判例全文 line
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【事件名】キング・クリムゾン事件(2)
【年月日】平成11年2月24日
 東京高裁 平成10年(ネ)第673号 損害賠償等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成8年(ワ)第11327号)
 (平成10年9月2日 口頭弁論終結)

判決
東京都(以下住所略)
 控訴人 株式会社エフエム東京
右代表者代表取締役 後藤亘
東京都(以下住所略)
 控訴人 後藤亘
右両名訴訟代理人弁護士 溝呂木商太郎
同 北村行夫
同 市毛由美子
同 小林智昭
同 蜂屋信雄
同 内田法子
同 渡邉良平
同 杉浦尚子
同 鈴木隆文
同訴訟復代理人弁護士 大江修子
グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(以下住所略)
 被控訴人 ロバート・フリップ
右訴訟代理人弁護士 内藤篤
同 清水浩幸
同 坂口昌子
同訴訟復代理人弁護士 小林康恵


主文
一 原判決中、控訴人らの敗訴部分を取り消す。
二 右取消しに係る被控訴人の請求をいずれも棄却する。
二〈ママ〉 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 申立て
一 控訴人ら
 主文と同旨
二 被控訴人
 本件控訴を棄却する。
第2 事案の概要
 事案の概要は、原判決書8枚目表8行目の「岩本晃一郎」を「岩本晃市郎」に、同裏11行目の「パブリシティ権」を「パブリシティ権の客体」にそれぞれ改めるほか、原判決の「事実及び理由」「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
第3 証拠関係
 証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。
第4 当裁判所の判断
 当裁判所は、被控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、次のとおりである。
一 いわゆるパブリシティ権について
 固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した著名人の氏名、肖像等を商品の宣伝、広告に利用し、あるいは商品そのものに付する等により当該商品の販売促進に有益な効果がもたらされることは一般によく知られている。これは著名人に対して大衆が抱く関心や好感、憧憬、崇敬等の感情が当該著名人を表示する氏名、肖像等に波及し、ひいては当該著名人の氏名、肖像等と関連づけられた商品に対する関心や所有願望として大衆を当該商品に向けて吸引する力を発揮してその販売促進に効果をもたらす結果であると理解することができる。その結果、著名人の氏名、肖像等は当該著名人を象徴する個人識別情報としてそれ自体が顧客吸引力を持つようになり、一箇の独立した経済的利益ないし価値を具有することになる。そして、このような著名人の氏名、肖像等が持つ経済的利益ないし価値は著名人自身の名声、社会的評価、知名度等から派生するものということができるから、著名人がこの経済的利益ないし価値を自己に帰属する固有の利益ないし権利として考え、他人の不当な使用を排除する排他的な支配権を主張することは正当な欲求であり、このような経済的利益ないし価値は、現行法上これを権利として認める規定は存しないものの、財産的な利益ないし権利として保護されるべきものであると考えられる。このように著名人がその氏名、肖像その他の顧客吸引力のある個人識別情報の有する経済的利益ないし価値(以下「パブリシティ価値」という。)を排他的に支配する権利がいわゆるパブリシティ権と称されるものである。
ニ パブリシティ権の侵害と不法行為の成立
 このように著名人が有する氏名、肖像等のパブリシティ価値は一箇の財産的権利として保護されるべきものであるから、パブリシティ価値を無断で使用する行為はパブリシティ権を侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。
