告他から借り出した写真の中からCD−ROMに実際に収録する写真を決定し、点数が足りない場合はさらに別の写真を借り出す。最終的にCD−ROMに収録する画像データの基となる写真が決定した段階で、ディザインはそのタイトル及び写真の点数を原告に対して通知し、デジタル画像データを作成した後に借り出した写真を返却する。その後、原告は、CD−ROMに収録することとなった写真の点数に5000円を乗じた金額を使用料として、これに消費税を加算した金額を請求する。
(イ) 原告は、貸与した写真のデジタル画像データを収録したCD−ROMが初めて出来上がったときに、CD−ROM本体やその収録されている画像データを見せてもらった。その際、原告は、CD−ROM本体にも収録されている画像データにも、原告を含めた写真の著作権者の氏名が表示されていないことを確認した。
 しかしその後は、原告は、写真は貸与するものの、どのような写真を使用したのか、できあがったCD−ROMやそこに収録されたデジタル画像データはどのようなものであるかを確認しなかった。
(ウ) 原告は、ビジュアルディスクについてどのような広告宣伝がなされているかを知らされず、またディザインに対してこのことを確認することもなかった。
(エ) 原告とディザインは、平成9年7月14日に、従前の合意内容を明文化した、前記第2の1(3)の内容の本件出版契約を締結した。
ウ 原告は、ディザインから、平成9年4月17日に貸し出した写真のうち平成9年タイトルにおいて152点を使用する旨の報告を受け、この点数にCD−ROM500組分の使用料として5000円を乗じた76万円に消費税相当額を加えた79万8000円の請求書(甲21)を作成し、平成9年9月1日までに支払うよう請求した。しかし、ディザインはこの日までに支払わなかった。
 原告は、使用料についてはCと直接交渉していたので、ディザインの担当者に対してCと直接交渉したい旨伝えたところ、平成9年の秋から年末にかけてのやりとりにおいて、ディザインの担当者から、Cが行方不明になっていることや、平成9年タイトルについては既にCD−ROMの制作が終了し、被告イシイによって販売されていることを知らされた。
 原告は、ディザインが事実上倒産していると判断し、CD−ROMを販売している被告イシイに対し、平成9年タイトルに収録された写真152点の未払使用料を請求した。しかしながら、被告イシイは原告の請求に応じなかった。
 原告は、未払使用料を被告イシイに支払ってもらうために、平成10年3月初旬頃、D弁護士に相談した。原告は、D弁護士に対し、ビジュアルディスクというデジタル画像素材集のために写真を提供したこと、平成9年に発売されたタイトルのためにディザインに対して152点の写真を提供し、その著作権使用料は消費税を入れて79万8000円であったが、その支払期日になってもディザインから支払がなされないこと、ディザインは事実上倒産したらしいが、ビジュアルディスクの販売は被告イシイが継続しているらしいことを説明し、ディザインあるいは被告イシイから未払使用料を回収してもらいたい旨依頼した。なお、原告は、平成9年タイトル以前のタイトルに収録されたデジタル画像データの基となった写真については、各タイトル500組分につきディザインから使用料の支払を受けており、被告イシイがその在庫分の販売を継続する限りにおいては被告イシイから使用料等の支払を受ける理由はないと考えていたため、D弁護士に対して、平成9年タイトル以前のタイトルのために貸し出した写真の存在等について説明しなかった。
 D弁護士は、ディザインに対して催告書(甲19、20の各1及び2)を送付するとともに、被告イシイに対して、次のような記載のある通知書(乙2)を送付した。「貴社は、Visual DiskとしてCD−ROMを発売されております。ところで、貴社の発売の右CD−ROMの中の写真のうちAが著作権を有する写真が152点含まれております。そして、右写真152点については、Aが右CD−ROMの企画制作を担当した株式会社ディザインに対し、写真の使用、しかも、CD−ROM500枚についてのみの使用を認める約定で写真ポジを手交致しました。しかし、株式会社ディザインは右写真の使用料を現在まで一切支払わないので、右写真使用契約を解除することになりました」、「従って、貴社の販売するVisual DiskはAの写真著作権を侵害する違法な商品となりますので、Aとしては自己の知的所有権を守るため、貴社による右商品における著作権無断利用を即時中止していただきたく請求申し上げますとともに、これまでの著作権侵害による損害賠償を請求申し上げます」。
エ 被告イシイは、上記通知書(乙2)を受け取ってE弁護士と相談の上、ビジュアルディスクの制作販売を継続するために原告に対して写真152点の使用料を支払うことにした。そして、平成9年6月当時作成していたカタログ(乙1参照)を渡して、152点を特定するよう要請した。このときBは、未払使用料の清算のみを考えており、著作権について特段関心を持たなかったため、原告に対し、他に原告の著作物である写真はあるのか、原告とディザインとの間にはどのような契約等がなされていたかなどについては一切確認せず、E弁護士にもそのことを説明しなかった。
 また、Bは、通知書(乙2)の文言に、原告がCD−ROMの制作者をディザインと考えていることが窺われる記載があるにもかかわらず、原告やE弁護士に対して、被告イシイにおいて販売のみならず制作も行っている旨述べなかった。
 さらに、被告らは、当時、ビジュアルディスクに収録されているデジタル画像データを基に比較的低解像度の本件ウェブ用画像を作成し、これを本件ウェブサイトに掲載し、本件ダウンロードサービスを提供していた。しかし、Bは、このような本件ウェブサイトの存在や本件ダウンロードサービスを行っていることについて原告に説明せず、またE弁護士に対しても説明したり相談したりしなかった。
オ D弁護士とE弁護士は、交渉の結果、原告が未払使用料を請求しているデジタル画像データを特定し、その基となった写真の著作権について利用許諾をすることによって、被告イシイがビジュアルディスクを今後も継続販売することができるとする内容の合意を締結するのが適当と判断し、原告とBの了解を得た。そして、原告に対して写真を特定するよう求めたところ、原告は、平成9年6月当時存在した、ビジュアルディスクの全CD−ROMに収録されている全デジタル画像データを印刷したカタログの中から144点のみ赤丸を付して特定したが(乙1)、残りの8点については該当する写真を特定することができなかった。
 D弁護士とE弁護士は、以上を踏まえて協議の上、平成10年12月17日付けで、前記第2の1(4)の内容の本件覚書を作成し、それぞれ署名押印した。
 原告は、平成10年12月17日に、両弁護士の署名押印がなされた後の本件覚書を確認したが、その内容に特別疑義は述べなかった。
カ(ア) 原告は、平成13年になって、被告イシイ自身がビジュアルディスクのCD−ROMの制作にも関与していること、被告イシイではカタログも新しいものに変更してビジュアルディスクの販売を継続していることを知った。
 原告は、即座に、被告イシイに対し、本件覚書で許諾したのはあくまで平成9年タイトルのCD−ROMの販売であることを理由に、ビジュアルディスクのCD−ROMをさらに制作することやその販売を即時停止するよう求め、また、販売したCD−ROMの回収や、これまでの販売組数の報告などを求めた。しかし、被告イシイは、「その件に関しては既に済んでいる」旨電話で回答し、本件覚書をファックスにて送信したのみであった。そこで、原告は、自らの力で解決することは困難と考え、弁護士に解決を依頼した。
 原告は、弁護士を通じ、平成14年3月12日付けで、被告イシイが追加使用料を支払っていないこと、本件覚書の対象写真(原告写真)以外にも、デジタル画像データ化されてビジュアルディスクに収録されている原告が著作権を有する写真が存在しているにもかかわらず、原告に無断でビジュアルディスクのCD−ROMが販売されていることなどにより、信頼関係が破壊されたとして、本件覚書における合意を解除する旨の意思表示をし、また、損害賠償として3070万円支払うよう記載した通知書(甲11の1)を被告イシイに送付し、これは翌13日に到達した。
(イ) 原告は、平成14年1月ころ、被告イシイのホームページにおいて、ビジュアルディスクの紹介として、収録されているデジタル画像データが掲載され(本件ウェブサイトにおける本件ウェブ用画像データの掲載)、本件ダウンロードサービスがなされていることを知り、被告アイピーネットに対して画像データの抹消と損害賠償を請求する旨記載された平成14年3月12日付け通知書(甲12の1)を送付した。
(ウ) 被告イシイ及び被告アイピーネットは、以上の通知書に対し、本件ダウンロードサービスはあくまで販売促進活動の一環として行っていたのだから、実質的な被害はないと考えていること、ビジュアルディスクのCD−ROMの販売組数報告を怠っていたが、現在までに販売組数が500組を超えたものはないこと、写真の無断使用との指摘についてはそのような事実はないと認識しているが、具体的に指摘するのであれば再確認すること、などを記載した平成14年3月25日付けの書面(甲15)を原告に対して送付した。
 そこで、原告は改めて1068点の写真を特定した(甲16)。これに対して被告らは、本件覚書締結に際し、原告に対して著作権を有する写真を特定するよう求めたところ、原告がビジュアルディスクに収録されているデジタル画像データを全て掲載したカタログ中、144点の画像についてのみ赤丸を付したことを指摘し、著作物の追加の申し出は承服しかねる、仮に見落としがあったとしても権利を放棄したものと考えるとの回答を記載した平成14年4月11日付け書面(甲17)を原告に送付した。なお、同書面には、本件ダウンロードサービスがビジュアルディスクの販売促進の一環であることが改めて記載されている。
(2) 以上の認定事実によれば、次のようにいうことができる。
ア 著作権及び著作者人格権侵害行為について
(ア) 職業写真家が撮影したポジ写真を、CD−ROMに収録するためにA3サイズに拡大印刷しても明瞭さが維持できる程度の高解像度(約350dpi・120mm×95mm)のデジタル画像データにする行為は、ポジ写真をその内容において実質的同一性を維持したままデジタル画像データにする行為であるから、ポジ写真の複製行為ということができる。
 したがって、被告イシイが本件CD−ROMを原告の許諾を得ることなく制作販売すれば、原告の写真の著作権(複製権)の侵害行為となる。
(イ) また、当初の写真と比較して、撮影の構図、撮影対象の配置等を変えずに、また、カンプやプレゼンテーションのためであれば特段使用に支障が生じない程度の低解像度(約72dpi・120mm×95mm)の本件ウェブ用画像データを作成して本件ウェブサイトに掲載する行為は、外面的に表現形式が変化するものではなく、また、表現についての本質的な部分を変更するものではないから、やはりポジ写真と実質的に同一の別のデジタル画像データを作成する行為というべきであり、ポジ写真の複製行為ということができる。
 したがって、被告イシイのホームページ(本件ウェブサイト)等を管理している被告アイピーネットが、原告の許諾なく本件ウェブ用画像を作成する行為も、原告の写真の著作権(複製権)を侵害するものである。
 なお、本件ウェブ用画像データがポジ写真と実質的な同一性を維持している以上、上記行為が同一性保持権侵害行為となることはない。
(ウ) そして、本件ウェブ用画像を対象とする本件ダウンロードサービスを行い、第三者が所定の手続を採りさえすればその画像データを入手することができるような状態において、同サービスを使用して第三者がこれを入手した時点で、本件ウェブ用画像が自動公衆送信されたということができる。
 したがって、被告らが原告の許諾を得ることなく本件ダウンロードサービスを行う行為は、原告の写真についての著作権(自動公衆送信権)を侵害するものである。
