判例全文 line
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【事件名】古文単語の語呂合わせ侵害事件
【年月日】平成11年1月29日
 東京地裁 平成10年(ワ)第21662号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成10年12月7日)

判決
東京都(以下住所略)
 原告 田中雄二
千葉県(以下住所略)
 被告 板野博行


主文
一 被告は、原告に対し、金10万円及びこれに対する平成10年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求
 被告は、原告に対し、金30万0720円及びこれに対する平成10年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、被告が執筆して出版された書籍は、原告がその著作した書籍について有する著作権(複製権、翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害したものであるとして、原告が、被告に対し、損害賠償の支払を求めた事案である。
一 争いのない事実
1 原告は、昭和60年から、古文単語の記憶を促進するため、単語と訳語を結合して一連の意味のある語句や文章にした語呂合わせを考え、次の自著(以下、併せて「原告書籍」という。)に掲載した。それには、別紙対照表の原告書籍欄記載の語呂合わせ(以下「原告語呂合わせ」といい、個別には「原告語呂合わせ1」のようにいう。)が含まれる。
 なお、原告語呂合わせ21及び28については、原告が著作したものではない。
(一)「大学入試センター試験攻略国語1・2」(平成元年8月1日第1刷、株式会社三省堂発行)(以下「原告書籍1」という。)
(二)「ゴロで覚える古文単語記憶術」(平成2年7月1日第1刷、平成5年4月20日第10刷、平成9年2月20日第24刷、株式会社三省堂発行)(以下、第10刷を「原告書籍2」といい、第24刷を「原告書籍3」という。)
2 被告は、次の書籍(以下、併せて「被告書籍」という。)を執筆し、発行した。そこには、別紙対照表の被告書籍欄記載の語呂合わせ(以下「被告語呂合わせ」といい、個別には「被告語呂合わせ1」のようにいう。)が含まれる。
(一)「ゴロで覚える古文単語ゴロ513」(平成9年9月15日初版、永瀬昭幸発行)(以下「被告書籍1」という。)
(二)「センター古文単語ゴロ110番」(平成10年7月18日初版、神田英雄発行)(以下「被告書籍2」という。)
二 争点
1 著作物性の有無
(原告の主張)
 原告語呂合わせは、一つ一つが創作性を有する著作物である。
 原告が創作した「語呂合わせ」とは、単語とその訳語を一体的に連想させて訳語の記憶を促進する目的で、単語、訳語及びその他の語句を組み合わせ、一連の意味のある語句又は文章にしたものである。その作成に当たっては、訳語の記憶促進という目的を達するため、@読者に与えるイメージができるだけ鮮明であること、A語呂合わせができるだけ単純明快であることを心掛けた。このため、完成した語呂合わせが一見誰にでも作成できるように思われても、その完成までには多大の年数と作業を要するもので、原告は、語呂合わせの完成まで4年間を費やした。このような努力の結果、原告書籍の売れ行きは、通常の古文単語の書籍をはるかに上回る。このことからも、原告語呂合わせが創作性を有することは明らかである。
 著作物性は、語句を結合して新たに作られた一連の意味ある語句又は文章として判断すべきであり、一連の語句を分解して判断すべきでない。
 記憶促進のためには語呂合わせができるだけ単純明快であることを要するから、語呂合わせは短い方が良く、創作努力の一部も語呂合わせを短くすることに振り向けられたことに照らしても、短い語呂合わせほどむしろ創作性が高いといえる。
(被告の反論)
 原告語呂合わせは、それぞれ単独では独自性が低く、創作性が認められないから、著作物であるとはいえない。
 原告語呂合わせは、@古文単語を含んだ語句とA古文単語の訳語とBこれらを結び付けるための部分に分けられるが、いずれの部分も、独自性は少ないし、容易に類似のものが発生し得るし、現に類似の書籍が他にも存在する。
 原告語呂合わせはわずか平均11・7字の長さにすぎず、創作性を認めるには短すぎる。
2 複製権及び翻案権侵害の有無
(原告の主張)
 被告語呂合わせは、原告語呂合わせに依拠して作成されたものであり、原告語呂合わせと実質的に同一又は類似である。
 被告語呂合わせは、原告語呂合わせと全く一致するものではないが、原告語呂合わせに、@単に訳語を換言又は追加した、A単に語順を入れ替えた、B単に表記を代えた、C語呂合わせと無縁な言葉を加除した等の改変を加えたにすぎない。
 原告書籍は売れ行きが好調であり、通常の書店の店頭に常備されており、語呂合わせを作成しようとする者は、これを容易に閲覧購読できるから、被告語呂合わせは、原告語呂合わせに依拠して作成されたものである。
(被告の反論)
 古文単語を語呂合わせで覚えるという同一の目的で作られた語呂合わせは、表現が相互に類似する。現に類書にも類似する語呂合わせが多く存在する。被告語呂合わせは独自に創作したものであり、類似する箇所は偶然の一致にすぎない。これは、類書においても、原告書籍と類似する語呂合わせが、被告書籍と同じ程度存在していることからも明らかである。
 また、著作権侵害の判断においては、原告書籍と被告書籍全体を比較して類似性を判断すべきである。被告書籍は、@語呂合わせがすべての単語に付されている、A語呂合わせはすべて古文単語から始まっている、B漫画キャラクターを起用した表紙とそれに合わせた独自の書名である、Cイラストはすべて独自のものである、D独自の古文単語解説及び文法解説が付されている等の点において、独自のものであるから、原告書籍に対して全く独自の新しい著作物であり、原告書籍と類似しない。
3 氏名表示権及び同一性保持権侵害の有無
(原告の主張)
 被告語呂合わせの公衆への提供に際し、原告の実名が著作者名として表示されていないので、原告は、原告語呂合わせについての氏名表示権を侵害された。また、被告語呂合わせは、原告語呂合わせに変更、切除その他の改変を加えたものなので、原告は、原告語呂合わせについての同一性保持権を侵害された。
