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【事件名】「キャンディ・キャンディ」事件(衣料品会社)
【年月日】平成14年5月30日
 東京地裁 平成11年(ワ)第20392号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結の日 平成14年2月19日)

判決
原告 A
訴訟代理人弁護士 伊東大祐
同 向井千景
同 坂井大輔
被告 B
被告 有限会社アイプロダクション
上記被告2名訴訟代理人弁護士 花岡巌
同 唐澤貴夫
同 本橋光一郎
同 小川昌宏
同 下田俊夫
被告 株式会社ダンエンタープライズ
被告 サンブライト株式会社
上記被告2名訴訟代理人弁護士 伊藤真
被告 タニイ株式会社
訴訟代理人弁護士 桝井信吾
訴訟復代理人弁護士 柳井健夫
被告 有限会社アース・プロジェクト
訴訟代理人弁護士 北村行夫
同 前田裕司
同 市毛由美子
同 鈴木隆文
同 内田法子
同 渡邉良平
同 杉浦尚子
同 大江修子
同 古本晴英


主文
1 被告Bは、原告に対し、金2952万1242円及び内金106万2400円に対する平成10年6月30日から、内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告有限会社アイプロダクションは、原告に対し、金2952万1242円及び内金106万2400円に対する平成10年6月30日から、内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告株式会社ダンエンタープライズは、原告に対し、金2845万8842円及び内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告サンブライト株式会社は、原告に対し、金2845万8842円及び内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告タニイ株式会社は、原告に対し、金1040万5998円及び内金199万1577円に対する平成10年11月30日から、内金96万8433円に対する平成10年12月31日から、内金158万6210円に対する平成11年1月31日から、内金585万9778円に対する平成11年3月3日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告有限会社アース・プロジェクトは、原告に対し、金106万2400円及びこれに対する平成10年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 原告のその余の請求を、いずれも棄却する。
8 訴訟費用は、これを3分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。
9 この判決のうち、第1項ないし第6項は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 被告Bは、原告に対し、金5551万4866円及び内金1000万円に対する平成10年6月1日から、内金160万4000円に対する平成10年6月30日から、内金941万3800円に対する平成10年11月30日から、内金1457万5690円に対する平成10年12月31日から、内金631万0600円に対する平成11年1月31日から、内金1311万0776円に対する平成11年3月3日から、内金50万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告有限会社アイプロダクションは、原告に対し、金5001万4866円及び内金450万円に対する平成10年6月1日から、内金160万4000円に対する平成10年6月30日から、内金941万3800円に対する平成10年11月30日から、内金1457万5690円に対する平成10年12月31日から、内金631万0600円に対する平成11年1月31日から、内金1311万0776円に対する平成11年3月3日から、内金50万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告株式会社ダンエンタープライズは、原告に対し、金5371万0866円及び内金980万円に対する平成10年6月1日から、内金941万3800円に対する平成10年11月30日から、内金1457万5690円に対する平成10年12月31日から、内金631万0600円に対する平成11年1月31日から、内金1311万0776円に対する平成11年3月3日から、内金50万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告サンブライト株式会社は、原告に対し、金4821万0866円及び内金430万円に対する平成10年6月1日から、内金941万3800円に対する平成10年11月30日から、内金1457万5690円に対する平成10年12月31日から、内金631万0600円に対する平成11年1月31日から、内金1311万0776円に対する平成11年3月3日から、内金50万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告タニイ株式会社は、原告に対し、金2326万6126円及び内金711万円に対する平成10年6月1日から、内金343万9160円に対する平成10年11月30日から、内金173万3920円に対する平成10年12月31日から、内金276万3550円に対する平成11年1月31日から、内金821万9496円に対する平成11年3月3日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告有限会社アース・プロジェクトは、原告に対し、金5001万4866円及び内金450万円に対する平成10年3月1日から、内金160万4000円に対する平成10年6月30日から、内金941万3800円に対する平成10年11月30日から、内金1457万5690円に対する平成10年12月31日から、内金631万0600円に対する平成11年1月31日から、内金1311万0776円に対する平成11年3月3日から、内金50万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、連載漫画のストーリーの創作を担当した著述家である原告が、原告に無断で行われた同連載漫画の登場人物の絵の商品化事業について、原告が同連載漫画について有する原著作者としての権利を侵害すると主張して、同商品化事業に関与した被告らに対し、著作権侵害を理由とする損害賠償等の支払を求めたものである。これに対して、被告らは、単にストーリーを創作したにすぎない原告は連載漫画の登場人物の絵の使用について権利を主張することはできないと主張して、著作権侵害を争い、過失の存在を争うとともに、損害賠償の額を争っている。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実、弁論の全趣旨に加えて該当部分末尾掲記の各証拠により認められる。)
(1)当事者
ア 原告は、漫画の原作、児童文学作品等を主な活動領域とする著述家であり、本件で問題とされている連載漫画(「キャンディ・キャンディ」)のストーリーの創作を含め、その活動に関して「a」のペンネームを使用している。
イ 被告B(以下「被告B」という。)は、漫画家であり、「b」のペンネームを使用している。また、被告有限会社アイプロダクション(以下「被告アイプロ」という。)は、被告Bを代表取締役とするアニメーションの著作及び制作販売を主たる業務とする会社であり、被告Bの有する著作権等の権利について専属的にその管理を行っている。
ウ 被告株式会社ダンエンタープライズ(以下「被告ダン」という。)は、工業所有権、映像、文芸、美術、音楽に関する著作権等の取得、譲渡及び貸与等を主たる業務とする会社であり、被告サンブライト株式会社(以下「被告サンブライト」という。)は、商標権、実用新案権、意匠権の売買、仲介及びリース業等を主たる業務とする会社である。
エ 被告タニイ株式会社(以下「被告タニイ」という。)は、衣料品、服飾品の製造販売並びに日用雑貨品の販売及び意匠権、商標権、特許権、実用新案権の取得等を主たる業務とする会社である。
オ 被告有限会社アース・プロジェクト(以下「被告アース」という。)は、著作権、著作隣接権の取得、管理、譲渡を主たる業務とする会社である。
(2)連載漫画の制作の経緯
 漫画「キャンディ・キャンディ」(以下「本件連載漫画」という。)は株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」(以下「なかよし」という。)の昭和50年4月号から同54年3月号までに連載された連続したストーリーを有する漫画であるところ、本件連載漫画は、連載の各回ごとに、原告がストーリーを創作し、小説形式にした原稿(以下「原作原稿」という。)を作成してこれを被告Bに渡し、被告Bが同原稿に基づいて漫画を作成するという手順で制作された。なかよしにおける本件連載漫画の各連載分には、その扉絵に、作者として、被告Bのペンネームである「b」と共に、「原作 a」という形で原告のペンネームが表示されていた(甲8〜10、乙9、10)。
(3)商品化事業をめぐる紛争の経緯
 原告は、平成7年11月15日、被告Bとの間で、本件連載漫画の登場人物の絵の使用については両名で許諾をし、使用料については両名の間で分割して取得する旨の合意をしていた(以下、「平成7年合意」という。)。しかしその後、原告は、被告Bとの間で本件連載漫画の著作権の帰属をめぐって紛争を生じ、平成9年、被告Bらを相手方として、本件連載漫画の登場人物を描いた絵の販売の差止め等を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(東京地裁平成9年(ワ)第19444号事件)。東京地方裁判所は、平成11年2月25日、同事件について、原告の請求を認容する判決を言い渡した。被告Bは、同判決に対して控訴したが(東京高裁平成11年(ネ)第1602号事件)、東京高等裁判所は、平成12年3月30日、被告Bの控訴を棄却する判決を言い渡した(甲8)。同被告は、同判決に対して上告受理の申立てをしたが、最高裁判所は、平成13年10月25日、同被告の上告を棄却する判決を言い渡した(以下「先行訴訟上告審判決」という。)。
(4)被告らの行為