(エ) さらに、本件CD−ROM及び本件ダウンロードサービスにおいては、原告の氏名が一切表示されていないところ、原告との黙示の合意なく、原告の氏名を表示しないまま本件CD−ROMの制作販売や本件ダウンロードサービスを行った被告らの行為は、原告の写真に関する著作者人格権(氏名表示権)を侵害するものである。
イ 本件覚書による原告写真特定の趣旨及び使用許諾の範囲等について
 前記認定のとおり、原告は、ディザインが報告してきた平成9年タイトルの名称と使用した写真点数に基づいて、同タイトルに収録された画像データの基となる写真の使用料を請求したものの、ディザインからその支払を受けることができなかった。そこで、実際にビジュアルディスクを販売している被告イシイに対しその支払を求めることとし、これをD弁護士に依頼したものであるところ、その際、同弁護士に対し、ビジュアルディスクにはその他にも原告が貸与した写真を基とするデジタル画像データが相当数存在することなどについて説明しなかったため、同弁護士はビジュアルディスクのCD−ROMに収録されているデジタル画像データのうち、原告が著作権を有する写真が基となっているのは、原告が使用料支払を求めている152点に限られると誤解した。D弁護士は、その誤解のままに通知書(乙2)を送付したり、被告イシイの代理人と交渉したりした。
 また、Bも、D弁護士から平成9年タイトルについての未払使用料支払請求を受けたときに、ビジュアルディスクのCD−ROMについて販売だけでなく制作も行っていることや、ディザインと被告イシイの関係等について、自己の依頼したE弁護士に説明しなかった。また、被告らが被告イシイのホームページ(本件ウェブサイト)を立ち上げてそこに本件ウェブ用画像を掲載して本件ダウンロードサービスを行っていることについて、広告宣伝の一環であって何ら権利関係において問題は生じないと軽信し、そのことも同弁護士に相談しなかった。そのため、同弁護士は、Bから十分な情報提供を受けないまま、被告イシイとしては、ビジュアルディスクのCD−ROMを今後も販売できればよいのであって、そのためには原告が請求している平成9年タイトルに収録されている写真に関する使用料未払分を支払い、これについて利用許諾を受ければ足りると誤った判断に至ったものというべきである。そして、被告イシイがCD−ROMを今後も制作販売すること、本件ウェブ用画像を使用した本件ダウンロードサービスを行うことについて原告に許諾を得る必要性を検討できないまま、したがって、これを交渉の対象にしないまま原告側のD弁護士と交渉を行ったものといえる。
 そして、交渉当事者であるD弁護士及びE弁護士がかかる認識を有したまま交渉した結果作成された本件覚書の前文や第1条には、あたかも平成9年6月当時のビジュアルディスクの全CD−ROMに収録されているデジタル画像データの中で原告がその基となる写真の著作権を有しているものを、原告がカタログに赤丸を付すことができた原告写真144点に限定し、それらについて原告が被告イシイに利用許諾をしたように記載されているが、原告とBの認識によれば、原告が著作権を有する写真を上記144点に限定するとの明示又は黙示の合意をしたということはできず、上記144点の原告写真を特定した趣旨は使用料未払のものを特定したとの認識を有していたにすぎないものと考えるのが自然である。
 また、原告は、ディザインがそれ以前の写真使用料を支払っていたこともあって、本件覚書により、ビジュアルディスクの全CD−ROMを被告イシイが今後も販売していくことを許諾したものと認められる。なお、その販売に関しては、原告が特に指示限定していない以上、従前と同様、原告の氏名を表示せず、原告は氏名表示権を行使しないことについて黙示に同意していたと認められる。他方、本件ウェブ用画像の作成に関する同一性保持権侵害について権利行使をしない旨の何らかの合意があったとの被告イシイ主張事実は、これを認めるに足りる証拠はない。
 なお、以上のような経緯により作成された本件覚書によって、被告イシイが平成9年タイトルについて500組を超えるCD−ROMを制作すること、原告の写真を基にしたデジタル画像データを収録した平成9年タイトル以外のCD−ROMを制作すること、本件ウェブ用画像を作成し、本件ウェブサイトへ掲載したり、本件ダウンロードサービスを行ったりすることについてまで、原告が被告イシイに黙示に許諾したとまでは認められない。したがって、これらの行為を対象として、氏名表示権を行使しないことが黙示に合意されていたということができないことは当然である。
ウ 本件覚書の解除の成否等について
(ア) 本件覚書は、原告写真144点を確認の上、原告が被告イシイに対しその使用を許諾し、被告イシイは原告に著作権使用料を支払うこと、販売組数を1年ごとに報告し、500組を超えて販売する場合には著作権追加使用料を支払うこと等をその合意内容とするものである。そして、本件におけるビジュアルディスクのような、収録されているデジタル画像データの複写や改変行為に対して、データの基となった写真を撮影した者(写真の著作権者)が著作権及び著作者人格権を行使しないことを前提とする商品の性質に照らせば、写真の著作権者とCD−ROMの制作販売者との間で締結される利用許諾契約においては、とりわけ制作販売者側における写真の著作権者の有する著作権に対する格段の配慮が要求されると解すべきであって、いやしくも、上記許諾契約上許容されている範囲を超えて複製行為又は公衆送信行為を行ったりしてはならないことはもちろん、著作権者側から著作権の有無等について疑義が出された場合にはこれに対し真摯に対応すべき本件覚書に基づく契約上の注意義務を負担するものというべきである。
(イ) これを本件についてみるに、前記(1)認定のとおり、Bは、本件覚書の締結に際し、被告イシイがビジュアルディスクのCD−ROMの販売のみならず制作にも関与していることを原告に告げなかった上、その後、本件覚書で定められた販売組数の原告への報告義務も履行しなかった。被告イシイは、その後もビジュアルディスクのCD−ROMの制作販売を継続し、原告に無断で、ウェブ用画像データを作成し、ウェブサイトに掲載の上、無料ダウンロードサービスを行ったりしたところ、これを知るに至った原告が、再度被告イシイに事態の改善を求めたところ、著作権の問題は本件覚書をもって解決されているとの一方的な回答を行ったのみであり、その後、弁護士が関与して初めて著作物の特定を求めるなどの対応をしたものである。
(ウ) 以上によれば、被告イシイは、本件CD−ROMを含むビジュアルディスクのCD−ROMに収録されている画像データの基となった原告の写真についての原告の著作権に対する関心が薄く、本件覚書の締結後も、本件覚書に定められた販売数量の報告義務等を履行しなかった上、原告に無断でウェブ用画像データを作成してウェブサイトに掲載の上、無料ダウンロードサービスを行ったりするなど、原告の有する著作権(複製権、公衆送信権)を侵害する行動に出たものである。そして、被告イシイは、これらの行為について原告から改善要求を受けたにもかかわらず、さらに原告に著作物の特定を求めるなどの必要と思われる対応措置を講じず、その問題は本件覚書で解決済みである趣旨の一方的な回答をするだけの不誠実な対応に終始したというべきである。これらの事情を考慮すると、上記(ア)記載の本件覚書の性質、被告イシイのした義務違反の内容等に鑑み、原告の被告イシイに対する本件覚書の解除の意思表示が同被告に到達した平成14年3月13日には、本件覚書の基礎となっていた原告と被告イシイ間の信頼関係は既に破壊されていたと評価するのが相当である。
 したがって、本件覚書を解除する旨の原告の意思表示が被告イシイに到達した平成14年3月13日をもって、本件覚書に係る合意は解除され、同日限り、原告・被告イシイ間の契約関係は終了したものというべきである。
エ 本件ダウンロードサービス等について
(ア) 被告イシイは、本件覚書締結当時、原告は被告イシイがビジュアルディスクの制作も行い、しかも今後も継続することを知ってこれを黙示に許諾したと主張する。また、デジタル画像データを収録したCD−ROM商品である以上、商品の広告宣伝のために、当該デジタル画像データに手を加えて、ウェブ用画像を作成し、ウェブサイトへ掲載し、ダウンロードサービスを行うことによって第三者がデータを入手できる状態に置くことは通常想定されているということができるから、CD−ROMの販売を認めた本件覚書は、広告宣伝の一環である本件ウェブ用画像の作成、本件ウェブサイトへの掲載、本件ダウンロードサービスをも許諾していたというべきであるし、本件ウェブサイトへの掲載等や本件ダウンロードサービスによって被告らは何らの利得を得ていないことが考慮されるべきであると主張し、被告ら代表者もこれに副う供述をしている。
(イ) しかしながら、平成9年タイトルに収録された写真152点の未払使用料の請求のため原告の依頼を受けたD弁護士が被告イシイ宛てに送付した通知書(乙2)には、被告イシイがCD−ROMを販売している旨の記載しかなく、これを制作していることを指摘する記載はない。その他、原告において被告イシイがCD−ROMを制作していたことを知っていたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、原告が被告イシイがCD−ROMの制作を行っていることを知っていたことを前提とする被告イシイの上記主張は失当である。
(ウ) また、写真のデジタル画像データを収録したCD−ROM商品を販売する場合、その広告宣伝等の一環として、自社のホームページにウェブ用画像を掲載したりダウンロードサービスを行ったりすることがあるということはできるが、広告宣伝活動の一環とはいえ、著作権者の許諾なくこれらの行為を行えばその著作権(複製権、公衆送信権)を侵害することになることはいうまでもなく、かつ、そのことが著作権侵害行為としての違法性を阻却するものであるともいえない。また、被告らが上記各行為により何らの利得を得ていなかったとしても、同様というべきである。
 本件覚書においては、広告宣伝活動等の一環としてCD−ROMに収録されたデジタル画像データを基に解像度の異なるデータを作成して利用することを許諾する旨の規定はなく、他に原告がそのような許諾をしていたと認めるに足りる証拠はない。したがって、本件ウェブサイトに本件ウェブ用画像を掲載し、本件ダウンロードサービスを行うことは、原告の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものであり、かつ、その違法性が阻却されるものではないというべきである。
オ 氏名表示権不行使特約、同一性保持権侵害について
(ア) 原告は、本件覚書等によって氏名表示権を行使しない旨を黙示に合意したことはないと主張し、原告は本人尋問において本件CD−ROMに収録されたデジタル画像データに氏名が表示されていないことについてディザインに抗議したが改善されなかったと供述する。
 しかし、原告は、Cの説明によって当初よりビジュアルディスクが著作権フリーの画像素材集であることを認識していたのであるから、著作権行使が初めから予定していない商品であることを当然認識していたと認められる。そして、そうである以上、CD−ROM等に著作権者の氏名が表示されない可能性があることを認識していたと認められ、このことは、本件覚書を締結する上での当然の前提事項とされていたというべきである。また、原告は、ディザインからCD−ROMの現物を見せられた際、CD−ROM本体にも収録されている画像データにも原告の氏名が表示されないことを知っていたはずである。しかるに、原告は、そのことについて何ら異議を述べないままディザインへの写真の貸与を継続していた上、その間、CD−ROM等の確認を行っていなかったのであるから、原告がディザインに氏名の表示を求めていたとは考えられない。さらに、仮に氏名の表示を求めていたのであれば、原告は、被告イシイと本件覚書を締結するにあたって、改めて被告イシイに対して氏名の表示を求めるべきところ、そのような行動に出たことを窺わせる証拠はない。