4 損害額
(原告の主張)
 被告は、故意に、原告の著作権(複製権、翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害し、これにより、原告は次のとおり合計30万0720円の損害を被った。
(一)財産的損害
 被告の複製権、翻案権侵害部分について、原告が被った損害は以下のとおりである。なお、被告書籍は、その書名から見ても語呂合わせが主要部分であるから、著作権侵害の損害算定に当たっては、語呂合わせ部分のみを考慮すべきである。
(1) 被告書籍1について
 掲載語513語の中で侵害部分が42語である。右書籍の出版部数は2万部である。1部当たりの売価は951円である。印税は10パーセントである。したがって、印税相当額は、15万5720円となる。
(2) 被告書籍2について
 掲載語160語の中で侵害部分が16語である。右書籍の出版部数は5000部である。1部当たりの売価は900円である。印税は10パーセントである。したがって、印税相当額は、4万5000円となる。
(二)慰謝料
 大学受験予備校の教師である原告の地位等を考慮すると、氏名表示権及び同一性保持権侵害によって原告の受けた精神的損害を慰謝するには、10万円が相当である。
(被告の反論)
(一) 被告書籍1は、出版点数は5万部、売価は951円、印税は9パーセントである。被告書籍2は、出版点数は1万部、売価は900円、印税は8パーセントである。
(二) 原告の経済的損失を語呂合わせの数で算定することは不当であり、著作物全体としての書名、イラスト、解説部分等を考慮すべきである。
 具体的には、被告書籍1では、@書名「ゴロ513(ゴロゴサーティーン)」自体がゴロとして有名キャラクターと連動している、A「さいとう・たかを」のゴルゴ13のイラストを表紙に使用している、B有名声優吹き込みのCD付きである、C価格設定もCD付きで1000円を切っている、D語数が類書こ比べ圧倒的に多い、Eゴロがすべて単語から始まり、解説も入試に直結している、F7名のイラストレーターを起用し、勉強するのに飽きさせない等の特徴が、販売数に寄与している。
 また、被告書籍2では、前記@、A、E、Fの手法を踏襲し、センタ一試験の古文攻略に特化した点が、販売数に寄与Lている。
第3 争点に対する判断
一 争点1(著作物性)、争点2(複製権及び翻案権侵害)及び争点3(氏名表示権及び同一性保持権侵害)について一括して検討する。
1 著作権法の保護の対象となる著作物については、思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である。ところで、創作的に表現したものというためには、当該作品が、厳密な意味で、独創性の発揮されたものであることは必要でないが、作成者の何らかの個性の表現されたものであることが必要である。文章表現に係る作品において、ごく短いものや表現形式に制約があり、他の表現が想定できない場合や、表現が平凡、かつありふれたものである場合には、筆者の個性が現われていないものとして、創作的な表現であると解することはできない。
 原告語呂合わせに創作性が認められるか否かについては、右の観点に照らして判断すべきである。
2 以下、個々の原告語呂合わせについて、創作性の有無及び著作権侵害の有無を順に検討する。
(一)原告語呂合わせ1は、古語「あさまし」及び古語「めざまし」の2語について、その共通する現代語訳「驚くばかりだ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、二つの古語のいずれにも発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「朝目覚まし」という語句を選択して、これに「驚くばかりだ」を続けて、短い文章にしたものである。
 右語呂合わせは、極めて短い文であるが、二つの古語を同時に連想させる語句を選択するという工夫が凝らされている点において、原告の個性的な表現がされているので、著作物性を肯定することができる。
 そこで、被告語呂合わせ1と原告語呂合わせ1を対比すると、前者は、後者の「驚くばかりだ」を「驚き呆れる」に改めている点が若干相違するが、その他はすべて同じであるから、後者と実質的に同一のものと認められる。したがって、被告語呂合わせ1は、原告語呂合わせ1について原告が有する複製権を侵害する。さらに、原告の氏名が著作者名として表示されていないから、原告の有する氏名表示権を侵害する。なお、前記同一性の程度に照らし、同一性保持権を侵害すると解するのは相当でない。
(二)原告語呂合わせ2は、古語「さかし」とその現代語訳「賢い」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「坂下」という人名を選択して、これに「賢い」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(三)原告語呂合わせ3は、古語「なほ」とその現代語訳「やはり」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「ナオコ」という人名を選択して、これに「やはり」を続け、「一番サ」を付け加えて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とはいえないから、著作物とは認められない。
(四)原告語呂合わせ4は、古語「しがな」及び「もがな」とその現代語訳「〜したい、〜たらなあ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、二つの古語のいずれにも発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のっながる「志賀直哉もガーナチョコレートを」という語句を選択して、これに「食べたい」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、二つの古語を同時に連想させる語句を選択する工夫が凝らされている点において原告の個性が発揮されているので、著作物性を肯定することができる。