ア 被告Bは、被告アイプロに対し、本件連載漫画について被告Bの有する著作権を管理しその商品化事業を遂行することを委任した。これに基づき、被告アイプロは、被告ダンとの間で、本件連載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化契約を締結して(甲1、戊1)、被告ダンが被告サンブライトに対し(甲2、戊1、2)、被告サンブライトがその傘下の販売業者及び被告タニイに対し(丙3、戊3)、被告タニイがその傘下の販売業者に対し(戊4)、それぞれ本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾した。前記各販売業者は、これに基づき、本件連載漫画の登場人物の絵の付された玩具、文具、衣料品等のキャラクター商品(以下、これと後記の株式会社サンメールの販売に係る商品を併せて「本件商品」と総称する。)を製作して、平成10年10月から平成11年5月にかけて販売した。
イ 被告Bの前記委任に基づき、被告アイプロは、被告アースとの間で、本件連載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化契約を締結して(丁2)、被告アースが株式会社サンメール(以下「サンメール」という。)に対し、本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾した。サンメールは、これに基づき、レターセット、メモ等のキャラクター商品(前記のとおり、サンメールの販売に係る商品を含めて「本件商品」という。)を製作し、平成10年3月から同年6月にかけて販売した(なお、被告アースの本件商品化事業への関与が上記にとどまるものかどうかについては、後記のとおり、争いがある。)。
(5)被告らの本件連載漫画の登場人物の絵についての使用料
ア 被告サンブライト傘下の販売業者は、本件商品を販売したときは、被告サンブライトに対し、販売した本件商品の上代価格(小売価格を指す。以下、同じ。)の6%に相当する金員を、本件連載漫画の登場人物の絵の使用料として支払うこととされていた(甲30、丙12)。被告タニイは、自己又はその傘下の販売業者が本件商品を販売したときは、被告サンブライトに対し、販売された本件商品の上代価格の6%を支払うこととされていた。なお、被告タニイの傘下の販売業者が被告タニイに支払っていた使用料は、上代価格の6%を下回るものではないと認められる。
イ 被告サンブライトは、前記ア記載の販売業者(被告タニイを含む。)が本件商品を販売したときは、被告ダンに対し、販売された本件商品の上代価格の4%に相当する金員を支払うこととされていた(甲2)。
ウ 被告ダンは、前記イ記載の販売業者が本件商品を販売したときは、被告アイプロに対し、販売された本件商品の上代価格の3%に相当する金員を支払うこととされていた(甲1)。
エ サンメールが本件商品を販売したときは、サンメールは被告アースに対して販売された本件商品の上代価格の5%に相当する金員を支払い、被告アースは被告アイプロに対して同商品の上代価格の3%に相当する金員を支払うこととされていた(甲19の1〜3、丁1〜3)。
2 争点
(1)本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して、原告の本件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか(争点1)
(2)本件商品の販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用について、被告らが責任を負うかどうか(争点2)
ア 被告アースの関与行為の内容
イ 被告らの過失の有無等
(3)原告の被った損害額等(争点3)
3 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して、原告の本件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか)
原告の主張
 本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対しても、原告の本件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶというべきである。
 そもそも、著作権法28条は、二次的著作物の使用について、その使用されている部分が原著作物に依拠しているかどうかに関わりなく、原著作物の著作者は、二次的著作物の著作者が有する権利と同一の種類の権利を有するとしたものである。そして、本件商品に付された「キャンディ・キャンディ」の絵は、本件連載漫画の主人公等の絵であることは明らかである。したがって、当該絵に本件連載漫画の原作のストーリーが表れているかを検討するまでもなく、原著作物の著作者である原告は、本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為である本件商品の製造販売に対し、著作権(複製権)を行使することができるというべきである。
 被告らは、ある漫画の登場人物を全く別の漫画の登場人物として使用することもできるから、登場人物の絵のみの使用については、その絵が言語の著作物である原作のストーリーを反映しているかどうかを個別具体的に判断する必要があるなどと主張する。
 しかし、本件連載漫画は原告作成の原作を漫画化したものであり、原告は、本件連載漫画全体について、原著作者としての権利を有している。そして、本件商品に付された絵が本件連載漫画の登場人物の絵であることは、外観上からも明らかであるが、加えて、商品の箱に「陽気なキャンディは孤児院育ち。」と記載されたり(甲18)、広告に「とってもなつかしいキャンディキャンディの登場だよ!」と記載されたりしていること(甲25)に照らしても、明白であるから、それが本件連載漫画のどのコマ絵を複製したものかを特定するまでもなく、それぞれの絵は本件連載漫画を複製したものと認められる。
 著作権法28条の趣旨は、二次的著作物がその性質上原著作物の創作性に依拠してそれを引き継ぐ要素と二次的著作物の著作者独自の創作性のみが発揮されている要素の双方を有するものであるところ、そのような両要素を区別することが困難又は不可能であり、この区別を要求することになれば権利関係が著しく不安定になること、二次的著作物である以上それを形成する要素で原著作物の創作性に依拠しないものはないとみることが可能であることから、二次的著作物の使用について、その使用されている部分が原著作物に依拠しているかどうかに関わりなく、原著作物の著作者が権利を有するとしたものである。
 したがって、著作権法28条により、当該絵が原告作成の原作原稿に依拠しているかどうかに関わりなく、原告が当該絵の使用について原著作者としての権利を有するというべきであるから、被告らの主張は失当である。
被告B及び被告アイプロの主張
 本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して、原告の本件連載漫画の原著作者としての権利は及ばない。
ア 漫画原作者の漫画に対する権利と個々の絵(コマ絵、登場人物の絵等)に対する権利とは、峻別すべきである。したがって、個々の絵は、言語著作物を原著作物とする二次的著作物とは当然にはいうことができず、漫画中の絵画部分が言語著作物(ストーリー原作)の二次的著作物といえるかどうかは、個別に判断しなければならない。
 そして、漫画作品の登場人物の絵が言語著作物(ストーリー原作)の二次的著作物といえるためには、その絵が言葉で書かれた原稿のストーリーにおける表現形式の本質的特徴を直接感得できるものであることを要するというべきであるところ(最高裁昭和51年(オ)第923号同55年3月28日第三小法廷判決・民集34巻3号244頁)、これを本件連載漫画における主人公キャンディを始めとする登場人物の絵についてみると、キャンディ等の登場人物の絵だけを見ても、原告の作成に係る原作原稿のストーリーの本質的特徴を表現していることを感得することはできないから、キャンディ等の登場人物の絵をもって原告の原作原稿を原著作物とする二次的著作物と認める余地はない。
イ ある著作物が原著作物との関係で二次的著作物といえるためには、同著作物が原著作物に「依拠」していることを要する。
 本件においては、被告Bは、昭和49年秋に講談社の編集者からなかよしに新たな連載漫画を描くことを依頼され、編集者との間で、おてんばで元気な孤児の女の子を主人公とする連載漫画を描くことを決めた。被告Bは、同年11月にストーリーライターである原告と新たな連載漫画についての打合せを始めたが、第1回目の打合せの際に、そばかすのある女の子のラフスケッチ(以下「キャンディ原画」という。)を描いて編集者と原告に示した。原告及び編集者は、その場で直ちに同キャンディ原画に基づいて漫画を描くことに賛成し、これにより、原告の役割は、キャンディ原画に描かれたキャラクターの主人公をめぐるストーリーを書くこととなった。そして、被告Bは、同年末から翌昭和50年初めにかけて、同年2月3日発売予定のなかよし3月号に掲載する本件連載漫画の新連載予告用のキャンディのキャラクター画4枚(以下、これらを「キャンディ予告原画」という。)を描き、これらを同年1月8日ころまでに編集者に渡した。原告の作成に係る本件連載漫画の連載第1回目分の原作原稿が被告Bに渡されたのは、その後の同月20日ころである。
 したがって、本件連載漫画の主人公キャンディの絵については、キャンディ原画及びキャンディ予告原画が、連載第1回目分の原作原稿が原告から被告Bに渡される前に、それに依拠することなく被告Bにより創作・完成されていたものであるから、本件連載漫画において描かれたキャンディの絵を、原告の原作原稿を原著作物とする二次的著作物と認める余地はない。また、本件連載漫画におけるキャンディ以外の登場人物の絵についても、原告の原作原稿に依拠することなく描かれたものであるから、二次的著作物ではない。
被告ダン及び被告サンブライトの主張
ア 本件連載漫画は、被告Bが描いたキャンディ原画、キャンディ予告原画及び原告が作成した原作原稿の双方を原著作物とする二次的著作物であると考えられる。そして、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分については生じないと解される。これを本件についてみれば、本件連載漫画の一部としての登場人物の絵に生じる著作権は、キャンディ原画、キャンディ予告原画に対して新たに付与された創作的部分に限られるが、キャンディ原画、キャンディ予告原画と、本件商品に付された本件連載漫画の登場人物の絵とは、その実質を同じくするものであるから、本件連載漫画において固有に付加された部分は全くないというべきである。したがって、本件商品に付された絵は、キャンディ原画、キャンディ予告原画について、被告Bが複製又は翻案したものというべきであり、本件連載漫画の一部としての登場人物の絵を複製又は翻案したものではない。