 そうすると、原告は、当初よりビジュアルディスクにおいてはCD−ROMやデジタル画像データに原告の氏名が表示されないことを認識し、そのことを了解していたというべきであって、本件覚書締結時においても、特段この点を指摘しなかったものである。以上の事情に照らせば、原告が許諾した本件CD−ROMの販売に関しては、原告と被告イシイとの間において、原告が氏名表示権を行使しないことについて黙示の合意が成立していたというべきである。
 ただし、本件覚書が解除により終了したことに伴い、上記黙示的合意も失効したというべきであるから、その後において原告の氏名を表示しないまま本件CD−ROMを販売することが原告の氏名表示権を侵害するものとなることは当然である。
(イ) また、原告は、本件ウェブ用画像が粗い粒子の画像データであることをもって、その基となった写真を同画像へ改変する行為が原告の同一性保持権を侵害するものであると主張する。
 しかしながら、大きく引き延ばして印刷等をすればその繊細な色彩や陰影等の相違が明らかになるとしても、その前の本件ウェブ用画像の作成や本件ウェブサイトへの掲載において、カンプやプレゼンテーションにおいて使用するに支障が生じない程度に解像度を低下させたにすぎないのであれば、表現において同一性が失われているということはできない。その他、本件ウェブ用画像においてその基となった原告の写真と比較した場合に、表現において同一性が失われてると認めるに足りる証拠はない。
3 争点(3)(本件出版契約について)
(1) 同(3)ア(本件出版契約は、著作権譲渡契約か、著作権利用許諾契約か)について
ア 前記第2の1(当事者間に争いのない事実等)、証拠(甲10、18、27、29、乙3、5、原告本人尋問及び被告ら代表者尋問の各結果)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(ア) 原告は、ビジュアルディスクに収録するデジタル画像データの基となった写真をディザインに貸与することについて、平成9年7月14日、「著作権フリー写真集CD−ROM出版契約書」と題する契約書を取り交わして合意した(本件出版契約。甲18)。
(イ) 本件出版契約の第2条は「ポジ使用の許諾」との表題が付され、その1項には原告がディザインに対して原告所有のポジ写真の情報をデジタル化によりディザインが管理又は所有するCD−ROMに書き込む方法によって使用することを「許諾」すると規定し、第6条は「ロイヤリティについて」との表題が付され、「第2条のポジ使用料として」ロイヤリティを支払うものとすると規定している。
(ウ) 本件出版契約には、著作権の利用許諾ができる地位を第三者に譲渡することを認める規定は存在しない。
(エ) 本件覚書締結当時、被告イシイは、原告に対し、既に著作権の譲渡を受けているとか、ディザインの地位を引き継いでいる等述べたことはない。また、本件覚書には、原告写真の使用許諾がディザインを通してなされていたこと、ディザインとの本件出版契約が解除されたので、改めて使用許諾が必要であるとの前提から合意されたものであることが、前文において明記されている。
イ 上記アの認定事実によれば、本件出版契約の内容は、著作権の利用許諾ができる地位を第三者に譲渡し得る旨の合意は明示・黙示ともに存在せず、原告が、ディザインに対し、原告が著作権を有する写真についてデジタル画像データを作り、これをCD−ROMに収録することについて許諾する債権契約としての著作権利用許諾契約というべきである。
ウ これに対し、被告らは、本件出版契約第4条は「商品の著作権は甲(ディザイン)が有する。」と規定しており、このことからすれば、CD−ROMへの収録という利用方法に限定される著作権を原告からディザインに譲渡する旨の契約である、仮に利用許諾契約であっても、利用権を第三者に譲渡することにつき予め承諾を与えられていたと主張する。
 しかしながら、本件出版契約は、第3条において「ポジに関する権利」は原告が有することを規定し、第6条でポジ使用料の支払について規定されている。本件出版契約の上記各条項に鑑みれば、第4条にいう「商品の著作権」とは、商品(CD−ROM)の製造販売権を意味するものとして使用されていると解するのが自然であり、デジタル画像データの基となった写真に関する著作権(CD−ROMに収録するとの目的に限定する場合を含む。)自体を譲渡するとの趣旨であると解することは相当でないというべきである。
 また、本件出版契約において、利用権を第三者に譲渡することにつき予め承諾を与えていたということのできる条項はないし、他にそのような合意の存在を認めるに足りる証拠もない。
(2) 争点(3)イないしエに関する被告らの主張は、争点(3)アに関する被告らの主張を前提としているものと解されるから、本件出版契約が物権契約である著作権譲渡契約であるか、又は債権契約である著作権利用許諾契約であるとしてもその地位を第三者に譲渡することを予め承諾する旨の合意があるとの被告らの主張が認められない以上、上記各争点に関する被告らの主張を判断する必要はないというべきである。
4 争点(4)(ミスミのダウンロード販売行為について)
(1) 証拠(甲49の1及び2、甲50の1及び2、乙34ないし37)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 被告イシイは、ビジュアルディスクのCD−ROMを自ら販売するほか、第三者に卸売りしていた。ミスミはその卸売先業者の一つである。
イ ミスミは、ビジュアルディスクが1組に写真50枚分のデジタル画像データを収録したCD−ROMであることから、CD−ROMの販売促進活動の一環として、収録されている全デジタル画像データを、インターネットを通じて個別に販売することを計画し、これについて被告イシイに許諾を求めた。
 その内容は、@CD−ROMに収録されたものをミスミにおいてJPEGに変換したもの(高解像度のもの)については、販売価格はCD−ROMのミスミにおける販売価格の半額とし、2点以上ダウンロードする場合にはCD−ROMを購入する方が低額となるようにする、ACD−ROMに収録されたものを元にミスミにおいて72dpi×640pics×480picsの画像を作成したもの(低解像度のもの)については、販売価格を一律500円とする、B被告イシイのロイヤリティをこれらのデジタル画像データの販売価格の40%とする、などであった。
ウ 被告イシイは検討の結果これを許諾することとし、ミスミは平成14年3月6日からダウンロードサービスを開始した。なお、同ダウンロードサービスにおいては、実際にサンプルの画像を出すと、画像の中心部に「digitalvision」あるいは「multi−bits」等の透かし文字が入っている。画像に関して原告の氏名の表示はない。
エ ミスミは、ダウンロードされた際にこれが被告イシイに連絡される方法を採りながら、ダウンロードされたファイルについてのロイヤリティを支払っていた。
(2) 上記認定のとおり、ミスミが、ビジュアルディスクのCD−ROMに収録されているデジタル画像データをJPEGに変換したり、低解像度のデータを作成したりしてウェブサイトに掲載する行為は、同CD−ROMに収録されているデジタル画像データの基となる原告撮影の写真の複製行為にほかならない。これらの行為が原告の許諾なくなされたときは、原告の著作権(複製権)を侵害するものとなる。
 また、これをダウンロードサービスによって入手可能な状態にし、実際にこれをダウンロードする行為は、同様に原告の撮影した写真の公衆送信行為ということができ、この行為が原告の許諾なくなされた場合には、原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものとなる。
 さらに、原告写真を基とするデジタル画像データの中央に文字を入れることは原告の著作物たる写真の改変行為というべきであって、原告の意思に反しているものということができるから、原告の許諾がない以上原告の撮影した写真の同一性を失わせる同一性保持権を侵害する行為である。また、原告の許諾なく、氏名を表示していない以上は氏名表示権侵害にもなる。
 被告イシイは、ミスミの行うダウンロードサービスにより、原告の有する複製権・公衆送信権・氏名表示権の侵害行為がなされることを知りながら、また、販売促進活動である以上原告の写真の同一性を失わしめる行為がなされる可能性があることを認識しながら、漫然とこれを許諾したというべきである。したがって、ミスミの行為に伴い生じる損害賠償責任をミスミと共同して負うというべきである。
(3) 被告イシイは、ミスミが行ったダウンロード販売においては、必ずしもビジュアルディスクのCD−ROMに収録されている全ての画像データがその対象となっているわけではないと主張する。しかし、ミスミはダウンロード販売においてビジュアルディスクのCD−ROMに収録されている全データを対象とする旨述べており、同被告の主張を裏付ける証拠はない。
 また、被告イシイは、本件CD−ROMに関するのと同様、著作権の譲渡を受けていたあるいは本件出版契約において同一性保持権や氏名表示権について黙示の承諾あるいは不行使特約があったと主張するが、同主張が失当であることは前示のとおりである。
 さらに、被告イシイは、ミスミの行為について被告イシイが責任を負うことはないと主張する。しかし、被告イシイは、ミスミからどのようなダウンロード販売を行うかを予め説明され、その行為態様を認識することができたのであるから、これを独自の立場で許諾した以上、少なくとも損害賠償責任についてその主体性が否定されることはないというべきである。
5 争点(5)(権利濫用)
 前記1(1)、2(1)の認定事実によれば、原告がディザインに対し写真を貸与する際に当該写真を明確に特定し、さらに、本件覚書締結に際しビジュアルディスクのCD−ROMに収録されている全デジタル画像データについて著作権を主張する写真を特定するなどしていれば、本件訴訟に至る紛争を未然に防止できた可能性がなかったとはいえない。
 しかしながら、本件訴訟は、直接的には、被告イシイが、独自の立場からビジュアルディスクの制作販売を行うようになった後に、収録されている画像データの基となった写真の著作権者と主張する原告からの申し出に対して本件覚書の文言をもって解決済みであると回答し、また、弁護士に交渉を依頼したにもかかわらず、本件ダウンロードサービスの実施等必要な事項を説明しなかったなどの不誠実、不適切な対応をきっかけとして提起されたものであることが明らかである。
 したがって、前示のとおり、被告らが独自の立場において著作権等侵害行為を行った以上、ディザインが既に同様の行為について使用料を支払い、原告から著作権使用に関し許諾を得ていたことなどの事情をもって、原告の被告らに対する損害賠償請求が権利濫用となるということは到底できない。
 その他本件において原告の請求が権利の濫用となるような事情等を認定することはできず、この点に関する被告らの主張は失当である。
6 争点(6)(差止めの必要性の有無)
(1) 被告イシイは、本件CD−ROMを含めた「ビジュアルディスク」の全てのCD−ROMの在庫を平成15年10月18日に廃棄した(乙23の1及び2、乙24の1及び2、25、26の1ないし8、乙27)。また、被告イシイは、今後原告の写真を利用したCD−ROMの制作販売をしない旨述べている(乙28、被告ら代表者尋問の結果)。また、被告らは、平成15年5月30日には別紙目録第4記載のウェブページにおける「ビジュアルディスク」に関する画像データの掲載を中止した(乙17の1ないし48、乙18、19、被告ら代表者尋問の結果)。
 これらの事実に照らせば、被告らが、本件CD−ROMの制作販売等原告が本件訴訟において差止めを求める行為を行うおそれは相当に低いものといえる。
(2) しかし、他方、被告らは、本件CD−ROMに収録したり本件ウェブ用画像にしたりするための基となる画像源データについては、ビジュアルディスクとして商品化された時点で消去するとの取扱いをしていたものの、担当者レベルにおいては、これを保管している可能性がある(乙28)。
 このような画像源データが存在すれば、今後も、CD−ROMに収録し、あるいはウェブサイトに掲載し、ダウンロードサービスを行うことは極めて容易である。またBは、写真の著作権の存否等が重要となるCD−ROMを商品として制作販売する立場にありながら、著作権者が誰かについて関心がないなどと法廷で述べるなど、著作権侵害行為に対する規範意識が著しく低いと認めざるを得ない。