 そこで、被告語呂合わせ4と原告語呂合わせ4とを対比すると、前者は古語「もがな」のみを選択しており、原告語呂合わせ4における原告の個性的な表現部分を含んでいないから、これと実質的に同一のものとはいえない。したがって、被告語呂合わせ4は、原告語呂合わせ4についての原告の複製権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害しない。
(五)原告語呂合わせ5は、古語「やさし」とその現代語訳「優美だ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、訳語と発音等が類似する「優美ちゃん」という人名を選択して、これに古語と発音が類似し、意味のつながる「やさしい」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(六)原告語呂合わせ6は、古語「やうやう」とその現代語訳「だんだん」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音等が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「ヨーヨー」という語を選択して、これに「だんだん」及び「うまくなる」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(七)原告語呂合わせ7は、古語「かこつ」とその現代語訳「嘆く」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「カッコつけて」という語句を選択して、これに「嘆く」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(八)原告語呂合わせ8は、古語「あまた」とその現代語訳「たくさん」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「あまった」という語を選択して、これを「たくさん」に続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(九)原告語呂合わせ9は、古語「いとほし」とその現代語訳「気の毒だ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「伊藤氏」という人名を選択して、これに「気の毒な」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十)原告語呂合わせ10は、古語「いぶせし」とその現代語訳「憂鬱だ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「井伏氏」という人名を選択して、これを「ゆううつな」に続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十一)原告語呂合わせ11は、古語「をこ」とその現代語訳「ばか」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「おこる」という語を選択して、これを「ばか!と」に続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十二)原告語呂合わせ12は、古語「あし」とその現代語訳「悪い」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「あっし」という語を選択して、これに「が悪い」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十三)原告語呂合わせ13は、古語「あやし」とその現代語訳「賎しい」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音の類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「アッ、椰子」という語句を選択して、これに「の実だ」、「いやシイたけだ」を続けて、短い文章にしたものである。
 右語呂合わせは、古語の発音類似語と現代語訳との単なる組み合せだけで構成されたものではなく、付加的に表現された部分があることから、原告の個性が現れたものとして、創作性が認められる。
 そこで、被告語呂合わせ13と原告語呂合わせ13とを対比すると、前者は、「そ一、まつぼっくりだ、不思議だな」を付加して、現代語訳「粗末だ」を併せて連想させるよう工夫がされている点はあるが、その他は、原告語呂合わせ13がそのまま用いられているので、これと実質的に同一のものと認められる。したがって、被告語呂合わせ13は、原告語呂合わせ13について原告の有する複製権を侵害する。さらに、原告の氏名を著作者名として表示していないことから、氏名表示権を侵害する。なお、前記同一性の程度に照らし、同一性保持権を侵害すると解するのは相当でない。
(十四)原告語呂合わせ14は、古語「いたづら」とその現代語訳「無駄だ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「いたずらしても」という語を選択して、これに「むだだ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十五)原告語呂合わせ15は、古語「うとし」とその現代語訳「親しくない」を一体的に連想させて、容易に記隠ができるようにする目的で、古語と発音の類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「ウッドーシー奴」という語句を選択して、これに「とは親しくない」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十六)原告語呂合わせ16は、古語「うへ」とその現代語訳「天皇」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「ウヘー!」という語句を選択して、これに「天皇だ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十七)原告語呂合わせ17は、古語「おぼす」とその現代語訳「お思いになる」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「大ボス」という語を選択して、これに「お思いになる」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(十八)原告語呂合わせ18は、「なかなか」とその現代語訳「かえって」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が同一であり、かつ、現代語訳と意味のつながる「なかなか」という語を選択して、この前後に、「貸した金」及び「返って来ないわヨ」を付加して、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められたい。