イ 著作権法28条の趣旨は、例えば小説が映画化された場合に原著作物である小説の本来的な使用には含まれない映画の上映権という二次的著作物の使用権をその小説の著作者が持つというように、原著作物の使用態様を超えた使用に原著作物の著作者の権利が及ぶことを明確にする点にある。そして、原作者の著作物が実質的に使用されていると観念できないような態様による二次的著作物の使用行為についてまで、原作者の権利を拡張して原作者の著作権が及ぶとするものではない。これを本件についてみるに、本件商品に付された絵は、いずれも本件連載漫画の登場人物の容貌や容姿を描いたものにすぎず、そこからは、何らのストーリーも会話も看取することができない。したがって、本件商品に本件連載漫画の登場人物の絵を付する行為に対して、原告が本件連載漫画に対して有している原作者の権利は及ばない。
被告タニイの主張
 著作権法28条が二次的著作物の使用につき原著作物の著作者が二次的著作物の著作者と同一の権利を有すると定めるのは、二次的著作物に原著作物の創作的表現が再生されているからであるが、二次的著作物(本件連載漫画の登場人物の絵)において原著作物(原作原稿)の創作的表現が再生されているといえるためには、二次的著作物から原著作物の創作性を看取し得ることが必要となる。
 ストーリーから切り離して漫画の絵画部分を取り上げる場合、独立した個々の絵画部分から原作の創作性を看取し得るというためには、原作におけるセリフや場面設定等が個々の絵画に表現され、個々の絵画全体として原作の創作性が具体的に表現されていることが必要となる。そして、個々の絵画にまで原作者の著作権が及ぶといい得るためには、原作において、どのような漫画家が描いても、ほぼ類似した絵画を描くであろう程度の漫画表現上の詳細な指示をしていることが必要である。原作において、漫画表現上の詳細な指示がなく、いかような絵画でも描くことができるのであれば、個々の絵画に原作の創作的表現が再生されているとはいえないからである。
 しかるに、本件において、原告は、原作原稿においてどの程度詳細な指示がされているかについて主張立証をしないから、本件連載漫画の登場人物の絵は、原作の創作的表現が再生されているということはできず、原作の二次的著作物ではないというべきである。したがって、本件連載漫画の登場人物の絵には、原告の原著作者としての権利は及ばない。
被告アースの主張
 本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して、原告の原著作物の著作者としての権利が及ぶといえるためには、当該登場人物の絵から原告の原作(ストーリー)を覚知し得れば足り、読者が一見して物語のどの場面かを知りうる必要まではないというべきであるが、二次的著作物内のキャラクターを用いたすべての場合に、原告の著作権が当然に及ぶということはできない。
 すなわち、キャラクターとは、連載漫画における登場人物に、連載の集積の結果等として一定の性格が付与されたものをいうが、かかるキャラクターを原作から切り離し、原作に依拠することなしに単なるキャラクターとして使用することが可能であることを考えると、二次的著作物の創作によって生じた登場人物の絵をキャラクターとして使用するすべての場合が、原著作物の創作性への依拠を意味するものではない。二次的著作物として作られた漫画が、二次的著作物として原作に依拠しているのか、単なるキャラクターとして用いられているかを判断するためには、原著作物の依拠といえるかどうかという見地から判断すべきである。
 これは、著作権法28条の解釈からも裏付けられる。けだし、同条は、二次的著作物の使用に関し、原著作物の著作者が、二次的著作物の権利者と同一の種類の権利を有すると定めるが、これは、二次的著作物が原著作物に依拠して成立していることを根拠として、当該二次的著作物を使用することがすなわち原著作物を使用することになることを理由に、その使用について原著作者の権利を及ぼすことにしたものであるからである。
 これを本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為についてみると、原告は、登場人物の絵に原告作成の原作のどのような部分が表れているかという個別具体的な主張立証を何らしておらず、単に時代が似ているとか複数の登場人物が似ているとかいうだけで原作の反映とみるべきではないから、当該絵が原著作物に依拠していると認めることはできない。すなわち、本件は、単なるキャラクターの使用であって、著作物の使用ではないというべきであるから、原告の原著作物の著作者としての権利が及ぶとはいえない。
(2)争点2(本件商品の製造販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用について、被告らが責任を負うかどうか)
ア 被告アースの関与行為の内容
原告の主張
 被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売についても、他の被告らと共に責任を負う。被告アースは、平成10年夏ころに被告アースが被告アイプロと被告ダンとの間の契約から実質的に外されたので、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売については責任を負わないと主張する。しかし、被告アースは、平成10年3月に本件連載漫画について原告が権利を主張していることを知りながら、事実関係を確かめることなく、同年5月15日に被告ダンに対して本件連載漫画の商品化を再許諾することの内諾を与えており、その後、被告ダンは、年末商戦に間に合わせるべく一気に営業を行い、現実に商品化を行っているものである。したがって、被告アースが被告ダンに対して本件連載漫画の商品化を再許諾することの内諾を与えたことにより(内諾は、被告アースが本件商品の商品化事業から外されたと主張する日(被告アースの主張によれば平成10年夏ころ、被告ダン代表者の陳述書〔丙3〕によれば、平成10年7月27日)よりも前の日である。)、被告ダンらと共同して、本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾及び本件商品の製造販売という一連の行為を行ったとみるべきである。したがって、被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売についても責任を免れない。
被告アースの主張
 被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売については、責任を負わない。
 すなわち、被告アースは、平成9年10月28日、被告アイプロから「キャンディ・キャンディ」の絵の使用について許諾を受けたところ(丁2)、平成10年6月1日、被告ダンとの間で著作物使用についての覚書を交わし(丁5)、被告アースが被告ダンに対し、「キャンディ・キャンディ」の登場人物の絵をウィンドブレーカー等の商品に複製して使用することを許諾した。しかし、被告アースは、同年夏ころ、上記覚書に基づく商品化が実行されて使用料の支払を受ける前に、キャンディキャラクター事業から外されてしまった。このことは、被告アイプロの被告ダンに対する使用許諾契約書(甲1)において、被告アースが被告アイプロの代理人という形で署名していることからも明らかである。これにより、被告アイプロが、被告アースを介さずに、改めて直接被告ダンに対して使用許諾したこととなり、以後、被告アースは、被告ダンを中心とするキャンディキャラクター絵の商品化事業から撤退した。したがって、被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売については、責任を負わない。
イ 被告らの過失の有無等
原告の主張
(ア)被告B及び被告アイプロは、原告が本件連載漫画の原作者であることを知っていたが、本件連載漫画の登場人物の絵の使用に関しては原告は権利を有しないと軽信し、原告の承諾を得ることなく、被告アース、被告ダンに対して本件連載漫画の登場人物の絵の使用について許諾し、これらの許諾に基づいて、販売業者が本件連載漫画の登場人物の絵を付した本件商品を製造販売するに至った。したがって、被告B及び被告アイプロには、本件商品の製造販売について、故意又は過失があるというべきである。
(イ)被告ダン及び被告サンブライトは、被告アイプロと取り交わした「キャンディ・キャンディ」の使用に関する覚書において、被告ダンらが「(<C>b・a)」という著作権表示をしなければならないという条項に合意している(戊1)。すると、被告ダン及び被告サンブライトは、原告が本件連載漫画について著作権を有することを認識しており、少なくとも当然認識することができたにもかかわらず、安易に被告B及びその代理人弁護士の説明を信用したものであるから、前記被告両名に過失があることは明らかである。被告タニイについても、「<C>a」という表示をすることを了解していた以上、同様である。
(ウ)被告アースは、被告アースが被告アイプロと使用許諾契約を締結した際、使用許諾の対象となる絵が本件連載漫画の登場人物の絵であることや、原告が本件連載漫画の原作者であること、原告と被告Bとの間で本件連載漫画の登場人物の絵の使用について紛争が生じていることを知っていた。また、被告アースは、原告と被告Bとの間で、かつて、絵のみの使用についても原告が利益配分を受ける平成7年合意が存在したことも聞いていた。
 そうすると、被告アースは、原告が本件連載漫画について原著作権を有することを認識しながら、本件連載漫画の絵の複製をサンメールに許諾するなどしたものであるから、原告の本件連載漫画に対する原著作者としての権利の侵害について、故意又は過失があったというべきである。
 この点、被告アースは、原作付き漫画の絵のみの使用の場合における原作者の権利について裁判所の判断が出ていなかったことや、被告Bの顧問弁護士から問題ないとの回答を得ていたことをもって、過失がないと主張するが、これは、被告アースも認識していた紛争の一方当事者の代理人から、問題ないと言われただけであり、単に法律の解釈について誤った認識を持っていたことをいうにすぎない。そして、被告アースが、平成7年合意の内容についても聞いていたことを考えれば、被告アースには少なくとも過失があったといわなければならない。