 これらの事情を考慮すると、本件においては、被告らが、本件CD−ROMの制作販売等原告が本件訴訟において差止めを求める行為を行うおそれはいまだあると認められ、差止めの必要性がないということはできない。
7 争点(7)(損害賠償請求について)ア(被告らの故意、過失)、イ(原告の損害)
(1) 著作権、著作者人格権侵害行為について
 前記2及び4で認定説示したとおり、被告らによる著作権及び著作者人格権侵害行為及び当該行為についての故意過失は次のとおりである。
ア 本件CD−ROMについて
(ア) 複製権侵害について
a 平成9年タイトルについては、本件覚書解除後にCD−ROMを制作した行為が複製権侵害となる。
 平成9年タイトル以前のものについては、平成10年1月12日の本件確認書作成後被告イシイが独自の立場でCD−ROMを制作した行為が複製権侵害となる。
b 被告イシイは、本件覚書により、平成9年タイトルの制作販売行為について許諾を得ていたことを認識していた。本件覚書の解除の意思表示がなされるまでの原告と被告イシイとの交渉経緯等及び当該経緯等によれば、写真の著作物利用許諾契約において必要とされる程度の信頼関係が破壊されていたことは前示のとおりである。したがって、当該経緯等にもかかわらず、被告イシイが原告との信頼関係が破壊されておらず、本件覚書の解除の効果が発生しないと一方的に軽信していたにすぎないから、本件覚書が解除された後に平成9年タイトルを制作することが、原告の複製権を侵害する行為に該当することについて、被告イシイに過失があったと認められる。
 また、被告イシイは、前示のとおり、本件確認書作成前に、ディザインがビジュアルディスクのCD−ROMに収録されているデジタル画像データの基となった写真の著作権についていかなる権利を有していたのか、あるいはディザインが写真の著作権者とどのような契約を締結していたのか確認すべきところこれを怠り、写真の著作権がディザインに譲渡されていると根拠もなく思いこんだまま、本件確認書を取り交わしてCD−ROMの制作行為を行っていた。したがって、平成9年タイトル以前のものについては、被告イシイがディザインとの関係を終了し、独自の立場でCD−ROMを制作販売するに至った平成10年1月13日以降の複製権侵害行為について、被告イシイに過失が認められる。本件確認書においてビジュアルディスクに関する権利の一切を譲渡すると記載されているのは、被告イシイによる根拠のない誤解を前提とする以上、過失を否定するものではない。
(イ) 氏名表示権侵害について
 原告は、ディザインに対しては本件出版契約等によって、被告イシイに対しては本件覚書によって、氏名表示権を行使しない旨の黙示の合意をしていたということができる。したがって、被告イシイは、ディザインとの提携関係を前提としてCD−ROMを制作販売していたときは、ディザインと原告の間の上記合意により氏名表示権を侵害していないことになる。しかし、本件CD−ROMのうち、平成9年タイトル以外のCD−ROMについては、平成10年1月12日の本件確認書作成以後被告イシイがディザインとは別の独自の立場から制作したことにより氏名表示権を侵害したことになる。また、平成9年タイトルについては、本件覚書により氏名表示権を行使しない旨の黙示の合意がなされていたというべきであるところ、本件覚書解除に伴い上記黙示の合意も失効したことは前示のとおりであるから、その後の制作販売行為は氏名表示権侵害行為となる。
 これらの氏名表示権侵害行為について過失が認められることは、前記(ア)bと同様である。
イ 本件ダウンロードサービスについて
(ア) 被告らが本件ウェブ用画像を作成し、本件ウェブサイトに掲載して本件ダウンロードサービスを行ったことについては、原告の許諾を一切受けていないから、これらの行為は全て原告の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものとなる。
(イ) 本件ウェブ用画像や本件ダウンロードサービスについては、写真家の氏名が表示されておらず、また、原告が氏名を表示しないことについて予め了承していたということもできない。したがって、上記行為は当初より氏名表示権侵害行為であったというべきである。なお、本件ダウンロードサービスについて同一性保持権侵害が認められないことは、前示のとおりである。
(ウ) そして、被告らは、本件ウェブ用画像を作成し、本件ウェブサイトに掲載し、本件ダウンロードサービスを行うにあたり、ディザインに対してあるいは本件覚書締結時に原告に対して、著作権・著作者人格権等との関係はどのようになっているのか確認すべきところこれを怠り、本件ダウンロードサービスがビジュアルディスクの販売促進活動の一環である以上、本件覚書によりこれらの行為についても許諾があるかあるいは著作権の問題はないと軽信し、原告の著作権及び著作者人格権の侵害行為を継続したものである。
 したがって、本件ダウンロードサービス及びそのための本件ウェブ用画像の作成行為、本件ウェブサイトへの掲載行為については、いずれも被告らに過失が認められる。
ウ ミスミのダウンロード販売行為について
 原告が、被告イシイに対し、CD−ROMに収録するデジタル画像データの作成と、これを収録したCD−ROMの販売しか許諾していなかった以上、被告イシイの許諾の下に、ミスミのしたダウンロード販売のための高解像度あるいは低解像度のデジタル画像データ作成行為及びダウンロード販売行為はいずれも原告の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害する行為となる。
 そして、これらの行為について被告イシイに過失が認められることは、前記ア及びイ記載のとおりであり、ミスミと共同不法行為責任を負う。
(2) 原告の損害について
ア 本件CD−ROMに関して
(ア) 複製権侵害の財産的損害について
a 前記1(1)、2(1)認定の事実及び証拠(甲10、13、14、18、29、乙29ないし32、原告本人尋問及び被告ら代表者尋問の各結果)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実等が認められる。
(a) 写真の使用料金は、貸し出す側と借りる側との合意によってその額が決定されるところ、同額を算定する基礎となる著作物としての価値、評価等が必ずしも明確ではないため、社団法人日本写真家協会では、最低料金規定(甲13)なるものを作成し、これによって写真家が不当に低額の使用料に合意させられることがないようにしている。同規定(甲13)によれば、依頼による制作の場合は、1回の使用につき1頁1点3万円以上、自主的に制作する場合でも1回の使用につき1頁1点4万5000円以上とされている。
 また、長年に亘り国内外の写真家の撮影した写真についてライセンス業務を行ってきたエージェント会社であるPPS通信社は、その料金について広告使用基本料表(甲14)なるものを作成し、使用料金を定める際の基準としている。同表には、写真を旅行パンフレットに1/8頁以内で使用する場合の料金を2万5000円、パンフレットやカタログ等に使用する場合の料金を3万円から7万円とするとの記載があるほか、高名な写真家については別料金となるとの記載もある。
 さらに、原告は、ブレーンセンターにおいて写真を貸し出す場合の写真使用料金表(甲29)を作成しているが、同表によれば、ポスターに使用する場合の料金は6万5000円、パンフレット等に使用する場合には3万円から3万5000円とされている。
 なお、これらの料金規定・料金表は、あくまで具体的な使用料金を定める際の一応の目安にすぎず、実際には写真の価値等その他の事情を考慮の上、個別的な料金額が具体的に決定されるものと解される。
(b) 原告は、昭和38年以降職業写真家として活動し、写真の使用料収入をもって生計を立てている。使用料金の徴収については、自ら行う場合とPPS通信社等のエージェント会社に代行させる場合があり、後者の場合には上記広告利用基本料表(甲14)に準拠して使用料等を受け取っていたものと推測される。また、原告は、昭和46年以降はブレーンセンターを立ち上げ、原告の撮影した写真のほか、原告に写真の保管等を委託した第三者の写真についても、これを印刷会社等に貸し出し、使用料金の徴収を行っていた。原告は、使用料金徴収のために、上記料金表(甲29)を作成し、これを基準として使用料金を定め、これを請求し、徴収していた。
(c) 原告は、平成6年、ディザインのCから、世界中の写真を撮っている原告の写真を借用したいと要請された際、ディザインが販売しようとしているCD−ROMは原告の写真をデジタル画像データ化したものを収録するものであって、同CD−ROMを購入した者はその収録されたデータを自由に複製・改変できることを理解した。その上で、原告とディザインは、写真の使用料金額を写真1点あたり5000円(CD−ROM500組分)とする合意をした。
 その後原告がディザインに対してビジュアルディスクに関して貸与する写真は全てこの金額を基準としており、原告とディザインとの間で作成された本件出版契約の契約書にもこの金額は明記され、原告と被告イシイの間で作成された本件覚書にもこの金額を前提とする使用料支払規定が置かれていた。
b このように、原告は、写真の使用料金の相場を十分に認識し、その交渉にも精通していたものであり、かつ、ビジュアルディスクの商品内容、とりわけCD−ROMの購入者が写真を基とするデジタル画像データを自由に複製・改変等することができることの説明を受け、これを十分理解した上で、CD−ROM500組分の写真使用許諾料を写真1点あたり5000円とするのが相当であるとの評価を下し、その旨ディザインと合意したものである。
 そうすると、著作権の利用行為につき「受けるべき金額に相当する額」としては、本件CD−ROM500組の制作販売について写真1点あたり7500円とするのが相当である。
 そして、平成9年タイトル以外の本件CD−ROMの平成10年1月12日以降の制作組数、平成9年タイトルの平成14年3月14日以前に500組を超えるか同日以後制作した組数は別紙損害算定表の該当欄記載のとおりである。500組を超えるものではないので、各CD−ROMに収録されている原告が著作権を有する写真を基とする画像データの数を7500円に乗じた金額を総計すると、757万5000円となる。
c(a) 原告は、写真1点あたり7万円が相当とし、本件出版契約等において決められた使用料金額は、あくまで著作権フリーの画像素材集という珍しい商品の販売に協力するために低額でよいとの判断の下に決められたにすぎず、損害賠償の算定において基準となり得る金額ではないと主張し、原告本人尋問においてこれに副う供述をしている。
 しかしながら、長年、写真の利用許諾をエージェント会社を通じてあるいは自らにおいて行ってきた原告が、使用料金を定めるに当たり、他の場合と異なってことさら著しく低額の金額で合意することは、その合理的意思から著しくかけ離れるというべきであって、にわかに考えられない。
 原告は、そのころ珍しかった著作権フリーの画像素材集に協力したにすぎないことを強調する。しかし、著作権フリーの画像素材集は、単にパンフレット等に使用することを許諾するのとは異なり、CD−ROMを購入した第三者がさらに利用(複製や改変)することを予定しているものであって、その場合には写真の著作権者である原告にしてみれば、著作権侵害に匹敵する行為がなされてもそれに対する権利行使ができず、経済的立場が脅かされる危険性を伴うものである。そうすると、著作権フリーの画像素材集の基となる写真の著作権者とすれば、そのような画像素材集に自らの写真を貸与することを承諾する際、そのような危険性を考慮して金額をむしろ高目に設定するのが通常というべきであって、その他の場合と比べて著しくかけ離れた低い価額で合意したとは考えがたいというべきである。
(b) また、原告は、写真1点あたりの利益を160円あるいは100円、ビジュアルディスクの各CD−ROMが月に7組販売されることを前提とする損害主張をする。