 なお、右語呂合わせにおいて「貸した金」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ18には右付加部分は存在しないから、著作権侵害はない。
(十九)原告語呂合わせ19は、古語「よしなし」とその現代語訳「つまらない」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「よしナ。死ぬのは」という語句を選択して、これに「つまらない」を続けて、短い文章)にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(二十)原告語呂合わせ20は、古語「あつし」とその現代語訳「危篤だ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が同一であり、かつ、現代語訳と意味のつながる「あつし」という人名を選択して、これに「が危篤だ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(二十一)原告語呂合わせ21について、原告は、原告の著作したものでないことを認めているところ、著作権の承継取得について主張、立証がない。したがって、著作権侵害を理由とする原告の請求は失当である。
(二十二)原告語呂合わせ22は、古語「いそぎ」とその現代語訳「準備」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「お急ぎ!」という語句を選択して、これの前後に、「もっと」、「試験の」「準備」を付加して、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、古語の発音類似語と現代語訳との単なる組み合せだけで構成されたものではなく、付加的に表現された部分があることから、原告の個性が現れたものとして、僅かであるが創作性の認められる部分が存在する。
 そこで、被告語呂合わせ22と原告語呂合わせ22とを対比すると、前者は原告の個性的表現部分を一切含んでいないから、後者と実質的に同一のものとはいえない。したがって、被告語呂合わせ22は、原告語呂合わせ22についての原告の複製権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害しない。
(二十三)原告語呂合わせ23は、古語「いとど」とその現代語訳「いっそう」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「いいトド」という語を選択して、これに「いっそう」及び「少なくなる」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
 なお、右語呂合わせにおいて「少なくなる」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ23には右付加部分は存在しないから、著作権侵害はない。
(二十四)原告語呂合わせ24は、古語「うつくし」とその現代語訳「かわいい」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「ウ!ツクシ」という語句を選択して、これに「かわいい」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえたいから、著作物とは認められない。
(二十五)原告語呂合わせ25は、古語「ここら」とその現代語訳「たくさん」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「そこらここらに」という語句を選択して、これに、「たくさんいる」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(二十六)原告語呂合わせ26は、古語「むつかし」とその現代語訳「いやだ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「難しい問題」という語句を選択して、これに「いやだ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(二十七)原告語呂合わせ27は、古語「ひがひがし」とその現代語訳「ひねくれている」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「日が東」という語句を選択して、これに「に沈むという」という語を付加し、「ひねくれた奴」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、古語の発音類似語と現代語訳との単なる組み合せだけで構成されたものではなく、付加的に表現された部分があることから、原告の個性が現れたものとして、創作性が認められる。
 そこで、被告語呂合わせ27と原告語呂合わせ27とを対比すると、前者は、「という」を「とは」に、「ひねくれた奴」を「ひねくれている」に改めた点が相違するが、その他はすべて同一であるので、実質的に同一のものと認められる。したがって、被告語呂合わせ27は、原告語呂合わせ27について原告の有する複製権を侵害する。さらに、原告の氏名が著作者名として表示されていないから、氏名表示権を侵害する。なお、前記同一性の程度に照らし、同一性保持権を侵害すると解するのは相当でない。
(二十八)原告語呂合わせ28について、原告は、原告が著作したものでないことを認めているところ、著作権の承継取得について主張、立証がない。したがって、著作権侵害を理由とする原告の請求は失当である。