被告B及び被告アイプロの主張
 被告B及び被告アイプロは、平成10年3月当時、原告が本件連載漫画の原作者であることを知っていたことは争わないが、前記争点1に関する被告B及び被告アイプロの主張の欄に記載したとおり、本件連載漫画の登場人物の絵の使用については原告の原著作権は及ばないので、著作権の侵害行為自体が存在せず、故意過失も問題とならない。
被告ダン及び被告サンブライトの主張
 被告ダン及び被告サンブライトは、本件商品の製造販売について過失がなく、責任を負わない。すなわち、被告ダン及び被告サンブライトは、平成10年9月ころ、原告が本件連載漫画について著作権の主張をしていることを知った。被告ダン及び被告サンブライトは、その後、被告Bに権利関係について確かめたところ、被告B及び被告B代理人弁護士から、「本件各商品化用キャラクター画の使用は原告の権利を侵害するものではない」との説明を受け、これを信用していたものである。
被告タニイの主張
 被告タニイは、著作権者である被告B及び使用許諾権者である被告アイプロの許諾を受けて、本件商品の製造販売を行ったのであるから、過失がなく、責任を負わない。すなわち、被告タニイは、著作権者である被告Bの許諾を得られるのか懸念を抱いていたところ、平成10年6月1日、被告B、被告ダン代表者、被告サンブライト代表者が被告タニイを訪れ、その際、被告Bは、商品化権使用許諾契約を締結することに問題がない旨を告げ、被告Bが代表者を務める被告アイプロが被告ダン及び被告サンブライトに対して「キャンディ・キャンディ」の絵の使用を許諾した書面(戊1)、被告ダンが被告サンブライトに対して「キャンディ・キャンディ」の絵の使用を許諾した書面(戊2)を示した。
被告アースの主張
 被告アースは、被告アイプロから「キャンディ・キャンディ」の登場人物の絵の使用許諾を受けた際も、サンメール、被告ダンに対して「キャンディ・キャンディ」の絵の使用を再許諾した際も、登場人物の絵につき原告が権利を有するとの認識はなく、かつ認識しなかったことにつき過失はなかった。
 すなわち、被告アースは、原告が本件連載漫画の原作者であることは認識していたが、本件連載漫画の登場人物につき被告Bが本件連載漫画とは別に書き下ろした絵について権利を有するのは被告Bのみであり、原告は権利を有しないと信じていた。そしてこれは、被告B及び被告アイプロからの説明及びその顧問弁護士の意見書に基づくものであったから、被告アースがそのように信じたことについて過失はない。
ア 被告アースは、被告アイプロから本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾を得るに当たっての打合せの際、被告Bから、原告が株式会社フジサンケイアドワーク(以下「フジサンケイアドワーク」という。)に対し、被告Bが書き下ろした本件連載漫画の登場人物の絵についての権利を主張して、その販売の差止めを請求しているという話を聞いた。しかし他方、本件連載漫画の登場人物の絵の使用については被告Bの同意のみ得ればよく、原告の同意を得る必要はないとの見解を顧問弁護士から文書で得ていること、本件連載漫画の商品化については、すべて被告Bが本件連載漫画とは別個に書き下ろしたものとし、本件連載漫画中の絵は使用しないことなどを説明された。
イ 被告アースは、平成10年3月ころ、原告代理人弁護士から、サンメールの商品製造には原告は許諾をしていないから製造を中止するよう連絡を受けた。同連絡について、被告アースが被告アイプロの指示を仰いだところ、「アイプロとしては漫画作品の出版でなければ原作者の許諾を得なくても問題ないとの認識でいる。顧問の弁護士から何かあればすべて先生に連絡するようにし、ライセンシー独自には対応させないように言われているのでそのようにしてほしい」と言われ、その後間もなく、被告アイプロから、弁護士作成の被告B宛報告書の写し(丁6)が送られてきた。報告書の内容は、被告アースが被告アイプロから顧問弁護士の見解として説明を受けていたのと同様であり、第三者が本件連載漫画の登場人物の絵を使用するに当たって原告の同意を得なかったとしても何ら違法ではないと結論付けるものであった。
ウ 漫画家とは別に原作者が存在する漫画作品について、当該漫画作品とは切り離して、当該漫画作品の登場人物の絵について原作者の権利が及ぶかどうかが裁判上問題とされたのは、原告と被告Bとの間の本件連載漫画についての争いが初めてのケースであった。
エ 以上のア〜ウの事情の下においては、被告アースが、本件連載漫画の登場人物の絵の商品化事業について原告の同意を得なかったとしても、過失があるとはいえない。
(3)争点3(原告の被った損害額等)
原告の主張
 原告は被告らに対し、著作権法114条2項により著作物使用料相当額の金銭の支払を請求する。
ア 被告B及び被告アイプロの許諾に基づき、販売業者が本件商品を販売するに至った行為によって生じた損害の額
(ア)被告ダン作成の売上報告書(甲13の1〜5)によれば、被告ダン及び被告サンブライトが本件連載漫画の登場人物の絵の使用を許諾した販売業者(被告タニイ及びその傘下の販売業者を含む。)による各期間ごとの本件商品の売上額は下記のとおりであり、その合計額は8億6821万7320円を下らない。
@ 平成10年10月、11月分 1億8827万6000円
A 平成10年12月分 2億9151万3800円
B 平成11年1月分 1億2621万2000円
C 平成11年2月分 1億5759万2800円
D 平成11年3月1日から3日 1億0462万2720円
(イ)上記売上報告書に加えて、被告ダン及び被告サンブライトから許諾を受けた販売業者であるビッグベンのジグゾーパズルについては、平成11年5月の販売予定リスト(甲17)から、その売上高は、1000万円を下らない。
(ウ)上記販売業者の商品の製造販売について原告が受け取るべき著作物使用料相当額は、本件商品の売上額の5%が相当である(なお、被告ダン及び被告サンブライトから許諾を受けた販売業者が、本件連載漫画の登場人物の絵の使用について本件商品の上代価格の6%に相当する金員の使用料を支払っていることに鑑みると、仮に上代価格の5%が認められない場合であっても、少なくとも6%の半額である上代価格の3%は認められるべきである。)。
(エ)以上より、被告ダン及び被告サンブライトが使用許諾をした販売業者の売上額は、合計8億7821万7320円(上記(ア)@〜Dと(イ)の合計額)であるから、原告の被った損害額(使用料相当額)は、その5%である4391万0866円を下らない。
イ 前記アのうち、被告タニイの傘下の販売業者の本件商品の販売によって生じた損害の額
(ア)被告タニイの傘下の販売業者の本件商品の販売にかかる各期間ごとの売上額(被告タニイ自身による売上額も含む。)は下記のとおりであり、その合計額は3億2312万2520円を下らない。
 平成10年10月、11月 6878万3200円
 平成10年12月 3467万8400円
 平成11年1月 5527万1000円
 平成11年2月、3月 1億6438万9920円
 合計 3億2312万2520円
(イ)使用料としては、本件商品の売上額の5%が相当である(被告タニイが被告サンブライトに対して支払った使用料は、本件商品の上代価格の6%に相当する額の金員であるから、仮に上代価格の5%が認められない場合であっても、少なくても6%の半額である本件商品の上代価格の3%が、原告の通常受けるべき使用料である。)。
(ウ)以上のとおり、被告タニイ及び同被告の傘下の販売業者の売上額は、合計で3億2312万2520円であるから、原告の損害額は、その5%である1615万6126円を下らない。
ウ 被告アースの関与行為によって生じた損害の額
(ア)被告アースが商品化を許諾した業者であるサンメールの売上額は、3208万円であり(甲19)、その商品の製造販売について原告が受け取るべき著作物使用料相当額は、本件商品の上代価格の5%が相当であるから、原告の損害額は、3208万円の5%である160万4000円を下らない。
(イ)被告アースが、被告アイプロと被告ダンとの間の契約締結に関与したことによる損害額については、前記販売業者の売上額である8億7821万7320円の5%である4391万0866円を下らない。
エ 精神的損害
 被告Bは、平成7年合意を一方的に破棄し、その後の訴訟において、原告は本件連載漫画の大まかなストーリーを作っただけであるなどという虚偽の主張をした。また、被告ダン及び被告タニイは、原告が本件連載漫画の絵を使用した商品の販売について同意しないと伝えていたにもかかわらず、これを無視して一方的に「<C>a」等の表示を商品に付し、原告の氏名表示権を侵害した。被告ダンは、同表示は、上記契約に基づく使用に際して広く行われていた氏名表示であるから原告の氏名表示権を侵害しないと主張するが、同表示は、商品の販売について原告の同意があることが前提であり、また、原告が本件連載漫画の登場人物の絵が使用される際に、包括的に「<C>a」という表示をすることを許諾していたものでもないから、被告ダンの主張は失当である。
 これらの行為による原告の精神的損害は、被告Bの行為について500万円、被告ダン及び被告タニイの行為について、それぞれ500万円を下らない。
オ 本件訴訟の弁護士費用は、上記の損害額の1割を下らない。
カ 損害額のまとめ
(ア)被告Bの行為による損害額
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき 160万4000円
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 941万3800円
 平成10年12月の販売に係る分につき 1457万5690円
 平成11年1月の販売に係る分につき 631万0600円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 1311万0776円
 平成11年5月の販売に係る分につき 50万0000円
 精神的損害 500万0000円
 弁護士費用 500万0000円
 合計 5551万4866円
(イ)被告アイプロの行為による損害額
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき 160万4000円