 一方、著名人は、自らが大衆の強い関心の対象となる結果として、必然的にその人格、日常生活、日々の行動等を含めた全人格的事項がマスメディアや大衆等(以下「マスメディア等」という。)による紹介、批判、論評等(以下「紹介等」という。)の対象となることを免れない。また現代社会においては著名人が著名性を獲得するに当たってはマスメディア等による紹介等が大きく与って力となっていることを否定することができない。そしてマスメディア等による著名人の紹介等は本来言論、出版、報道の自由として保障されるものであり、加えて右のような点を考慮すると、著名人が自己に対するマスメディア等の批判を拒絶したり自らに関する情報を統制することは一定の制約の下にあるというべきであり、パブリシティ権の名の下にこれらを拒絶、統制することが不当なものとして許されない場合があり得る。
 したがって、他人の氏名、肖像等の使用がパブリシティ権の侵害として不法行為を構成するか否かは、他人の氏名、肖像等を使用する目的、方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して、右使用が他人の氏名、肖像等のパブリシティ価値に着目しその利用を目的とするものであるといえるか否かにより判断すべきものであると解される。
三 本件書籍について
 本件書籍の発行の趣旨、目的、装丁、内容及びこれらに対する考察結果は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」「第3 争点に対する判断」「一 争点1について」「2 本件書籍のパブリシティ権の侵害の有無」の(一)、(二)に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決書16枚目裏9行目〈判例速報第214号(以下「速報」と略す)12頁右列2行目〉の「甲1」の次に「、2及び弁論の全趣旨」を、同17枚目表11行目〈速報12頁右列27行目〉の「めており、」の次に「背表紙及び裏面カバーデザインにも日本語又は英語で「キング・クリムゾン」の名称が記載され、」を、同裏5行目<速報13頁左列7行目〉の「154頁」の次に「(ただし、49頁目と50頁目は使用器材の紹介であり、そのほか20箇所にディスコグラフィーが組み込まれている。)」をそれぞれ加える。
2 同18枚目表5行目〈速報13頁左列28行目〉の「36頁」を「34頁」に、同10行目〈速報13頁右列7行目〉の「となっている」を「、ヴィデオ・ガイドが2頁となっている(扉の部分、使用器材紹介を含む。)」にそれぞれ改め、同裏2行目〈速報13頁右列14行目〉の「作品紹介においては、」の次に「各作品紹介の扉部分4頁に「キング・クリムゾン」の構成員及び被控訴人個人の肖像写真が掲載されているほか、各作品紹介部分でも」を加え、同4行目<速報13頁右列17行目〉の「されている」を「されており、そのほかの多くのジャケット写真は被控訴人又は「キング・クリムゾン」の構成員と直接関係しない独創的な図柄や絵画、写真等を使用している」に改め、同6行目末尾〈速報13頁右列21行目〉の次に行を改めて次のとおり加える。
(3) 控訴人会杜が出版する「地球音楽ライブラリー」シリーズは、ロック、フォーク等若者が愛好する現代音楽の各ジャンルの一流音楽家の作品を網羅し、その魅力と軌跡を解明することを編集目的としており、音楽家の成育過程や活動を年代順に説明する伝記、名書の中心部分となる作品紹介、及び人名索引から構成され、本件書籍以外にも、エリック・クラプトン、レッド・ツェッペリン、吉田拓郎、加山雄三等の音楽家を対象とする書籍が同シリーズとして出版されている。
 本件書籍もこのような編集目的に従って編集されており、まず前書きにおいて本件書籍が「激しい離散と集合を繰り返しながらも、ブリティッシュ・ロック・シーンに豊饒な一大人脈を築き上げた彼らの軌跡を、グループとしてのアルバムはもとより、個々のメンバーがかかわった作品をも俯瞰することによって、余すところなく再現した1冊である。」と記載して本件書籍の目的と性格を明らかにした上、続く伝記の部分では、キング・クリムゾンの音楽活動を年代順に初期から「キング・クリムゾンの胎動」、「第1期キング・クリムゾン」、「第2期キング・クリムゾン」、「キング・クリムゾン空白の時代」、「Disciplineの時代」、「再びキング・クリムゾン空白の時代」及び「クリムゾン再生」に区分し、それぞれについて分析と解説を加えている。