(二十九)原告語呂合わせ29は、古語「あながち」とその現代語訳「無理に」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「穴が血に染まる」という一連の語句を選択して、これを「無理にすると」に続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
 なお、右語呂合わせにおいて、僅かながら個性的表現が含まれるとしても、被告語呂合わせ29と原告語呂合わせ29を対比すると、「無理にすると」と「無理しすぎ」及び「穴が血に染まる」と「穴が血だらけ」とに相違点があること、語順に相違点があること、原告語呂合わせ29の創作性の程度が僅かであること等を考慮すると、原告語呂合わせ29と実質的に同一のものとはいえない。
(三十)原告語呂合わせ30は、古語「いひけつ」とその現代語訳「否定する」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「いいけつじゃないと」という語句を選択して、これに「否定する」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(三十一)原告語呂合わせ31は、古語「うたて」とその現代語訳「いやだ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音の類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「○○○の歌って」という語句を選択して、これに「いやだ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(三十二)原告語呂合わせ32は、古語「うちつけ」とその現代語訳「突然だ」、「軽率だ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「頭うちつけ」という語句を選択して、これに「突然の死」及び「軽率なバイク事故」を付加して、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、二つの現代語訳を選択し、一文で表現している点において、筆者の個性が発揮されたものということができ、著作物性を肯定することができる。
 そこで、被告語呂合わせ32と原告語呂合わせ32を対比すると、「頭うちつけ」と「打ち付けた顔面」とが異なること、前者には「軽率なバイク事故」部分が存在しないこと、後者において原告の個性が発揮されている点は、二つの現代語訳を一文で表現している点にあること等の点を考慮すると、両者は実質的に同一のものとはいえない。したがって、原告の複製権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害しない。
(三十三)原告語呂合わせ33は、古語「うるはし」とその現代語訳「きちんとしている」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「ウールは下着」という語を選択して、これに「きちんとしている」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とはいえない。
 なお、右語呂合わせにおいて、「下着(したぎ)」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ33には、右部分は存在しないから、著作権侵害はない。
(三十四)原告語呂合わせ34は、古語「かしづく」とその現代語訳「大切に育てる」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「菓子づくり」という語句を選択して、これに「職人を」を付加し、「たいせつに育てる」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
 なお、原告語呂合わせにおいて、「職人を」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ34には、右付加部分は存在せず、「菓子づっくりと」と表現されているから、著作権侵害はない。
(三十五)原告語呂合わせ35は、古語「きこゆ」とその現代語訳「申し上げる」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「聞こう、ユー」という語句を選択して、これに「の意見を」を付加し、「では申し上げる」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、古語の発音類似語と現代語訳との単なる組み合せだげで構成されたものではなく、付加的に表現された部分があることから、原告の個性が現れたものとして、僅かであるが創作性の認められる部分が存在する。
 そこで、被告語呂合わせ35と原告語呂合わせ35を対比すると、前者には右付加部分が存在しないこと、及び「聞こう、ゆっくり」と表現されていることに照らすと、原告語呂合わせ35と実質的に同一のものとはいえない。したがって、被告語呂合わせ35は、原告語呂合わせ35についての原告の複製権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害しない。
(三十六)原告語呂合わせ36は、古語「くちおし」とその現代語訳「残念だ」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「口押し」を選択して、これに「つけたが」及び「フラレてしまって」を付加し、「残念だ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、古語の発音類似語と現代語訳との単なる組み合せだげで構成されたものではなく、付加的に表現された部分があることから、原告の個性が現れたものとして、僅かであるが創作性の認められる部分が存在する。
 しかし、被告語呂合わせ36には、右付加部分が存在せず、また「口押し戻されて」と表現されているから、原告語呂合わせ36と実質的に同一のものとはいえない。したがって、被告語呂合わせ36は、原告語呂合わせ36についての原告の複製権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害しない。