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 941万3800円
 平成10年12月の販売に係る分につき 1457万5690円
 平成11年1月の販売に係る分につき 631万0600円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 1311万0776円
 平成11年5月の販売に係る分につき 50万0000円
 弁護士費用 450万0000円
 合計 5001万4866円
(ウ)被告ダンの行為による損害額
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 941万3800円
 平成10年12月の販売に係る分につき 1457万5690円
 平成11年1月の販売に係る分につき 631万0600円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 1311万0776円
 平成11年5月の販売に係る分につき 50万0000円
 精神的損害 500万0000円
 弁護士費用 480万0000円
 合計 5371万0866円
(エ)被告サンブライトの行為による損害額
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 941万3800円
 平成10年12月の販売に係る分につき 1457万5690円
 平成11年1月の販売に係る分につき 631万0600円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 1311万0776円
 平成11年5月の販売に係る分につき 50万0000円
 弁護士費用 430万0000円
 合計 4821万0866円
(オ)被告タニイの行為による損害額
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 343万9160円
 平成10年12月の販売に係る分につき 173万3920円
 平成11年1月の販売に係る分につき 276万3550円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 821万9496円
 精神的損害 500万0000円
 弁護士費用 211万0000円
 合計 2326万6126円
(カ)被告アースの行為による損害額
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき 160万4000円
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 941万3800円
 平成10年12月の販売に係る分につき 1457万5690円
 平成11年1月の販売に係る分につき 631万0600円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 1311万0776円
 平成11年5月の販売に係る分につき 50万0000円
 弁護士費用 450万0000円
 合計 5001万4866円
(キ)損害額についての遅延損害金の起算日
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき 平成10年6月30日
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 平成10年11月30日
 平成10年12月の販売に係る分につき 平成10年12月31日
 平成11年1月の販売に係る分につき 平成11年1月31日
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 平成11年3月3日
 平成11年5月の販売に係る分につき 平成11年5月31日
 精神的損害 平成10年6月1日
 弁護士費用(ただし、被告アースの分を除く。) 被告アイプロと被告ダンとの間で本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾契約が締結された日である平成10年6月1日
 弁護士費用(被告アースの分) 被告アースが関与する製造販売行為の最初の日である平成10年3月1日
被告B及び被告アイプロの主張
 原告の主張は、争う。
被告ダン及び被告サンブライトの主張
ア 被告サンブライトは、キャラクター商品を製造販売する販売業者から上代価格の6%のロイヤリティを受領し、被告ダンに対し、上代価格の4%を支払っている。被告ダンは、被告サンブライトから受領した同上代価格の4%のロイヤリティのうち、被告アイプロに対し、同上代価格の3%を支払っている。
イ 被告ダンが、上記アに基づいて被告アイプロに対して支払うべき額の合計額は、2651万7663円である(このうち、被告タニイを介した販売業者の分が、969万3675円である。)。また、販売業者に請求をしたが実際には支払われていないロイヤリティに相当する分の額は、298万3518円であるから、これを控除すべきであり、控除後の被告Bに対する支払額は、2353万4145円である。
ウ 被告ダンが関与した販売業者の在庫分、返品分の合計額は、5億2782万2630円であるから、この分も控除すべきである。
エ 使用料相当損害金(著作権法114条2項)の算定に当たっては、被告Bがライセンサーとして実際に受領していた著作物使用料率である3%が基準となるものであり、原告の受領すべき額は、これに2分の1を乗じた額(使用料率としては1.5%)である。なぜなら、ライセンシーは、著作物使用料だけでなく、著作権管理会社の費用等も含んだものとしてライセンス料を支払うのであり、著作権法114条2項の文言も「その著作権の行使につき受けるべき金銭の額」と定められ、使用者がその著作権の使用につき支払うべき金銭の額とは定められていない。そして、被告Bも、自らの会社において直接商品化許諾を行った際の著作物使用料は3%であったのであり、この金額は、一般の漫画キャラクターの商品化に当たって受ける使用料としては、十分に高額な部類に属するからである。
オ 原告の精神的損害についての主張は争う。「<C>a」の記載は、原告と被告Bとの間の平成7年合意に基づく使用に際して広く行われていた氏名表示であり、同表示を行うことは、原告の氏名表示権の侵害にならない。
被告タニイの主張
ア 被告タニイが関与した販売業者による本件商品の販売業者別の売上額は、以下のとおりであり、その合計額は、2億0918万7720円である。
@ 丸八タオル株式会社 4012万1200円
A 株式会社ドリームズカムトゥルー 4452万9760円
B 株式会社ニシオ 1億1505万0760円
C 田口帽子株式会社 948万6000円
 なお、被告タニイが自ら販売した商品もあるが、被告タニイが販売した商品はすべて上記4社から仕入れた商品であって、これを上記4社が販売した商品と区別することが困難であることから、上記の上代価格には被告タニイが販売した商品の分も含めている。
 そうすると、上記@〜Cの小売価格(上代)の合計額は2億0918万7720円であり、これの3%(被告Bの受領額)は、627万5631円となる。
イ 被告タニイと被告サンブライトとの間には、本件商品であるキャンディ・キャンディを扱ったキャラクター商品以外にも取引が存在する。被告ダンは、被告タニイの売上額(上代)の3%に当たる額は969万3675円であるとするが、この中には、本件商品以外の商品も含まれていると考えられる。
ウ 被告タニイが関与した販売業者の返品分、値引分の合計額は、958万9225円である。
エ 原告の受領すべき使用料に相当する額は、被告Bがライセンサーとして受領していた著作物使用料(本件商品の上代価格の3%)に、2分の1を乗じた額である上代価格の1.5%と考えるべきである。
オ 原告の精神的損害についての主張は争う。
被告アースの主張
ア 被告アースの使用許諾に基づいて、サンメールが製造販売した本件商品の売上額は、多くても3208万円を上回らない。そして、被告アースがサンメールから支払を受けた使用料の合計額は、3208万円の5%に当たる160万4000円であり(甲19の2)、被告アースは、このうちの60%の金額を、使用料として被告アイプロに支払った。
イ 原告の受領すべき通常使用料相当の損害金を計算するに当たっては、その使用料率については、被告Bがライセンサーとして受領していた著作物使用料率である上代価格の3%に、2分の1を乗じた額である1.5%と考えるべきである。
ウ なお、被告アースは、前述したとおり、被告ダンを中心とする商品化事業からは撤退したものであるから、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売については責任を負わず、この分についての損害賠償義務を負担することはない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して、原告の本件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか)について
 前記第2の1(前提となる事実)(2)に記載した本件連載漫画の制作の経緯によれば、本件連載漫画は、原告の創作した原作原稿を原著作物とする二次的著作物に当たると認められるから、原告は、本件連載漫画について原著作者の権利を有するというべきである。そして、二次的著作物である本件連載漫画の使用に関し、原著作物の著作者である原告は本件連載漫画の著作者である被告が有するものと同一の種類の権利を専有し、本件連載漫画の登場人物の絵の使用についても、権利を有するものというべきである(最高裁平成12年(受)第798号同13年10月25日第一小法廷判決・裁判集民事203号285頁、判例時報1767号115頁。先行訴訟上告審判決)。