 しかし、写真1点あたりの利益が160円あるいは100円であるとの原告主張事実を裏付ける確たる証拠はないし、原告自らが設定したCD−ROM1組における写真1点あたり10円(5000円÷500組)とする合意がなされていた事実と比較すると、利用許諾のない状態下であることを考慮に入れるとしてもあまりにも高額に過ぎるというほかない。
 さらに、原告は、ビジュアルディスクの各CD−ROMについて月間平均7組の割合で販売されたと主張し、その証拠として被告イシイの前にビジュアルディスクを販売していた業者の販売実績表(甲44)を提出する。しかし、同実績表によると各タイトルとも発売当初は相当数量出荷されているが、1年経過するころには1か月の出荷組数が7組を下る場合の方が多いと認められるから、同実績表をもって月間販売数を推計することは、実態よりも多い組数によって算定することとなって不適当である。
d したがって、原告の主張する損害額算定方法はいずれにしても失当である。
(イ) 複製権侵害行為の精神的損害について
 原告は、本件CD−ROMの制作販売による複製権侵害行為により100万円の精神的損害を被ったと主張する。
 しかし、前示のとおり、原告は、職業写真家であり、写真の使用料金の相場を十分に認識し、その交渉にも精通していたものであり、かつ、ビジュアルディスクの商品内容、とりわけCD−ROMの購入者が写真を基とするデジタル画像データを自由に複製・改変等することができることの説明を受け、これを十分理解した上で、被告イシイに対し、その販売を許諾したものである。したがって、原告は、自己の撮影した写真を基とするデジタル画像データをCD−ROMの購入者等が複製・改変することについて了承していたものであって、これについて原告が精神的苦痛を被ったと認める余地はない。
 上記事情を考慮すると、本件覚書による写真利用許諾契約が解除されたことにより、著作権フリーの画像素材集を利用した複製・改変行為等が著作権侵害行為と評価されることになるとしても、原告がこれによる財産的損害の填補を受けてもなお回復されない精神的損害を被ったと認めることはできない。
 また、本件覚書の文言上、ビジュアルディスクの全デジタル画像データの基となる写真のうち原告が著作権を有するものは原告写真144点に限られると解釈できることに鑑みると、後日原告からさらなる要求をされた被告イシイが、本件覚書を読み直して著作権に関する問題は既に解決されているとの回答を原告に対して行ったことが、直ちに被告イシイにおいて賠償すべき精神的損害を原告に被らせたと認めることはできない。さらに、本件覚書締結後、原告が販売組数を報告するよう被告イシイに求めていた事実は認められないから、被告イシイがこれを報告しなかったことが、原告に精神的苦痛を被らせたものということはできない。
 以上のとおり、本件CD−ROMの複製行為により、原告が精神的損害を被ったと認めることはできない。
(ウ) 氏名表示権侵害について
 本件覚書解除後における本件CD−ROMの制作販売行為は、著作者人格権たる原告の氏名表示権を侵害するものといえる。しかし、前記2(1)の認定事実によれば、原告は、ビジュアルディスクのCD−ROMに氏名が表示されていないことを当初より認識していたものであり、それにもかかわらず、ビジュアルディスクが著作権フリーの画像素材集であることなどの事情も踏まえて、氏名の表示を求めなかったのであり、また本件覚書を締結する際にも従前どおり氏名が表示されていなくてもよいと考え、黙示に氏名表示権を行使しない旨合意していたものである。
 したがって、本件覚書解除後における被告イシイの上記行為は、原告の著作者人格権(氏名表示権)を侵害するものであるということができるものの、上記のような本件覚書解除前の事情を考慮するならば、その精神的苦痛を慰謝するには30万円が相当というべきである。
(エ) 弁護士費用
 本件事案の内容、難易度のほか、本件訴訟に至る前示事実関係等の事情を考慮すれば、本件CD−ROMに関する複製権侵害行為及び氏名表示権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害としては、上記(ア)及び(ウ)記載の金額の1割に相当する78万7500円が相当である。
イ 本件ダウンロードサービスについて
(ア) 複製権・公衆送信権侵害による財産的損害について
a 前記2(1)の認定事実によれば、本件ダウンロードサービスは、ビジュアルディスクのCD−ROMに収録されているデジタル画像データについて、カンプやプレゼンテーションに使用する程度なら利用可能という程度に解像度を落とした画像データ(本件ウェブ用画像)を作成し、これを本件ウェブサイトに掲載し、ダウンロードを可能にしたものである。
 したがって、本件ダウンロードサービスにおいて複製・公衆送信される本件ウェブ用画像の価格は、必然的に本件CD−ROMに収録されたデジタル画像データの価格よりも低額になるものと評価できる。そして、原告は、本件CD−ROMに収録されたデジタル画像データについては1点当たり7万円と主張しているのに対し、本件ウェブ用画像・本件ダウンロードサービスにおいては写真1点あたり1万円と、ほぼ7分の1の金額を主張している。
 また、本件ダウンロードサービスがなされた回数等は不明であるが、ミスミのダウンロードサービスが行われた回数集計表(乙33)によれば、原告の撮影した写真を基とするデジタル画像データの各データの延べ利用回数が125回にすぎないことからすれば、本件ダウンロードサービスの利用が無料であったとしても、その回数は各デジタルデータにつき500回を超えるものではないと推認される。
 そうすると、ビジュアルディスクのCD−ROM500組分の写真1点あたりの使用料相当額が7500円が相当であることは前示のとおりであり、その他上記事情を考慮すると、本件ウェブ用画像・本件ダウンロードサービスにおける写真1点あたりの使用料は1000円が相当というべきである。
b 本件ウェブ用画像が作成され、これが本件ウェブサイトに掲載され、本件ダウンロードサービスに供されたデジタル画像データで原告が著作権を有する写真を基とするものの数量は、別紙損害算定表の該当欄記載のとおりである。
 これに写真1点あたり1000円を乗じると、107万5000円になる。
(イ) 著作者人格権侵害による精神的損害について
 原告は、被告らの本件ダウンロードサービスによって、原告の有する著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)が侵害され、精神的損害を被ったと主張する。
 本件ダウンロードサービスにおいても、原告の氏名が表示されておらず、また、本件CD−ROMの制作販売におけるものと異なり、本件ダウンロードサービスにおいては原告が権利行使を行わない旨の合意をしたことがあるという事情も認められない。これらの事情を考慮すると、被告らの氏名表示権侵害により原告の被った精神的損害は100万円とするのが相当である。
 なお、被告らの上記行為が原告の同一性保持権を侵害するものでないことは、前示のとおりであり、これを理由とする慰謝料請求は理由がない。
(ウ) 弁護士費用
 ア(エ)と同様の理由により、本件ダウンロードサービスに関する複製権・公衆送信権侵害行為と相当因果関係を有する弁護士費用相当の損害額は、上記(ア)、(イ)の損害額合計207万5000円の1割に相当する20万7500円とするのが相当である。
ウ ミスミのダウンロード販売行為に関して
(ア) 複製権・公衆送信権侵害による財産的損害
 乙第33号証によれば、ミスミのダウンロード販売に関しては、高解像度のデータは総計34枚の写真がダウンロードされており、低解像度のデータは総計85枚の写真がダウンロードされていることが認められる。高解像度のデータの価格は、本件CD−ROMのデジタル画像データの価格1枚あたり7500円に匹敵し、低解像度のデータの価格は、本件ウェブ用画像データの価格1枚あたり1000円に匹敵すると認めるのが相当である。したがって、その複製及び公衆送信行為による損害は、高解像度データについて7500円に34枚を乗じた25万5000円、低解像度データについて1000万円(ママ)に85枚を乗じた8万5000円の合計34万円となる。
(イ) 複製権・公衆送信権侵害による精神的損害
 そして、ミスミのダウンロード販売において原告が被ったと主張する精神的損害の理由は、本件ダウンロードサービスに関する主張と同様と解されるところ、前記イ(イ)と同様の理由により、これによる精神的損害を認めることはできない。
(ウ) 著作者人格権侵害による精神的損害
 氏名表示権侵害行為や同一性保持権侵害行為に関しては、ミスミのダウンロード販売行為もまた原告が関知しないところであったことからすれば、原告の精神的損害は氏名表示権侵害について50万円、同一性保持権侵害について50万円とするのが相当である。
エ 損害額のまとめ
(ア) 被告イシイに対する請求分 合計1000万2500円
a 本件CD−ROMの複製権侵害の財産的損害 757万5000円
b 本件CD−ROMの複製権侵害の精神的損害 0円
c 本件CD−ROMの氏名表示権侵害の精神的損害 30万円
d a〜cに係る弁護士費用相当の損害 78万7500円
e ミスミのダウンロード販売に係る複製権・公衆送信権侵害による財産的損害 34万円
f ミスミのダウンロード販売に係る複製権・公衆送信権侵害による精神的損害 0円
g ミスミのダウンロード販売に係る著作者人格権侵害による精神的損害 100万円
(イ) 被告らに対する請求分 合計228万2500円
a 本件ダウンロードサービスに係る複製権・公衆送信権侵害による財産的損害 107万5000円
b 本件ダウンロードサービスに係る氏名表示権侵害による精神的損害 100万円
c 本件ダウンロードサービスサービスに係る同一性保持権による精神的損害 0円
d 弁護士費用相当の損害 20万7500円
8 争点(8)(謝罪広告の必要性の有無)
 上記6(1)記載で認定したとおり、被告イシイは本件CD−ROMを含めたビジュアルディスクの全てのCD−ROMの在庫品を廃棄処分とし、また被告らは本件ウェブサイトにおけるビジュアルディスクに関する画像データの掲載を中止しているのであるから、損害賠償に加え、さらに謝罪広告を掲載させる必要性は認められない。
9 結論
 よって、原告の被告イシイに対する本件請求は、本件CD−ROMの制作頒布の差止め、本件CD−ROM及び原告が著作権を有すると認められる写真を基とする画像データ(別紙目録第11記載の画像データ)の廃棄、866万2500円(上記7エ(ア)aないしdの合計額)の損害賠償及びこれに対する平成14年3月14日(原告が本件覚書を解除する旨の意思表示をし、これが被告イシイに到達した日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金並びに134万円(上記7エ(ア)eないしgの合計額)の損害賠償及びこれに対する平成15年9月1日(ミスミがダウンロード販売という不法行為を終了した日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。原告の被告らに対する本件請求は、別紙目録第12記載の画像データの公衆送信及び本件ウェブサイトへの掲載の差止め、同画像データの廃棄、228万2500円(上記7エ(イ)の合計額)の損害賠償及びこれに対する平成15年6月3日(被告らが本件ウェブサイトにおけるビジュアルディスクに関するする画像データを削除した日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告のその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。なお、損害賠償を認めた部分を除き、仮執行宣言は必要がないものと認め、これを付さないこととして主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部
 裁判長裁判官 田中俊次
 裁判官 中平健
 裁判官 大濱寿美