(三十七)原告語呂合わせ37は、古語「せめて」とその現代語訳「強いて」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が同一であり、かつ、現代語訳と意味のつながる「せめて」の語を選択して、これの前後に、「わかったわ。でも」及び「フトンしいて」を付加して、短い文章したものである。右語呂合わせは、古語の発音類似語と現代語訳との単なる組み合せだけで構成されたものではなく、付加的に表現された部分があることから、原告の個性が現れたものとして、創作性の認められる部分が存在する。
 そこで、被告語呂合わせ37と原告語呂合わせ37を対比すると、両者における「責めて」と「せめて」の意味が異なること、前者には「わかったわ」の部分が存在しないこと、前者は、「無理に」、「強いて」という二つの現代語訳を一文で表現していることなど相違点が多いこと及び原告語呂合わせ37の創作性の程度等を考慮すると、両者は実質的に同一のものとはいえない。
 したがって、原告の複製権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害しない。
(三十八)原告語呂合わせ38は、古語「ばや」とその現代語訳「〜たい」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「バーヤも」という語句を選択して、「行きたい」及び「大学へ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
 なお、右語呂合わせにおいて「大学へ」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ38には名付加部分は存在しないから、著作権侵害はない。
(三十九)原告語呂合わせ39は、古語「もぞ」とその現代語訳「してはいけない」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ現代語訳と意味のつながる「もぞもぞ」という語句を選択して、これに「してはいけない」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
(四十)原告語呂合わせ40は、古語「ゆかし」とその現代語訳「見たい」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「ユカ」という人名を選択して、これに「しびれて」及び「みたい」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
 なお、右語呂合わせにおいて「しびれて」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ40には名付加部分は存在しないから、著作権侵害はない。
(四十一)原告語呂合わせ41は、古語「よすがら」とその現代語訳「一晩中」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「よ一。菅原。」という人名を含めた語句を選択して、これに「一晩中」及び「踊ろうぜ」を続けて、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
 なお、右語呂合わせにおいて「踊ろうぜ」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ41は名付加部分は存在しないこと、現代語訳として「夜通し」が選択されていること、名付加部分が存在しないことから著作権侵害はない。
(四十二)原告語呂合わせ42は、古語「ゆゆし」とその現代語訳「不吉だ、立派だ、」を一体的に連想させて、容易に記憶ができるようにする目的で、古語と発音が類似し、かつ、現代語訳と意味のつながる「UUC」という語を選択して、これに「コーヒー」及び「UCC」を付加して、短い文章にしたものである。右語呂合わせは、ごく平凡で、ありふれたものであり、筆者の個性を発揮した創作的表現とまではいえないから、著作物とは認められない。
 たお、右語呂合わせにおいて「コーヒー」及び「UCC」を付加した点に若干の個性が認められたとしても、被告語呂合わせ42には、「UCC」部分が存在しないこと、現代語訳として「はなはだしい」及び「すばらしい」が選択されていることから著作権侵害はない。
3 次に、依拠性について判断する。原告書籍と被告書籍は、いずれも、大学受験用に古文単語を語呂で記憶するための著書であり、執筆目的が共通であること、原告書籍は、被告書籍の発行よりも7、8年程度以前から発行され、現在まで相当部数が販売されていること(甲6、弁論の全趣旨)、原告語呂合わせと被告語呂合わせとを対比すると、かなりの点において共通する部分が存在することに鑑みれば、被告語呂合わせ(著作権侵害部分に限る。)は、原告語呂合わせに依拠して作成されたものと推認される。
4 以上によれば、原告語呂合わせ1、13及び27については、原告が有する複製権及び氏名表示権を侵害し(その余の著作権法上の権利侵害はない。)、その余の原告語呂合わせについては、原告の有する著作権及び著作者人格権を侵害しない。
 なお、原告語呂合わせのすべてについて、翻案権侵害は認められない。
二 争点4(損害額)について
1 財産的損害について
 被告書籍1については、その売価が951円であることは、当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、その出版点数が5万部、印税が9パーセントであることが認められる。したがって、被告書籍1について被告が受けた利益額は、427万9500円である。これらの事実を基礎として、これに掲載語句513の中で複製権侵害と認められる語句が3語であることその他一切の事情を総合すると、被告が著作権侵害行為によって受けた利益額を5万円と算定するのが相当であり、そうすると原告の損害額は、右同額と推定される。
 なお、被告書籍2については、著作権侵害部分は認められない。
2 慰謝料について
 侵害行為の性質、内容、原告及び被告の地位等諸般の事情を総合すると、原告の受けた精神的損害を金銭に評価すると5万円が相当である。
三 したがって、本件請求は、損害金10万円及びこれに対する不法行為後である平成10年9月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 八木貴美子
裁判官 沖中康人