 なお、被告B及び被告アイプロは、本件においては、原告から被告Bに本件連載漫画の第1回連載分の原作原稿が交付される前に、被告Bによりキャンディ原画及びキャンディ予告原画が作成されていたから、本件連載漫画における主人公キャンディの絵は、原告作成の原作原稿に依拠することなく作成されたものであり、原作原稿を原著作物とする二次的著作物に当たらないと主張する。しかし、証拠(甲8〜10、乙9、10)及び弁論の全趣旨によれば、キャンディ原画は、本件連載漫画における主人公キャンディの絵との関係でいえば、下書きないし習作というべきものであり、キャンディ予告原画も、本件連載漫画の予告掲載のため、昭和50年1月初めに、原告、被告、なかよしの編集者との間での打合せの結果を踏まえて主人公キャンディの暫定的な予定画として作成されたものであって、いずれも、原作原稿において予定されていた主人公の性格等の特徴に合致するように、本件連載漫画の制作作業の一環として作成されたものである。これによれば、キャンディ原画及びキャンディ予告原画は、いずれも、本件連載漫画のストーリーと無関係に独立して作成されたものということができず、本件連載漫画の制作経過を全体としてみれば、キャンディ原画及びキャンディ予告原画は、本件連載漫画における主人公キャンディの絵と一体として、原告作成の原作原稿に依拠して作成されたものというべきである。したがって、結果的に、本件連載漫画において描かれた主人公キャンディの絵がキャンディ原画及びキャンディ予告原画と同一ないし類似するものであったとしても、本件連載漫画の絵が、これらに依拠して作成されたということはできないから、被告B及び被告アイプロの主張を採用することはできない。また、その他の被告らの主張も、上記に照らし、いずれも採用することができない。
2 争点2(本件商品の製造販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用について、被告らが責任を負うかどうか)について
(1)本件商品の商品化事業について
 前記第2の1(前提となる事実)に記載の事実に証拠(甲1、2、丙3、12、戊1〜6)及び弁論の全趣旨を総合すれば、被告Bは被告アイプロに対し本件連載漫画について被告Bの有する著作権を管理しその商品化事業を遂行することを委任し、被告アイプロは被告ダンとの間で本件連載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化契約(甲1、戊1)を締結し、被告ダンが被告サンブライトに対し(甲2、戊1、2)、被告サンブライトがその傘下の販売業者及び被告タニイに対し、被告タニイがその傘下の販売業者に対し、それぞれ本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾したものであって、被告タニイ及び前記各販売業者は、これに基づき、本件連載漫画の登場人物の絵の付された本件商品を製造して、平成10年10月から平成11年5月にかけて本件商品を販売したことが認められるから、これによれば、被告B、被告アイプロ、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイは、一体として、末端の販売業者をして本件商品の製造販売を行わせるという商品化事業を遂行したものというべきである。加えて、前掲証拠(甲1、2、丙3、12、戊1〜6)及び弁論の全趣旨によれば、同商品化事業において、被告Bは被告アイプロ、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者までを、被告アイプロは被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者までを、被告ダンは被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者までを、被告サンブライトは自ら又は被告タニイを通じて被告タニイを含む販売業者を、被告タニイはその傘下の販売業者を、それぞれ把握し、それぞれ本件商品の売上数量、売上額等を報告させることによってその販売状況を掌握していたことが認められる。したがって、上記被告らは、上記商品化事業を一体として遂行したものとして、それぞれが関与しているルートの傘下に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)が本件商品の製造販売を行った行為について、著作権侵害の共同不法行為者として責任を負うものというべきである。
 また、証拠(甲19の1〜3、丁1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、被告アースは、平成9年10月28日、被告Bから本件連載漫画の登場人物の絵について著作権管理代行、再許諾権等を付与されていたフジサンケイアドワーク及び被告アイプロから、本件連載漫画の登場人物の絵につき第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化事業の許諾を受け(丁1、2)、これに基づいてサンメールに対して当該絵の使用を再許諾し、サンメールが本件商品を製造して平成10年3月から同年6月にかけて販売したこと、サンメールは、本件商品を販売したときは、その売上数量、売上額等を被告アースに報告し、これに基づいて、被告アースからフジサンケイアドワークに対し、使用料が支払われ、被告アイプロ、被告Bがこれを把握していたことが認められるから、これによれば、被告B、被告アイプロ、被告アース、サンメールは、一体として、末端の販売業者であるサンメールが本件商品の製造販売を行うという商品化事業を遂行し、同商品化事業において、被告Bは被告アイプロ、フジサンケイアドワーク及び被告アースを通じて末端の販売業者であるサンメールまでを、被告アイプロは被告アースを通じてサンメールまでを、被告アースはサンメールを、それぞれ把握し、それぞれ本件商品の売上数量、売上額等を報告させることによってその販売状況を掌握していたことが認められる。したがって、被告B、被告アイプロ及び被告アースは、上記商品化事業を一体として遂行したものとして、サンメールが本件商品の製造販売を行った行為について、著作権侵害の共同不法行為者として責任を負うものというべきである。
(2)争点2ア(被告アースの関与行為の内容について)
 原告は、被告アースの関与行為に関して、被告アースは、被告ダンを中心とする商品化事業についても、被告ダンに対して本件連載漫画の商品化を再許諾することの内諾を与えたことにより関与したものであるから、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売についても責任を負うと主張する。
 そこで検討するに、証拠(丙3、丁3、5)及び弁論の全趣旨によれば、被告アースは、平成10年5月15日ころから被告ダンに対して本件連載漫画の登場人物の絵の商品化事業に参加することを持ちかけ、同年6月1日には、被告アースが被告ダンに対して本件連載漫画の登場人物の絵の使用を許諾し、被告ダンが被告アースと共同して商品化事業を遂行する旨の契約を、被告ダンとの間で締結したことが認められる。しかし、証拠(甲1、丙3、丁3、戊1、2)及び弁論の全趣旨によれば、被告アイプロ及び被告ダンは、被告アースを除外して被告アイプロからの窓口を被告ダンに一本化して商品化事業を遂行する旨を合意し、同年7月27日に、被告アイプロ、被告ダン及び被告アースの三者の間で、以後は、被告アイプロから直接被告ダンが許諾を受けて同被告に窓口を一本化して商品化事業を遂行し、被告アースは商品化事業の系列から外れる旨の合意が成立し、これに伴って、後日、同年6月1日にさかのぼった日付で、被告アイプロを許諾者、被告ダンを被許諾者とし、被告アースを被告アイプロの代理人として表示した「商品化権使用許諾書」(甲1)が作成されるとともに、被告アースを当事者から除外した形での被告サンブライトに対する使用許諾契約書(戊1、2)も作成されたこと、被告ダンを中心とする商品化事業における販売業者による本件商品の販売(すなわち、サンメールの販売分を除く本件商品の販売)は、同年7月27日以前には行われておらず、被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の販売については、販売店からの使用料支払の経由者となっておらず、その分配にもあずかっていないことが認められるものであり、これらの事情を総合すれば、被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売については責任を負わないというべきである。原告の主張は、採用できない。
(3)争点2イ(被告らの過失の有無等)について
ア 前記第2の1(前提となる事実)に記載の事実に証拠(甲1、2、4、丙3、丁1〜3、5、6、戊1〜4)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。
(ア)被告アースは、平成9年10月28日にフジサンケイアドワーク及び被告アイプロから本件連載漫画の登場人物の絵の使用についての許諾を得て、本件連載漫画のキャラクターの商品化事業を遂行し、サンメールに対して本件商品の製造販売を許諾した。
 被告アースは、本件連載漫画の原作者が原告であると知っていたが、被告アイプロとの同契約の締結に当たり、被告Bから、キャンディの絵をめぐって原告とフジサンケイアドワークとの間で裁判になっており、同裁判において原告が、キャンディの原画についての権利を主張して、その販売の差止めを求めていると告げられた。被告アースは、同時に、被告Bからも、絵のみの使用であれば原告の権利は及ばないこと、その旨の代理人弁護士の見解も文書で得ていること、原告との争いの実態は利益の配分の問題にすぎないことを告げられ、この結果、被告アース代表者は、被告Bの書き下ろしの絵であれば原告の権利は及ばないと考えて、被告アイプロとの契約締結に至った。
 その後、被告アースは、平成10年3月初め、原告から、「商品化には原作者である原告の許可が必要であるところ、被告アースが許諾したサンメールは原告の許可を得ていないので、商品の製造を中止してほしい」旨の通知を受けた。そこで、被告アースは、被告B及び被告アイプロに連絡をとったところ、被告B及び被告アイプロからは、漫画作品の出版でなければ問題ないとの認識でいると言われ、第三者が本件連載漫画の登場人物の絵を使用するに当たって、原告の同意を得なかったとしても何ら違法ではないとの趣旨の代理人弁護士の意見書の写し(丁6)を交付された。
(イ)被告ダンは、平成10年7月27日ころ、被告アイプロから本件連載漫画のキャラクターの商品化事業について許諾を得、被告ダンは同被告の営業部門を担当している被告サンブライトに対し、被告サンブライトはその傘下の販売業者及び被告タニイに対し、それぞれ本件商品の製造販売を再許諾して、本件連載漫画の登場人物の絵の商品化事業を遂行した。