別紙目録 第1
商品名 Visual Disk
商品番号
 N−01から06まで、N−08から17まで、N−21
 N−23、N−24
 M−01、M−02、M−04からM−06まで
 M−08からM−11まで、M−13、M−20
 L−01からL−03まで、L−05からL−11まで
 L−13からL−15まで、L−17からL−19まで
 A−01、A−02
 O−01からO−05まで、O−16
 J−01
 S−01


別紙目録 第2
別紙カタログの下記番号画像(別紙カタログは省略)

(N−01) 01、08、11、14、16、19、20、21、32、44
(N−02) 02、05、07、09、10、13、16、17、21、24、29、34、36、37、39、42
(N−03) 02から04まで、14、17、19、20、37、39から41まで、44、46、48、49
(N−04) 08、12、16、19、24、28から34まで、36、37、42、46、48
(N−05) 30、32、33、39、42、48
(N−06) 05、16、18、19、24、28、40、42、44、49、50
(N−08) 02から08まで、15、16、19、22、30、32、33、36、38から43まで、45
(N−09) 08から10まで、12、16、18、27、30、47、50
(N−10) 11、13から15まで、17から20まで、22から24まで、27、33、40、41、46、47
(N−11) 01、08、13から16まで、18から27まで、50
(N−12) 01、02、05から07まで、09、13、17、19、21、23から25まで、34、36、44、45、49
(N−13) 04
(N−14) 04、10、16、33
(N−15) 01から36まで、38から50まで
(N−16) 01から40まで、46、47、49
(N−17) 01から38まで、42、45から50まで
(N−21) 01から14まで、16、17、19、21から26、31、32、35から42まで、45から50まで
(N−23) 05、14、20、26、48
(N−24) 01から04まで、09から13まで、17、19から21まで、23から33まで、41から48まで
(M−01) 13、17から21まで
(M−02) 11から14まで、18、48
(M−04) 02、15、16、27、36、39
(M−05) 11、16、19から21まで、23、45、48、49
(M−06) 02から07まで、11、12、14、15、18、19、50
(M−08) 01、02、04、05、09、10、12から15まで、18から20まで、23から25まで、28、30、32、34、36、40から43まで、45、46、48から50まで
(M−09) 28
(M−10) 05、44
(M−11) 08、23
(M−13) 08、10、13、34、40
(M−20) 07、36から50まで
(L−01) 23、34
(L−02) 02、06
(L−03) 01から31まで、34から43まで、45から47まで、49、50
(L−05) 01、10、14、50
(L−06) 01から50まで
(L−07) 01から05まで、07から09まで、11から18まで、20から31まで、35から41まで、44から46まで、48から50まで
(L−08) 01から50まで
(L−09) 01から50まで
(L−10) 01から50まで
(L−11) 01から50まで
(L−13) 01から50まで
(L−14) 01から11まで、13から36まで、38から50まで
(L−15) 15、31、32、45
(L−17) 01から50まで
(L−18) 01から50まで
(L−19) 34から50まで
(A−01) 02、04から06まで、09から11まで、14から16まで、18から21まで、23から27まで、29、31、34、48から50まで
(A−02) 01、07、15、18、23
(O−01) 01から10まで、12、15から42まで、45から49まで
(O−02) 01、05から07まで、09、12から14まで、19、24から29まで、31から48まで、50
(O−03) 01から50まで
(O−04) 01から50まで
(O−05) 01から50まで
(O−16) 01から09まで、11から50まで
(J−01) 03、48から50まで
(S−01) 01から50まで
 以上合計1398点