対照表
1 原告書籍一 朝めざましに驚くばかり
  被告書籍一 朝目覚ましに驚き呆れる

2 原告書籍一 坂下かしこい
  被告書籍一 かしこい、こざかしい

3 原告書籍一 ナオコがやはり一番サ!
  被告書籍― なほ子はやっぱりかわいい
  被告書籍二 なほ子はやっぱりかわいい

4 原告書籍一志賀直哉もガーナチョコレートを食べたい
  被告書籍一 も一、ガーナチョコがあればなあ

5 原告書籍二 やさしい優美ちゃん
  被告書籍一 さしい優美ちゃん感心だ

6 原告書籍一 ヨーヨーだんだんうまくなる
  被告書籍一 ヨーヨーしだいにうまくなる

7 原告書籍一 カッコつけて嘆く
  被告書籍一 「カッコつけるな、お前のせいだ」と嘆く

8 原告書籍二 たくさんあまった
  被告書籍一 あまった?たくさん

9 原告書籍一 気の毒な伊藤氏
  被告書籍一 伊藤氏は気の毒だ
  被告書籍二 伊藤氏は気の毒だ

10原告書籍一 ゆううつな井伏氏―
  被告書籍一 井伏氏は憂鬱だ

11原告書籍一 ばか!とおこる
  被告書籍一 怒るな馬鹿っ!

12原告書籍二 アッシが悪い
  被告書籍一 あっしが悪い、下手だ

13原告書籍二 アッ!ヤシの実だ。いやシイたけだ。
  被告書籍一 あっやしの実だ、いや、しいたけだ、そ一まつぼっくりだ、不思議だな

14原告書籍一 いたずらしてもむだだ
  被告書籍一 いたづらしても無駄だ、むなしい、死んじゃいたい

16原告書籍一 ウッドーシー奴とは親しくない
  被告書籍一 うっと一し一奴とは親しくない

16原告書籍一 ウヘー!天皇だ
  被告書籍一 うへっ天皇だ

17原告書籍二 大ボスがお思いにたる
  被告書籍一 大一ポスがお思いにたる
  被告書籍二 大一ボスがお思いになる

18原告書籍一 貸した金、なかなか返って来ないわヨ
  被告書籍一 なかなかかえってこない
  被告書籍二 なかなかかえってこない

19原告書籍一 よしナ。死ぬのはつまらない
  被告書籍一 よし一な、死んでもつまらんし、理由もなければ手段もないぞ
  被告書籍二 よし一な、死んでもつまらんし、理由もなければ手段もないぞ

