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【事件名】専門学校生の実習作品著作権事件(2)
【年月日】平成16年6月30日
 大阪高裁 平成16年(ネ)第360号 損害賠償請求控訴事件
 (原審・大阪地裁平成14年(ワ)第8277号)
 (口頭弁論終結の日 平成16年4月28日)

判決
控訴人(1審原告) A
同訴訟代理人弁護士 石田文三
同 川村哲二
同 昇慶一
被控訴人(1審被告) 学校法人西沢学園
同訴訟代理人弁護士 木村保男
同 的場悠紀
同 川村俊雄
同 中井康之
同 福田健次
同 青海利之
同 飯島奈絵
同 大川治
同 柴野高之
同 山本淳
同 野村祥子
同 小関伸吾


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨等
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、50万円及びこれに対する平成13年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 本件は、コンピュータ専門学校の学生であった控訴人が、上記専門学校を経営する学校法人である被控訴人に対し、控訴人が上記専門学校在学中に作成した著作物であるコンピュータグラフィックス作品を、被控訴人が控訴人に無断で複製して上記専門学校のテレビコマーシャル等に使用したと主張して、不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償100万円及びこれに対する不法行為の後である平成13年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原審は、控訴人は被控訴人に対し、上記コンピュータグラフィックス作品を複製して使用することにつき同意を与えていたと認定して、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が本件控訴を提起した。
 なお、控訴人は、当審において、前記第1の2記載のとおり請求を減縮した。
 (以下、控訴人を「原告」、被控訴人を「被告」という。)
2 当事者の主張
 次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の「第2 当事者の主張」(2頁11行目から14頁8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 3頁2行目から3行目にかけての「飛び出していく」の次に「(いわゆるロケットパンチ)」を加え、同5行目、同12行目及び同19行目の各「別紙」をいずれも「原判決別紙」と改める。
(2) 5頁3行目の「100万円」を「、前記100万円の内金50万円」と改め、6頁12行目の「映画の」の次に「著作物の」を、7頁20行目の「学生」の前に「被告専門学校の」を各加え、11頁20行目の「インターネット」を「ホームページ」と、12頁7行目の「第7回弁論準備手続期日」を「原審第7回弁論準備手続期日」と各改める。
(3) 14頁2行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「(エ) 原告は、平成13年5月26日及び同年6月21日、被告理事長Bらに対して、原告作品@ないしBが被告のテレビコマーシャル、パンフレット及びホームページに使用されたことに対して異議を述べたが、被告理事長Bらは、被告専門学校の機材を使っているから原告に著作権がないとか、学校が使用することができると述べるにとどまり、原告から同意を取り付けたとは答えていない(甲第3号証、第4号証)。」
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決14頁10行目から26頁8行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 15頁8行目から9行目にかけての「原告作品@の」を「原告作品@と」と、同13行目の「前腕が発射される際の噴射火炎」を「前腕部分が発射される際のロケット噴射の火炎」と各改める。
(2) 23頁2行目の「行われていた。」を「行われており、原告は、同校に入学する前に上記パンフレットを見たことがあった。」と、同7行目の「インビュー」を「インタビュー」と、24頁7行目の「放映された。」を「放映され、原告は被告に採用された直後からこのことを知っていた。」と、同21行目から22行目にかけての「陳述」を「部分(以下、併せて「原告の供述等」という。)」と各改める。
(3) 25頁3行目の「とどまっている。」の次に、「しかも、甲第3号証によれば、原告は、平成13年5月26日に被告理事長Bや被告の従業員であるCと面談した際に、昨年(平成12年)の春くらいから異議を述べていたなどと、上記原告の主張及び供述と矛盾する内容の発言をしていたことが認められる。」を加え、同6行目の「甲第1号証、原告本人尋問の結果中の陳述」を「原告の供述等」と改める。
(4) 25頁24行目の「同意」の前に「少なくとも黙示的に」を、同行目末尾の次に改行して、次のとおり、各加える。
 「なお、このことは、前記(3)ア認定のとおり、原告は、被告のテレビコマーシャルに原告作品@、Aが使用されたことを知っていながら、その後も被告に対して長期間にわたって異議を述べたとは認められないことからも裏付けられる。
 もっとも、甲第3号証及び第4号証によれば、原告は、平成13年5月26日及び同年6月21日に被告理事長Bらと面談した際に、原告作品@ないしBが被告のテレビコマーシャル、パンフレット及びホームページに使用されたことにつき異議を述べたが、その際に、被告理事長Bは原告に著作権がないなどと述べるにとどまっていたこと、Cは、上記使用について原告の同意を得ていなかったという趣旨の発言をしたことが認められる。
 しかしながら、被告理事長Bの上記答えから直ちに原告の同意が得られていなかったと認めることはできないし、本件全証拠によっても、原告が被告に雇用されるときの面接の状況をCが知っていたか否かは定かではなく、甲第3号証及び第4号証によれば、Cの上記発言は、原告が、被告に対し、原告作品@ないしBを被告のテレビコマーシャル、パンフレット及びホームページに使用することにつき、明示的に同意をしたことはないという趣旨をいうものであって、黙示的な同意を与えたこともないという趣旨をいうものではないと認められる。
 一方、前記(3)ア認定の事実によれば、被告代表者Bは、平成10年11月12日ころ、原告に対し、原告作品@ないしBを被告の広報等にその後も継続的に使用すること、原告の業務の内容は広報に使用する作品の制作を補助すること及び実習の補助をすること等であることを明らかにした上で、採用を申し入れたところ、原告は、これを承諾し、被告に対して原告作品@ないしBの使用について抗議をすることなく、被告において平成13年3月まで就労していたというのであるから、原告が、被告に対し、雇用されるときの面接の際に、原告作品@ないしBを被告のテレビコマーシャル、パンフレット及びホームページに使用することにつき、少なくとも黙示的に同意を与えていたことは明らかである。
 してみると、甲第3号証及び第4号証は、前記認定判断を左右するものではない。」
2 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、当審及び当審の引用する原審の認定、判断を覆すに足りるものはない。
3 以上によれば、原告の請求は理由がないことが明らかであり、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴は理由がない。
 よって、主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第8民事部
 裁判長裁判官 竹原俊一
 裁判官 小野洋一
 裁判官 中村心
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日本ユニ著作権センター
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