 被告ダン及び被告サンブライトは、被告Bと原告が係争中ということを知っていたが、被告B及び被告アイプロから、本件連載漫画の登場人物の絵の著作権は被告Bが持っているので心配ないとの説明を受け、絵を使用するだけであれば原告の権利は及ばない旨の被告B及び被告Bの当時の代理人弁護士の見解が記載された文書の交付を受けていた。そのようななかで、被告サンブライトから商品化許諾を受けていた被告タニイは、平成10年8月26日、原告から、「本件連載漫画の商品化には原作者の承諾がいるので、被告Bの許諾だけでは商品化はできない」旨の内容証明郵便の送付を受けた。被告タニイからの連絡を受けた被告ダン及び被告サンブライトが、被告B及び被告アイプロに対してこれを報告したところ、被告B及び被告アイプロの当時の代理人弁護士から、被告Bの許諾だけで商品化はできる旨を再度説明された。被告ダン及び被告サンブライトは、同被告両名の代理人弁護士から原告の許諾も受けた方がよい旨のアドバイスを受け、商品化事業の遂行については進める一方、原告の許諾も得るべく努めたが、結局原告の許諾を得ることはできなかった。
イ 上記認定事実によれば、被告らは、本件連載漫画について著作権を有するのは被告Bのみである旨及び仮に原告に何らかの権利があったとしても本件連載漫画のストーリーを用いないで登場人物の絵を使用するだけであれば著作権法上の問題を生じない旨の共通認識の下で、共同して、本件連載漫画の登場人物の絵を使用した商品化事業を遂行したものと認められるから、前述したとおり、本件商品の製造販売による著作権の侵害については、被告らは、それぞれが関与したルートの傘下に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)による本件商品の販売について、共同不法行為者として責任を負担するものというべきである。
ウ 被告らは、いずれも自己の過失を争うが、本件連載漫画の登場人物の絵の使用については、それにより著作権法上の問題を生じないかどうかを、各自が、事業の遂行に当たって自己の責任により判断すべきものであるところ、被告らは、いずれも、本件連載漫画について原告が原作原稿を著述していることについては認識があったものであり、また、本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告から実際に権利主張がされていることを認識していたものである。加えて、なかよしにおける本件連載漫画の各連載分に「原作 a」という形で原告のペンネームが表示されていたこと(前記第2の1(前提となる事実)参照)に照らしても、本件連載漫画の登場人物の絵の使用につき原告が何らかの権利を有することは容易に知り得べきものであった。これらの点に照らせば、被告らに過失のあったことは明らかである。被告アース、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイは、被告B及び同被告の当時の代理人弁護士から本件連載漫画の登場人物の絵の利用については原告の権利は及ばない旨の説明があったことをもって過失の存在を争うが、前記の事情に照らせば、被告B及びその代理人弁護士の説明を軽信したことには、過失があったというべきである。
3 争点3(原告の被った損害の額等)について
(1)著作権法114条2項に基づく損害額
ア 本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告が受けるべき金銭の額
(ア)上述したとおり、被告らは、被告Bを頂点とし販売業者を末端とする商品化事業を一体となって行ったものとして、それぞれが関与しているルートの傘下に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)が本件商品の製造販売を行った行為について、著作権侵害の共同不法行為者として責任を負うものであるところ、証拠(甲30、丙12、戊4)及び弁論の全趣旨によれば、被告ダンの関与するルートに属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)は、本件商品の製造販売につき、本件連載漫画の登場人物の絵の使用料として、商品の上代価格の少なくとも6%に相当する金額を直接のライセンサーに対して支払っていることが認められる。本件商品の上代価格の6%という合意は、被告Bが本件連載漫画の登場人物の絵の使用についてのすべての権利を有することを前提として、商品化契約としての通常の交渉の結果合意された額と認めることができるから、同合意により定められた本件商品の上代価格の6%に相当する額をもって、本件連載漫画の登場人物の絵を商品化した場合に第三者から支払われるべき使用料と認めるのが相当である。なお、証拠(丁3)及び弁論の全趣旨によれば、被告アースは、サンメールとの間で、本件商品の上代価格の5%を使用料として受け取る旨を合意していたことが認められるが、この点を考慮しても、上記のとおり、被告ダンの関与するルートに属する多数の末端の販売業者が上代価格の6%を著作物使用料として支払っていたことに照らせば、本件連載漫画の登場人物の絵の使用について著作権者が受けるべき金銭の額(著作権法114条2項)は、商品の上代価格の6%と認めるのが相当というべきである。
 本件連載漫画については、原告は原著作物の著作者として、被告Bは二次的著作物の著作者としてそれぞれ権利を有するものである。本件連載漫画の商品化事業に当たって第三者から支払われる著作物使用料の両者の間での分配割合は、特段の事情のない限り各2分の1と解されるところ、玩具、文具、衣料品等の通常のキャラクター商品である本件商品における著作物の使用については、この分配割合を変更すべき事情は見当たらない。
 そうすると、被告らの商品化事業における本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告が受けるべき金銭の額(著作権法114条2項)は、商品の上代価格の3%(上記認定の6%の2分の1)と認めるのが相当である。
(イ)この点につき、被告ダン及び被告サンブライトは、使用料相当損害金(著作権法114条2項)の算定に当たっては、被告Bがライセンサーとして実際に受領していた著作物使用料率である3%が基準となり、原告が請求し得る損害額はその2分の1に当たる1.5%であると主張し、その理由として、ライセンシーは、著作物使用料だけでなく、著作権管理会社の費用等も含んだものとしてライセンス料を支払うのであり、著作権法114条2項の文言も「その著作権の行使につき受けるべき金銭の額」と定められ、使用者がその著作権の使用につき支払うべき金銭の額とは定められていないこと、被告Bも自らの会社において直接商品化許諾を行った際の著作物使用料は3%であったことを指摘し、被告タニイ、被告アースも同旨の主張をする。
 しかし、原告が原著作物の著作権者として本件連載漫画の登場人物の絵について有する権利を侵害されたのは、末端の販売業者により本件商品に登場人物の絵が付されて販売されたこと(複製権の侵害)によるものであり、原告の権利に対する侵害行為である販売業者による複製行為について、上記のとおり侵害行為者である販売業者から上代価格の6%が対価として支払われていることが認められるのであるから、この金額が著作権者が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に該当するというべきであり、末端の販売業者に対して絵の使用を再許諾した再許諾権者は、販売業者による著作権侵害行為(複製行為)についての共同不法行為者として、この金額について販売業者と連帯して賠償の責に任ずるものと解するのが相当である。本件において、末端の販売業者から支払われる使用料につき、著作権者である被告Bに支払われるまでの間に、被告アース、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイが中間に再許諾権者として関与して、その分配にあずかっているという事情は、単に共同不法行為者の間で侵害によって得られた利益を分配しているというだけのことであり、著作権侵害により権利者が被った損害額を減額する理由となるものではない。また、被告アース、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイが、著作権侵害行為の対価として末端の販売業者から支払われた使用料から、その一部を自己の利益として手元にとどめることについて、これを正当化する何らの理由を見いだすこともできない。
イ 各被告の行為による原告の損害額
(ア)証拠(甲13の1〜5、17、丙12、戊5)及び弁論の全趣旨によれば、被告ら(被告アースを除く。)が関与した商品化事業についての販売業者(被告タニイを含む。)の売上額の合計は8億6862万8095円であると認められ、これに3%を乗じた額は2605万8842円である。このうち、被告タニイ及びその再許諾先の売上額の合計は3億1353万3295円であると認められ、これに3%を乗じた額は940万5998円である(なお、証拠(戊5)及び弁論の全趣旨によれば、被告タニイが再許諾した販売業者の販売分について合計958万9225円の返品分、値引分が認められるから、この分については、売上額から控除して計算した。被告タニイ及び被告サンブライトの主張するこれを超える在庫分、返品分については、これを裏付けるに足りる証拠がない。)。
 また、証拠(甲19の2、3)及び弁論の全趣旨によれば、被告B、被告アイプロ及び被告アースが関与したサンメールの売上額は3208万円と認められ、これに3%を乗じた額は96万2400円である。
(イ)これを、前掲各証拠により認められる販売業者による各月別の売上額に基づいて、各月別に分けて記載すると、次のとおりである(被告タニイの返品値引分については、被告タニイの再許諾先の販売が行われた平成10年10月〜同11年3月の期間に案分して計算した。)。
@ 被告B
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき 96万2400円
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき 867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき 371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき 30万0000円
 合計 2702万1242円
A 被告アイプロ
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき 96万2400円