20原告書籍一 あつしが危篤だ
  被告書籍一 あつしの婆一ちゃん危篤だ

21原告書籍三 アリがたし算珍しい(熊野晶子作)
  被告書籍一 ありが足し算してる、めずらしい。生きづらい世の中だ
  被告書籍二 ありが足し算してる、めずらしい。生きづらい世の中だ

22原告書籍一 もっとお急ぎ!試験の準備
  被告書籍一 いそぎの準備

23原告書籍二 いいトドいっそう少なくなる
  被告書籍一 いいトドいっそう賢くなる
  被告書籍二 いいトドいっそう賢くなる

24原告書籍一 ウ!ツクシかわいい
  被告書籍一 うっ、つくしんぼかわいいぞ
  被告書籍一 うっ、つくしんぼかわいいぞ

25原告書籍一 そこらここらにたくさんいる
  被告書籍一 ここらにもそこらにもたくさん

26原告書籍一 むつかしい問題いやだ
  被告書籍一 むつかしい試験いやだ

27原告書籍一 「日が東に沈む」というひねくれた収
  被告書籍一 日が東に沈むとはひねくれている

28原告書籍二 朝の目ざまし気にくわない(小林大介作)
  被告書籍一 目覚まし鳴って気に食わない

29原告書籍一 無理にすると穴が血に染まる
  被告書籍一 穴が血だらけ、無理しすぎ
  被告書籍二 穴が血だらけ、無理しすぎ

30原告書籍一 いいけつじゃないと否定する
  被告書籍一 いいけつしてると悪く言う

31原告書籍一 ○○○の歌っていやだ
  被告書籍一 歌ってみるとますますひどい、情けない
  被告書籍二 歌ってみるとますますひどい、情けない

32原告書籍一 頭うちつけ突然の死。軽率なバイク事故
  被告書籍一 打ち付けた顔面突然死

33原告書籍一 ウールは下着(したぎ)もきちんとしている
  被告書籍一 ウールはしっかり整っている

34原告書籍二 菓子づくりの職人をたいせつに育てる
  被告書籍一 菓子づっくりと大切に育てる

35原告書籍― 間こう、ユーの意見を。では申し上げます
  被告書籍一 「聞こう、ゆっくり」「では申し上げる」
  被告書籍二 「聞こう、ゆっくり」「では申し上げる」

36原告書籍一 口押しつけたがフラレてしまって残念だ
  被告書籍一 口押し戻されて残念だ
  被告書籍二 口押し戻されて残念だ

37原告書籍一 わかったわ。でも「せめてフトンしいて」
  被告書籍一 責めて無理に、でも布団はしいてね

38原告書籍二 バーヤも行きたい大学へ
  被告書籍一 ぼ―やは死体
  被告書籍一 婆一やは死体

39原告書籍二 モゾもぞしてはいけない!
  被告書籍一 もぞもぞすると困る、もこそもこそすると大変だ
  被告書籍二 モゾモゾすると困る、もこそもこそすると大変だ

40原告書籍三 ユカしびれてみたい
  被告書籍一 ユカ知りたい
  被告書籍二 ユカ知りたい

41原告書籍一 よ一。菅原。一晩中踊ろうぜ
  被告書籍一 余も菅原も夜通し遊ぶ

42原告書籍一 不吉なコーヒーUUC。立派なコーヒーUCC
  被告書籍一 UUCコーヒーとは、はなはだ不吉だすばらしい
  被告書籍二 UUCコーヒーとは、はなはだ不吉だすばらしい
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