別紙目録 第3
別紙カタログの下記番号画像

(N−01) 01、08、11、14、16、19、20、21、32、44
(N−02) 02、05、07、09、10、13、16、17、21、24、29、34、36、37、39、42
(N−03) 02から04まで、14、17、19、20、37、39から41まで、44、46、48、49
(N−04) 08、12、16、19、24、28から34まで、36、37、42、46、48
(N−05) 30、32、33、39、42、48
(N−06) 05、16、18、19、24、28、40、42、44、49、50
(N−08) 02から08まで、15、16、19、22、30、32、33、36、38から43まで、45
(N−09) 08から10まで、12、16、18、27、30、47、50
(N−10) 11、13から15まで、17から20まで、22から24まで、27、33、40、41、46、47
(N−11) 01、08、13から16まで、18から27まで、50
(N−12) 01、02、05から07まで、09、13、17、19、21、23から25まで、34、36、44、45、49
(N−13) 04
(N−14) 04、10、16、33
(N−15) 01から36まで、38から50まで
(N−16) 01から40まで、46、47、49
(N−17) 01から38まで、42、45から50まで
(N−21) 17、19、21から26、35、36
(N−24) 04、09
(M−01) 13、17から21まで
(M−02) 11から14まで、18、48
(M−04) 02、15、16、27、36、39
(M−05) 11、16、19から21まで、23、45、48、49
(M−06) 02から07まで、11、12、14、15、18、19、50
(M−08) 01、02、04、05、09、10、12から15まで、18から20まで、23から25まで、28、30、32、34、36、40から43まで、45、46、48から50まで
(M−09) 28
(M−10) 05、44
(M−11) 08、23
(M−13) 34、40
(M−20) 07、44、50
(L−01) 23、34
(L−02) 02、06
(L−03) 01から31まで、34から43まで、45から47まで、49、50
(L−05) 01、10、14、50
(L−06) 01から50まで
(L−07) 01から05まで、07から09まで、11から18まで、20から31まで、35から41まで、44から46まで、48から50まで
(L−08) 01から50まで
(L−09) 01から50まで
(L−10) 01から50まで
(L−11) 01から50まで
(L−13) 01から50まで
(L−14) 01から11まで、13から36まで、38から50まで
(L−15) 15、31、32、45
(L−17) 01から50まで
(L−18) 01から50まで
(A−01) 02、04から06まで、09から11まで、14から16まで、18から21まで、23から27まで、29、31、34、48から50まで
(A−02) 01、07、15、18、23
(O−01) 01から10まで、12、15から42まで、45から49まで
(O−02) 01、05から07まで、09、12から14まで、19、24から29まで、31から48まで、50
(O−03) 01から50まで
(O−04) 01から50まで
(O−05) 01から50まで
(O−16) 11、12
(J−01) 03、48から50まで
(S−01) 01から50まで
 以上合計1254点

別紙目録 第4
下記URLのウエブページ

1 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N01/Index.htm
2 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N02/Index.htm
3 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N03/Index.htm
4 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N04/Index.htm
5 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N05/Index.htm
6 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N06/Index.htm
7 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N08/Index.htm
8 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N09/Index.htm
9 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N10/Index.htm
10 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N11/Index.htm
11 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N12/Index.htm
12 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N13/Index.htm
13 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N14/Index.htm
14 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N15/Index.htm
15 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N16/Index.htm
16 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/N17/Index.htm
17 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M01/Index.htm
18 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M02/Index.htm
19 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M04/Index.htm
20 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M05/Index.htm
21 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M06/Index.htm
22 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M08/Index.htm
23 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M09/Index.htm
24 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M10/Index.htm
25 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/M11/Index.htm
26 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L01/Index.htm
27 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L02/Index.htm
28 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L03/Index.htm
29 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L05/Index.htm
30 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L06/Index.htm
31 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L07/Index.htm
32 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L08/Index.htm
33 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L09/Index.htm
34 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L10/Index.htm
35 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L11/Index.htm
36 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L13/Index.htm
37 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L14/Index.htm
38 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L15/Index.htm
39 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L17/Index.htm
40 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L18/Index.htm
41 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/L19/Index.htm
42 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/A01/Index.htm
43 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/O01/Index.htm
44 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/O02/Index.htm
45 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/O03/Index.htm
46 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/O04/Index.htm
47 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/O05/Index.htm
48 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/J01/Index.htm
49 http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/vd_member/S01/Index.htm

別紙目録 第5
 URL http://www.ieps.co.jp/VDDS_HP/VDDStop.html

別紙目録 第6
別紙カタログの下記番号画像

(N−01) 44
(N−10) 17、18、23、46、47
(N−11) 01、08、13から16まで、18から27まで、50
(N−16) 01、32
(N−17) 02、07
(N−24) 03、30、44
(M−13) 13
(L−02) 02
(L−05) 01、10、14、50
(L−07) 21、29、38
(L−11) 01から50まで
(L−14) 01から11まで、13から36まで、38から50まで
(L−17) 08、12
(A−01) 04、10、20、21、25、29、49
(J−01) 03、49
(S−01) 06から09まで、14、38、42
 以上合計155点

別紙目録 第7
別紙カタログの下記番号画像

(N−01) 01、08、11、14、16、19、20、21、32
(N−02) 02、05、07、09、10、13、16、17、21、24、29、34、36、37、39、42
(N−03) 02から04まで、14、17、19、20、37、39から41まで、44、46、48、49
(N−04) 08、12、16、19、24、28から34まで、36、37、42、46、48
(N−05) 30、32、33、39、42、48
(N−06) 05、16、18、19、24、28、40、42、44、49、50
(N−08) 02から08まで、15、16、19、22、30、32、33、36、38から43まで、45
(N−09) 08から10まで、12、16、18、27、30、47、50
(N−10) 11、13から15まで、19、20、22、24、27、33、40、41
(N−12) 01、02、05から07まで、09、13、17、19、21、23から25まで、34、36、44、45、49
(N−13) 04
(N−14) 04、10、16、33
(N−15) 01から36まで、38から50まで
(N−16) 02から31まで、33から40まで、46、47、49
(N−17) 01、03から06まで、08から38まで、42、45から50まで
(N−21) 01から14まで、16、17、19、21から26まで、31、32、35から42まで、45から50まで
(N−23) 05、14、20、26、48
(N−24) 01、02、04、09から13まで、17、19から21まで、23から29まで、31から33まで、41から43まで、45から48まで
(M−01) 13、17から21まで
(M−02) 11から14まで、18、48
(M−04) 02、15、16、27、36、39
(M−05) 11、16、19から21まで、23、45、48、49
(M−06) 02から07まで、11、12、14、15、18、19、50
(M−08) 01、02、04、05、09、10、12から15まで、18から20まで、23から25まで、28、30、32、34、36、40から43まで、45、46、48から50まで
(M−09) 28
(M−10) 05、44
(M−11) 08、23
(M−13) 08、10、34、40
(M−20) 07、36から50まで
(L−01) 23、34
(L−02) 06
(L−03) 01から31まで、34から43まで、45から47まで、49、50
(L−06) 01から50まで
(L−07) 01から05まで、07から09まで、11から18まで、20、22から28まで、30、31、35から37まで、39から41まで、44から46まで、48から50まで
(L−08) 01から50まで
(L−09) 01から50まで
(L−10) 01から50まで
(L−13) 01から50まで
(L−15) 15、31、32、45
(L−17) 01から07まで、09から11まで、13から50まで
(L−18) 01から50まで
(L−19) 34から50まで
(A−01) 02、05、06、09、11、14から16まで、18、19、23、24、26、27、31、34、48、50
(A−02) 01、07、15、18、23
(O−01) 01から10まで、12、15から42まで、45から49まで
(O−02) 01、05から07まで、09、12から14まで、19、24から29まで、31から48まで、50
(O−03) 01から50まで
(O−04) 01から50まで
(O−05) 01から50まで
(O−16) 01から09まで、11から50まで
(J−01) 48、50
(S−01) 01から05まで、10から13まで、15から37まで、39から41まで、43から50まで
 以上合計1243点