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき 867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき 371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき 30万0000円
 合計 2702万1242円
B 被告ダン
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき 867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき 371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき 30万0000円
 合計 2605万8842円
C 被告サンブライト
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき 867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき 371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき 30万0000円
 合計 2605万8842円
D 被告タニイ
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 199万1577円
 平成10年12月の販売に係る分につき 96万8433円
 平成11年1月の販売に係る分につき 158万6210円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 485万9778円
 合計 940万5998円
E 被告アース
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき 96万2400円
(ウ)各被告が支払義務を負う上記の各債務の連帯関係(不真正連帯債務)は、次のとおりである。
@ 被告B、被告アイプロ及び被告アースは、同被告の販売に係る分である96万2400円につき、連帯して支払義務を負う。
A 被告B、被告アイプロ、被告ダン及び被告サンブライトは、次の金額につき、連帯して支払義務を負う。
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき 867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき 371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき 30万0000円
 合計 2605万8842円
B 被告タニイは、上記Aの金額のうち次の金額につき、被告B、被告アイプロ、被告ダン及び被告サンブライトと連帯して、支払義務を負う。
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 199万1577円
 平成10年12月の販売に係る分につき 96万8433円
 平成11年1月の販売に係る分につき 158万6210円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき 485万9778円
 合計 940万5998円
(エ)被告ダンは、業者に請求したが実際には払われていないロイヤリティが存在し、これに相当する分の額を損害の額から控除すべきであると主張するが、本件連載漫画の登場人物の絵を使用したことによる著作権法114条2項の損害は、販売業者から中間の再許諾権者に使用料が支払われたか否かにかかわらず発生するものであるから、被告ダンの主張は失当である。
(オ)被告タニイは、被告ダンの提出している金額には、本件商品以外の商品も含まれているから不正確であるとして、被告タニイ及びその傘下の販売業者の売上額は、2億0918万7720円であり、これの3%(被告Bの受領額)は、627万5631円である旨主張する。
 しかし、被告タニイ関係として被告ダンが提出している売上額(合計額3億1353万3295円)は、丙12に記載があるのに対し、被告タニイの本件商品以外の商品も含まれているとの主張には、裏付けとなる証拠がないうえ、その主張する内容も具体性を欠く部分を含むものであり、被告タニイの主張は採用できない。
(2)精神的損害について
 原告は、被告ダン及び被告タニイの行為により氏名表示権(著作権法19条1項)が侵害されたと主張する。しかし、既に著作者によって表示されている著作者名をそのとおり表示して著作物を使用すること自体は、著作者から別段の意思表示がない限り、著作者の人格を傷つけるものではないから(著作権法19条2項参照)、被告らが「<C>a」との表示を使用したことをもって、氏名表示権の侵害とみることはできない。原告の主張は、採用できない。
 また、被告Bの行為を理由とする慰謝料請求については、本件で提出されている証拠によっては、原告主張の事実を認めるに足りない。
(3)弁護士費用について
 本件における原告の請求の内容、本件事案の性質、本件訴訟の審理経過その他の事情を考慮すれば、被告らによる著作権の侵害行為と相当因果関係があるものとして被告らに負担させるべき弁護士費用としては、次の金額をもって相当と認める。被告ら(被告アースを除く。)の負担する弁護士費用は、それぞれの額において相互に連帯関係(不真正連帯債務)に立つ。また、被告アースの負担する弁護士費用は、被告B及び被告アイプロの負担する弁護士費用と連帯関係(不真正連帯債務)に立つ。
 被告B 250万円
 被告アイプロ 250万円
 被告ダン 240万円
 被告サンブライト 240万円
 被告タニイ 100万円
 被告アース 10万円
(4)遅延損害金の起算日について
 著作権法114条2項に基づく損害額については、遅延損害金の起算日として原告が主張している各販売期間の末日をもって、当該侵害行為の後の日として遅延損害金の起算日と認めることができる。
 不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用について、原告は、被告ら(被告アースを除く。)については被告アイプロと被告ダンとの間で本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾契約が締結された日である平成10年6月1日、被告アースについては平成10年3月1日を遅延損害金の起算日と主張する。しかし、不法行為と相当因果関係に立つ損害としての弁護士費用の賠償債務は当該不法行為の時に履行遅滞となるところ(最高裁昭和55年(オ)第1113号同58年9月6日第三小法廷判決・民集37巻7号901頁)、本件において原告に対する著作権侵害による損害は、単に著作物使用許諾契約が締結されただけでは足りず、末端の販売業者により本件商品に本件連載漫画の登場人物の絵が付されて販売された時に発生するものであるから、各被告についてその関与する販売業者による商品の製造販売行為がすべて行われた時点(最終の販売期間の末日)をもって、遅延損害金の起算日と解するのが相当である。したがって、被告アースはその関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30日から、被告タニイはその関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日から、被告ダンは100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンが関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、被告サンブライトは100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンが関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、被告Bは10万円については被告アースと共に関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30日、100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、被告アイプロは10万円については被告アースと共に関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30日、100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
(5)損害額についての結論
 上記によれば、原告は、被告らに対して、共同不法行為による損害賠償として、以下のとおりの支払を求めることができる。
ア 被告Bは、2952万1242円及び内金106万2400円に対する平成10年6月30日から、内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
イ 被告アイプロは、2952万1242円及び内金106万2400円に対する平成10年6月30日から、内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
ウ 被告ダンは、2845万8842円及び内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
エ 被告サンブライトは、2845万8842円及び内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
オ 被告タニイは、1040万5998円及び内金199万1577円に対する平成10年11月30日から、内金96万8433円に対する平成10年12月31日から、内金158万6210円に対する平成11年1月31日から、内金585万9778円に対する平成11年3月3日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
カ 被告アースは、106万2400円及びこれに対する平成10年6月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
 よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 三村量一
 裁判官 和久田道雄
 裁判官 田中孝一
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