 そして本件書籍の中心部分となる作品紹介では、アーティスト名、タイトル名、オリジナルレコード番号/CD(日本盤)番号、発売年、曲名、演奏者、プロデュース(以下「作品概要」という。)のほか、作品の時代背景、意義、特徴やエピソード等が、解説担当者の専門的知識と情報を踏まえた分析及び評価等を交えて紹介されており、重要と思われる作品は見開きの片頁をジャケット写真と作品概要に当てもう一方の片頁を作品の紹介に当てており、そのほかの作品は作品の重要度に応じて1頁の紙面を上下に2ないし3分してそれぞれ紹介をしている。いずれの場合もジャケット写真は当該作品紹介に使用される紙面の4分の1未満に抑えられている。」
3 同19枚目表3行目〈速報14頁左列6行目〉の「ものであること、本件書籍が」を「ものであり、キング・クリムゾンの音楽活動についての説明や作品の紹介は一般向けの簡単なものというよりはキング・クリムゾンについてある程度の基礎知識を有していることが前提とされており、そのため本件書籍が」に改め、同9行目<速報14頁左列17行目〉の「であること、」の次に「そのため発行部数も5000部と比較的少ないこと、」を加える。
四 本件書籍とパブリシティ権の侵害の有無
1 以上に認定した事実によると、本件書籍は、題号に、世界的に著名なロック・グループである「キング・クリムゾン」のグループ名そのものが使用され、表紙、裏表紙及び背表紙には、「キング・クリムゾン」「KINGCRIMSON」の文字が大書され、同グループの著名なジャケット写真がデザインとして用いられており、「キング・クリムゾン」の名称やジャケット写真によって「キング・クリムゾン」に関する書籍であることを購入者の視覚に訴え印象づける装丁になっていることが明らかである。また、本件書籍のうち12頁を占める伝記部分には、被控訴人を含む「キング・クリムゾン」の構成員の肖像写真5枚が掲載され、各作品紹介の扉部分のうち4頁に「キング・クリムゾン」の構成員及び被控訴人個人の肖像写真が掲載されていることからすると、右部分においても「キング・クリムゾン」の構成員及び被控訴人の肖像写真を利用して購入者の視覚に訴える体裁になっていることが認められる。
2 しかし、本件書籍の中心的部分を占める作品紹介の部分に掲載されているジャケット写真187枚のうち被控訴人本人の肖像写真が使用されているものはわずか3枚で、これに「キング・クリムゾン」の構成員の肖像写真を加えてみても合計5枚にすぎない。そのほかの多くのジャケット写真は被控訴人又は「キング・クリムゾン」の構成員と直接関係しない独創的な図柄や絵画、写真等が使用されており、いずれの作品紹介にあってもジャケット写真の占める部分は当該紙面の4分の1未満に抑えられている上、作品概要と解説文が果たす役割の重要性も無視することができないから、ジャケット写真がその中心的な役割を果たしているということはできない(したがって、作品紹介の価値の源泉がジャケット写真にある旨の被控訴人の主張は採用できない。)。
 また、一般的にジャケット写真はレコード等と密接な関係にある創作物であり、単なるレコード等の附属物という域を超えてそれ自体が作成者の思想や感情を創作的に表現する著作物として音楽活動の成果であるレコード等を視覚面から印象づけ、右音楽活動ないしレコード等に対する視聴者の印象を強固なものにすると同時に作品に対する記憶を呼び覚まさせるといった効果を発揮するものである(ときにジャケット写真自体が経済的価値を帯びることすらある。)。そのため、ジャケット写真は当該レコード等の視覚的な側面を担うものとして当該レコード等と一体的に受け止められるようになり、当該レコード等を視覚的に表示ないし想起させるものとして当該レコード等の宣伝や紹介にも利用されることになる。このようなジャケット写真の機能は当該音楽家本人の肖像写真がジャケット写真に使用された場合ですら否定することは困難であるから、ジャケット写真が音楽家自身を連想させるという効果は、それが当該レコード等を視覚的に表示ないし想起させる効果と対比して相当減弱されたものであるといわなければならない。そしてこのようなジャケット写真とレコード等との密接な関係は本件書籍に掲載されたジャケット写真についても同様であるから、本件書籍に掲載されたジャケット写真は、被控訴人本人や「キング・クリムゾン」の構成員の肖像写真が使用されているものを含めて、これによりそれぞれのレコード等を想起させるものではあっても、専ら被控訴人や「キング・クリムゾン」を連想させるものとまでいうことはできない。