別紙目録 第8
別紙カタログの下記番号画像

(N−23) 05、14、20、26、48
(N−21) 01から14まで、16、31、32、37から42まで、45から50まで
(N−24) 01から03まで、10から13まで、17、19から21まで、23から33まで、41から48まで
(M−13) 08、10、13
(M−20) 36から43まで、45から49まで
(L−19) 34から50まで
(O−16) 01から09まで、13から50まで
 以上合計144点

別紙目録 第9
別紙カタログの下記番号画像

(N−02) 10
(N−03) 02から04まで、20、37
(N−04) 24、42
(N−06) 19、40、44、49
(N−08) 02、04、15、19、22、30、38
(N−09) 12、16、18、47、50
(N−12) 02、34、36、44
(N−13) 04
(N−14) 10、16、33
(N−15) 20
(N−17) 33から38まで、42、45
(M−04) 02、16、27、36、39
(M−06) 18
(M−08) 20、32、34
(M−11) 08、23
(M−13) 34、40
(M−20) 07、45、50
(L−03) 02から04まで、07、09、10、12、17、18、20、23、26、27、30、47
(L−08) 02、11、17、20、22、26、44
(L−10) 11、23、27、31
(L−15) 15、31、32、45
(L−18) 02、14、17、27、35、46
(A−01) 34
(A−02) 01、07、15、23
(O−01) 01、02、06から08まで、10、18、22、24、26、27、33、37、38、40から42まで、45
(O−02) 01、07、14、19、24、32、45、47、48、50
(O−05) 06、08、10、14、16、18
(O−16) 11、12
 以上134点

別紙目録 第10
別紙カタログの下記番号画像

(N−01) 19、32
(N−02) 37
(N−04) 08、19
(N−06) 05、18
(N−16) 49
(N−21) 17、19、21から26まで、35、36
(N−24) 09
(O−05) 37
 以上20点

別紙目録 第11
別紙カタログの下記番号画像

(N−01) 01、08、11、14、16、20、21
(N−02) 02、05、07、09、10、13、16、17、21、24、29、34、36、39、42
(N−03) 02から04まで、14、17、19、20、37、39から41まで、44、46、48、49
(N−04) 12、16、24、28から34まで、36、37、42、46、48
(N−05) 30、32、33、39、42、48
(N−06) 16、19、24、28、40、42、44、49、50
(N−08) 02から08まで、15、16、19、22、30、32、33、36、38から43まで、45
(N−09) 08から10まで、12、16、18、27、30、47、50
(N−10) 11、13から15まで、19、20、22、24、27、33、40、41
(N−12) 01、02、05から07まで、09、13、17、19、21、23から25まで、34、36、44、45、49
(N−13) 04
(N−14) 04、10、16、33
(N−15) 01から36まで、38から50まで
(N−16) 02から31まで、33から40まで、46、47
(N−17) 01、03から06まで、08から38まで、42、45から50まで
(N−21) 01から14まで、16、31、32、37から42まで、45から50まで
(N−23) 05、14、20、26、48
(N−24) 01、02、04、10から13まで、17、19から21まで、23から29まで、31から33まで、41から43まで、45から48まで
(M−01) 13、17から21まで
(M−02) 11から14まで、18、48
(M−04) 02、15、16、27、36、39
(M−05) 11、16、19から21まで、23、45、48、49
(M−06) 02から07まで、11、12、14、15、18、19、50
(M−08) 01、02、04、05、09、10、12から15まで、18から20まで、23から25まで、28、30、32、34、36、40から43まで、45、46、48から50まで
(M−09) 28
(M−10) 05、44
(M−11) 08、23
(M−13) 08、10、34、40
(M−20) 07、36から50まで
(L−01) 23、34
(L−03) 01から31まで、34から43まで、45から47まで、49、50
(L−06) 01から50まで
(L−07) 01から05まで、07から09まで、11から18まで、20、22から28まで、30、31、35から37まで、39から41まで、44から46まで、48から50まで
(L−08) 01から50まで
(L−09) 01から50まで
(L−10) 01から50まで
(L−13) 01から50まで
(L−15) 15、31、32、45
(L−17) 01から07まで、09から11まで、13から50まで
(L−18) 01から50まで
(L−19) 34から50まで
(A−01) 02、05、06、09、11、14から16まで、18、19、23、24、26、27、31、34、48、50
(A−02) 01、07、15、18、23
(O−01) 01から10まで、12、15から42まで、45から49まで
(O−02) 01、05から07まで、09、12から14まで、19、24から29まで、31から48まで、50
(O−03) 01から50まで
(O−04) 01から50まで
(O−05) 01から36まで、38から50まで
(O−16) 01から09まで、11から50まで
(J−01) 48、50
(S−01) 01から05まで、10から13まで、15から37まで、39から41まで、43から50まで
 以上合計1222点

別紙目録 第12
別紙カタログの下記番号画像

(N−01) 01、08、11、14、16、20、21
(N−02) 02、05、07、09、10、13、16、17、21、24、29、34、36、39、42
(N−03) 02から04まで、14、17、19、20、37、39から41まで、44、46、48、49
(N−04) 12、16、24、28から34まで、36、37、42、46、48
(N−05) 30、32、33、39、42、48
(N−06) 16、19、24、28、40、42、44、49、50
(N−08) 02から08まで、15、16、19、22、30、32、33、36、38から43まで、45
(N−09) 08から10まで、12、16、18、27、30、47、50
(N−10) 11、13から15まで、19、20、22、24、27、33、40、41
(N−12) 01、02、05から07まで、09、13、17、19、21、23から25まで、34、36、44、45、49
(N−13) 04
(N−14) 04、10、16、33
(N−15) 01から36まで、38から50まで
(N−16) 02から31まで、33から40まで、46、47
(N−17) 01、03から06まで、08から38まで、42、45から50まで
(N−24) 04
(M−01) 13、17から21まで
(M−02) 11から14まで、18、48
(M−04) 02、15、16、27、36、39
(M−05) 11、16、19から21まで、23、45、48、49
(M−06) 02から07まで、11、12、14、15、18、19、50
(M−08) 01、02、04、05、09、10、12から15まで、18から20まで、23から25まで、28、30、32、34、36、40から43まで、45、46、48から50まで
(M−09) 28
(M−10) 05、44
(M−11) 08、23
(M−13) 34、40
(M−20) 07、44、50
(L−01) 23、34
(L−03) 01から31まで、34から43まで、45から47まで、49、50
(L−06) 01から50まで
(L−07) 01から05まで、07から09、11から18まで、20、22から28まで、30、31、35から37まで、39から41まで、44から46まで、48から50まで
(L−08) 01から50まで
(L−09) 01から50まで
(L−10) 01から50まで
(L−13) 01から50まで
(L−15) 15、31、32、45
(L−17) 01から07まで、09から11まで、13から50まで
(L−18) 01から50まで
(A−01) 02、05、06、09、11、14から16まで、18、19、23、24、26、27、31、34、48、50
(A−02) 01、07、15、18、23
(O−01) 01から10まで、12、15から42まで、45から49まで
(O−02) 01、05から07まで、09、12から14まで、19、24から29まで、31から48まで、50
(O−03) 01から50まで
(O−04) 01から50まで
(O−05) 01から36まで、38から50まで
(O−16) 11、12
(J−01) 48、50
(S−01) 01から05まで、10から13まで、15から37まで、39から41まで、43から50まで
 以上合計1082点

別紙1
 お詫びとお知らせ
当社が制作、販売したCD−ROM「Visual Disk」の内、下記の商品番号のCD−ROMには、写真家A氏の写真画像が同氏に無断で収録されております。同氏の許諾なくして同氏の写真画像を利用されますと同氏の著作権に対する侵害行為となり、罰則を受けるおそれがあります。ここに、本CD−ROMを購入されたお客様に対して、お詫びしてお知らせするとともに、A氏に対して、謹んでお詫び申し上げます。
 記
 N−01〜06、08〜17、21、23、24
 M−01、02、04〜06、08〜11、13、20
 L−01〜03、05〜11、13〜15、17〜19
 A−01、02
 O−01〜05、16
 J−01
 S−01

 イシイ株式会社
  代表取締役 B

別紙2 お詫びとお知らせ
当社がホームページにおいて運営・管理しております「VDDS(ビジュアルディスクダウンロードサービス)」には、写真家A氏の写真画像を同氏に無断で収録しておりました。ここに、当社のホームページを利用されたお客様に対して、お詫びしてお知らせするとともに、A氏に対して、謹んでお詫び申し上げます。

 イシイ株式会社
 株式会社アイピーネットシステム
  上記2社代表取締役 B
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/