3 前記のとおり、本件書籍は「キング・クリムゾン」及び被控訴人を含む音楽家について収集したその成育過程や活動内容等の情報を選択、整理し、その全作品を網羅した情報として愛好家に提供しようとするものであり、作品紹介が中心部分を占め、すべての作品についてジャケット写真が掲載されている。前記認定にかかる本件書籍の発行の趣旨、目的、書籍の体裁、作品紹介欄の構成等からすると、これらのジャケット写真は、被控訴人本人や「キング・クリムゾン」の構成員の肖像写真が使用されているものを含めて、いずれもが各レコード等を視覚面から表示するものとして掲載され、作品概要及び解説と相まって当該レコード等を読者に紹介し強く印象づける目的で使用されているものとみるべきであって、被控訴人本人や「キング・クリムゾン」の構成員を表示ないし印象づけることを主たる目的として使用されているとみることはできない。また、これらジャケット写真は、読者の関心を当該レコード等に引き付けるとともに読者が当該レコード等を購入する際の識別材料としての機能も果たしており、レコード等の販売宣伝上の機能を有していることを無視することはできない。
4 以上を総合してみると、本件書籍に多数掲載されたジャケット写真は、それぞれのレコード等を視覚的に表示するものとして掲載され、作品概要及び解説と相まって当該レコード等を読者に紹介し強く印象づける目的で使用されているのであるから、被控訴人本人や「キング・クリムゾン」の構成員の氏名や肖像写真が使用されていないものはもちろんのこと、これが使用されているもの(これがわずかであることは前記のとおりである。)であっても、氏名や肖像のパブリシティ価値を利用することを目的とするものであるということはできない。
 そうすると、本件書籍に使用された被控訴人を含む「キング・クリムゾン」の構成員の肖像写真のうちパブリシティ価値の面から問題となるのは、伝記部分の5枚と各作品紹介の扉部分4頁に掲載されている肖像写真にすぎないことになるが、その掲載枚数はわずかであり、全体としてみれば本件書籍にこれらの肖像写真が占める質的な割合は低いと認められ、本件書籍の発行の趣旨、目的、書籍の体裁及び頁数等に照らすと、これらの肖像写真は被控訴人及び「キング・クリムゾン」の紹介等の一環として掲載されたものであると考えることができるから、これをもって被控訴人の氏名や肖像のパブリシティ価値に着目しこれを利用することを目的とするものであるということはできない。前記認定にかかる本件書籍の題号や表紙、裏表紙及び背表紙に使用された「キング・クリムゾン」の文字は本件書籍で対象としている音楽家を表す記載であり、表紙、裏表紙及び背表紙へのジャケット写真の使用も右音楽家に関する書籍であることを視覚面で印象づける趣旨で掲載したものであるとみることができるから、これらは「キング・クリムゾン」に関する書籍であることを購入者の視覚に訴え、これを印象づけるものであるということはできても、その氏名、肖像等のパブリシティ価値に着目しその利用を目的とする行為であるということはできない。
5 これに対し被控訴人は、本件書籍は被控訴人自身の顧客吸引力を利用するものである旨主張する。しかし、著名人の紹介等は必然的に当該著名人の顧客吸引力を反映することになり、紹介等から右顧客吸引力の影響を遮断することはできないから、著名人の顧客吸引力を利用する行為であるというためには、右行為が専ら著名人の顧客吸引力に着目しその経済的利益ないし価値を利用するものであることが必要であり、単に著名人の顧客吸引力を承知の上で紹介等をしたというだけでは当該著名人の顧客吸引力を利用したということはできない。そして、前記のとおり本件書籍は「キング・クリムゾン」及び被控訴人を含む音楽家について収集した成育過程や活動内容等の情報を選択、整理し、その全作品を網羅した情報として愛好家に提供しようとするものであり、内容的にみても紹介等の実質を備えていることが認められるから、本件書籍が被控訴人自身の顧客吸引力に着目しその経済的利益ないし価値の利用を目的として発行されたものとみることはできない。確かに本件書籍はほかの海外ロック・ミュージシャンの作品紹介書(甲第3ないし第6号証)と比較して肖像写真やジャケット写真の占める比重が大きいことが認められるが、ジャケット写真を多用するか否かは、書籍の価格、紙質、体裁等を含む全体的な編集方針にかかる問題であり、写真を多用したからといって直ちにパブリシティ価値の利用を目的としていると断定することはできないから、多用する目的やジャケット写真以外の記述部分の内容等を全体的かつ客観的に観察して、これが専らパブリシティ価値に着目しその利用を目的としている行為といえるか否かを判断すべきものであり、本件書籍がこれに該当しないことは前記のとおりある。したがって、被控訴人の右主張は失当である。
 また被控訴人は、著名人の紹介等は、その価値が当該著名人の氏名、肖像等の顧客吸引力を下回らない場合に初めて正当な表現活動として著名人の許諾が不要となる旨主張する。しかし、著名人の氏名、肖像等はもともと著名人の個人識別情報にすぎないから、著名人自身が紹介等の対象となる場合に著名人の氏名、肖像等がその個人識別情報として使用されることは当然に考えられることであり、著名人はそのような氏名、肖像等の利用についてはこれを原則的に甘受すべきものであると解される。もちろん、そのような場合でも著名人の氏名、肖像等の顧客吸引力が発揮されることは否定できないから、顧客吸引力という一面において、氏名、肖像等の顧客吸引力がその余の紹介等の顧客吸引力を上回る場合も考えられるが、顧客吸引力の観点だけで紹介等の部分の価値の軽重を判断することはできないし、氏名、肖像等の顧客吸引力が認められる場合でも全体としてみれば著名人の紹介等としての基本的性質と価値が失われないことも多いと考えられるから、その場合には右紹介は言論、出版の自由としてなおこれを保護すべきである。
 したがって、判断基準の異なる氏名、肖像等の顧客吸引力と言論、出版の自由に関係する紹介等とを単純に比較衡量することは相当でなく、パブリシティ権の侵害に当たるか否かは、他人の氏名、肖像等を使用する目的、方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して、右使用が専ら他人の氏名、肖像等のパブリシティ価値に着目しその利用を目的とする行為であるといえるか否かにより判断すべきものであって、原則的に他人の使用が禁止されている著作物の引用の場合と同一に考えることはできないから、被控訴人の主張は採用できない。
 なお、本件書籍の発行が営利行為であることは当事者間に争いがないが、氏名、肖像等を使用する行為は営利目的の有無を問わず発生し得るものであって、紹介等の行為の営利性とパブリシティ権の利用とは直接関連しないから、本件書籍の発行が営利行為に当たることをもって前記認定を動かし得るものではない。
6 以上のとおり、本件書籍は被控訴人のパブリシティ価値を利用することを目的として出版されたものということができず、被控訴人主張のパブリシティ権侵害の事実を認めることはできないから、被控訴人の本件各請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
第5 結論
 よって、原判決中、被控訴人の各請求を認容した部分はいずれも不当であるから、これを取り消し、右取消しに係る被控訴人の各請求をいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項、61条、64条本文を適用して、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第17民事部
 裁判長裁判官 新村正人
 裁判官 生田瑞穂
 裁判官 宮岡章
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